刀社会の日本を舞台にした、妖刀をめぐる復讐譚
本作の舞台となるのは、少しレトロな雰囲気が漂う架空の日本。自衛の手段として刀の所持が認められているが、そのことが治安悪化の要因にもなっている。そこで、ヤクザや企業は「妖術師」を雇い、その身を守っているのが実情である。18年前、ある強力な「敵」との間で起こった「斉廷戦争」で日本は危機に陥るが、名匠・六平国重が生み出した6本の妖刀により救われたという。戦後、妖刀は国重の工房に保管されていたが、3年前に「毘灼(ひしゃく)」という妖術師組織によって、すべてが盗まれてしまう。父・国重を殺された六平千鉱(チヒロ)は、国重が最期に遺した7本目の妖刀・淵天(えんてん)を携え、6本の妖刀の奪還と復讐を目的に敵に立ち向かう。
妖刀、妖術によるユニークな異能力バトル
本作の主なバトルは、妖刀あるいは妖術によって行われる。妖術を構築する「玄力(げんりょく)」は、すべての人間に宿る生命エネルギーであり、妖術師は玄力を操ることで術を使う。また、妖刀は玄力を増幅させ、人体では生成・保持ができないほど超高密度な力の塊にする。妖術や妖刀の効果は、瞬間移動や結界を作るといったものや、雷や氷による攻撃などさまざまで、ユニークな異能力バトルが本作の見どころである。なお、妖刀の原料は「零天石(だてんせき)」という特殊な鉱石で、玄力を増幅させる一方、所有者の命を奪うほどの毒でもある。零天石の力を安定させることに成功したのは、歴史上で国重ただ一人だった。また、妖刀には「命滅契約」という制限機構がある。それは、命が絶えるまでは、妖刀の所有者のみが妖刀の力を扱えるというものである。
謎に満ちた妖術師集団「毘灼」や国家組織「神奈備」
チヒロが追っているのは、父を殺して6本の妖刀を持ち去った「毘灼」と呼ばれる組織。少数精鋭の妖術師集団といわれているが、詳細は不明である。そこでチヒロは、妖刀・刳雲(くれぐも)を手に入れた武器商人・双城厳一や、妖刀・真打(しんうち)が出品される闇競売・楽座市を仕切る漣家と戦い、手がかりを得ようとする。そんなチヒロの敵でもあり味方でもあるのが、優れた妖術師を擁する国家組織「神奈備(かむなび)」である。神奈備は、野放しになった妖刀を国で管理しようとしており、妖刀の所有者を保護している。そんな訳で、対双城戦ではチヒロと共闘していた神奈備だったが、妖刀・淵天の存在を知った後は、チヒロから妖刀を回収しようとする。
登場人物・キャラクター
六平 千鉱 (ろくひら ちひろ)
18歳の妖術師。通称は「チヒロ」。顔の左側に大きな傷を持つ。父・六平国重に憧れ、刀匠を目指していたが、15歳の時に妖術師集団「毘灼(ひしゃく)」に父を殺され、6本の妖刀を奪われてしまう。それ以来、修練を積み、父が最期に遺した妖刀・淵天(えんてん)を武器に、毘灼を追う。淵天により金魚の妖術を繰り出す。その種類は、黒い金魚による斬撃「涅(くろ)」、敵の妖術を吸収してモノにする「猩(あか)」、能力を増幅する「錦(にしき)」などである。
六平 国重 (ろくひら くにしげ)
六平千鉱(チヒロ)の父。妖刀を作ることができる唯一の刀匠。「斉廷戦争」を、6本の妖刀で終わらせたことで国民的な英雄とされている。仕事以外では天然な性格で、世話が焼ける人物。ある日、妖術師集団「毘灼」に襲われ、命と6本の妖刀を奪われた。
柴 登吾 (しば とうご)
六平親子と古くから交流がある妖術師。金髪で体格がいい。かつて国家組織「神奈備(かむなび)」に所属していた。六平国重の死後は、六平千鉱と行動を共にし、力を貸している。「瞬間移動」の妖術を使う。
鏡凪 シャル (きょうなぎ しゃる)
孤児の少女。驚異的な再生能力を持つ、鏡凪一族の生き残り。双城厳一に捕らわれ「零天石(だてんせき)」の安定を目的とした実験に利用されていた。母親の犠牲により、双城のもとを逃げ出し、六平千鉱と出会う。
双城 厳一 (そうじょう げんいち)
国家組織「神奈備(かむなび)」のブラックリストに載っている武器商人。残忍な性格の男性。妖刀・刳雲(くれぐも)の所有者。六平国重の信奉者で、「零天石(だてんせき)」と鏡凪シャルを使って新たな武器を作り出そうとしていた。刳雲により、雷を放つ「鳴(めい)」、相手を凍らせる「結(ゆい)」、水を繰り出す「降(こう)」の妖術を使う。
書誌情報
カグラバチ 4巻 集英社〈ジャンプコミックス〉
第1巻
(2024-02-02発行、 978-4088838199)
第2巻
(2024-05-02発行、 978-4088838809)
第3巻
(2024-07-04発行、 978-4088841168)
第4巻
(2024-10-04発行、 978-4088842097)