あらすじ
第1巻
吉祥寺で重田不動産を営む重量級の双子姉妹・重田富子と重田都子は、愛着のある吉祥寺が、どこにでもあるような街へと変化していく事に日々不満を覚えていた。そんなある日、同棲していた彼氏と別れ、吉祥寺で新しい物件を探していたイラストレーターの女性が、恐る恐る重田不動産を訪れた。富子と都子は、彼女をいったんは吉祥寺の物件へ案内するが、その後、希望に合うはずだからと強引に雑司ヶ谷の物件へと案内する。(第1話「重田不動産」)
約束の時間ぴったりに重田不動産を訪れたのは、仕事を辞めたばかりの今村貴子だった。彼女は転職を理由に、吉祥寺界隈への引っ越しを希望していた。富子と都子は、ひとまず彼女の希望に合いそうな物件を紹介したあと、道々好みの飲食店を見つけては喜んでいる貴子を見て、彼女を強引に五反田の物件へと案内。初めは五反田の街に対して抵抗があった貴子だったが、二人から飲食店などをはじめとする街の魅力を紹介されるうちに、次第に興味を持ち始める。(第2話「転職ガール」)
出版社でファッション雑誌の編集長を務める岩倉亜季は、仕事と私生活でのトラブルが重なり、結婚を考えるようになった。現状特に結婚の予定はないものの、独身のうちに知らない町に飛び込んでみたいという欲求にかられ、引っ越しを決意した。亜季は、その引っ越し先を賑やかな吉祥寺にしようと決め、重田不動産を訪れる。しかし、富子と都子に促されるまま、亜季が紹介されたのは、二面性のある町・錦糸町だった。そこで、競馬好きのおっさんが集まり、外国料理の店が多く立ち並ぶ南側の印象と、クラシックでオシャレなカフェなどが点在し、スカイツリーが近くに見える北側の印象の違いに興味を持つ。そんなディープな街で、亜季が紹介された物件は、生活感のないオシャレ物件だった。(第3話「編集長さん」)
富山から上京して来たばかりの眼鏡の女性は、母親が亡くなり、ずっと続けてきた介護から解放された事をきっかけに、自分の人生を歩き始めた。あこがれの吉祥寺に引っ越し、都会での生活を楽しみたいとの思いで重田不動産を訪れた。女性専用のマンションを希望する彼女が、吉祥寺で紹介されたのは、ラブホテルが立ち並ぶピンク街に建つ物件だった。あまり乗り気でない彼女に、吉祥寺以外の街に対する希望を聞いた富子と都子は、彼女を駒澤大学駅周辺へと案内。街のいいところを紹介しながら三人が向かったのは、タワー型シェア住宅「シェアプレイス駒沢」だった。(第4話「シェアするお年頃」)
映画監督の助手を務める橋本は、現在住んでいる広尾の部屋が2週間後に契約切れになるため、即入居が可能な部屋を探して、重田不動産を訪れた。監督の家から近い吉祥寺を希望していたものの、気に入った物件がなかったため、富子と都子に連れられて、中野へと足を伸ばす事になった。二人に中野の街を案内されながら、中野のよさを実感した橋本は、そのあとに紹介された物件の風呂の大きさ、充実感に魅了される。(第5話「本当に欲しいもの」)
第2巻
友部麻衣子は、夫との離婚が決まり、今の家を出て一人暮らしをする事になった。新しい住まいを探すために重田不動産を訪れたものの、特に優先したい条件も思い浮かばないまま、漠然と吉祥寺の物件を希望していた。しかし、物件を見て回るにあたり、重田不動産の重田都子は今の家で好きだった場所を麻衣子に聞き、カウンターキッチンのある家という条件を導き出す。そして、いっしょに歩く麻衣子に注目していた都子は、彼女がアイドル好きである事に気づき、吉祥寺以外の物件について提案。秋葉原まで足を伸ばし、物件を紹介する。(第6話「始められる場所」)
リノベーション物件への問い合わせがあとを絶たず、リノベーション物件の人気を実感していたある雨の日、重田富子と都子は自宅の雨漏りに気づき、自宅の老朽化について考え始める。風呂場の割れや、玄関の立て付けの悪さなど、いろいろな場所がボロボロになっており、本格的に自宅のリノベーションについて踏み出す事を決意。リノベーションも手掛ける不動産会社へと連絡を取る。デザイナーの大山にリノベーションの相談を持ち掛けた富子と都子だったが、特に何の具体的イメージを持っていなかったため、大山が最近手掛けたという塩田夫妻の家の内覧会へと足を運ぶ事にした。(第7話「ストーリーがある家」)
ニューヨークから帰国したばかりの女性カメラマンは、大きな荷物を抱えたまま、重田不動産を訪れた。プロのカメラマンを目指して渡米したものの、思ったような成果が出せず4年ぶりに帰国。その際、親とケンカしてしまった事もあり、実家に戻る事もできず、大学時代に住んでいた吉祥寺で新たな住まいを探そうと考えていた。そんな彼女の話を聞いた富子と都子は、さっそく吉祥寺をやめる宣言をして、「東京のブルックリン」と呼ばれる街・蔵前へと足を伸ばし、街ブラを開始する。蔵前のよさを体感したところで、彼女に紹介したのは、機能的でかつニューヨークよりも家賃の安い物件だった。(第8話「東京のブルックリン」)
斎田は、ハイスペックかつ家賃が安い物件を探して、重田不動産を訪れた。勤務地である新宿から15分で通える事を理由に、吉祥寺を希望。条件を通すためには、事故物件も厭わない事を伝えた。しかし、それを聞いた富子と都子は、吉祥寺をやめる事を提案。斎田が強引に連れて行かれたのは、より新宿に近い経堂だった。始めは乗り気でなかった斎田だったが、三人で街ブラをするうちに経堂の街をすっかり気に入り、興奮気味。そんな彼女が最後に案内されたのは、ワケ有りのオシャレ物件だった。(第9話「帰りたい街」)
デパートの靴売り場に勤める三野聡子は、自宅で趣味の小説を執筆する事で、仕事のストレスを解消する日々を送っていた。しかし、ある日隣人の騒音が原因で、引っ越しを決意。生活を変えれば何かが変わるのではないかという期待を込めて、吉祥寺の物件を探しに重田不動産を訪れた。しかし、どの物件もありきたりの部屋ばかりだと、聡子が肩を落としていると、富子と都子から吉祥寺以外へ行こうと提案され、サラリーマンで賑わう街・神楽坂へと足を運ぶ事になる。(第10話「代謝していこう」)
第3巻
重田不動産の重田富子と重田都子は、自宅のリノベーションについて、具体的なイメージを伝えるべくデザイナーの大山のもとを訪れた。しかし、二人が提示した内容は、大山にとって具体的なデザインを考える上で参考にするには難しいものばかりだった。そのため、富子と都子の自宅を下見する事にした大山は、日を改めて重田家を訪れる。一方で、重田不動産を訪れたのは、水商売の女性とOLの同性カップルだ。付き合って2年になる彼女達は、いっしょに暮らすための物件を探しに来た。富子と都子は、彼女達に物件を案内するうちに、自分達が自宅をリノベーションする上で大切にしたい事を見つけ出す。(第11話「楽しい暮らし」)
ネイリストを務める麻子は、東小金井の実家暮らし。それが原因で婚活もうまくいかず、30歳にして実家を出て一人暮らしをする事を決意し、重田不動産を訪れた。勤務地である渋谷にも通いやすい場所という事で、吉祥寺を希望したものの、婚活を理由にした引っ越しならばと富子と都子が勧めたのは「住んでみたい街ランキング1位」を獲得したばかりの恵比寿だった。恵比寿では、物件の管理会社の担当者であるチャラ男が中心となって街を案内。さらに、麻子が婚活を理由に物件探しをしている事を知ったチャラ男は、合コンの流れを意識した「合コンプラン」で物件の紹介を始める。(第12話「出会いの街」)
日本に来て8年になるフランス人のマエル・コランは、阿佐ヶ谷で大学生二人とルームシェアをしていた。しかし30歳を過ぎ、プライバシーがほしいと感じるようになったため、引っ越しを決意。重田不動産を訪れた。彼女の希望から考えて、富子と都子がマエルに勧めたのは、北区十条。立派な商店街に、ありとあらゆる飲食店。最近では珍しい演芸場もあり、日本文化に触れる事もできる。マエルが好きな緑も豊富で、肝心の物件も希望通りの小ぎれいな和室。条件の整った街や物件もさる事ながら、マエルは熱心に案内してくれた富子と都子の人柄に感動する。(第13話「のんびりタウン」)
富子と都子は、いつもの調子でお客さんを強引に引き連れ、福生にやって来た。しかし、お客さんにあっさりと逃げられ、物件を紹介する必要がなくなってしまった二人は、せっかくだからと福生の街をブラブラする事にした。横田基地がある影響で、独特なアメリカの雰囲気を醸し出す福生は、富子と都子のツボにはまる場所がピンポイントで点在している。偶然開催されていたフリーマーケットでは、気のいい売り子の男性・フリマのおっさんと知り合い、福生の人達の作るコミュニティのすばらしさを実感。のちのち富子が福生に住みたいと考えるきっかけとなる。(第14話「アメリカンな街」)
この日、大山が富子と都子の家をリノベーションするうえでのイメージを、具体的な形にしてやって来た。図面やイメージ写真、具体的な金額が算出された事により、富子と都子はリノベーション計画がぐっと現実味を帯びてきた事を感じた。富子は、実家の工事中、一人で暮らすための仮住まいを福生にする事に決めていた。一方で、探してはいるものの、決めかねていた都子に、まずは近くに住みたくなるような図書館を探す事から始めてはどうかと富子が提案。本好きの都子が気に入る図書館を探そうと都内にあるさまざまな図書館を案内する。(第15話「ブラブラ・ライブラリー」)
第4巻
えなは、漫画家を目指して上京し、友人と同居していた。しかし、生活が次第にアルバイト中心になり、漫画を描かなくなったえなの姿を見た友人は、本来の目的を見失ってしまっている事を指摘。それを認めようとしないえなは、友人から非難され、同居の解消を突き付けられてしまう。自分の部屋を探さざるを得なくなったえなは、半ギレ状態で重田不動産を訪れた。こだわりが強く、環境を変えたくないと吉祥寺を希望するえなに、重田富子と重田都子は、大森を推薦する。そして、街のよさを余す事なく紹介するが、えなは一度はそれを受け入れるものの、ことごとく「でも」という言葉で否定的な意見にしてしまう。(第16話「東京に住む理由」)
バンドマンの女性・仁木は、現在住んでいる武蔵小金井の物件が、楽器使用可であるにもかかわらず、隣人から細かな苦情や暴言が連日寄せられる事に耐えかねて、引っ越しを決意した。少し前、へヴィメタルフェスティバル「ラウド・パーク」で、富子と都子と知り合った仁木は、彼女達が不動産屋をやっていると聞いた事を思い出し、重田不動産を訪れた。イケてる楽器可の物件を希望した仁木に、富子と都子は池袋を紹介。池袋のおすすめスポットを見て回ってから、本来の目的である物件の内見へと足を進める。(第17話「受け入れてくれる街」)
実家のリノベーション工事に伴って、富子と都子はそれぞれ分かれて仮住まいでの生活を始めた。自宅に友人達を呼んで、引っ越しパーティを開いたり、期限付きの一人暮らしをそれなりに楽しんでいる富子とは反対に、都子にはいつまでも見慣れない景色が次第に心に影を落としていった。そんなある日、大山からの連絡を受け、工事中の実家へ足を運んだ二人は、中身が解体され、無残な状態になった実家の様子を垣間見る事になる。すると、都子は突然1階の設計に意義を唱え始める。何とか説得しようとする周囲に対して、都子はまったく聞く耳を持たず、ついにはキレてしまう始末。彼女が納得するまでのあいだ、リノベーション工事は中断される事となった。富子は大山と相談しつつ、都子が納得できるようにと奔走する。(第18話「新しい家族」)
佐藤麻里子は、パーティ好きの隣人から深夜に及ぶ騒音被害に遭い悩まされていたが、ちょうど更新の時期になったため引っ越しを決意し、重田不動産を訪れた。アパレル関係の仕事に就いており、ウォークインクローゼットのある部屋を条件にあげたが、吉祥寺ではいい物件に巡り会う事ができなかった。麻里子から、映画好きで美味しいもの好き、という話を聞いて、富子と都子がまず連れて行ったのは高田馬場。仕事の帰りに寄れる映画館という事で、高田馬場から飯田橋、渋谷にある各映画館を回り、最後に物件を見に訪れたのは巨大なシネコンのある二子玉川だった。(第19話「シネマ・パラダイス」)
現在ストーカー被害に遭っている「ストーカーに悩む女性」は、オートロックで安心して住めるマンションを探して重田不動産を訪れた。なるべく賑やかな街がいいという理由で吉祥寺を希望していたが、家賃が高く条件に合う物件がなかったため、富子と都子の勧めで北千住へと足を運ぶ事になった。駅の利便性や、懐かしさを感じる荒川の土手、謎の食べ物「文化フライ」など、北千住の魅力を堪能したあと、三人が向かったのは、女性専用の超安心物件だった。(第20話「ひきよせられる街」)
第5巻
ふみは、一人暮らしを始めるにあたり、母と共に重田不動産を訪れた。どんな物件データを見せても、難癖つけては納得しようとしない母と、ただ傍観しているだけのふみの様子を見た重田富子と重田都子は、強引に二人を内見へと連れ出した。しかし、実際に見て、娘のふみが前向きに検討しようとしてもなお、母親は娘の意見を認めようとしない。それを見た富子と都子は、いつものようにかなり強引に母娘を別の街へと連れ出した。四人がやって来たのは、西武新宿線沿線の野方。ここでふみは、野方と名の付く飲食店が多い事に気づき、富子と都子は、野方が地元民に愛される街である事を語る。そして、四人は野方を愛する地元民が営むオシャレなカフェへと足を運んだ。その後、母が席を外したタイミングで、ふみは母と自分の関係について語り始める。(第21話「初めての一人暮らし」)
富子と都子はその日、イマドキの娘に物件案内を行っていた。希望の物件に出会えず、吉祥寺に住む事自体を疑問に感じ始めた時、富子と都子は話の流れから、マイホームを持って一つの場所に住み続ける事に関して彼女がとても否定的な意見を持っている事に気づく。人それぞれさまざまな意見があると考えつつも、現実的で夢のない彼女に、やりきれない思いを感じてしまう。その後、富子と都子は、デザイナーの大山から連絡を受け、リノベーションを予定している人達に、工事中の実家を見学させてあげる事になった。子連れのファミリーや子供のいない夫婦、未婚の歯科医など、訪れた人達は、それぞれにさまざまな想いを抱え、リノベーションを実現させようとしていた。(第22話「同じ場所に住む理由」)
居酒屋のチェーン店で正社員として働いている今井は、あまりの激務続きに心が折れそうになっていた。少しでも楽になりたい一心で、引っ越しを決意した今井は、重田不動産を訪れ、吉祥寺で物件を探そうとした。しかし富子と都子は、そんな彼女に別の街を推薦。遠出しなくても楽しめるようなにぎやかな街を希望した今井に対して、住んでるだけで毎日がレジャーになる街と銘打って、水道橋を紹介する。水道橋は、いつも今井が通勤で使う電車の中から見続けていた街だった。一度も降りた事のないこの街で、富子と都子はボードゲームの店やプロレス観戦、カフェや遊園地、温泉施設など、エンターテインメントにこと欠かないこの街を隅々まで今井に案内する。(第23話「毎日がレジャー気分」)
SNSにどハマりしているインスタ女子は、インスタ映えするオシャレな街、吉祥寺で西海岸風の家に住みたいと、重田不動産を訪れた。現状、吉祥寺に希望するような物件はなかったが、西海岸風を目指すならと、富子と都子が彼女を連れてやって来たのは、古都・鎌倉だった。観光のみならず、住んでも素晴らしい鎌倉のいいところを巡る三人だが、どこへ行ってもインスタ女子は写真を撮ってインスタに上げる事に必死。黙って見ていた富子と都子だったが、ようやくやってきた物件の中でも、部屋に感動した彼女が写真を撮っている姿に、とうとう富子が行儀が悪いと指摘。インスタをやめるようにと話すと、インスタ女子は自分の胸の内を語り始める。(第24話「自分を好きになる街」)
宏美は、両親が家を手放す事を決断したため、30歳にして初めて一人暮らしをする事になった。幼い頃の苦い思い出のせいで、団地に強いあこがれを抱いていた宏美が、重田不動産を訪れ、その旨を伝えると、富子と都子がいろいろな団地を見に連れて行ってくれる事になった。三人がまず最初にやって来たのは、東雲の公団だ。ここは、一番新しい団地であり、有名な建築家が手掛けたデザイナーズ物件だった。予算の折り合いがつかず、次に訪れたのは常盤平。特徴的な形のスターハウスが興味を引いたが、千葉県であるがゆえに終電の時間を気にする必要があり、現実的ではなかった。そんな三人が最後に訪れたのは、高島平。さまざまな団地を見せてもらった宏美は、改めて団地のよさを実感し、団地に住む決意をする。(第25話「あの頃、住みたかった家」)
登場人物・キャラクター
重田 富子 (しげた とみこ)
重田不動産で働く女性で、重田都子の双子の妹。かなりぽっちゃりした体形で、外見は都子とよく似ている。髪型はストレートのロングヘアで、ヘヴィメタルやハードロックが好き。都子とは対照的に社交的な性格で、異性にはわりとモテる。大学卒業後は自由に暮らしていたが、5年前に交通事故で両親が他界。都子と話し合い、家業の不動産店を継ぐこととなった。 店を訪れた客に吉祥寺以外の町を紹介する際には、自分が好きな食べ物を御馳走して心をつかむという手法を採る。高所恐怖症で、怖い話が苦手。
重田 都子 (しげた みやこ)
重田不動産で働く女性で、重田富子の双子の姉。かなりぽっちゃりした体形で、外見は富子とよく似ている。眼鏡をかけており、ウェーブのかかったロングヘアだが、左内側は刈り上げられ、ツーブロックになっている特徴的な髪型。ヘヴィメタルやハードロック、黒魔術や犬が好き。もともとは明るい性格だったが、小学生の頃に、自分のせいで飼っていた犬を死なせてからというもの、笑わなくなり、妹の富子とは対照的に内向的な性格になった。 普段は無口で静かだが、気性が荒く頑固で、一度決めたら引かないタイプ。大学卒業後はレコード店に勤務し、比較的自由に暮らしていたが、5年前に交通事故で両親が他界。富子と話し合い、家業の不動産店を継ぐこととなった。両腕には入れ墨が入っている。
勲男 (いさお)
重田不動産で働く男性で、重田富子、重田都子の従兄弟。客の条件に合う物件を探し出す能力に長けている。無言でパソコンに向かい、物件をピックアップする姿は異様にも見えるが、その素早さと的確さは誰もが驚くほど。言葉を発することはなく、いつも首を振るだけで会話を成り立たせている。実は料理が上手で、その腕前はプロ級。
タケシ
重田富子、重田都子の友人の男性。眼鏡に帽子を被ったロングヘアに、無精ひげを生やしている。定職を持たずいつもフラフラしており、重田家にやって来ては食事の世話になっている。以前から富子に想いを寄せておりそのことは周知の事実だが、富子には基本的に相手にされていない。
大山
東京を中心に、不動産の紹介と、設計デザインを手掛ける会社「TATO DESIGN」でデザイナーを務める男性。重田富子、重田都子の家のリノベーションを手掛けることになり、思い描く家のイメージなど、富子と都子の希望を実現するために奔走する。
チャラ男 (ちゃらお)
恵比寿を中心に、物件管理をしている会社に勤める男性。色黒でノリが軽いため、チャラチャラしているように見えるが、実は誠実でしっかりした人物。重田富子、重田都子が恵比寿周辺の物件を紹介する際に登場し、彼女たちに協力する。チャラ男自身が実際に恵比寿に住んでいるため、扱う物件のみならず、恵比寿の街や店にも詳しい。
イラストレーター
第1話「重田不動産」に登場する。イラストレーターを生業にしている女性。7年間同棲していた彼氏に好きな人ができ、別れを告げられたため、1人で住むための家を探しに重田不動産を訪れた。彼氏との思い出に縛られ、単身思い出の場所に出向くなどして自ら傷口に塩を塗るタイプ。東京に出て来てから7年間、吉祥寺にしか住んだことがなく、次の物件も吉祥寺で探したいと考えている。
今村 貴子
第2話「転職ガール」に登場する。転職を理由に、吉祥寺界隈に引っ越しを希望し、重田不動産を訪れた女性。美味しいものが大好きで、吉祥寺近辺のお店には特に詳しいが、料理は苦手なため自炊はしない。もともと勤めていた会社でいじめに遭い、人間関係に疲れて転職先が決まらないうちに退職した。通勤の都合だけで興味のない町に住んでいたため、今度は会社から遠くても自分の好きな町に住みたいと、大好きな吉祥寺への引っ越しを熱望している。
岩倉 亜季
第3話「編集長さん」に登場する。ファッション雑誌の編集長を務める女性。仕事とプライベートのスペースを分けたいと、現在住んでいる目黒から吉祥寺への引っ越しを希望し、重田不動産を訪れた。もともと結婚にはまったく興味がなかったが、仕事と私生活でのトラブルが重なり、結婚を考えるようになった。独身のうちに知らない町に飛び込んでみたいという欲求にかられ、栄えた町への転居を考えている。 なお、現時点では特に結婚の予定はない。
眼鏡の女性 (めがねのじょせい)
第4話「シェアするお年頃」に登場する。富山から上京したばかりの、眼鏡をかけた女性。富山では眼鏡店に勤務しており、5年間実家暮らしで、仕事と母親の介護を両立させてきた。母親が亡くなった後、眼鏡店の東京新店舗に副店長として勤務する話が持ち上がり、身軽になったこともあって上京を決意。憧れていた吉祥寺で友達を作り、都会での生活を楽しみたいと考えて重田不動産を訪れた。 初めての都会暮らしなので、安心できる女性専用のマンションを希望している。
橋本
第5話「本当に欲しいもの」に登場する。親に勧められて入社した会社を辞め、映像の学校に通いながら映画監督の助手を務めている女性。現在住んでいる広尾の部屋が2週間後に契約切れになるため、即入居が可能な部屋を探して、重田不動産を訪れた。風呂が大好きで、風呂に入りながら読書や考えごとをすることが多いため、物件選びでは特に風呂を重要視している。 なんでもそこそこ手に入る人生ではなく、本当に欲しいと思えるものが1つだけでもあるという人生を望んでいる。
友部 麻衣子
第6話「始められる場所」に登場する。夫との離婚が決まってマンションを出ることになったため、重田不動産を訪れた女性。一人暮らしは初めてで、自分がどんな物件を希望しているかが分からず、とりあえず今も住んでいる吉祥寺の物件を探すことにした。趣味は料理とテレビ。夫との間に子供ができず、悩んでいた時、アイドルにハマってそれを心の支えとし、元気をもらっていた。 なお、夫はアイドル嫌いだったため、そのことを内緒にしていた。
塩田夫妻
第7話「ストーリーがある家」に登場する。都心から1時間弱くらいの閑静な住宅街に住む夫婦。年季の入った自宅のリノベーションを大山に手掛けてもらった。夫婦それぞれにこだわりがあり、特に妻が持つイメージを主体に具現化した家になった。新しい家は、「シンプル」「収納」「工業デザイン」を軸に、「見せる収納」「ナチュかわ」「カフェ風」をNGワードとしたコンセプトで方針を定め、理想のデザインを実現させた。
女性カメラマン
第8話「東京のブルックリン」に登場する。ニューヨークから帰国したばかりの女性。プロのカメラマンを目指して渡米し、友人5人とシェアハウスで暮らしていた。思ったような成果が出せず諦めて帰国して実家に戻ったが、両親とケンカしたため一人暮らしを決意し、重田不動産を訪れた。特に希望もなく、思いつく場所もなかったため、学生時代を過ごした吉祥寺に居を構えようと考えている。 その経歴から英語が堪能。
斎田 (さいだ)
第9話「帰りたい街」に登場する。ハイスペックで家賃が安い物件を探して重田不動産を訪れた女性。基本的に科学的根拠のないことは信じないタイプなので、斎田自身はどんな事故物件もいとわないが、友人やいい雰囲気になった男性が、それを理由に離れていってしまうため、あまり瑕疵が重くない事故物件を探している。 SEとして新宿に勤務しており、忙しい毎日を送っているため、15分で通える範囲として吉祥寺の物件を希望している。
三野 聡子 (みの さとこ)
第10話「代謝していこう」に登場する。デパートの靴売り場に勤めている女性。小説を書くことが趣味で、将来的には小説家として生計を立てたいと考えている。仕事上のトラブルで溜まったストレスを創作で解消する日々を送っていたが、隣人のセックスによる騒音に悩まされ、引っ越しを決意。偶然に、面白い町としてテレビで紹介していた吉祥寺に住んでみようと思い立ち、重田不動産を訪れた。
水商売の女性 (みずしょうばいのじょせい)
第11話「楽しい暮らし」に登場する。付き合って2年になるOLの彼女と、女性同士で重田不動産を訪れた女性。水商売を生業にしているが、夢は大きく、将来は政治家になって世の中を変えたいと考えている。彼女と一緒に暮らすための家を吉祥寺で探している。人を呼んでパーティができる一戸建てを希望しており、現代版ヒッピーの思想で、毎日楽しく暮らすことが目標。
麻子 (あさこ)
第12話「出会いの街」に登場する。渋谷のネイルサロンでネイリストを務める30歳の女性。東小金井の実家に住んでいるが、それが理由で婚活がうまくいかず、思い切って実家を出る決意をした。勤務地に通勤しやすい、吉祥寺で物件を探そうと重田不動産を訪れた。年末からは勤め先で店長になることが決まっている。
マエル・コラン (まえるこらん)
第13話「のんびりタウン」に登場する。日本に来て8年になるフランス人女性。日本のカルチャーを紹介するフランス雑誌の編集者を務めている。自然が大好きで、休日にはよく島などに旅行に行く。現在は阿佐ヶ谷で大学生2人とルームシェアをしているが、年齢も30歳を過ぎ、プライバシーが欲しいと感じるようになったため、中央線沿線で綺麗な和室の物件を探しに重田不動産を訪れた。
フリマのおっさん
第14話「アメリカンな街」に登場する。福生で開催されていたフリーマーケットで、売り子をしていた気の良い男性。重田富子と重田都子が福生に物件を見に来ていた時に知り合う。飼っていたゴールデンレトリバーが去年亡くなったため、寂しさを紛らわそうと犬の置物を飾っていたが、手放して吹っ切ろうと決意し、フリーマーケットでその置物を販売している。 アメリカのヴィンテージ品だからと、高い値段で何度も都子に売りつけようと試みる。
えな
第16話「東京に住む理由」に登場する。漫画家を目指して上京し、友人と同居していた女性。生活がアルバイト中心になるあまり、休みの日も漫画を描かなくなっており、同居人に夢に対する姿勢を非難されていた。そのうえ、部屋の更新はしないと同居の解消を突き付けられたため、自分の部屋を探すことを決意し、重田不動産を訪れた。何に対しても「でも」が口癖になっており、言い訳も多くすべてに対して否定的な考え方になっている。
仁木 (にき)
第17話「受け入れてくれる街」に登場する。へヴィメタルフェスティバル「ラウド・パーク」で重田富子、重田都子と知り合い、意気投合したバンドマンの女性。現在は武蔵小金井在住で、楽器演奏可の物件に住んでいるが、ベースの演奏について隣人からうるさく口出しされたため引っ越しを決意。気兼ねなく楽器演奏ができる物件を探そうと、重田姉妹を頼って重田不動産を訪れた。 30歳になり、バンドを続けることについて不安を感じるようになり、悩んでいる。
佐藤 麻里子
第19話「シネマ・パラダイス」に登場する。アパレルの仕事をしている女性。現在の住まいで、パーティ好きの隣人から深夜に及ぶ騒音被害に遭っていたため、引っ越しを決意して重田不動産を訪れた。仕事がら、ウォークインクローゼットがある部屋に憧れを抱いている。また映画好きで、仕事帰りにふらっと寄れる映画館のある街に住んでみたいと考えている。 最近、体の不調から受けた検査で病気が発見され、健康について改めて想いを巡らせている。
ストーカーに悩む女性 (すとーかーになやむじょせい)
第20話「ひきよせられる街」に登場する。ストーカー被害に遭っている女性。現在の住居は誰でも出入りできる普通のマンションで、何度も怖い思いをしているため、オートロックのマンションへの引っ越しを希望し、重田不動産を訪れた。昔から、変な人を惹きつける体質らしく、ストーカー以外にも借金の肩代わりや洗脳など、さまざまな被害に遭ってきたため、人付き合いに恐怖感を覚えるようになっている。
イマドキの娘 (いまどきのこ)
第22話「同じ場所に住む理由」に登場する。ショートヘアの女性。現実主義で、はっきりとした考えを持っている。吉祥寺の街にあこがれを持ち、条件に合う物件を探している。重田不動産の重田富子と重田都子に物件の案内を頼んだが、条件に合う物件に出会う事ができず、いわゆる吉祥寺から少し離れる事を提案された。しかし、吉祥寺にこだわる事自体に疑問を感じ始める。同じ土地、同じ家に住み続ける事に対してとても否定的な考えを持っている。風火水土の属性に分類した体質論「アーユルヴェーダ」を深く支持しており、属性は風。好奇心旺盛で飽きっぽく、同じところに留まっていられないという自分の特徴を、属性のせいにしている。
母 (はは)
第21話「初めての一人暮らし」に登場する。ふみの母親。何にでも理屈をつけて、娘のやりたい事、興味を持った事など、娘の意見をすべて否定し、自分の思い通りにしようとするところがある。心が弱く、自分の思い通りにならないとすぐ体調を崩してしまう。そのたびに家族にかかる負担は計り知れないものとなっていた。今回、娘が一人暮らしをするにあたって、いっしょに物件探しをする事にしたが、娘が選ぶところはすべて難癖をつけて否定し、受け入れようとしない。それは、根本的にふみが家を出ていく事に賛成していないからでもある。重田不動産の重田富子と重田都子に対して、態度が悪く下品だと感じ、彼女らと契約するのを嫌がるふしを見せる。
今井 (いまい)
第23話「毎日がレジャー気分」に登場する。北海道出身の女性。就職のために上京し、現在は居酒屋のチェーン店で正社員として働いている。ろくに休みも取れず、24連勤も当たり前。あまりの激務に心が折れそうになり、引っ越しをすれば楽になるのではないかと考え、重田不動産を訪れた。もともと出不精なため、遠くに出かけなくても楽しめるような賑やかな街に住みたいと、吉祥寺を希望している。現在住んでいる新小岩から、勤務地である新宿へは40分以上かかるため、勤務時間を半分に減らしたいと考えている。
インスタ女子 (いんすたじょし)
第24話「自分を好きになる街」に登場する。フリーランスの女性。台湾華語の翻訳を生業にしている。流行のインスタにハマっているため、何を差し置いても、その場で気に入ったものの写真を取り、インスタにアップするのが日常。インスタ映えするオシャレな街で、西海岸風の家に住みたいと吉祥寺を希望し、重田不動産を訪れた。普段から自宅仕事で社会との接点がなく、孤独を感じていた。それを払しょくするためにSNSを始めたものの、逆に孤独を感じる事も少なくない。そのため、SNSを止めようと思う時もあるが、自分に自信がなく、世界と切り離されてしまう事を恐れ、止められないまま今日に至る。
ふみ
第21話「初めての一人暮らし」に登場する。30歳前後の女性。母の娘。実家で両親と暮らしていたが、職場が高田馬場に変わるにあたり、実家を出て一人で暮らす事を決めた。物件探しは主にインターネットで行っていたものの、何を見せても母親からの賛成がもらえず、何かにつけて否定してくるため、いっしょに重田不動産を訪れ、物件探しをする事になった。昔から何でも自分の思い通りにしようとする母の影響で、家族が納得する形を選び、妥協し続けてきたため、自立できないままでいる。しかし、今回重田富子と重田都子から、そんな自分に対して自分の人生をあきらめていると指摘された事に悔しさを感じ、自分の気持ちを爆発させる。
歯科医 (しかい)
第22話「同じ場所に住む理由」に登場する。30歳の女性。デザイナーの大山に、自宅のリノベーションを依頼している。実際にリノベーション工事をしている現場を見学するため、重田富子と重田都子の実家を訪れた。結婚の予定もなく、終の住家欲しさに、リノベーションするための物件としてマンションを購入済み。一人っ子で、今まで一度も人を好きになった事がない。夢は、趣味の刺繡を思う存分追求できる居心地のいい家で、大好きな猫達と楽しく暮らす事。
宏美 (ひろみ)
第25話「あの頃、住みたかった家」に登場する。30歳の女性。祖父母が亡くなり、両親が家を手放す事を決めたのをきっかけに、一人暮らしをする事になった。子供の頃、自分だけが一戸建てに住んでいたため、団地に住む友達の仲間に入れてもらえなかった苦い思い出がある。そのため、未だに団地に対して強いあこがれを持っており、新生活を始めるなら団地に住みたいと重田不動産を訪れた。
場所
重田不動産 (しげたふどうさん)
吉祥寺にある不動産を扱う株式会社。重田富子、重田都子姉妹が経営しており、彼女たちの趣味であるロックスターのポスターや、フィギュアがたくさん飾ってある。客の希望に合った物件のビックアップを勲男が担当し、接客や物件案内を富子と都子が担当している。吉祥寺の物件を望む客が来ると、まずは希望に合った物件を見せるが、その後はその客に合った別の町に案内して新たな魅力を体感してもらい、最後にその町の物件を紹介するというのが、基本的な案内方式となっている。 初めて来店した客は、その強引な手法も相まって、店に対して不信感を持つ場合が多い。
書誌情報
吉祥寺だけが住みたい街ですか? 6巻 講談社〈ヤンマガKCスペシャル〉
第1巻
(2015-11-09発行、 978-4063826814)
第2巻
(2016-03-09発行、 978-4063827569)
第3巻
(2016-10-06発行、 978-4063828511)
第4巻
(2017-04-07発行、 978-4063829594)
第5巻
(2017-12-06発行、 978-4065105283)
第6巻
(2018-12-20発行、 978-4065135556)