月下の一群 PART2

月下の一群 PART2

吉野朔美の初期の代表作『月下の一群』の続編。内気な性格の柿本毬花が、大学生活のなかで徐々に成長していく姿を描いた青春ラブストーリー。「ぶ~け」1983年2月号から11月号にかけて連載された作品。

正式名称
月下の一群 PART2
ふりがな
げっかのいちぐん ぱーとつー
作者
ジャンル
青春
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概要・あらすじ

柿本毬花検見川政親が付き合い始めて5ヵ月。穏やかに関係を育んできた2人だったが、ある日政親の前にベンツを乗り回す美女、佐原主子が現れる。彼女は政親の父親が仕組んだ見合いの相手で、何度も政親に会いにきては、強引に距離を縮めようとする。政親も主子と幼なじみだったことを知り、刹那的な生き方をする主子を気にかけ始める。

毬花はそんな政親に戸惑い、徐々に彼との間に溝を感じるようになっていく。それはやがて、今まで人と関わらないように生きてきた毬花が初めて経験する「嫉妬」という感情へと発展し、耐えられなくなった毬花は政親に別れを切り出してしまう。毬花への想いと主子への責任感の狭間で政親の心は揺れ動く。

登場人物・キャラクター

柿本 毬花 (かきもと まりか)

K大学文学部2年生の女子大生。1浪して大学に入ったため、1学年下の彼氏である検見川政親とは2歳差。内気な性格で弟の柿本慈雨に寄りかかって生きてきたが、政親や閑谷桐子、椿寮の学生たちと出会ってからは徐々に他人にも興味を持ち始める。政親との交際はマイペースすぎて、周囲からは「おもしろいんかね」と訝しがられている。 政親に言い寄る佐原主子に対し、人生で初めての「嫉妬」を覚えて自己嫌悪に陥り、政親に別れを切り出してしまう。何事も「人の3倍かかる」おっとりとした性格のため、母親から心配されている。父親のことが苦手だが、父親もまた柿本毬花のことを苦手としている。

検見川 政親 (けみがわ まさちか)

K大学工学部1年生の青年で、彼女の柿本毬花より年齢が2つ下。大病院の跡取りだが、本人は後を継ぐことを拒否して父親と険悪になり、家出同然で椿寮に入った。絵画の才能を持ち、現在は「よりでっかいもんが作れる」という理由で建築家を目指している。ぶっきらぼうな性格で目的のためには冷淡になることもあったが、毬花や椿寮の先輩との出会い以来、思いやりを見せることも多くなる。 4歳の頃、佐原主子にプロポーズしたが、本人は覚えていない。のちに父親と和解し、寮を出て家に戻る。

柿本 慈雨 (かきもと じう)

柿本毬花の2つ下の弟。K大工学部に通う1年生。心優しい性格で内向的な毬花の良き理解者だが、酒宴で毬花を心配したり、毬花と破局した後の検見川政親を牽制したりと、少々過保護な面もある。社交性も高く、椿寮に入った後も癖の強い先輩たちを上手くあしらっている。

閑谷 桐子 (しずたに きりこ)

K大学文学部に通う2年生。飾らない性格の美人で長い髪がトレードマークだったが、途中から肩までの長さに切っている。柿本毬花の親友であり、良き相談相手として、政親との関係に悩む毬花にアドバイスを贈る。高校時代は検見川政親の彼女だったことがあり、実は今でも政親には未練を残している。将来は世界の砂漠を巡るのが夢。

坂本 英司 (さかもと えいじ)

K大学に勤めるアラビア語講師。ハンサムな顔立ちのうえ、気さくな性格で、女子人気が非常に高い。前作『月下の一群』で柿本毬花にプロポーズするも振られており、やや未練を残しているものの、大人の態度で接している。閑谷桐子からは片思いの仲間として、本人も気づかぬままに同情の目を向けられている。

佐原 主子 (さはら しゅうこ)

女子大の3年生。父親から譲り受けたベンツを乗り回す美人で、検見川政親の見合い相手。冷めた性格で、特に好きなものも嫌いなものもないが、政親だけには執着を示し、幾度も目の前に現れる。そのため、政親の彼女である柿本毬花に対しては不愉快さを覚えている。高校時代までは高飛びの選手だったが、インターハイ出場が決定した直後に事故に遭って選手生命を絶たれた過去があり、以降、刹那的な考え方をするようになった。 本人も自覚はないが父親からの愛に飢えており、それが政親への執着につながっている。

清村 (きよむら)

K大学椿寮の寮生で、すでに卒業が決定し、就職先の内定も得ている。常にサングラスをかけているが、サングラスを外すと「おトーフのような顔」をしているらしい。閑谷桐子が坂本英司に恋していると思っていたが、それは彼に対する同情であり、本心では検見川政親を思い続けているのだと気づいて忠告する。

高橋 (たかはし)

K大学椿寮の寮長で、すでに卒業が決定している。口髭のある大人っぽい風貌で、物腰も年齢以上に落ち着いている。いつでも微笑を浮かべており、寮生たちの良き兄貴分として慕われているが、後輩たちと一緒に柿本毬花と検見川政親のデートをのぞき見するなど、椿寮生特有の茶目っ気も健在。

柿本 菜花 (かきもと なか)

柿本毬花と柿本慈雨の姉で女子大生。毬花と違って自立心が強く、要領のいい性格。子供たちの生活態度に厳格な父親も上手くあしらいながら、年相応のキャンパスライフを満喫している。毬花とは距離を置きつつも気にはかけており、彼氏を家に連れて来いと催促している。

柿本家の父 (かきもとけのちち)

柿本毬花たちの父親。子供たちの生活態度に厳しいが、柿本菜花には上手くやり過ごされている。厳格な性格のため毬花に苦手意識を持たれているが、本人も内気な毬花と接するのを苦手としている。一方で子供たちの成長を認められるようにもなっていく。

柿本家の母 (かきもとけのはは)

柿本毬花たちの母親。心配性な性格で、子供たちに対しても何かと口うるさい。いつでも割烹着を着ている、典型的な日本の母親然とした出で立ち。「何をやらせても人の3倍かかる」毬花を気にかけすぎており、彼女からは疎ましがられている。

政親の父 (まさちかのちち)

検見川政親の父親で、大病院の院長を務めている。頑固な性格で、家を継ごうとしない政親と決裂し、勘当同然の扱いをしていたが、佐原主子との見合いを条件に和解の提案をした。政親とは犬猿の仲だが、いざ相手にしてもらえなくなると物足りなく感じていることを妻に見抜かれている。

政親の母 (まさちかのはは)

検見川政親の母親。後妻のため、生みの親ではない。夫とは対照的に穏やかな性格の上品な老婦人で、ぶっきらぼうな政親との関係も良好。夫の短気も上手く受け流した。家を訪ねてきた柿本毬花と政親に、佐原主子の生い立ちを話す。

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