概要・あらすじ
傷害罪で私立国分刑務所に投獄された雑賀力王は、無法がまかり通る刑務所内で自分に害を及ぼそうとする囚人や刑務官を拳ひとつで叩き潰してきた。刑務所の支配者である所長を倒した力王は、自分の出生の秘密を求め脱獄し、北の果ての地にある岬へたどり着く。力王は、そこで人類滅亡を企てる謎の組織に利用される双子の弟那智と再会。
不老宮を根城にする謎の組織や組織を操る実父との闘いを繰り広げていく。
登場人物・キャラクター
雑賀 力王 (さいが りきおう)
傷害罪で懲役3年の判決を受け、20歳で私立国分刑務所に投獄され、開始当初も服役中。貿易商・雑賀道臣の養子として18歳までは順風満帆の生活を送っていたが、高校3年の冬に突如失踪、2年間の空白ののち私立国分刑務所に送られた。右手の甲に六芒星の痣を持ち、「お前の悪業(カルマ)は俺が地獄へ運んでやる」の言葉とともに超人的な肉体と不屈の闘志で敵対する者を徹底的に粉砕する。
那智 (なち)
かつて王美麗が刑務所で産んだのは双生児で、那智は力王の双子の弟。右手の甲に鉤十字の痣を持つ。私立国分刑務所を脱獄した力王がたどり着いた岬では、ときに病人を癒し、ときに傷ついた戦士に死をもたらして人間を苦しみから解放する。3歳の時に力王と生き別れになり、兄に捨てられた悲しみと絶望から力王を激しく憎悪する。 サイコキネシスをはじめ強大な超能力を駆使して戦う。
無界 (むかい)
力王と那智の実父でもある。自分を「神」と呼び、強大な力と不老不死の肉体を持つ男。ナチスをはじめ多くの信奉者から崇められると同時に恐れられている。また、自分と力王を聖書のアブラハムとイサクになぞらえて、人類が肉体の呪縛を離れて精神だけで生き続ける、つまり人類すべてを全滅させて一度リセットする「神の計画」の実行を力王に促す。
王 美麗 (おう びれい)
日本名は秋山久乃といい、25年前に毒物を混入したミルクで13人の乳幼児を殺害し死刑判決が下った。彼女が刑務所内で産んだのが力王と那智である。のちにその出自がユダヤ人難民の少女ハンナで、悪の首魁無界に追われて「秋山久乃」と名乗っていたことや、連続殺人は冤罪であった事が明らかになる。 しかし、自分の肉体は征服できても心までは征服できず、いつの日か自分の子らが無界を倒すと告げ、死刑台の露と消えた。
雑賀 道臣 (さいが みちおみ)
力王の養父。かつてハンナたちユダヤ人をナチスから解放した両親ともども姉山に殺されかけたところを張善鬼によって救われる。ハンナこと王美麗の遺児である力王を養護施設から引き取り息子として育てたが、水口菊夫によって雑賀家は破産、道臣は廃人同然の生活を送る。姉山が送りこんだ刺客薔薇木戸のリモコン凧に狙撃された際、正気に戻り、力王出生の秘密を語って息絶えた。
張 善鬼 (ちょう ぜんき)
気の力で人体に内部から干渉する内家拳法の達人で、力王の師匠。連続乳幼児殺人犯の子として生を受けたと知った力王が、絶望して自殺を試みたところを保護し、拳法の伝授を含めてあらゆる面で力王を指導した。かつては「華北に敵無し」と言われた蒋介石のボディガードで、雑賀道臣の命を救ったことが縁で彼は力王の養父となった。
所長 (しょちょう)
私立国分刑務所をカネと暴力で支配する、小柄で丸眼鏡をかけた権力の亡者。虚弱体質だったため、40年前力王の師匠・張善鬼が来日した際に初めて師事し、人体を内部から破壊する内家拳法を習得した。手足を引き延ばして身長とリーチを変え、気功術で筋肉を増量して普段とは全く異なる姿に変貌する。 硬気功で筋肉を練り上げたゴム粘土のように変化させて相手の攻撃をことごとくはねかえす。
鷲崎 (わしざき)
弟那智の行方を追う力王が向かった岬の収容所ラーゲリを支配する元軍人。古代より霊力を宿すと伝えられる鉄隕石刀であらゆるものを一刀両断し、力王をも一撃で倒しラーゲリに連行する。力王と那智が「神の計画」を遂行するための存在と考え、ふたりを支配して世界を破滅に導く最終兵器として利用しようと企む。
オットー・シュタイナー
岬の支配者鷲崎の盟友で、元軍人にして医学博士。鷲崎と共に「神の計画」を遂行するために行動する。かつて、戦争で糜爛性毒ガスを浴びてしまい一命は取りとめたものの醜い傷痕と激しい後遺症を負ったため、その苦しみからの解放を求めて「神の計画」に加担する。力王に想いを寄せる鷲崎の娘舞衣を愛し、想いと決別するために力王に一騎打ちを挑む。
姉山 (あねやま)
悪の首魁無界の代理人で、「不老宮」で絶大な権力を振るう、残忍かつ狡猾な男色家にしてサディスト。その正体は第二次世界大戦当時から生き続ける80歳以上の老人で、整形とオリンピック金メダリストの心臓移植で若さを維持していた。ナチスと通じ、幼い頃の雑賀道臣の目前で両親を殺害し、王美麗を無実の罪で処刑した上に、雑賀家の破産にも加担した。
悪王 (あくおう)
姉山に仕える悪の科学者・小日向博士が力王の闘争心を分析、彼が恐れる内なる凶暴性を外に向けて露呈させるために造った人造人間。力王を超える巨大な体躯、残虐な性格などすべてにおいて力王を凌ぐ戦闘能力を持ち、小日向博士が弾くバイオリンの音色に仕込んだコードによって操られる。
ハンス・クリューガー
南極にあるニューソドムの町の教会で「伝道師ヨハネ」と名乗ったが、その正体は第二次世界大戦当時のナチス親衛隊中尉。無界によって50年生きながらえるかわりに王美麗と力王、那智を描いた肖像画を守る契約を交わされていた。
場所
私立国分刑務所 (しりつこくぶけいむしょ)
主人公雑賀力王が投獄された刑務所。作品が始まった5年前に日本の刑務所は民営化されている。作品のスタート時点の4年前に起きた「第二次昭和大恐慌」をきっかけに私立国分刑務所は、大量発生した犯罪者を収容し、タダ同然で使い捨てのきく労働資源として働かせ、膨大な利益を上げてきた。また、所内の温室では麻薬の主成分ケシを栽培して麻薬製造などの不法行為にも加担している。 刑務官も受刑者も刑務所内でのみ通用するルールすなわち暴力をもって互いに相手を支配しようと考えるほど腐敗しきっている。
岬 (みさき)
本州の最北端にある霊場祟山の山奥、屍峠の茶屋に設けられたエレベーターで地下へと進んだ先にある海岸の施設。地磁気の乱れによって計器が効かない「隠された土地」のため、犯罪者の楽園とされていたが、その実は完全廃棄されたはずの原発を秘密裏に稼働させる組織「センター」によって核廃棄物が流出する有害な土地だった。 岬の一角には「ラーゲリ」と呼ばれる収容所があり、そこでは鷲崎が絶対的な権力を握る。