概要・あらすじ
傍若無人なその性格によって、相撲界からヒール力士として扱われている栃の嵐は、パワフルな相撲で連勝を重ね、ついに横綱に昇進する。しかしその夜、いじめを苦に歩道橋から身を投げた赤城まことという少年と、心が入れ替わってしまう。貧弱な身体になってしまった栃の嵐だったが、まことが通っていた花山高校相撲部で荒波に揉まれることで、強敵に立ち向かう喜びを覚えるようになっていく。
登場人物・キャラクター
栃の嵐 (とちのあらし)
西陽川部屋に所属する力士。力技で勝利をもぎ取り、大関まで昇進しているが、その傍若無人な性格から、相撲関係者やファンからは大いに嫌われている。しかし、相撲をはじめとした格闘技への強い情熱に溢れており、あらゆる努力を惜しまない。横綱昇進が決まった夜、歩道橋から飛び降りた赤城まことと心が入れ替わってしまい、彼の代わりに高校生活を送ることとなる。 まことが所属していた相撲部でもその性格からトラブルを引き起こすが、まことの身体で相撲を取ることで、勝利する喜びを覚えていく。また、強敵との戦いで不屈の精神力と培ってきた勝負勘を発揮して、まことを軽んじていた花山高校相撲部の部員たちからも一目置かれるようになっていく。
赤城 まこと (あかぎ まこと)
花山高校相撲部に所属する1年生。貧弱な身体と気の弱さを持つ。先輩からいじめに等しいしごきを受け、失意のあまり自殺をしようとするが、栃の嵐と心が入れ替わってしまう。しばらく意識不明の状態が続いていたが、やがて目覚めてからは、部員に稽古をつけるという名目で花山高校に通うことになる。そのなかで、本気で戦う力士や、貧弱なまことの身体で次々に強敵を倒していく栃の嵐の姿を目の当たりにすることで、相撲に対する熱意と、努力の大切さを学んでいく。 さらに、稽古を課しつつエールを送ることで、部員たちの心のよりどころとなっていく。
赤城 アキ (あかぎ あき)
赤城まことの姉。空手二段、柔道二段の腕前を持つ武闘派少女。奔放な性格で、家族にあまりいい感情を抱いておらず、まことに対してもきつく当たっている。まことが入れ替わった事実を知ると、彼らをゆすることで、栃の嵐が稼いだお金を我が物にしようとする。なお、入れ替わった事実を知っているのは当人同士を除くと彼女のみである。
トモちゃん
花山高校に通う、赤城まことの幼なじみの少女。かつて中学校ではまこととともにブラスバンドに所属していた。料理が上手で性格も良く、栃の嵐や赤城アキにも気に入られている。しかし本人は相撲部を良く思っておらず、まことと入れ替わった栃の嵐に対し、退部するように勧めている。
北村 大善 (きたむら だいぜん)
花山高校相撲部主将。ストイックな性格で、自分にも他人にも厳しい。赤城まことの入れ替わりの事実を知らないため、豪田に対して一歩も引かず食い下がった栃の嵐の意識が宿ったまことに期待をかけるようになり、さらなる成長を促すためさまざまな試練を課す。また、まことが栃の嵐に育て上げられたと考えており、まことの意識が宿る栃の嵐自身にもしだいに敬意を表するようになる。
中村 一郎 (なかむら いちろう)
花山高校相撲部に所属する2年生。卑屈な面があり、自分が北村大善や沖田さゆりなどに遠く及ばないというコンプレックスを抱いている。赤城まことをいたぶることでうっぷんを晴らしていたが、栃の嵐の意識が宿るまことが活躍するようになると、彼に対する認識を改めていく。また、地区予選でレギュラーに選ばれたことにより、卑屈な性格も徐々に変化を見せるようになった。
沖田 さゆり (おきた さゆり)
花山高校相撲部に所属する2年生。小さな頃は身体が弱かったが、現在は大柄かつ力持ちで、部活内でもひときわ目立っている。北村大善にも一目置かれており、地区予選においてはレギュラーを獲得。中堅として、強豪校の力士たちと渡り合った。
加賀 浩之 (かが ひろゆき)
トモちゃんの従兄弟にあたる高校生の少年。今時の若者らしい風貌をしており、軽薄な一面も見受けられるが根は真面目な性格。幼い頃から相撲を取っており、トモちゃんと恋人同士だと誤解した栃の嵐に因縁を付けられるが、逆に返り討ちにしてしまう。その際、彼のセンスに興味を抱いた栃の嵐から、花山高校相撲部に誘われることとなる。
砂田 正美 (すなだ まさみ)
私立雷高校相撲部の顧問。権力をかさに着てやりたい放題している、いやみで器量の小さい男。かつて西陽山部屋に所属しており、栃の嵐の兄弟子だった。しかしその頃から性根は歪んでおり、栃の嵐に対しては今でも逆恨みに等しい感情を抱いている。
新田 準也 (にった じゅんや)
私立雷高校相撲部に所属する2年生。傲慢な男でプライドが高く、花山高校相撲部の部員を公然と侮辱し、内心では主将の豪田も見下しているが、恵まれた体格でその実力も確か。また、砂田正美に対しては敬意を抱いている。かつて新人戦の決勝で沖田さゆりと対戦し、彼に勝利している。
豪田 (ごうだ)
私立雷高校相撲部主将で3年生。新田準也すら凌駕する筋力と体格を持ち、個人で全国大会2年連続優勝の実績を残している。北村大善とはライバル関係にあり、かつて腕1本を引き換えに見事に勝利している。勝負にまぐれなどないという持論を持ち、雷高校における練習試合で活躍を見せた栃の嵐に強い興味を抱く。
珠緒 (たまお)
トモちゃんの友人。料理が得意で一途な性格の少女。相撲については詳しくないが、相撲部での練習を見ているうちに北村大善に好意を抱く。その後はトモちゃんの後押しによって北村に告白し、晴れて恋人同士になる。それからはトモちゃんとともに弁当を作るなどして、相撲部をサポートしている。
末次 (すえつぐ)
咲島高校相撲部に所属する少年。関川とは彼が幼い頃からの知り合いで、かつては父子家庭で育ち、貧しいながらも心優しい少年だった。しかし貧乏という理由から、中学でひどいいじめを受ける。豪田の力を目の当たりにし、彼のような力を強く求めるあまり、性格も歪んでしまう。
関川 (せきかわ)
咲島高校相撲部顧問。眼鏡をかけた、白髪の温和な男性。昔から末次のことを知っており、何かと気にかけているが、変貌した彼には軽んじられている。怒りを原動力としている末次の相撲の危うさを危惧しており、何とか元の優しい末次に戻って欲しいと強く願っている。
野島 (のじま)
栃の嵐の元先輩。「ベリーグッド」が口癖の男性。部屋こそ違うが栃の嵐に「ノジさん」と呼ばれ慕われている。かつて平幕優勝を2回達成しており、関脇まで上り詰めた。小指に大きな傷があるが、これこそが彼の強さの秘密であり、自らと同じ戦法を使わせるべく、息子の野島さとしを鍛え上げる。
野島 さとし (のじま さとし)
野島(ノジさん)の息子。相場高校相撲部に所属している。相撲に精を出すかたわらでバンド活動も行っており、「キース」という芸名を持つ。小指にノジさんと同じ傷があるが、これはまわしをひっかける鉤爪の役割を果たしており、これを活用することで豪田さえも窮地に追い込む。
ブライアン
相場高校相撲部に所属する、アメリカ人の少年。デトロイトで高校ボクシングのチャンピオンに輝いた実績を持つ。しかし、突っ張りに魅了されたことで、相撲界に転向したという変わった経歴の持ち主。花山高校相撲部との地区予選準決勝では加賀浩之と先鋒戦を争った。
ミッシェル
相場高校相撲部に所属する、外国人の少年。何故か名古屋弁を好んでしゃべり、客人にはういろうを振る舞っている。ひょうきんな性格だが土俵上では屈指のパワーファイターで、凄まじい勢いのぶちかましを得意としている。花山高校相撲部との地区予選準決勝では、次鋒戦で中村一郎と対戦した。
ビル
相場高校相撲部に所属する、黒人の少年。日本語は不得手なのか、一言もしゃべらない。とんでもない巨体で、彼が四股を踏むと砂煙が巻き起こるほどである。花山高校相撲部との地区予選準決勝において、中堅戦で沖田さゆりと対戦した。巨体同士の一戦となり、観客からは特撮映画と評された。
カール
相場高校相撲部の主将を務める、ドイツ人の少年。武士道精神に憧れており、サムライは好きだが日本人は嫌いらしい。野島さとしのことを本物のサムライと認めており、彼とは深い友情で結ばれている。ドイツのアマチュアレスリング界において、何人もの有望選手をタックルで砕き、「フルヒトバールアクスト(恐るべき斧)」と呼ばれている。
集団・組織
西陽川部屋 (にしひやまべや)
栃の嵐が所属する相撲部屋で、赤城まことが住む家の隣にある。練習の掛け声が騒音となり、まことの家族に迷惑をかけている。所属する力士は栃の嵐に理解を示しており、彼が横綱に昇進した時もパーティーを開き、大いに盛り上がった。
花山高校相撲部 (はなやまこうこうすもうぶ)
赤城まことが通う高校。のちに赤城まことの意識が宿った栃の嵐の稽古を受けることとなる。北村大善の実力こそ飛びぬけていたが、層の薄さに問題があり、私立雷高校相撲部には取るに足らない存在だと思われていた。しかし、赤城まことや加賀浩之の台頭により一気に強豪に生まれ変わり、私立雷高校相撲部打倒と全国出場を目指すこととなる。
私立雷高校相撲部 (しりつかみなりこうこうすもうぶ)
県内随一と名高い名門相撲部。主将である豪田をはじめとした精鋭が集っている。全国大会団体優勝6回、個人優勝8回の実績を持ち、今年最も優勝に近いといわれている。花山高校相撲部との合同稽古中、栃の嵐の意識が宿った赤城まことの言動が顧問の砂山正美を激昂させてしまい、花山高校を仮想敵とみなすようになる。
坂谷高校相撲部 (さかやこうこうすもうぶ)
地区予選1回戦における、花山高校相撲部の対戦相手。生徒たちのモラルは非常に低く、花山高校相撲部とはまともに試合するつもりがない。そのうえ花山高校相撲部員の腕を折れば大学の推薦枠を譲渡するという砂田正美の卑劣な試みに乗り、すべての部員が試合中にそれを目標とした。
咲島高校相撲部 (さきじまこうこうすもうぶ)
地区予選2回戦における、花山高校相撲部の対戦相手。部員は努力家だがハングリー精神に欠けており、末次から見下されていた。しかし、末次が試合で必死な様子を見せることに感化され、末次自身も次第に咲島高校相撲部に仲間意識を抱くようになっていく。
相場高校相撲部 (あいばこうこうすもうぶ)
地区予選準決勝における、花山高校相撲部の対戦相手。野島さとし以外のレギュラーがすべて外国人で構成されているため、「高校相撲界の多国籍軍」と呼ばれている。1人1人が凄まじい実力を誇り、地区予選では花山高校相撲部と試合するまで無敗で通している。そのため、ファンが非常に多く、入場の際には割れんばかりのコールが鳴り響く。