街中で発生する不可解な殺人事件
本作は、排水口に結びつけられた赤い風船に近づいた女性が殺害される事件から始まる。さらに、被害者の自宅で見つかったホラー映画のDVDを再生しようとした警察官も、見えない何者かに命を奪われてしまう。その後、東栄大学の図書館から持ち出された映画を基にした殺人や、動く人形による殺人など、不可解な事件が次々と発生する。黒澤竜胆の周囲で頻発するこれらの不可解な事件に対処するため、警察は映像兵器対策部「シザーハンズ」を設立した。そして彼らは竜胆と共に、殺人事件を引き起こす忌涅魔(キネマ)たちとの戦いに身を投じていく。
忌涅魔(キネマ)は映画の妖怪のような存在
本作には、オノオトコをはじめとする多くの忌涅魔が登場する。忌涅魔とは、ホラー映画監督・ロバート=スカイが製作したホラー映画から生まれた妖怪のような存在。基本的に、彼らは人間の目には見えず、カメラにも映らないが、現れる際には元となった映画に登場する怪物の姿で現れる。人間は、自らの血で元となる映画のマスターフィルムにサインすることで、忌涅魔と「血の契約」を結ぶことができる。この契約を結んだ人間は、忌涅魔と合体する「憑変(クランク・イン)」という状態になる。また、忌涅魔は自らが生まれた映画のマスターフィルムの近くにしか存在できず、そのマスターフィルムが破壊されると消滅してしまう。彼らは「人間に恐怖と不安を与える」という本能に従い、映画の設定に基づいた殺人を繰り返している。
忌涅魔をモチーフにしたホラー映画の世界
本作に登場する忌涅魔たちは、いずれも有名なホラー映画をモチーフにしている。赤い風船を持つ殺人ピエロ、夢の中に現れる殺人鬼、恐ろしい姿の男児の人形、巨大な恐竜、そして井戸から這い出る女性の霊など、これらのモチーフは誰もが一度は目にしたことがある、または名前を聞いたことがある映画ばかりだ。そのため、ホラー映画好きであれば、次にどの映画をモチーフにした忌涅魔が登場するのかを予測したり考察したりしながら、作品をより一層楽しむことができる。
登場人物・キャラクター
黒澤 竜胆 (くろさわ りんどう)
東栄大学に通う男子大学生。年齢は19歳。ホラー映画監督を志し、古今東西のホラー映画に精通した生粋のホラー映画オタク。特殊メイクやCG技術を評価しつつも、本物の恐怖には敵わないと考えており、かねてから本物の化物を使った「最強のホラー映画」を撮影したいと願っている。ホラー映画界の大御所、ロバート=スカイの後継者を自負し、1年間の弟子入り経験もある。ロバートからは、死の直前に「オノオトコ」のフィルムと共に「長編映画として完成させてくれ。君に託す」というメッセージを受け取った。フィルムから実体化したオノオトコが現れた際も、竜胆はいっさい恐れることなく、すぐに撮影を開始しようとした。しかし、『THAT』に登場する殺人ピエロの忌涅魔(キネマ)に瀕死の重傷を負わされたことをきっかけに、オノオトコと血の契約を交わすことになる。オノオトコの封印を解き、忌涅魔を使った映画を製作するため、黒澤竜胆は忌涅魔との戦いに挑む。
オノオトコ
ホラー映画監督・ロバート=スカイが製作した映画「オノオトコ」から生まれた忌涅魔(キネマ)。妖怪のような存在であり、その姿はふつうの人間には見えず、カメラにも映らない。ウエーブのかかった肩まで伸びた黒髪に、左目と口だけが見える仮面をつけている。オノオトコに関する記憶の一部は封印されており、特にロバートの死因や彼が忌涅魔についてどこまで知っているかは知らない。ふだんは仮面の一部だけの姿となり、黒澤竜胆に持ち運ばせている。首と手足には鉄球と枷がつけられ、封印されているが、ほかの忌涅魔の魂を食らうことでその封印を一つずつ解くことができる。彼は忌涅魔を撮影する方法を知っているため、すべての封印が解かれた際にはその方法を竜胆に教えることを約束している。竜胆とオノオトコの命を狙う忌涅魔・ドクターによれば、オノオトコは忌涅魔を殺すために創造された忌涅魔であるとされている。
書誌情報
キネマキア 4巻 集英社〈ジャンプコミックス〉
第1巻
(2021-10-04発行、978-4088828060)
第2巻
(2022-02-04発行、978-4088830186)
第3巻
(2022-07-04発行、978-4088831688)
第4巻
(2022-10-04発行、978-4088832739)







