世界観
独自の生物相を持つ、「この星」とのみ呼称される惑星が舞台。携帯電話が存在する、飛行機械が発明されている、生命科学が進んでいるなど、科学技術がかなり発達した世界である。世界は多くの国家に分かれており、君主制の国家も存在するが、物語の中核を成す組織「輪」は「ガルメディア連合国家」に所属している。
あらすじ
第1譜~第14譜
カラスナの街で嘉禄を探す途中に花礫と出会った无は、能力者と「輪」の戦いに巻き込まれた結果として、花礫とともに「輪」の保護下に置かれることになる。「輪」の研究者たちの手によって、无は実は普通の人間ではなく「ニジ」という動物と人間が融合した存在であることが明らかになった。一方花礫は、幼なじみのツバメに関わる能力者騒動を解決し、ツバメを救うことになる。
第15譜~第36譜
時折夢の中で嘉禄と交信していた无は、ある日嘉禄から、自分は殺されるかもしれない、という話を聞かされる。それを知った「輪」の面々は、罠である可能性を考慮しつつも「火不火」の拠点と目される煙の館を急襲し、嘉禄の身柄を押さえることに成功する。しかし嘉禄は記憶を失っており、无のことも忘れていた。
第37譜~第60譜
「輪」の保護下で、なかなか役に立てない自分に歯がゆさを抱き始めていた花礫は、自らも「輪」の闘員となるべく、その養成機関であるクロノメイに入学することになった。優秀な素質を示し、クロノメイで期待を集める花礫であったが、无と嘉禄が危機的状況に陥っているとの報を受け、事件に巻き込まれて校外に出てしまう。
第61譜~第73譜
回想編の中で與儀の過去と、その二重人格の秘密が描かれる。リムハッカ王国が滅ぼされた時、その唯一の生き残りとなった與儀は、独自にインキュナをコントロールするすべを身につけ、リムハッカ王国を襲った「火不火」を壊滅させていた。與儀のもう1つの人格は、インキュナと與儀が融合したことにより生じたものであった。
第74譜~第86譜
「火不火」の幹部である化色の唐突な思い付きにより、その部下である隆による、クロノメイへの襲撃が行われる。クロノメイに入学していたツバメが危機に陥るなどの経緯を経つつも、「輪」は隆を討ち取り、事態を収拾することに成功する。そして、つかの間の平和の間に、ささやかな休暇を味わうことになった。
第87譜~第106譜
ようやくクロノメイに戻ることになった花礫だが、校則を破ったことで闘員となる道は絶たれたため、闘員医術師となるために、研究者への道を選ぶことになる。大抜擢された花礫は、研案塔に配属され、燭の下につくことになった。一方、任務でレーベルガンゼの地を訪れた與儀は、死んだものと思われていた妹と再会、過去の記憶をすべて取り戻し、2つの人格を統合することに成功する。
第107譜~第111譜
「輪」の保護下に置かれてはいるが、その真意がなお明らかでない嘉禄の過去が語られる。「火不火」から脱け、逃亡の日々を送っていた嘉禄とその両親は、ニジの森へとたどり着いた。そこで嘉禄は1匹のニジと仲良くなり、无という名を与えたのであった。
単行本の装丁
単行本各巻のカバー下の本体表紙と裏表紙には、ショートショート漫画が掲載されている。それぞれ、表紙1コマでその巻を担当するキャラクター1名が何らかの愛想を振りまき、裏表紙で他のキャラクターたちが数コマ費やしてその表紙に対して突っ込みを入れる、という構成になっている。
外伝
本作『カーニヴァル』の番外編として、『カーニヴァル番外編 明日の約束』が、2013年3月25日一迅社のZERO-SUMコミックスから発売された。「明日の約束」「良く出来た世界」「ヒツジがいっぴき」の3編のエピソードの他、御巫桃也の初期短編も収録されている。
関連作品
2013年3月13日に、本作『カーニヴァル』のアニメ版のガイドブック『TVアニメ カーニヴァル オフィシャルプレリュードブック』が発売された。また同年5月25日には御巫桃也の画集である『カーニヴァルパレード1』が発売。2014年5月24日、その続刊となる『カーニヴァルパレード2』が発売。2013年6月25日には『カーニヴァル 公式ファンブック 輪からの招待状』が発売されている。また同年7月25日には、『TVアニメ カーニヴァル 公式アニメーションガイド』が発売。他に、『カーニヴァル アンソロジー』もシリーズ化されている。
関連商品
2015年7月24日、2種類のポストカードブック『カーニヴァル ポストカードブック Adult』と『カーニヴァル ポストカードブック Funny』が2冊同時発売されている。キャッチコピーはそれぞれ「甘い指先、誘惑の囁き、大人っぽい雰囲気のアダルト」、「一緒にハッピーペローナ、ポップでキュートなファニー」。またバンダイからは、ガシャポンで『カーニヴァル』のスイングキーホルダーが出されている。
コラボレーション
アニメイトカフェ天王寺・コラボレーションカフェ
2013年6月1日から6月30日にかけて、アニメイトカフェ天王寺でコラボレーションカフェが開催された。入口のウェルカムボードから飾りつけに至るまで店内は『カーニヴァル』一色となり、また非売品で特製の羊の巨大ぬいぐるみなども展示された。「ニャンペローナの肉球デザート」が人気メニューであった。
スマートフォンアプリ『嫁コレ』
2013年6月28日から8月27日にかけて、NECビッグローブのスマートフォン向けアプリ『嫁コレ』の、男性キャラクターが登場する「女子部枠」に、无、花礫、與儀の3キャラクターが参加した。なお、『嫁コレ』は2016年8月31日にサービスを終了した。
アットゲームズ・アバターガチャ『セルフィ』
2013年7月26日から翌2014年7月25日まで、アットゲームズのアバターガチャ『セルフィ』に、『カーニヴァル』の无、花礫、與儀らのなりきり衣装、パレードの衣装などが登場した。また、各キャラクターの「決めポーズ」なども配布された。
大江戸温泉物語
2013年8月8日から9月1日にかけて、温泉テーマパーク「大江戸温泉物語」とのコラボイベントが行われた。「みんなでかくれんぼ!!」と「與儀のパンツを探してあげよう!」の2コースのスタンプラリー、ミニゲームなどが開催され、オリジナルグッズやコラボフードも販売された。
カラオケの鉄人
2013年10月23日から12月23日まで、「カラオケの鉄人」町田店・池袋東店・新宿歌舞伎町店においてコラボレーション企画が行われた。5種類のオリジナルドリンクが提供された他、特製コースターが配布され、またキャラクターソングなどTVアニメ関連曲の楽曲配信も行われた。他に、壁いっぱいに『カーニヴァル』のイラストが描かれた特設ルームも設置された。
モバゲー
2015年4月13日には、Mobage、Yahoo!モバゲーのアバター衣装用のコインガチャに『カーニヴァル』の衣装が登場した。ニャンペローナからキャンディバーをもらえるという趣向があり、ニャンペローナはレアアイテム扱いで登場していた。
メディアミックス
TVアニメ
2013年の4月から6月にかけて、ABC朝日放送、TOKYO MXなどでマングローブの製作によるTVアニメ版が放映された。全13話で、監督は菅沼栄治。无役を下野紘、花礫役を神谷浩史、與儀役を宮野真守が演じている。
キャラクターソングCD
TVアニメ『カーニヴァル』の放映を受け、2013年5月29日から8月21日にかけて、キャラクターソングCDが発売された。无の「キレイ」、與儀&ツクモの「WELCOME 2 PARADE!~貳號艇へようこそ!~」、平門&燭の「La fin de l'e'clipse」、嘉禄&黒白の「Vanitas vanitatum」、花礫の「Reach for the sky」といった曲が収録された他、オリジナルショートドラマも併録されている。
ドラマCD
2013年11月6日の『ドラマCD「カーニヴァル」選ぶべき道』をはじめ、フロンティアワークスの製作による多数のドラマCDが発売されている。また2016年7月25日には、書籍扱いのCDドラマブック『カーニヴァル ドラマCDブック PRISM -いけない父兄参観-』が、こちらは一迅社から発売された。
WEBラジオ
『カーニヴァルRadio』のタイトルで、2013年1月25日から11月22日にかけて、隔週金曜日に「アニメイトTV」にてWEBラジオが配信された。パーソナリティは无役の下野紘が務め、ほか各キャラクターの声優陣がゲストとして各回に出演した。
舞台
『THE STAGE カーニヴァル 始まりの輪舞曲』と題して、2016年5月20日から5月29日まで、東京都豊島区の舞台芸術交流センター「あうるすぽっと」にて、本作の舞台が上演された。キャスティングは、无役を倉持聖菜、花礫役を飯山裕太、與儀役を鷲尾修斗が務めた。
登場人物・キャラクター
无 (ない)
カラスナの街において、腕輪だけを手掛かりに嘉禄を探していた少年。その正体は人間ではなく、稀少生物「ニジ」と人間の細胞が融合した存在である。したがって実年齢は不明で、人間よりはるかに優れた聴覚を持つ。「輪」の貳號艇(にごうてい)に拾われて以降、「輪」の保護下に置かれている。人間ではないためかかなり感情面で幼いところがあり、花礫にはとてもよく懐いている。 言葉にもやや不自由なところがあり、当初は人間として最低限の常識的な概念、たとえば血液の存在、量の単位などを知らなかった。
花礫 (がれき)
カラスナの街で暮らしていた少年で、年齢は15歳。无と出会い、はじめ无とともに「輪」の保護下に入った。しかし自分の無力さに苛立ちを感じるようになり、やがて「輪」の闘員となるためにクロノメイに入学。その後さらに、時辰の肝煎りによって闘員医術師を志すようになり、研案塔に配属される。かつて能力者に恩人を殺された経験があるため、能力者や「火不火」に敵対心を抱いている。
與儀 (よぎ)
「輪」貳號艇(にごうてい)闘員の青年で、年齢は21歳。出身はリムハッカ王国で、実はもともとは王子である。腕輪の力で茨を生み出して操る能力を持ち、硬化させた茨を双剣のようにして用いることもできる。「銀髪の與儀」「銀與儀」などと呼ばれる、もう1つの人格がいるが、記憶は共有しておらず、主人格である與儀は一部過去の記憶を失った状態にある。 「特化S」というクラスにカテゴライズされる、「輪」でも最強の闘員の1人。のちに記憶を取り戻し、2つの人格の統合を果たす。
ツクモ
「輪」貳號艇(にごうてい)闘員の少女で、年齢は16歳。「特化S」というクラスにカテゴライズされる、「輪」でも最強の闘員の1人。腕輪の力で星の光を具現化して操り、敵を攻撃する。クールで真面目な性格であり、口数が少なく表情も乏しいが、実は虫が苦手。
イヴァ
「輪」貳號艇(にごうてい)闘員の女性で、年齢は25歳。「特化S」というクラスにカテゴライズされる、「輪」でも最強の闘員の1人。腕輪の力で宝石を具現化する能力を持ち、その宝石は敵を攻撃する光を発したり、味方を守るシールドを張ったりできる。性格は姉御肌であり、男性陣には厳しいがツクモには甘い。
平門 (ひらと)
「輪」貳號艇(にごうてい)の艇長を務める男性で、年齢は27歳。无と花礫を「輪」で保護することを最初に決定した人物である。特製のシルクハットを「帽子乙女(バンシー)」と呼ばれる人間大の女性の姿に変え、使役する能力を持ち、また愛用の杖に腕輪の力を与え、強力な武器に変えることもできる。時辰と片親を同じくする弟。
喰 (じき)
「輪」壱號艇(いちごうてい)闘員の青年で、年齢は20歳。「特化S」というクラスにカテゴライズされる、「輪」でも最強の闘員の1人。幻術使いであり、他者に幻を見せて惑わすことができる他、腕輪の力で具現化した鞭を操って戦う。超人的な視力を持っているため、普段はそれをセーブするためにあえて眼鏡をかけている。かなりの助平であり、割とそれを露骨に言動に表す。
キイチ
「輪」壱號艇(いちごうてい)闘員の少女で、年齢は15歳。「特化S」というクラスにカテゴライズされる、「輪」でも最強の闘員の1人。腕輪の力で具現化した巨大な鎌を操って戦う。負けず嫌いな性格で、ツクモを一方的にライバル視しているほか、與儀にもやたらと絡む。
朔 (つきたち)
「輪」壱號艇(いちごうてい)の艇長を務める男性で、年齢は27歳。兄貴肌で、非常に気さくな性格の持ち主であり、上司やお偉方の前でも平気で居眠りをしたり、平門を飲みに誘ったりする。腕輪を用いて重力や引力を操作する能力を持ち、小型のブラックホールを出現させることができる。
時辰 (ときたつ)
「輪」の最高指導者を務める男性で、年齢は36歳。現在の地位に就いたのは5年前。正式な役職名は「国家防衛統括塔最高技術審議官」であるが、「統括官」と呼ばれている時もある。公にはされていないが、平門と片親を同じくする兄である。御茶目な性格の持ち主であり、しょっちゅうお忍びで出歩いている。
燭 (あかり)
研案塔に専属研究総長として所属する男性で、年齢は33歳。極めて優秀な研究者であり、政府が定めたSSS(ヴィヒテネゲル)という要人の1人でもある。非常に厳格な性格であるが、また高飛車でもあり、自分はモテると自惚れているが、実際はさほどでもない。のちに研究塔に配属された花礫が師事することになる。本名は「燭・デザルト」。
療師 (りょうし)
研案塔に所属する凄腕の医師の老人で、年齢は75歳。本来の所属先である研案塔にいることは少なく、よく「輪」の貳號艇(にごうてい)に搭乗している。好々爺然としていて、また紳士的であるので男女問わず人気があり多くの「輪」関係者から慕われている。與儀からは「じーちゃん」と呼ばれている。
玩目 (がんま)
研案塔に所属する男性で、年齢は23歳。服装は男性のそれだが、女性のような喋り方をする。研究塔に配属された花礫の直属の上役となり、特例的な措置で抜擢を受けたことから基礎的な教育などを欠いている花礫に対してスパルタ的な態度で接する。
糺 (あざな)
研案塔に所属する男性研究員で、年齢は23歳。燭の近くに配属されていた。能力者によって肉親を皆殺しにされた過去があり精神的に不安定で、そこを「火不火」につけこまれて内通、燭の命を狙うが失敗。のちに「火不火」に参加する立場となった。
ツバメ
カラスナの街の出身で、花礫の幼なじみの少女。年齢は15歳。姉と弟がいたが、いずれも能力者と関わったことで命を落としたため、「火不火」に憎しみを抱くようになった。その後「輪」に保護され、またその一員となるべく、養成学校クロノメイに入学する。
蘭二 (らんじ)
クロノメイに在籍し、生徒代表(フェアータ)を務めている18歳の男子。趣味は「可愛い女性ファッションの追求」で、夜間に男子寮にいるとき以外は常に女装しており、髪型も女の子風であるが、校則に女装してはならないという規定はないので問題はない、と主張する。その趣味だけを除けば立派な指導力を秘めた優れた学生であり、本人も将来は執政塔のトップを目指している。
獅示 (しし)
クロノメイに在籍する男子で、年齢は18歳。花礫が一時期クロノメイに在籍していた頃、そのルームメイトであったが、他人に深入りしない性格であるので、格別仲は良くも悪くもなかった。蘭二に顎でこき使われる立場であり、反抗の意思がないわけではないがそれでも頭が上がらない。
セセリ
クロノメイに在籍する女子で、年齢は17歳。「管理情報コース」に所属しており、「情報官(シーバ)」と呼ばれる学園の記録係で、普段はストーカーまがいの活動をして花礫の怪しい写真を撮り貯めたりしているが、それも将来的に情報関係の任務に就くための修行の一環である。
リシアナ
「輪」の闘員である若い女性。組織構成上は壱組に属しているが壱號艇(いちごうてい)の搭乗員ではなく、クロノメイ専従という特殊な立場にいる。クロノメイの警護の要であり、隆が主導したクロノメイ襲撃事件に際し活躍した。腕輪は右の太ももに隠すような形で着けている。
エリシュカ
パルネドの孫娘である令嬢で、年齢は14歳。嘉禄、あるいはもう一人の嘉禄に対して夢中であり、恋人になってもらうために必死の努力を繰り広げている。ただし、嘉禄が2人いるという事実は知らない。性格はわがままで、嘉禄が自分以外の対象に関心を示すと露骨に不機嫌になる。
マナイ
レーベルガンゼという土地で「輪」に保護された少女。マナイとはリムハッカに咲く花の名である。大きな障害を負っていて、義肢を付けている。その正体は死んだものと思われていた與儀の妹、リムハッカ第一王女ミュウマリイ姫。
嘉禄 (かろく)
无、そして「火不火」と深い関わりを持つ青年で、年齢は18歳。「煙の館」における「火不火」と「輪」の決戦以来、「輪」の保護下に置かれている。本名は「嘉禄・アルメリタ」で、父親は「仁水(にす)・アルメリタ」、母親は「ベニエ・アルメリタ」。アルメリタ一家はもともと「火不火」の創設時からの幹部であったが、組織の変質についていけなくなり一家揃って逃走、各地を移り住む中で嘉禄はまだニジだった頃の无と出会った。
ニャンペローナ
「輪」の貳號艇(にごうてい)の公式マスコットキャラクター。二足歩行の猫の姿をしている。貳號艇にはニャンペローナの着ぐるみがあり、たいていは與儀が中に入って演技をしている。人気キャラクターであり、ニャンペローナを主人公にした絵本なども出版されている。
八莉・リンダイン (やなりりんだいん)
「リンダイン・グループ」の社長令息で、年齢は9歳。年の割に非常に理知的であり、トラブルに巻き込まれて誘拐されかけた時に无と花礫に助けを求め、その後友人となった。上流社会のよしみでエリシュカと嘉禄の関係について小耳に挟んだことがあり、その情報を「輪」に提供することになる。
黒白 (うろ)
「火不火」の幹部の男性で、年齢は26歳。表の顔はレガイツ研究所の専務理事であり、またパルネドの主治医でもある。嘉禄とエリシュカの世話係を務めていたが、「煙の館」における「火不火」と「輪」の決戦の後左遷され、隆にその地位を奪われた。隆の死後、もう一人の嘉禄のもとに現れ、「火不火」の幹部として復帰する。
夏切 (かぎり)
「火不火」のメンバーで、黒白に仕える18歳の男性。黒白に対し怯えのような感情を抱いているが、一方で尊敬してもいる忠実な部下であり、黒白が左遷されていた間も、左遷先で行動をともにしていた。普段はローテンション。趣味は「輪」のグッズを集めること。
麒春 (きはる)
「火不火」のメンバーで、黒白に仕える男性。年齢は17歳。ノリのまま勢い任せに生きていて、黒白から人目につくなと命じられているにも関わらず、派手なファッションとメイクを好む。しかし黒白のことは尊敬していて、黒白が左遷されていた間も、左遷先で行動をともにしていた。
隆 (りゅう)
「火不火」の幹部。普段は人間の男性の外見をしているが、その正体は異形の姿を持った能力者。「火不火」と「輪」の決戦の後で、左遷された黒白に代わってエリシュカの世話係を務めるようになったが、粗野な性格でありエリシュカから嫌われている。クロノメイ襲撃事件の指揮を取ったが、戦いの中で戦死した。
パルネド
ガルド社のCEOを務める老人で、エリシュカの祖父。年齢は72歳。公にその存在を知られた人間でありながら「火不火」と深い関わりを持っており、「輪」や政府から久しくマークされているが、決して尻尾を掴ませることのない狡猾な老人。
化色 (けしき)
「火不火」の幹部。青年のような姿をしているが、実際の年齢などは不詳。隆の上司であり、隆に極小の群体型の能力軀を操る能力を与えた。しかし「輪」との戦いで隆が死亡した後もたいして気にした風を見せるでもない、非情な人物である。
もう一人の嘉禄 (かろく)
嘉禄とまったく同じ姿を持ち、そして記憶さえも共有している謎の存在。「煙の館」における「火不火」と「輪」の決戦に際し、2人の嘉禄が姿を現したが、その場から行方をくらませ、その後も「火不火」の幹部として活動している方が「もう一人の嘉禄」である。エリシュカに懐かれている。左の頬に花礫に銃で撃たれた時の傷痕があり、それをあえて治療せずに残している。
集団・組織
輪 (さーかす)
ガルメディア連合国家に所属する警察機構。正式名称は国家防衛機関「輪」。壱號艇(いちごうてい)に搭乗する「壱組」、貳號艇(にごうてい)に搭乗する「貳組」は、対・能力者専門の部隊であり、特に「闘員(とういん)」と呼ばれる戦闘要員たちは、「葬送」と呼ばれる能力者たちの抹殺、そして能力者たちの背後にある組織「火不火」の壊滅を任務とする。 参號艇(さんごうてい)以下は通常の治安組織として活動している。
壱組 (いちくみ)
貳組とともに「葬送本團」を構成する、「輪」の壱號艇(いちごうてい)のメンバーの通称。壱號艇(いちごうてい)の艇長を務めるリーダーは朔で、闘員として喰、キイチらが所属している。壱號艇の羊は、みな白い色をしている。大きな作戦などの時には貳組と行動をともにする。
貳組 (にくみ)
壱組とともに「葬送本團」を構成する、「輪」の貳號艇(にごうてい)のメンバーの通称。貳號艇の艇長を務めるリーダーは平門で、闘員として與儀、ツクモ、イヴァらが所属している。貳號艇の羊は、みな黒い色をしている。无はここで保護されている。
羊 (ひつじ)
「輪」の壱號艇(いちごうてい)と貳號艇(にごうてい)にいる、羊のぬいぐるみのような姿をした群体型のロボット。本来は艇の護衛システムであるので戦闘能力を持っているが、掃除、備品の修理や交換、果ては搭乗員たちにお茶汲みをしたりモーニングコールをしたりと、かなりの万能ぶりを誇る。
火不火 (かふか)
万能細胞「インキュナ」を悪用し、能力者たちを産み出す研究をしている集団。その実態は巧妙に隠蔽されており、誰が指導者であるのかも分からないが、パルネド、化色、もう一人の嘉禄らが最も中枢に近いところにいる幹部であると目される。
場所
カラスナ
花礫の育った街であり、无と花礫が出会った場所。「幻燈の街」という洒落た異名を持つが、街の大半がスラム街であり、治安はかなり悪い。以前、嘉禄らアルメリタ一家が「火不火」の追っ手を逃れて隠れ住んでいたこともある。西にニジの森がある。
研案塔 (けんあんとう)
世界中の医師や研究者が集う、「連合国家防衛機関」の一角をなす研究所。かつては「輪」とは犬猿の仲であったが、5年前に時辰が「輪」の指導者となって以降、関係改善が進んでいる。なお、「火不火」の中核メンバーはかつて研案塔に所属していた人々であると見られている。
ヴィント
「刻む湖」の異名で知られる、政府の保護区域。様々な希少生物が暮らしている。遥か昔の造山運動と風の浸食によって、独特の地形が形成されており、時には古い地層から古代生物が蘇ることもあるという。万能細胞「インキュナ」はこの地の生物から発見された。
煙の館 (けむりのやかた)
パルネドが所有する屋敷で、「火不火」の重要拠点の1つ。過去に政府による手入れを受けたこともあるが、証拠を掴むことができなかったため、監視下に置かれるに留められていた。无がここにいる嘉禄からのSOSを受けたために「輪」が襲撃するところとなり、黒白の率いる「火不火」との決戦の舞台となった。
庭 (にわ)
もう一人の嘉禄が造り出す謎の異空間。嘉禄と同じ細胞を持たない者は、この中で10分間と生存することができないとされるが、「煙の館」における「火不火」と「輪」の決戦に際し、无と花礫は嘉禄とともにここから生還している。
クロノメイ
ガルメディア連合国家の政府要員養成校。一度入学すると厳しい情報統制のもとに置かれ、途中退学することは許されず、また卒業後は必ず政府に関連する仕事に就かなければならない。ツクモ、キイチらはクロノメイの出身であり、「輪」の闘員になることを望むなら基本的にはここに入学する以外のルートはない。花礫が一時在籍し、寮で暮らしていた。 校長の名は「カルスタイン」という。
リムハッカ
與儀の出身の王国。11年前、「火不火」によって征服され、ガルメディア連合国家とは国交がなかったため救援が遅れてしまい、わずかな生き残りを除いたほとんどの国民が能力者を産み出すための実験に使われて皆殺しの目に遭って、事実上滅亡した。
その他キーワード
腕輪 (ぶれす)
インキュナが組み込まれている特殊な武器。適合する人間が用いると、それぞれの適性に沿った形の何らかの武器などに変型する。腕輪から作られた武器は、他の人間が持ってもすぐに崩壊してしまう。无は当初、嘉禄のものであるとされる腕輪を所持していたが、それは前世代の古いモデルで、現在は使われていないタイプのものであった。
インキュナ
ヴィントで発見された、特殊な力を持った「万能細胞」。生物の中に入り込み、強力な力を持った怪物、すなわち能力者や能力軀に変貌させる性質を持つ。これをコントロールするための手段として唯一知られているものが腕輪であるが、腕輪によってインキュナの力を使いこなすためには常人にはない特殊な適性が必要である。
能力者 (ゔぁるが)
インキュナを埋め込まれ、特殊な力を獲得した人間。「火不火」の幹部たちのように、何らかの手段でインキュナをコントロールしながら能力者となった者たちも存在するが、ほとんどの能力者は「火不火」によって強制的に姿を変えられた存在であり、後者を特に区別する場合には昇能者(しょうたいしゃ)とも呼ばれる。なお、人間に戻す手段は発見されていない。
能力軀 (のうりょくたい)
インキュナを埋め込まれ、特殊な力を獲得した動物。もとになった動物の種類などによって、その性質、戦闘能力の強弱などは様々であるが、ほとんどの能力軀は知性も持たず、能力者たちによって使役されるだけの存在である。
ユッキン
機械塔という機関が開発したロボット。雪だるまの形をしているが、温かい。寒冷地での任務のため、主に暖房器具として用いられる。自走能力はあるが、「ユッキン」としか喋ることができない。のちに改良され、暑い場所用の冷却モードも実装された。
ニジ
大きめの兎くらいの大きさで、小さな角と毛を持つ動物。個体数が極めて少なく、生息地も限られており、保護観察生物に指定されている。また、擬態能力を持っているため、発見することが難しい。生態については謎が多いが、音に敏感な動物であり、閉鎖環境で飼育することは困難であるとされている。虫を好んで食べる。
名告り (なのり)
「輪」の闘員たちが用いる、戦闘開始時の決め台詞。アドリブで喋っているわけではなく、闘員ごとに固有の名告りが決められていて、基本的には闘員として本採用された時に自ら申請したものを使用する。ただし、與儀は自分の名告りを自分で思いつかなかったので、平門が考えたものを用いている。
闘員医術師 (とういんいじゅつし)
戦闘と仲間の治療とを同時にこなす職務を担う「輪」の構成員として現在構想されている新しい職業。時辰の肝煎りで現在配備に向けた研究が進められており、花礫がその第1号となるべく、研案塔に所属して修行の日々を送る。