ギャルソン

ギャルソン

経営危機にあるフランス料理レストラン「ラ・セーヌ」に、新たなギャルソンの沢渡翔がやって来た。これをきっかけに、明るく前向きになっていく従業員達と翔の触れ合いを描くグルメコミック。「グランドジャンプ」2016年1号から2017年10号にかけて連載された作品。

正式名称
ギャルソン
ふりがな
ぎゃるそん
原作者
城 アラキ
漫画
ジャンル
その他料理・グルメ
関連商品
Amazon 楽天

あらすじ

第1巻

東京都青山にあるレストラン「ラ・セーヌ」に、ある日、奇妙な男性客がやって来た。その男は、従業員達にシェフと支配人を呼ぶように命じる。男の正体は沢渡翔という「ラ・セーヌ」の新ギャルソンで、出されたオムレツを一口食べただけで、シェフではない別の人物が作ったものであると見抜いたのである。シェフの代わりに調理したスー・シェフ(副料理長)の伊丹真理は、そんな翔の態度に思わず反発する。しかしその直後にやって来た客、桑島夫妻への翔の接客態度を見て、翔がただものではないと理解し、考えを改めるのだった。その後も翔は、一人一人の客に誠実に対応する事で、スタッフ達からの信頼を得ていく。しかし、店の雰囲気がよくなり始めたある日、翔は突如姿を消してしまう。真理は翔がもう店に戻らないのではと不安になるが、翔が出勤しなくなって3日目、突如翔は店に連絡を入れ、オーナーの娘である岡田玲子と公認会計士の河北を連れてやって来る。そして翔は二人に料理を食べさせ、現状「ラ・セーヌ」はいつ閉店してもおかしくないほどの経営難にあるが、自分の手腕で再建させてみせるので、1年の猶予がほしいと頼むのだった。

第2巻

「ラ・セーヌ」は再建に向けて、店の顔になる特別料理(スペシャリテ)を作ったり、著名なワイン醸造家のジャン・テモールを呼んで店でパーティを開く、などの計画を立てていた。このパーティはソムリエである鹿川章が中心となり、早速テイスティング用のワインが届くが、これは明らかにジャン以外のものが作った、偽物のワインであった。これではとてもパーティには出せないと判断した章は、ほかのスタッフには告げずにワインは出さない事にする。しかし沢渡翔は、章の様子がおかしい事に気づき、事情を聞く事に成功。そこでパーティ3日前に来日したジャンに、なぜこのような事をしたのか、直接たずねる事にする。するとジャンは、3年前に自分の息子があとを継いだもののワイン作りがうまくいかず、評論家達に冷たい言葉に苦しんだ結果自殺した。にもかかわらず、ある日、評論家達に自分の畑と似た条件で作られた安いワインを出しても誰も気づかなかった事から、ワインに関する者すべてが憎くなり、わざと自分のワインを汚すような事をしたのだという。しかし、章だけは偽物だと見抜いていた事で、ジャンは救われ、後日本物のワインを送って来た事で、パーティは何とか成功する。

第3巻

「ラ・セーヌ」は、諫早功の協力で雑誌に紹介してもらったり、岡田玲子の友人である優子や、沢渡翔と親しい山口小百合に客を紹介してもらう事で、以前よりは賑わうようになっていた。しかしシェフ代理を務める伊丹真理は、相変わらずプレッシャーに苦しんでおり、店の看板料理となる特別料理(スペシャリテ)をまだ完成させられない事に悩んでいた。そんな真理を案じた沢渡翔は、嶋幸司にも協力してもらい、ある日真理に幸司お勧めの店があると噓をついて、目隠しをして「ラ・セーヌ」に連れて行く。そこでスタッフ達から特別に料理を振る舞われた真理は、自分達も真理の仲間なので、一人で気負わないでほしいと励まされる。こうして真理は元気を取り戻し、スタッフ達の結束はまた一つ強まるのであった。その直後、翔達はマイク中島の店である「ラマン」のオープニングパーティに招待される。そこでスタッフの不慣れな接客が心配になった翔達は、客である事を忘れて「ラマン」のスタッフの手伝いをする。その一部始終を見ていたレストラン評論家の堺真一は「ラ・セーヌ」の面々を気に入り、その日から頻繁に「ラ・セーヌ」に来るようになる。

第4巻

人気ピアニストのパスカル・クレマンの来日が決まり、彼が食事する店を決めるオーディションが開催される事になった。パスカルはメディアに一切顔を出さず、コンサートも行わない気難しい人物で、そんなパスカルが食事したとなれば、店が有名になる事は間違いない。そのため「ラマン」はなんとしても勝ち抜きたいと考え、「ラ・セーヌ」もまた、山口小百合の伝で、オーディションに参加できる事になった。その結果、勝負は「ラ・セーヌ」と「ラマン」の一騎打ちとなり、「ラ・セーヌ」は3日後のパスカルの来店までに、偏食で有名な彼の気に入る料理を作る事になる。その中心人物である伊丹真理はまたもプレッシャーに苦しめられるが、ある日沢渡翔は、パスカルのマネージャーで、パスカルの代わりにオーディションを仕切っているドン・トゥルーマンこそが、パスカルであると見抜き、彼に合わせた料理を作る事に成功する。こうして勝負は「ラ・セーヌ」の勝利となり、店はパスカルに認められる。しかし「ラ・セーヌ」にはピアノを搬入するスペースはなく、最終的にパスカルは「ラマン」で演奏し、帰国する事になるのだった。

第5巻

嶋幸司が亡くなり、「ラ・セーヌ」の面々は、彼に最後の晩餐を食べさせてあげる事もできなかったが、それでも前向きに彼の死を受けとめていた。その甲斐もあって「ラ・セーヌ」の評判は順調に上がっており、その分正式にシェフとなった伊丹真理の負担は重くなっていた。これを案じた沢渡翔達は、新スタッフを雇う事を検討するが、その日突然、面接希望の若い男性シェフ、山下元気がやって来る。ひとまず彼を見習いとして雇う事にした翔は、あえてキッチンではなくフロアに配属する事で、元気にレストランで働くとはどういう事なのかを学ばせようとする。しかし、元気の真の目的は「ラ・セーヌ」の評判を落とし、店を潰す事であった。元気は祖父の山本厳の命令で「ラ・セーヌ」のスタッフになる事で、内側から店をだめにしようとしたのである。さらに「諫早銀行」の大口顧客である巌は、こちらにも手を回し、諫早功に、今すぐ「ラ・セーヌ」に融資しているお金を回収するように命令する。どうやら巌は「ラ・セーヌ」に個人的な恨みがあるらしいと気づいた翔は、巌を「ラ・セーヌ」に招待する事にする。

登場人物・キャラクター

沢渡 翔 (さわたり しょう)

レストラン「ラ・セーヌ」に、新ギャルソンとしてやって来た男性。年齢は26歳。ふだんはぼさぼさのウルフカットヘアだが、仕事時は整えて前髪を左寄りの位置で斜めに分けた短髪にしている。判断力と洞察力に優れ、物腰柔らかく、どんなトラブルにも落ち着いて臨機応変に対応する完璧なギャルソン。さらに世界一のサービスマンを決めるコンクール・MSC(メール・ド・セルヴィスコンクール)の優勝者でもある。しかし仕事を離れると、いつも髪はぼさぼさなうえに遅刻癖があるなど、やや天然気味なところがある。

伊丹 真理 (いたみ まり)

レストラン「ラ・セーヌ」でスー・シェフ(副料理長)を務める女性。年齢は25歳。前髪を目が隠れそうなほど伸ばして真ん中で分け、肩につくほどまで伸ばしたセミロングヘアを、後ろで一つにまとめている。小柄で、やや太めの体型。胸が大きく、眉が太い。気が強い性格。料理人としては発展途上なうえあまり器用ではないため、腕力のいる調理器具を素早く動かして作る料理は苦手。しかしある日突然、姿を消した嶋幸司の代わりにシェフを務める事になり、プレッシャーと自らの技量不足に苦しむ日々を送っていた。そんなある日、突然「ラ・セーヌ」の新ギャルソンとしてやって来た沢渡翔の事が受け入れられず、当初は反発する。だが、すぐさま翔が来客一人一人を細部まで観察したうえで、非常に誠実な接客をしている事に気づき、考えを改める。これ以来翔を認め、シェフとして早く一人前になれるよう、前向きに取り組むようになっていく。しかし、なかなか自分に自信が持てずに卑屈になり、周囲に攻撃的な態度を取ってしまっては、翔に助けられる事も多い。お酒が好きで、甘いものは苦手。

篠山 勇一 (ささやま ゆういち)

レストラン「ラ・セーヌ」でバーテンダーを務める男性。年齢は65歳。頭頂部は禿げ上がっており、頭の両サイドにのみ髪を残している。非常に小柄で、口ひげを伸ばしており、眉が太い。気難しい性格に加えて態度が大きく、意地悪な発言が多いため、周囲から誤解されやすい。しかし、花崎竜二のような強面の男性に絡まれても態度を変えない、肝の座ったところがある。1か月前までは純心女子大学で英米文学を教えていたが、クビになってしまう。そこで偶然出会った嶋幸司に「ラ・セーヌ」へ来ないかと誘われ、バーテンダーとなった。実は、店の入り口にある花の手入れも行っている。

菊谷 リナ (きくや りな)

レストラン「ラ・セーヌ」でウェイトレスを務めるフリーターの女性。年齢は20歳。前髪を目の下まで伸ばして目にかからないように分けてピンで留めた、茶色の外はねショートヘアにしている。両目の下にそばかすがある。高校生の頃は地味な容姿で、同じように前髪を目の下まで伸ばして目にかからないように分けてピンで留め、胸の下まで伸ばしたロングヘアを2本の三つ編みにしてまとめていた。明るくお転婆な性格のお嬢さま。子供の頃から、一流のものにだけ触れて、一流の人間に育つようにと、父親から厳しくしつけられて来た。そのため、外ではあたかも立派な人間のように振る舞いながら、内面は褒められるところのない父親を嫌悪するようになる。高校生の頃、偶然通りがかった「ラ・セーヌ」で当時のムッシュと知り合いになり、まかない料理を食べさせてもらって「ラ・セーヌ」の味に強く惹かれるようになる。その後母親を亡くし、その悲しみを癒すために、大学進学をやめてウェイトレスとして「ラ・セーヌ」で働くようになった。父親とは口も利かない日々を過ごしていたが、ある日父親が「ラ・セーヌ」に来店した事をきっかけに、関係が少し修復された。食べる事が大好きで、何でもおいしく食べるタイプ。

片瀬 博 (かたせ ひろし)

レストラン「ラ・セーヌ」でフロアチーフを務める男性。年齢は40歳。前髪を眉上で切り揃えたアフロヘアで、口ひげとあごひげを生やしている。非常に太めな体型。以前はホテル「TOKYO」で田中の部下として働いていたが、彼に追い出される形でクビになり、現在に至る。そのため「ラ・セーヌ」では仕事に身が入らず、フロアチーフとして偉そうにしているだけの、手を抜いた仕事をしていた。しかし沢渡翔が新ギャルソンとして店にやって来た直後、田中が客として来店して気まずい思いをしたところを翔に助けられる。これによって翔を認め、自分も腐らず前向きになろうと考えた結果、まずはこれまで35回も失敗している禁煙に挑む事にした。映画「ロッキー」が大好きで、あこがれの芸能人はパパイヤ鈴木と伊集院光。

クリス 仲村 (くりす なかむら)

レストラン「ラ・セーヌ」でシェフ見習いとして働く男性。年齢は22歳。前髪を長く伸ばして上げて額を全開にし、胸の下まで伸ばしたロングウェーブヘア。一見セクシーで落ち着いた雰囲気を漂わせているが、実は気が弱く、泣き虫。以前はパティシエとして、渋谷区にある「パティスリー・コラン」で見習いとして働いていたが、パティシエからの厳しい指導に耐えられず退職。パティシエになる事をあきらめて、シェフ見習いとして「ラ・セーヌ」にやって来た。しかし、ある日「ラ・セーヌ」では「パティスリー・コラン」から仕入れたお菓子を出している事を知り、このお菓子を店に出したくないと思うあまり、勝手にコンビニで買ったお菓子とすり替えて客に出していた。しかし、これが沢渡翔にばれた事がきっかけで、翔に、もう一度パティシエとして働いてみないかと言われ、猛特訓。ほかのスタッフにも認められ、店でクリス仲村のお菓子を出すようになった頃、翔に誘われて「パティスリー・コラン」のパティシエが来店。わずかではあるが彼にもその味を認められた事で、パティシエとして前向きに働くようになる。

鹿川 章 (かがわ あきら)

レストラン「ラ・セーヌ」でソムリエを務める男性。年齢は35歳。前髪を長く伸ばして左側は上げて額を見せ、右側は垂らした、癖のある短髪。眼鏡を集めるのが趣味で、家には40種類以上の眼鏡がある。まじめな性格で、ワインが大好き。そのため、自分の仕事に強い誇りと、こだわりを持っている。しかし、それゆえに独りよがりな仕事をしてしまったり、問題を一人で抱え込んでしまったりする事があり、たとえば自分が仕事でミスをし損失が出たら、自腹で補填してでもなんとかしてしまおうとする事がある。以前は、ジャン・テモールのもとで修業をしていた。

村木 誠 (むらき まこと)

レストラン「ラ・セーヌ」で店長を務める男性。年齢は45歳。前髪を上げて額を全開にし、きっちりと整えた撫でつけ髪に眼鏡をかけている。きまじめで几帳面な性格。もともとは銀行で働いていたが、店が潰れてしまい、「ラ・セーヌ」の雇われ店長となった。子供が四人おり、さらに現在妻が第五子を妊娠している。そのため妊娠中の女性の特徴や、妊娠中に気をつけるべき点、たとえば食事や健康管理に非常に詳しく、健と沙智が来店した際には、沙智が妊娠初期である事を即座に見抜いて気遣った。大学時代は登山部に所属しており、登山中に遭遇した熊を2回も追い払ったという伝説がある。

岡田 玲子 (おかだ れいこ)

レストラン「ラ・セーヌ」のオーナーの女性。前髪を長く伸ばして真ん中で分けて額を全開にし、胸の下まで伸ばしたストレートロングにしている。お尻が大きい事を気にしており、それを隠すため、いつもロングスカートを穿いている。反面、脇には自信があるので、ノースリーブの服を着る事が多い。もともと父親の店だった「ラ・セーヌ」を、父親の死後受け継ぐが、店のメインスタッフである嶋幸司が倒れたのをきっかけに業績が悪化したため、すぐにでも閉店した方がいいと考えていた。しかし、沢渡翔に強く頼み込まれた事により、仕方なく公認会計士の河北を連れて「ラ・セーヌ」に来店。幸司がいなくてもなんとかやっていこうとするスタッフ達の姿を見た事と、彼らの出す美味しい料理を食べた事で、考えを改める。そこで、翔の1年で店を立て直すという言葉を信じ、閉店までの猶予を与える事にした。好きな色は黒。優子とは中学時代からの親友で、事あるごとに張り合いつつも、なんだかんだで仲がいい。

嶋 幸司 (しま こうじ)

かつてレストラン「ラ・セーヌ」でシェフをしていた年老いた男性。沢渡翔の恩人でもある。前髪を長く伸ばして上げて額を全開にし、きっちりとまとめた撫でつけ髪にしている。体型は非常にやせており、頰がこけている。「ラ・セーヌ」には中学校卒業後見習いとして入り、厳しい修行に耐え抜いてシェフになった。しかし、料理一筋の人生を送ったために、家庭は作らず、すでに親兄弟もみんな亡くなってしまった。それでも「ラ・セーヌ」の看板シェフとして働き続けていたが、ある日体調を崩して店を離れざるを得なくなってしまう。その後は入院生活を続けていたが体調は回復せず、「ラ・セーヌ」の経営が上向きになって来た頃に亡くなった。

桑島 (くわしま)

レストラン「ラ・セーヌ」の常連客の年配の男性。前髪を目の高さまで伸ばして真ん中で分けた短髪。口ひげを生やし、丸眼鏡をかけている。40年前、妻と新婚旅行でフランスへ行った経験があり、そこで食べたモンサンミッシェル風のオムレツの味が忘れられずにいた。その後、帰国して本場以上の味とサービスを提供する「ラ・セーヌ」を信頼しよく通っていたが、経営する会社の資金繰りが厳しくなり、やがて妻と自殺を考えるようになる。そこで、最後の晩餐をするため、わずかなお金だけを持って妻と「ラ・セーヌ」へやって来た。しかし、それを沢渡翔に見抜かれ、格安料金でモンサンミッシェル風オムレツを提供される。その味に感動し、自殺をやめてもう一度頑張る決意をした。そして1年後、もう一度「ラ・セーヌ」に来店する。

田中 (たなか)

ホテル「TOKYO」で飲料部長を務める中年男性。片瀬博の元上司。頭頂部は禿げ上がっており、両サイドと後頭部にのみ髪の毛が残っている。目的のためなら手段を選ばない冷酷な性格なうえ、部下の手柄を平気で横取りしたり、意地悪な発言をしたりする事が多いため、周囲からはすっかり嫌われてしまっている。それでも以前は外資系ホテルとの合併を成功させるなど栄光の日々を送っていたが、現在は失脚して子会社への出向が決まってしまう。そのため、送別会として部下2名と「ラ・セーヌ」へやって来るが、その部下達にも嫌われており、盛り上がらない食事をしていた。しかし、そんな田中を案じた博のサービスにより、少し救われた気持ちで食事を終えた。

菊谷リナの父親 (きくやりなのちちおや)

菊谷リナの父親。前髪を額が見えるほど短く切って刈り上げ、口ひげとあごひげを生やしている中年男性。ごく一般的な家庭に育つが、就職後、社長に見込まれて菊谷家の婿養子となる。そのため財産目当て、出世目当ての結婚と揶揄されるようになってしまう。それでも妻の事は愛していたが、妻のために一流の人間であるかのように振る舞い、見栄を張り続ける生活には息苦しさを感じていた。娘のリナにも自分と同じ生き方を望み、一流のものを押し付け、一流大学へ進学するように命じていた。しかし、これが原因で親子仲が悪化していたある日、妻を亡くし、リナとの溝が決定的なものになってしまう。その後はリナと、家では口も利かないほど険悪な関係になっていたが、ある日このままではいけないと考えて「ラ・セーヌ」へ来店。「ラ・セーヌ」において、リナが最も気に入っているポトフを提供される。そして沢渡翔からリナの思いを聞かされて考えを改め、リナとの関係が少し改善された。その後は「ラ・セーヌ」に友好的になり、翔がジャン・テモールの思いを知るため腕時計の知識をほしがっていた際には、家に招いて協力した。

花崎 竜二 (はなさき りゅうじ)

レストラン「ラ・セーヌ」にやって来た、やくざの若い男性。前髪を長く伸ばして上げて額を見せ、顎の高さまで伸ばしたボブヘアを撫でつけ髪にしている。三白眼で目つきが悪く、強面。ある日「ラ・セーヌ」の予約客として構成員と共に来店し、ウォッカ・マティーニを注文するが、菊谷リナが単なるマティーニと誤解してオーダーを取った事で、違う不味いお酒を出されたと腹を立てる。そこでバーテンダーである篠山勇一に文句を言いに行くが、勇一はオーダー通りに作っただけであるため、単に口に合わなかったのかと誤解する。しかし、そこにリナのミスを察した沢渡翔が現れ、正しくウォッカ・マティーニを作って飲ませた事により、自分が凄んでも態度を変えなかった勇一と、即座にミスをカバーした翔を見直し、満足して食事をした。

角倉 早紀 (かどくら さき)

世界的に活躍するソプラノ歌手の少女。年齢は17歳。前髪を目が隠れるほど長く伸ばし、肩につくほどまで伸ばしたウルフカットにしている。天使と評されるほどの美しい歌声を持つが、わがままで口が悪く、乱暴な性格。そのため、人柄は悪魔であると揶揄されており、角倉早紀自身もまた、美しい歌声とあまりにもギャップのある自分の人間性と、だんだん歌う事を楽しめなくなっている現状に悩んでいた。そんなある日、初めての日本凱旋公演を行う事になり、東京へやって来る。しかし、宿泊中のホテル「TOKYO」で出された料理が口に合わず、周囲を困らせていたところ、スタッフの一人が片瀬博と「ラ・セーヌ」の事を思い出し、「ラ・セーヌ」で食事を出す事になって来店した。来店当初は、沢渡翔達スタッフにも攻撃的な態度を取っていたが、翔の丁寧な接客に心を開き、歌手としても前向きな姿勢を取り戻したうえで店を去って行った。

(けん)

レストラン「ラ・セーヌ」にやって来た若い男性。沙智の恋人。前髪を上げて額を全開にし、髪全体をツンツンに立てた短髪。学生時代から音楽が大好きで、将来は一流ミュージシャンになる事が夢。現在もアマチュアロックバンドのボーカル兼ギターを務めているが、なかなか人気が出ず、自分の夢のために沙智を犠牲にする現状に疑問を抱いていた。そこで、ある日バンドを解散させて楽器も売却。それで手に入れたお金で、沙智と「ラ・セーヌ」へ行く事にする。しかし、いつもはお酒や生の魚が好きなはずの沙智が、この日はなぜか食べようとせず、自分を気遣って会計が高額にならないようにするために食べないのかと思い込む。これによって沙智とケンカになってしまうが、村木誠から、沙智が妊娠しているという事を教えられ、反省。出産してもいいのか不安に感じている沙智に、もちろん産んでほしいと告げた。そして、沙智との将来に前向きになったうえで店を去って行った。

沙智 (さち)

レストラン「ラ・セーヌ」にやって来た若い女性。健の恋人。前髪を長く伸ばして真ん中で分けて額を見せ、肩につくほどまで伸ばしたセミロングヘアをまとめてハーフアップにしている。眼鏡をかけている。健とは学生時代に知り合い、当時から健の夢を応援していた。しかし、自分の方が年上な事もあり、アドバイスをしても上から目線だと言われてしまったり、逆に自分が困っている時は健をうまく頼れず、抱え込んでしまったりする事があるのに悩んでいる。ある日健に「ラ・セーヌ」へ誘われるが、決してお金持ちではないはずの健が、なぜ急に自分をこんな店で食事しようと言い出したのかわからず、困惑する。さらに、現在自分が妊娠している事を言い出せないまま、お酒や生の魚を食べられないと告げた事で、健には沙智が金銭的な意味で遠慮していると誤解され、ケンカになってしまう。このため、一瞬険悪な雰囲気になってしまうが、早い段階で沙智が妊娠している事を察していた村木誠があいだに入った事で仲直りした。子供に関しても、健にぜひ産んでほしいと言われた事で、健との将来に前向きになったうえで店を去って行った。

ジャン・テモール

フランス人の年老いた男性で、著名なワイン醸造家。村木章の師匠でもある。前髪を上げて額を全開にした癖のある短髪。太眉で眼鏡をかけており、非常に太めな体型をしている。「ブルゴーニュの神」と呼ばれるほどに有名で、お酒が好きな人なら誰でも知っているほどの知名度を誇る。3年前に醸造家を引退し、息子にあとを継がせるが、冷夏や豪雨に見舞われてワイン作りがうまくいかなくなってしまう。さらに息子のワインは評論家達に冷たい言葉を浴びせられ、この評価に悩んだ息子は、拳銃自殺をしてしまった。その後、ある日自宅に訪れた評論家達に、冗談のつもりで自分の畑と似た条件で作られた安いワインを出す。しかし誰も気づかなかった事から、息子はこんないい加減な奴らの言葉に悩んで死んだのかと思い、ワインに関するものすべてを憎むようになった。そのため、ほかで手に入れた安いワインを自分の作ったワインだと噓をついて売っている。そんなある日、章からパーティ用のワインを売ってほしいと頼まれ、またも偽のワインを渡すが、章だけは偽物だと見抜いていた事で救われ、以降は噓をつくのをやめる。

優子 (ゆうこ)

ブライダルサロンとエステチェーンを経営する女性。岡田玲子の友人。前髪を目が隠れないように斜めに分け、胸の下まで伸ばした巻き髪ロングヘアにしている。唇の左下にほくろが一つある。玲子とは中学時代からの親友で、事あるごとに張り合いつつも、なんだかんだで仲がいい。人の心は見えないのだから、人間は容姿が大事であるという考えの持ち主で、イケメンの男性がとにかく大好き。その結果、結婚には3回失敗しているが、なぜかその度に仕事の方はうまくいき、事業はどんどん拡大している。ある日、知人の結婚披露宴を「ラ・セーヌ」で行わないかと仕事を紹介するが、その新婦が、花崎竜二の知人の引退したやくざである事が発覚する。

諫早 功 (いさはや こう)

海外でも活躍する写真家の男性。年齢は38歳。前髪を長く伸ばして一房だけ前に垂らして残りは上げて額を見せ、肩につくほどまで伸ばしたセミロングヘアをまとめてハーフアップにしている。口髭、顎髭を伸ばし、眼鏡をかけている。実家は地方銀行の大手「諫早銀行」だが、実家とは絶縁状態で、銀行は兄の諫早修が継いでいる。「ラ・セーヌ」の事は父親の諫早弾から聞いて知っており、いつか行ってみたい店の一つであった。そんなある日、優子から紹介される形で岡田玲子と出会い、玲子が「ラ・セーヌ」のオーナーである事を知る。そこで玲子に、自分であれば店の宣伝用の写真を撮影したり、雑誌に売り込んだりする人脈もあるので、ぜひ店に連れて行ってほしいと頼んで来店する。しかし現在の「ラ・セーヌ」は、想像とはかけ離れていた事で落胆し、食事の途中で店を去ってしまう。だがその直後、沢渡翔が弾が書いた本を発見。諫早功が求めているのは、この本の中で紹介した食べ物である事を察した事で、もう一度店へ誘われ、今度は望んだ通りのものを食べる事ができた。その後、約束通り店を撮影し、「ラ・セーヌ」は雑誌で取り上げられた。

諫早 修 (いさはや おさむ)

地方銀行の大手「諫早銀行」東京支店副支店長兼融資部長を務める中年男性。諫早功の義理の兄。前髪を上げて額を全開にし、きっちりとまとめた撫でつけ髪にしている。眼鏡をかけており、唇の右下にほくろが一つある。まじめで厳しい性格をしている。功とは本来いとこの関係であったが、功の家に「諫早銀行」を継ぐ養子として迎えられた事で義理の兄弟になった。そのため「諫早銀行」を継いだのは本意ではなく、子供の頃に泣く泣く引き受けたという気持ちで働いていた。ある日、顧客の一人である嶋祐也と接待で「ラ・セーヌ」で食事をする事になる。しかし彼の目的である、借金の返済期限延長は難しいと考えていた。だが、祐也と話すうちに自分とは対照的に前向きに家業を継ぎ、その結果理不尽な苦労をする事があっても、それを受け入れている祐也の生き方に感銘を受ける。そこで譲歩し、まずは祐也の店である「千駄木 箸善」が早めに借金を返す目処がつけられるよう、新規事業を始める事を提案。祐也がこれの具体的な新規販売ルートを開拓する事を条件に、借金の返済期限を延ばすためのサポートをする事になった。甘いものが大好き。

嶋 祐也 (しま ゆうや)

箸店「千駄木 箸善」の五代目店主を務める若い男性。菊谷リナの友人。リーゼントの髪型で、顎髭を生やした三白眼。明るく、細かい事を気にしない性格。そのため、マナーには疎く、礼儀正しい振る舞いは苦手。もともとは家を継ぐ予定はなく、箸屋という家業は時代遅れではないかと考えていた。しかし、ある日父親が急死してしまい、職人から跡を継いでくれと頭を下げられた事で、これも運命と思って承諾した。だが、店には借金があり、しかも本来5年後までに返済すればいいところを、父親が死亡したためにすぐ返済しなければならない事が発覚。現状では返済は不可能なため、まずは融資をしてくれた「諫早銀行」東京支店の諫早修に、予定通りの5年後までの返済に戻せないか頼む事になる。そこで「ラ・セーヌ」でいっしょに食事をするが、当初はまじめで頭の硬い修とそりが合わず、乱暴な態度を取ってしまう。しかし不本意であろうと、自分が店主を引き受けたからには責任を持って仕事するつもりである事や、今後は箸以外の商品も出したいと考えている事を伝えた事で、修の態度が軟化。「千駄木 箸善」が早めに借金を返すめどがつけられるよう、新規事業を始める事を提案される。そして、祐也が具体的な新規販売ルートを開拓する事を条件に、借金の返済期限を延ばすためのサポートをしてもらえる事になった。甘いものが大好き。

マイク 中島 (まいく なかじま)

「イーグルフーズ」の極東マネージャーを務める男性。ニューヨークの三ツ星レストラン「ラマン」の東京店チーフも兼任している。また、これとはほかにハワイでサーフィンも教えている。前髪を目が隠れないように切った癖のある短髪で、無精ひげを生やしている。ある日、「ラ・セーヌ」の近くに「ラマン」の東京店を作り、さらに自分がチーフを務める事になる。そこでまずは、かねてから評判の高い沢渡翔の仕事ぶりを見に行こうと「ラ・セーヌ」を訪れる。そこですぐさま翔に自分の正体を見抜かれ、「ラ・セーヌ」のスタッフはいまいちだが、翔は自分のライバルにふさわしい人物であると認め、握手を交わした。

山口 小百合 (やまぐち さゆり)

そば・居酒屋「山口庵総本家」の三代目代表。青山通りにいくつものビルを所有する大地主の女性。年齢は90歳。前髪を長く伸ばして上げて額を全開にし、肩につくほどまで伸ばしたセミロングヘアを高い位置で一つに結んでポニーテールにしている。わがままで自由奔放な性格で、周囲を振り回す事が多い。しかし、長寿であるがために親しい人々にはほとんど先立たれており、長生きをしてもなにもいい事はないと後ろ向きになっている。ある日「ラ・セーヌ」を訪れるが、そこで片瀬博に、長生きで羨ましいと言われた事に腹を立てる。しかし、沢渡翔がすぐにフォローをした事と、後日謝りに来た博に、こちらが指定する日にもう一度店に来てほしいと頼まれた事で、不思議に思いつつも再度店を訪れる。その際、実は博が過去に一度、山口小百合から名刺を受け取った事があり、自分の誕生日を覚えてくれていたために、来店日を指定した事に気づく。これによって「ラ・セーヌ」の面々に誕生日を祝われ、博の事を見直した。誕生日は7月28日。

前島 寛 (まえしま ひろし)

レストラン「ラ・セーヌ」に来店した男性。年齢は39歳。学生の頃に作ったコンピューターゲームが成功し、現在は上場企業の社長を務めている。前髪を目が隠れるほど伸ばして真ん中で分け、額を見せた短髪。金に糸目をつけない豪快な性格だが、なにかあってもすべてお金で解決しようとするせいで、問題の本質に気づかない事がある。3年前に恋人の美樹と知り合って婚約するが、挙式1か月前、いっしょに車に乗っていた際に交通事故を起こしてしまう。二人とも運よく軽傷で済んだものの、その直後に突然別れを切り出され、困惑する。そこで、子供の頃から本当の祖母同然に親しい山口小百合に相談し、彼女の勧めで、美樹と一度「ラ・セーヌ」で食事する事にした。食事を始めた当初は、美紀のあまりにもかたくなな態度にショックを受け、関係修復は不可能なのかとあきらめかける。しかし美樹には、なにか事情があると見抜いた沢渡翔が、わざと美樹が苦手とする食べ物を伊丹真理に作らせて持っていき、美樹が気づかずに食べた事で、美樹が事故の後遺症で味覚障害に陥った事が発覚。美樹が、こんな自分では前島寛と結婚しても、寛や今後生まれて来るかもしれない子供に、満足な食事を出してあげられないのではと悩んでいた事を知る。そして美樹一人に悩ませていた事を謝罪し、どんな美樹であっても自分にとって必要な人である事に変わりないので結婚してほしいと、もう一度プロポーズした。

美樹 (みき)

前島寛の恋人の若い女性。前髪を長く伸ばして真ん中で分けて額を見せ、肩につくほどまで伸ばしたストレートセミロングヘア。寛とは3年前にモロッコで知り合い、1年前の夏にプロポーズされて結婚を決意した。しかし、挙式1か月前にいっしょに車に乗っていた際、交通事故に遭ってしまう。二人とも運よく軽傷で済んだものの、その直後、自分が事故の後遺症で味覚障害を発症した事に気づく。そして、こんな自分では、このまま寛と結婚しても、寛や今後生まれてくるかもしれない子供に満足な食事を出してあげられないのではと考え、理由を告げずに別れを切り出した。しかし、どうしても引き下がらない寛のために、寛との最後の食事のつもりで「ラ・セーヌ」に来店した。その際、最初に苦手な食べ物を沢渡翔に知らせた事がきっかけで、その後美樹の病状を察した翔が、わざと苦手な食べ物を出して食べさせた事で、寛にも味覚障害で困っている事を知られる。そして寛ともう一度話し合った結果、改めてプロポーズされて受け入れた。好きな食べ物は草団子と母親が作った味噌汁で、苦手なものは香りや刺激の強いハーブやスパイス類。

堺 真一 (さかい しんいち)

「日本で最も影響力のあるレストラン評論家」として知られる中年男性。額が見えるほどの短髪。口髭と顎髭を伸ばした非常に太めの体型で、眼鏡をかけている。いつも笑顔の穏やかな性格で、美味しいものや楽しいものを積極的に求める。ある日、レストラン「ラマン」のオープニングパーティに招待され、そこで同じく招待されていた「ラ・セーヌ」の面々が楽しそうに話している姿を見て、いっしょに食事をしようと同じテーブルに着く。その後「ラマン」の不慣れな接客にしびれを切らした「ラ・セーヌ」の面々が、手伝いに行ったのを見て、ますます彼らを気に入り「ラ・セーヌ」の常連客となった。

幸夫 (ゆきお)

レストラン「ラ・セーヌ」に来店した、フリーターの若い男性。前髪を目の下まで伸ばした真ん中で分け、肩につくほどまで伸ばしたセミロングにしている。祖父母思いだが見栄っ張りで、すぐにばれるような噓を重ねてしまうところがある。ある日、地方に住んでいる祖父母が急遽東京に遊びに来る事を知り、案内する。しかし、実は働いていない事を言い出せず、ファイナンシャルプランナーになったと噓をついてしまう。さらに、高級店に通い慣れている大人の男性を装いたいあまり、初めて来店した「ラ・セーヌ」で、常連客のようなふりをしてしまう。事情を察した「ラ・セーヌ」の面々は仕方なく幸夫に合わせるが、当然祖父母にはばれており、叱責される。さらに最近体調の悪い祖母から、自分は無理に手術をせずこのまま死ぬのもいいと思っていたが、こんな状態の幸夫を残して死ねないので、やはり手術を受けると告げられた事で、心を入れ替える決意をした。

野田 克紀 (のだ かつき)

レストラン「ラ・セーヌ」の仕入れ先である「野田農園」の跡取り息子。年齢は18歳。前髪を上げて額を全開にし、髪全体をツンツンに立てた短髪で、もみあげを長く伸ばしている。農家の息子として楽しく働いていたが、配達で得意先に行く度、廃棄される野菜を見ては傷ついていた。やがて、自分は捨てられるものを作っているのだろうか、それなら農業などやめてしまいたいと考えるようになり、ある日父親にこの仕事をやめたいと伝える。しかし事態を察した伊丹真理が、ある日野田克紀が誤って届けられた野菜を使った料理を彼に出した事で、こんなに美味しく調理してもらえるのかと感動した。そして、沢渡翔のはからいで「ラ・セーヌ」のスタッフとして働き、目の前で自分の作った野菜を食べる客の姿を見た事で考えを改める。

パスカル・クレマン

世界的な人気を誇るピアニストの男性。前髪を長く伸ばして上げて額を全開にし、肩につくほどまで伸ばしたセミロングにしている。非常に太めの体型で、眼鏡をかけている。天才的なテクニックと高い人気を誇るが、極端な人嫌いで、メディアにほとんど顔を出す事もなければ、コンサートも一切しなかった。そのため、パスカル・クレマンの顔を知る人間はスタッフ以外にほとんどおらず、これを利用してパスカルのマネージャーの「ドン・トゥルーマン」という架空の人物のふりをする事で人と接していた。ある日、来日公演を行う事になり、どこのレストランで食事をしようかと考える。そこで人間嫌いのパスカルが、ドンを代理に立ててさまざまなレストランで食事をさせ、ドンがある程度絞った数店からオーディションをして決めるという形式をとる。しかし沢渡翔には、ドンこそがパスカル本人であると見抜かれ、パスカルの偏食を考慮したメニューを出した事で、最終的に「ラ・セーヌ」に決めた。

山下 元気 (やました もとき)

料理人見習いの若い男性。山本厳の孫。前髪を長く伸ばして少し上げ、髪をツンツンに立てた刈り上げた短髪。ある日、レストラン「ラ・セーヌ」を強く憎む厳の命令で、内側から「ラ・セーヌ」を腐敗させ、評判を落とす事を目的に「ラ・セーヌ」のスタッフとして雇ってほしいとやって来る。もともと料理人としての技術は高い事と、ちょうど「ラ・セーヌ」が人手不足で困っていた事で、ひとまず見習いとして採用されるが、なぜか沢渡翔の一存で厨房ではなく、フロアに配属された事に混乱する。しかし、フロアスタッフとして客と直に接するうちに、自分が知らず知らずのうちに生意気になり、客によくない態度を取っていた事を自覚して反省する。これによって、間違いに気づかせてくれた翔に感謝し、「ラ・セーヌ」の面々に対しても好感を抱くようになっていくが、今度は厳の命令との板挟みになって悩む。しかし翔は山下元気の真の目的すら把握しており、最終的に厳に「ラ・セーヌ」を認めさせる形で和解し、引き続き「ラ・セーヌ」で働けるようになった。

山本 厳 (やまもと いわお)

不動産会社「モト・ビルディング」の経営者の男性。山本元気の祖父。諫早功が務める「諫早銀行」の大口顧客でもある。かつては料理人で、1965年ごろ息子と共に「洋食屋モトキ」を開く。しかし経営がうまくいかず、最終的に店が潰れてしまったのも、息子が亡くなったのも、ライバル店のレストラン「ラ・セーヌ」のせいであると思い込むようになる。その後は不動産業に仕事を変え、都心にいくつも飲食店ビルを持つまでに成長するが、「ラ・セーヌ」への憎しみは消えず、いつかこの手で潰してやろうと考えていた。そしてある日とうとう、孫の元気を「ラ・セーヌ」に送り込み、内側から店を腐敗させる事で評判を落とし、店を潰す計画を実行する。しかし、沢渡翔が山口小百合経由で山本厳の事を知り、厳の思惑を察しした事により「ラ・セーヌ」に招かれる。そこで翔が伊丹真理に頼んで「洋食屋モトキ」で出していたハンバーグと同じものを作り、厳に食べさせた事と、元気が「ラ・セーヌ」を潰すといった後ろ向きな方法はやめ、いつか自分が一人前の料理人となり「洋食屋モトキ」を復活させたいと考えているのを伝えた事により、考えを改めて「ラ・セーヌ」を攻撃するのをやめた。

連城 絹江 (れんじょう きぬえ)

80代の女性。山口小百合の友人。前髪を目が隠れないように右寄りの位置で斜めに分け、耳の下まで伸ばしたボブヘア。老齢だが背が高く、背筋が伸びており、体型は非常にやせている。服はいつも高級品を身につけ、上品な雰囲気を漂わせている。しかし性格は、意地悪で攻撃的な一面がある。人気作家の連城光太郎の娘として生まれるが、母親は連城絹江を産んですぐに亡くなってしまい、光太郎と二人暮らしとなる。しかし光太郎は、子供を作るなら自分のあとを継ぐ男児がいいと考えていたため、絹江にはつらく当たっていた。そのため、自分の身体が成長して女性的になれば、ますます光太郎に嫌われるのではと思うあまり、拒食症のように食が細くなってしまった。その結果、光太郎が亡くなった現在でも、食に関するすべてが憎く、最近は料理店に行っては理不尽なクレームをつけ、残した料理を持ち帰って捨て猫に与えるという行為を繰り返していた。ある日小百合の紹介で「ラ・セーヌ」を訪れ、いつも通りクレームをつけようとしたところ、沢渡翔には通じず失敗。さらに、その孤独を見抜かれた事により改心した。

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