あらすじ
街では、長髪美女連続殺人事件や火刑殺人など、数々の難事件が起こっていた。警察の捜査が難航するこれらの事件に対し、街の権力者一族の令嬢である三ノ宮東子は、髪の毛一本から髪の持ち主の詳細情報を読み取る特殊能力を持った美容師、櫛山石尾に協力を要請する。髪に異常なまでのフェティシズムを持つ石尾は、現時点で最高に美しい髪を持つとされる東子の髪をカットするという条件で、その捜査に協力することを承諾する。しかし、事件を起こす犯人たちが所持していたのは、「十角」と呼ばれる特別な凶器ばかりだった。
登場人物・キャラクター
櫛山 石尾 (くしやま いしお)
美容師の男性で、ストレートの短髪をしている。つねに「十角」と呼ばれる特別な凶器の一つ「復元刀」を携帯している。髪の毛に異常なまでのフェティシズムを持っており、毛髪一本から、その髪の持ち主の年齢や性別、身長体重、性格はもちろん、生活の情報まで読み取ることができる特殊能力を身につけている。その能力の噂を聞きつけて、三ノ宮東子から事件解決への協力を求められた。
三ノ宮 東子 (さんのみや とうこ)
街の権力者として知られる、三ノ宮家の令嬢。若い女性で、髪に異常なフェティシズムを持つ櫛山石尾にして「今まで見た中でも最高の髪だ」と評される美しく長い金髪の持ち主。非常に正義感が強く、警察が捜査に難航している事件があると積極的に協力を申し出る。男性的な口調で話し、年上の男性相手にも堂々とした態度を見せる。
時久 計吾 (ときひさ けいご)
町はずれの洋館に暮らしている男性。ウエーブがかった肩までの金髪で白衣を身につけており、左手の甲に大きな十字の傷痕がある。屋敷の地下には世界中の犯罪者が愛用していた凶器がコレクションされ、所狭しと飾られている。
鳥村 遊介 (とりむら ゆうすけ)
信仰心の強い男性。金髪ショートヘアで中性的な顔立ちをしており、両腕に包帯を巻いている。毎日のように廃教会に通い、シスターと会っていた。火刑殺人の犯人ではないかとの容疑がかけられ、早い段階から三ノ宮東子にマークされている。自殺未遂の常習者で、これまで12回もの自殺未遂を繰り返している。
シスター
廃教会で鳥村遊介と会っていた若いシスター。アシンメトリーの前髪にシャギーを入れたボブヘアで、シスター服を身につけている。かつて両親が殺人犯によって殺害されたという過去を持つ。遊介の自殺未遂の現場に何度も立ち会っているが、見守るだけで助ける素振りを見せることはない。
月森 集也 (つきもり しゅうや)
富豪と知られる月森家の令息で、皮膚ポルフィリン症を患っている青年。ウエーブがかった栗色の髪で、言動が非常におっとりとしている。日中は外を出歩くことができず、つねに屋内で過ごしている。櫛山石尾の幼なじみで、昔はよく石尾に前髪をカットしてもらっていた。
集也の父 (しゅうやのちち)
富豪と知られる月森家の主人を務める老齢の男性で、月森集也の父親。年齢は113歳。石のような仮面をつけ、長い白髪を伸ばしている。70年前、大東亜戦争において十角の一つ、吸血針を用いて戦ったことで、常人よりも寿命が延びている。吸血針を誰も使用することがないよう、屋敷の地下に保管している。
その他キーワード
十角 (じゅっかく)
罪を背負った特別な謎の凶器。見た者の悲鳴を封じる能力をはじめ、さまざまな不思議な性能を備えている。櫛山石尾が使用している復元刀を含めて、全部で10個存在しているといわれているが、その形や能力、所在は明らかにされていない。
復元刀 (ふくげんとう)
「十角」と呼ばれる特別な凶器の一つ。大きな理容カミソリの形状で、櫛山石尾がつねに携帯している。人間の首や腕を骨ごと切り落とせる鋭利な刃を持ち、物や生物を切り裂くと痛みは残るものの、しばらくすると元どおりに復元する能力がある。
吸血針 (きゅうけつばり)
「十角」と呼ばれる特別な凶器の一つ。月森集也の屋敷の地下室に、巨大なガラスケースに入れて保管されている。手甲付きの手袋で、手甲からは二本の針が飛び出している。吸血針に他人の血を吸わせることで、使用者の寿命を遺伝子構造上の限界まで伸ばす能力がある。
長髪美女連続殺人事件 (ちょうはつびじょれんぞくさつじんじけん)
長髪の美女ばかりが連続で殺害された事件。最初の犠牲者は30歳の女性で、全身を16か所切り裂かれ、髪の一部が持ち去られていた。その後も同様の手口で犯行が続くが、五人目の被害者だけが、髪以外に左の手首から先も持ち去られている。
火刑殺人 (かけいさつじん)
凶悪殺人犯のみを狙った連続殺人事件。殺害方法は被害者を火力発電所並みの高温で生きたまま焼き殺すというもので、被害者は12人にのぼっている。ただし、現場にはガソリンなど引火物の痕跡がいっさいないことから、捜査が難航している。