キバの紋章

キバの紋章

父親は極刑を待つばかりの死刑囚、そして母親は自殺。孤独の身となり、虚無感にさいなまれた一人の少年が、彼の遺産を狙う親族との争いに巻き込まれ、やがて意外な結末を迎えるまでを描いた骨太でハードな、昭和の青春ストーリー。

正式名称
キバの紋章
ふりがな
きばのもんしょう
作者
ジャンル
青春
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あらすじ

第1巻

ある日、刑務所を訪問した狂児は、死刑囚である狂児の父親に面会する。平日の日中に刑務所を訪れた狂児の神妙な態度を訝しがった父親に対し、狂児は狂児の母親が朝方電車に飛び込んで自殺した事を告げる。ショックを受けた父親を残して帰宅した狂児は、通夜の席で親族の相手をするが、弔問にやって来た見知らぬ男性が、狂児とサシで話す事を要求。これを承諾した狂児に対し、かぐら獅子と名乗るその男性は、自分の目的が狂児を殺す事にあると宣言。ドスを振りかざして勝負を仕掛けてくる。しかし、狂児はボディブローの一撃でこれを撃退。狂児の底知れぬ強さに感服したかぐら獅子は、狂児を試した事を謝罪したうえで、自分が狂児の父親と母親に借りがあり、自分の命を狂児のために使う事を宣言する。その夜、寝ようとした狂児の部屋にいずみと名乗る謎の女性が忍び込み、言葉巧みに狂児の心を揺さぶってくる。しかし、いずみの目的が狂児の篭絡にあると見抜いた狂児は、逆にいずみをベッドへと誘い込むのだった。翌朝、目を覚ました狂児は、いずみを刺客として送り込んだ狂児の伯父への報復を決意し、彼の屋敷を訪問する。狂児の遺産を狙っていた伯父は、まむしという凶悪な用心棒をさし向け、狂児を屈服させようとする。狂児は、まむしの狂気に満ちた攻撃のまえに苦戦を強いられるが、戦いの中でまむし以上の狂気を発揮して反撃に転じ、まむしを徹底的に叩きのめす。バイクで伯父を追いつめた狂児は、伯父の息の根を止めようとするも、すんでのところでかぐら獅子に止められてしまう。怒った狂児は、ドスでかぐら獅子を刺し殺そうとするも、わざと刃をその身で受けたかぐら獅子を見て、正気を取り戻すのだった。重傷を負ったかぐら獅子は九死に一生を得るが、狂児は強烈な敗北感を感じ、打ちひしがれてしまう。その姿を見たかぐら獅子は、狂児に対し闇縛りと呼ばれる荒行を行う事を提案する。

第2巻

1か月間の孤独に耐え、無事に闇縛りを成功させた狂児。しかし、いずみによる祝いの宴を受けたあとに狂児が見たのは、入院中に様態が悪化して命を落としたかぐら獅子の遺影だった。狂児は、いずみからかぐら獅子と狂児の母親が、かつて恋仲であった事、そしてかぐら獅子の服役中に、かぐら獅子の友人だった狂児の父親と狂児の母親が夫婦になってしまい、かぐら獅子が二人の前から姿を消した、という過去を知らされる。翌日、起床した狂児は、いずみが自宅から姿を消した事に気づく。狂児はいずみを探し、狂児の伯父の屋敷を訪問するが、伯父はいずみはおろか、自分が狂児を襲撃した事すらも知らなかった。動揺する狂児を、屋敷にいた謎の男が諭すものの、狂児は男を鼻で笑い、かぐら獅子が入院していた病院やかぐら獅子を刺した事件を担当した刑事のもとを訪れ、かぐら獅子が実在していた証言を集めようとする。だが、訪問先のどこにもかぐら獅子や事件を知る者はいなかった。ますます混乱した狂児は、父親が収監されている刑務所を訪問。しかし父親は死刑執行のため、東京から仙台まで移送されていた。狂児は仙台へ急行するも、すでに死刑は執行され、父親に会う事は叶わなかった。その後、再び伯父のもとを訪問した狂児は、完全に精神に異常をきたした者として扱われてしまう。しかし狂児は、父親の遺品であるペンダントにかぐら獅子の写真が入っていた事、そしてはぐれ狼という謎の男が、かぐら獅子しか知らない「キバ紋」という自分のあだ名を使った事から、一連の出来事が自分を騙すための芝居である事を看破する。自身の屋敷にやって来た伯父達の前で屋敷に火をつけた狂児は、証拠を突き付けて彼らの企みを吐かせようとするが、その過程で、狂児は自分が記憶喪失の殺人者であり、身代わりとして父親が死刑囚になったという衝撃の事実を思い出す。伯父といずみは、チンピラを殺害した後に記憶を失って精神に異常をきたし、病院か少年院へ送られそうになっていた狂児を助けるため、遺産を狙うふりをして追いつめるという荒療治によって、再び元の狂児に戻そうとしていた事を告げるのだった。

登場人物・キャラクター

狂児 (きょうじ)

頭を丸刈りにしている少年。飄々として優しく、繊細な性格をしているが、凶暴で荒っぽい面も同居している、やや情緒不安定なタイプ。裕福な家庭の育ちだが、非常に喧嘩が強く、腕っぷしはプロの用心棒にも負けないほど。父親が殺人の罪で死刑囚となってしまい、さらに母親が自殺した事で孤独の身となる。その後、狂児の伯父に遺産を狙われ、血で血を洗う抗争へと巻き込まれてしまう。 通夜の夜にいずみを刺客として送って来た伯父に報復するため、用心棒のまむしを叩きのめし、伯父の命も奪おうとするが、父母の旧知の男性であるかぐら獅子に体を張って止められる。無抵抗のかぐら獅子に重傷を負わせてしまった事に敗北感を覚え、闇縛りに挑んで己の精神を叩きなおそうとするなど、凶暴さに似つかわしくない責任感の強さも持ち合わせている。 かぐら獅子からは、生まれながらに牙を持つ者として、「キバ紋」というあだ名で呼ばれていた。実はバイク事故を発端としたトラブルで、チンピラを三人殺害した過去を持つが、本人はすべての記憶を失っており、情緒不安定な事も、その時のトラブルが大きく影響している。

かぐら獅子 (かぐらじし)

背の低い中年の男性。本名は不詳。肝っ玉が据わった強面の喧嘩自慢で、すばやいドスさばきを見せる事から、「ドスのかぐら」の異名を持つ。狂児の母親の通夜の席にやって来て、狂児にサシの喧嘩を挑んだが、狂児に敗北を喫する。その後、自分が狂児の父親と母親に世話になった者である事を明かし、借りを返すという理由で、孤独な狂児のために己の命を使う事を宣言する。 過去に狂児の母親とは恋仲だったが、自身の服役中に友人である狂児の父親と母親が夫婦になってしまったため、二人の前から姿を消した過去を持つ。狂児と狂児の伯父の争いに割って入り、狂児の目を覚まさせるためにあえてその身をドスにさらして重傷を負う。狂児が闇縛りを遂行中に様態が悪化して命を落とした。 実は、狂児の伯父やいずみとはもともと知り合いで、殺人を犯したあとに記憶を失った狂児のために、狂児の伯父達と演技をして狂児を追いつめるという荒療治によって、以前の狂児に戻そうとしていた。

いずみ

喪服を着ている美しい女性。本名は不詳。狂児の伯父に借金をしており、雪だるま式に膨らむ負債に縛られて、バー「いずみ」の雇われママをする事になった。狂児の遺産を狙った伯父の命令を受け、狂児の寝室に忍び込み、彼を骨抜きにしようとするが失敗する。その後は、孤独な狂児のために尽くすようになる。狂児にとっては姉のような恋人のような存在となる。 実は一連の行動はすべて演技にすぎず、殺人を犯したあとに記憶を失った狂児のため、伯父やかぐら獅子達と結託して演技をし狂児を追いつめるという荒療治を施す事によって、以前の狂児に戻そうとしていた。狂児が記憶を失う前の姿に戻ったのを見届けたあと、いずこかへ姿を消す。

狂児の伯父 (きょうじのおじ)

狂児の父親の兄で、狂児にとって伯父にあたる男性。本名は不詳。豪邸に住んでいる銭ゲバのやくざ者で、「ムカデ商事」という会社を経営している。通り名は「ムカデ」。狂児の母親が亡くなった際の通夜で狂児の屋敷を訪問したが、それは遺産を狙っての事だった。借金で縛った女性いずみを狂児のもとに送り込み、骨抜きにしようとするも失敗する。 報復に来た狂児を用心棒のまむしと戦わせ、半殺しにしようとしたが、これも失敗し、バイクに乗った狂児に殺されかける。実は、一連の行動は殺人を犯したあとに記憶を失った狂児のための演技で、いずみやかぐら獅子達と結託して狂児を追いつめるという荒療治によって元の狂児に戻そうとしていた。狂児が記憶を失う前の姿に戻った事に安堵し、静かに彼のもとを去る。

まむし

狂児の伯父の屋敷で用心棒をしている男性。本名は不詳。頭頂部が禿げ上がっており、鋭い目つきをしている。伸縮するベルトを自在にあやつり、離れた場所から対象を存分に痛めつける事ができる凄腕の持ち主。血を見ると理性を失ってしまう非常に危険なタイプ。狂児の伯父の命令で屋敷にやって来た狂児を半殺しにしようとするが、返り討ちに遭い、戦闘不能に追い込まれる。 次に狂児と再会した時は、ごく普通の使用人となっており、狂児を混乱させる。

はぐれ狼 (はぐれおおかみ)

テンガロンハットをかぶり、右目に眼帯をしている謎の男性。本名は不詳。狂児が姿を消したいずみを探している際に狂児の伯父の屋敷で出会い、以後狂児のあとをついて来るようになる。いずみやかぐら獅子の事を誰も知らないという異常事態に混乱した狂児を、まるで見守るかのような態度で諭していた。実は狂児の伯父やいずみの協力者で、狂児を記憶を失う以前の状態に戻すために行動していた。

狂児の母親 (きょうじのははおや)

狂児の実母。本名は不詳。死刑囚となった夫に定期的に面会に行っていたが、ある雪の朝に電車に飛び込んで自殺した。かつてかぐら獅子と恋人同士だったが、かぐら獅子が収監されているあいだに狂児の父親といっしょになった。

狂児の父親 (きょうじのちちおや)

狂児の実父で、殺人の罪で収監された死刑囚。本名は不詳。死を待つばかりの状況でも超然としている強者だが、面会に来た狂児から妻が自殺した事を知らされ、激しく動揺する。実は、トラブルでチンピラを三人殺害してしまった狂児の身代わりに罪をかぶり、死刑囚となった。

ユキ

喫茶店でアルバイトをしている女子高校生。ショートカットの髪型をしている。店の常連である狂児に恋愛感情を抱いており、母親を失った狂児にさりげなく優しい態度を示す。狂児もそれに気が付いているが、最後まで彼女の気持ちに応える事はなかった。

トコ

狂児の伯父の娘。まだ年端もいかない少女で、純粋無垢で無邪気な性格をしている。そのため、まむしの攻撃で血まみれになった狂児を見ても、状況がわからずに大はしゃぎしていた。しかし、狂児にトドメを刺されそうになった父親を見た事によって、精神を発狂寸前にまで追い込まれてしまう。

その他キーワード

闇縛り (やみしばり)

1か月ものあいだ、光の入らない真っ暗な部屋の中で一人過ごす拷問の一種。食事は日に3回、適当な時間にランダムで差し入れされる。時間が経つほど、精神が荒み、追い込まれていく荒行。若きかぐら獅子が狂児の母親と別れた際に行っており、酷く落ち込んでいた狂児に対し、あえて闇縛りを行う事を勧めた。

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