概要・あらすじ
山師の札貫一家の邸宅は「ガラス屋敷」と呼ばれていた。その屋敷の中では、主の札貫礼蔵が、冷凍睡眠を家族に強行して眠らせ、息子の札貫四郎に冷凍室の管理を任せていた。20年後、四郎は管理を交代してもらうため、冷凍睡眠中の兄、札貫一郎を目覚めさせる。だが、望まぬ冷凍睡眠で時を無為に過ごした一郎は反発し、自身の失われた時間を取り戻そうと奔走する。
そして彼の行動が、大きな争いの火種となるのであった。
登場人物・キャラクター
札貫 一郎 (ふだぬき いちろう)
札貫家の長男。冷凍睡眠により年を取らずに過ごしたため、外見は24歳のままである。冷凍睡眠を押し付けた父親の札貫礼蔵を憎み、殺害。姪の札貫真理と肉体関係を持ったことで真理の父親、札貫四郎に殺されそうになるが、逆に四郎を殺害する。殺人法により死刑囚となる。
札貫 真理 (ふだぬき まり)
札貫四郎の娘で札貫一郎の姪。一郎と肉体関係を持つ。一郎が死刑囚となった後も彼を愛し続け、彼と行動を共にしていたヒルンに刺される。
札貫 四郎 (ふだぬき しろう)
札貫家の次男で札貫真理の父親。彼は冷凍睡眠で眠っていないので42歳である。20年前、自身の父親の札貫礼蔵に冷凍室の管理を任された。兄である札貫一郎を殺そうとするが、逆に殺害される。
札貫 礼蔵 (ふだぬき れいぞう)
20年前、冷凍睡眠を家族に押し付けた。当時の年齢の50歳のままだが、ボケてしまい孫である札貫真理を襲おうとした。札貫一郎により殺害される。
ヒルン
海底のカプセルの中で2000年もの間眠っていた謎の女性。脳細胞が退化しており赤ん坊ほどの知識しかない。札貫一郎に執着しており、彼の周りにいる人物を殺してでも排除しようとする。特に札貫真理に対する憎しみは強烈。
その他キーワード
冷凍睡眠 (れいとうすいみん)
1971年に冷凍睡眠による長寿法が開発された。それは「冷凍睡眠カプセル」の中に入って眠っているだけで長生きができ、貯金の利子も増えていくという長寿法だった。しかし翌年の1972年には、この長寿法は禁止されてしまう。戸籍上、死亡したということにして税金をごまかす人が増えたというのが表向きの理由であった。しかし実際は、「冷凍睡眠カプセル」に入ると脳細胞に異常をきたし、人格が破壊される危険なものであるという理由からだった。
殺人法 (さつじんほう)
戦争が起こらなくなった時代に、「人を殺したい」という人間の欲求不満を解消するべく制定された法律。その内容は刑務所が死刑を執行するのではなく、相手が死刑囚であれば、誰でも自由に殺していいというもの。ただし、死刑囚にも逃げる権利はあり、10年逃げ切ることができれば時効になる。