世界観
本作『ククルカン~史上最大の作戦~』は20世紀半ばのヨーロッパに似た国「連合王国」が舞台となっている。連合王国は、「スフィア」という謎の巨大な球体が出現して以降、いっさいの連絡が途絶した「東の大陸」へ向けた上陸作戦「スフィア作戦」の実行準備の最中にある。作品世界は作品の中軸を担う「東方航空旅団」を中心に描かれており、レシプロ戦闘機を始め、ライフルや戦車など多くの兵器が登場する。軍隊の装備を含めた雰囲気は、第二次世界大戦の物に近しい。その一方で、人間同士の戦争は描かれず、敵として登場する存在は「骸骨兵」と呼ばれる亡霊のような存在が中心となっている。また、生身をむき出しにしたまま、バイクのように跨がる航空機「ククルカン」に搭乗する少年達を中心に描き出す事で、空にあこがれを抱いた若者達の青春劇といった雰囲気が作られている。本作の世界は戦時中のような暗澹たる空気が描かれず、一種の爽快感を持ったファンタジー寄りのミリタリー世界として描かれているのが、大きな魅力となっている。
あらすじ
第1巻
連合王国の貴族、リプトン家の長男であるユージーン・リプトンは、東方航空旅団の第2航空騎兵隊への入隊を果たすが、女子に対する覗き行為がバレて捕縛されていた。初犯という事で見逃されたリプトンは、助けを求めたにもかかわらず、逆にリプトンを気絶させて女子へ突き出した新入隊員の茅野つばさと男性寮で同室になる。航空機「ククルカン」へ乗るための座学と体力作りに明け暮れる日々の中、傷を負った鳥を助けようとして塀から落ちそうになったつばさを助けた際に、リプトンは彼が実は男装した「少女」だった事を知ってしまう。なぜ、男性社会である軍隊に性別を隠してまで入隊したのか、つばさの目的を気にしながら、秘密を共有する共犯となったリプトンは、教育課程の大幅な短縮に伴い、ついに「ククルカン」での実機訓練を行う。しかし優秀な成績を収めるつばさに比べて、リプトンはエンジンを始動させるだけでも一苦労する有様で、部隊の中でも特に後れを取っていた。挽回を目指してリプトンが日々練習を重ねる中、つばさの乗っていた「ククルカン」が鳥と衝突する事故「バードストライク」を起こしてしまう。
第2巻
「バードストライク」の一件以来、ユージーン・リプトンと茅野つばさはお互いを意識し始めていた。そんなある日の夜、リプトンは、つばさが、大切にしている私物のゴミ箱にすがりついて泣いている姿を目撃する。その時につばさが口にした「諏訪友也」という人物が、彼女にとってどういう存在なのかを気にするリプトンだったが、その一方で8年ぶりに再会したミュール・スピアーズの告白に、どのように応じるかにも悩んでいた。つばさの性別を知る、もう一人の共犯者であるミリス・ウェルシュに態度をはっきりするように言われたリプトンは、友也について尋ねようとつばさを呼び出す。それでも中々言い出せないリプトンだったが、つばさが偶然落とした写真を見て、思わず誰なのか尋ねてしまう。つばさはその問いに、スフィアの向こう側にいる、恋人だったらよかった人と答えを返すのだった。それを聞いたリプトンは、生きているか、死んでいるかもわからない無敵の人物が現れた、と途方に暮れてしまう。対してつばさは、拍子抜けするほどにいつも通りの態度を崩さないのだった。
第3巻
ユージーン・リプトンら新兵達は「エータ・アクエリズ」へ参加させられる事となった。それは連合王国が、年に二度スフィアの向こう側から侵攻して来る「骸骨兵」をルイスブルグ島で食い止めるという、公表されていない極秘戦闘だった。リプトンや茅野つばさら新兵達は、東方航空旅団が編成された目的である、スフィアの向こう側を探索する「スフィア作戦」の重要性を改めて実感するのだった。そんな中、順調に進行していた戦闘に異変が起こる。敵が新型の戦車を投入してきた事で、戦線の一部が崩れ始めたのだ。敵の前線、「RAL」よりも後ろに回ると灰になってしまうという現象のせいもあり、一気に緊張感の高まる中、司令部の判断により急遽、投入予定のなかった「ククルカン」が投入される事となる。爆弾を抱えたククルカンの活躍によって戦線は余裕を取り戻す事に成功するが、「RAL」に触れてしまったつばさが墜落してしまう。助けに駆け付けたリプトンを前に、気を失っていたつばさが目を覚ますと、今まで抱えていた秘密を打ち明ける。それは、つばさがスフィアの向こう側からやって来た人間だという告白だった。
第4巻
ユージーン・リプトンはミリス・ウェルシュによって煽られ、冗談で茅野つばさへの愛を叫んだところ、偶然通りかかった本人にこれを聞かれてしまう。リプトンが隠れて告白の練習をしていたと勘違いしたつばさは、後日、自分の前でやればいいとリプトンに告げる。しかし、女装をしていた件だと勘違いしたリプトンは、悪ふざけだったと返してしまい、つばさを怒らせてしまう。誤解はミリスの手によって解消されるが、以降、二人のあいだには微妙な空気が流れる事となった。10日後、「ノーザンデルタ・アクエリズ」に参加していた二人は、骸骨兵との戦闘に突入。そこに、今まで現れた事のない敵の戦闘機が出現する。性能で劣るククルカンが追い回される中、新たに現れた謎の戦闘機が第2航空騎兵隊を救出する。戦闘後、基地に降り立った戦闘機から現れたのは、つばさの思い人である諏訪友也、その人だった。
第5巻
スフィアの向こう側から現れた諏訪友也のもたらした情報に従い、ユージーン・リプトンらがルイスブルグ島の調査を行っていたところ、巨大な空飛ぶ船と謎の光が出現。さらにそれに導かれるように、時季外れの骸骨兵達の侵攻が始まる。戸惑うリプトン達だったが、彼らの前にもう1隻の空飛ぶ船「鷲の鋏」が現れる。アプリコット・ウェブスターが持っていた写真にあったシルエットと同じ形の船から降り立った少女は、ルオ・ゾネンブルーメと名乗った。「RAL」の秘密を語り、肉弾戦であっさりと骸骨兵を撃破してみせたルオは、スフィアの事を「エル・ソラール」と呼び、自分達が「テスカトリポカ」と呼ばれる存在と戦っていると周囲に告げる。そして、友也を回収すると再び立ち去るのだった。事態が急速に動く中、前倒しになった長期休暇も終わった頃、茅野つばさの性別が周囲にばれ、東方航空旅団の基地で大きな事件となってしまう。
第6巻
性別がバレたものの、里親であるジャネット・ルイスの取りなしによって事なきを得た茅野つばさは、女子寮へ移る事となった。一方、空中に現れた触れる事のできない船「翼蛇神」の調査は一向に進んでいなかった。苛立つディルウィード・ベルコンテの前に、突如、「翼蛇神」の心を自称する男、グクマッツが現れ、女っ気がなくてやる気がないから「翼蛇神」が動かないのだと語る。彼女ほしさに女に声をかけまくるグクマッツ。茅野つばさに対してもアプローチを仕掛けたのに業を煮やしたユージーン・リプトンは、自身が女装して誘惑する。グクマッツはまんまと騙されるが、その正体を知って激昂。時同じくして、ルイスブルグ島に骸骨兵が侵攻を開始するが、突如巨人となったグクマッツと、「翼蛇神」の中から引き抜かれた剣の力によって、一撃で全滅させられる。「翼蛇神」の力が解放された事により、東の大陸と連合王国を隔てるユンカース海峡を渡る算段のついた東方航空旅団は、ついに念願の「スフィア作戦」を発動する。しかし、海峡を渡る彼らの前にグクマッツとは異なるもう一人の巨人、テスカトリポカが姿を現す。
第7巻
東方航空旅団は、ついに東の大陸のミリオーネンへ上陸を果たした。しかし、ユージーン・リプトンはプレヤドック・ヤコブレフを助けるために行方不明となっていた。茅野つばさが安否を心配する中、リプトンとペジャは敵中を合流予定地点へ向けて走っていた。途中で同じく脱落した味方部隊と合流するが、敵に包囲されて身動きが取れなくなる。万事休す、と行ったタイミングで救援に現れたのは第2航空騎兵隊のククルカンであり、つばさだった。急死に一生を得たリプトンは束の間の休息を過ごす。7日後、前哨地点へ「翼蛇神」が合流した時、突如としてスフィアに異変が発生する。スフィアの一部が崩壊し、地上へ落下したのだ。落下地点の近くにいたリプトンの前に、再び姿を現したルオ・ゾネンブルーメ。風雲急を告げる状況の中、彼女の口によって、スフィアを巡る謎のすべてが語られ始める。
登場人物・キャラクター
ユージーン・リプトン (ゆーじーんりぷとん)
東方航空旅団の第2航空騎兵隊に入隊した新兵。マイペースでどこか天然なところのある少年で、非常にスケベ。同じく基地に配属されている女子達に、セクハラや覗き行為を働いてはお仕置きされている。そのため、女性達の大半からは蛇蝎のごとく目の敵にされているが、同時に、男性陣からは勇者と称えられ、慕われている。生家であるリプトン家は連合王国の中でも由緒正しい貴族の家柄。 広大な敷地と大きな屋敷を持つが、往年に比べて権勢は衰えてきている。ユージーン・リプトン本人も、貴族の家の長男という立場ながら、跡取りである事に固執しておらず、貴族という形式が時代遅れであるという認識を持っている。育ちの関係で、父親とはよく狩猟に出かけていた過去があり、ライフルの扱いが抜群にうまい。 その技術は、「ククルカン」に登場した際も遺憾なく発揮されており、本番に強い強心臓っぷりと合わせて一目を置かれている。同室となった同じ新兵である茅野つばさが実は女性であった事から、次第に存在を気にかけるようになっていく。整備隊の隊長を務めるマーガレット・マーティンとは、彼女の姉であるマリー・マーティンがリプトン家のメイド長であり、リプトンの世話係を務めていたという関係にある。
茅野 つばさ (ちの つばさ)
ユージーン・リプトンのルームメイトで同じ新兵。16歳の少女だが、男性の入隊枠しか存在しなかった第二航空騎兵隊に入隊するため、普段は男装して過ごしている。必要に応じて女子寮の施設を使う際には、男性隊員達にバレないよう変装しており、「茅ヶ崎桃花」という偽名を名乗っている。みんなには秘密にしているが、スフィアの向こう側、東の大陸にあるミリオーネンという国の出身。 7年前(茅野つばさの主観では3年前)に、原因不明の出来事によって街ごと連合王国へと飛ばされて来た。離ればなれになった「諏訪友也」という人物と再会するため、「スフィア作戦」に参加し、スフィアの向こう側へたどり着く事を目的としている。 連合王国側ではジャネット・ルイスという女性が里親になっている。
ミュール・スピアーズ (みゅーるすぴあーず)
東方航空旅団の基地業務群通信隊に所属している少女。茅野つばさらと同じ新兵。8年前、ユージーン・リプトンに助けられて以来、思いを寄せている。黒髪の長髪でお淑やかな言動ながら、見た目からは想像できないほどの怪力を持っており、壊れた給水塔を持ち上げる事すらできる。また、ユージーンに渡すプレゼントに「冬将軍」と書かれたシャツを渡すなど、独特のセンスを持っている。 リプトンとつばさの関係にヤキモキさせられる場面が多く、同じくつばさに思いを抱いているアプリコット・ウェブスターとのあいだに、恋愛同盟であるライプチヒ条約機構を締結している。
プレヤドック・ヤコブレフ (ぷれやどっくやこぶれふ)
東方航空旅団に存在する唯一の歩兵部隊である空挺部隊の所属で、分隊長を務める男性。年齢は20歳。階級は伍長。ユージーン・リプトンらの教官であるトーマス・ウィンタースの先輩で、トーマスには「ペジャ先輩」と呼ばれている。普段から頭にバンダナを巻きつけた格好をしているため、周囲からは禿げているのではないかと疑われているが、実はプラチナブロンドの長髪の持ち主。 ユージーンと同じくスケベな性格をしており、たびたび覗き作戦を実行している。衛生隊に所属する少女のミリスに淡い思いを抱いているが、彼女が蒼天にあこがれを抱いているため、一歩を踏み出せずにいる。
トーマス・ウィンタース (とーますうぃんたーす)
第二航空騎兵隊の教官を務める男性で、階級は少尉。ユージーン・リプトンらからは、「トンキー教官」と呼ばれている。現在でこそ階級が上回ってしまっているが、プレヤドック・ヤコブレフの後輩にあたり、彼の事を「ペジャ先輩」と呼んでいる。また、マーガレット・マーティンらとは新兵時代からの知り合い。快活で明朗な性格をしている一方、教練課程を大幅に短縮したり、航空機である「ククルカン」の操作をバイクと同じだと説明するなど、大ざっぱな考え方をする。 また、昼食時に弁当箱を数個たいらげてなお量が少ないと言うなど、大食いな一面もある。
ロビン・ランドルマン (ろびんらんどるまん)
第2航空騎兵隊の隊長を務めている中年の男性で、階級は大尉。本名以外にロビン「スナッピー」ランドルマンと呼ばれる事もある。東方航空旅団の古参の一人で、トーマス・ウィンタースやプレヤドック・ヤコブレフが新兵だった頃から着任している。新兵器であるが故に未知数な部分が多い「ククルカン」を主体とする部隊の隊長という事もあり、なにかと軍内の苦労を背負う立場にいる。 茅野つばさの里親であるルイスと顔見知りで、つばさが性別を隠して軍隊へ入隊する事を手引きした人物でもある。
ゼノール・ニクソン (ぜのーるにくそん)
東方航空旅団の基地司令を務めている初老の男性で、階級は大佐。ルの字型の立派な口髭を生やしている。基地司令という要職ではあるが、杓子定規的な性格ではなく、現場への理解のある人物。また、ノリのいい性格をしており、数回にわたって立案された男性陣による女子への覗き作戦に参加している。そのため、スケベ根性を隠さず、素直な性格をしているユージーン・リプトンを気に入っており、何かと目に掛けている。
蒼 天 (そう てん)
戦闘航空隊から第2航空騎兵隊への転属組の一人で、階級は伍長。前所属の戦闘航空隊ではエースと呼ばれたほどに卓越した操縦技術の持ち主である男性。また人格者でもあり、責任感も高く、人望も厚いため女性人気が非常に高い。実績やその性格から、隊を指揮する事が多く、のちにその指揮能力を認められ、4階級特進の准尉となった。 非常にできた人物ではあるが、空をこよなく愛するあまりに、暫く空を飛べないとストレスで物や人間に当たり散らしてしまうなど、弱さをかいま見せる事もある。周囲からは蒼天というフルネーム以外に「蒼」とだけ呼ばれる事もある。
ジャッカル・ソベル (じゃっかるそべる)
戦闘航空隊から第2航空騎兵隊への転属組の一人で、階級は伍長。高い操縦技術の持ち主で、前所属の戦闘航空隊では教官を凌ぐ腕米だったと噂されている。性格に難のある男性で、実力主義者でありながら、自分よりもあらゆる面でつねに前を行く蒼天に僻みを抱いている。気むずかしい性格である一方、恋人であるパシティアの事を大切に思っており、セクハラを働いたユージーン・リプトンをきつく責め立てたりする事もある。
デルウィード・ベルコンテ (でるうぃーどべるこんて)
鳴り物入りで中央の統合参謀本部から東方航空旅団へ赴任して来た若きエリートで、階級は少佐。丸メガネに胸元まで伸ばされた長髪の男性。数々の模擬戦で常勝無敗を誇る名軍師とされている。ゼノール・ニクソンが中央から呼び寄せた人物で、涼やかな外見に似合わず、ユージーン・リプトンやプレヤドック・ヤコブレフらのスケベに理解がある。 「トライデント作戦」に続く新たなる覗き作戦として「アロンダイト作戦」を立案した張本人でもある。
オスカー・リプトン (おすかーりぷとん)
ユージーン・リプトンの実の弟。リプトンと比べてまじめな性格の少年。長男であるリプトンが家を出て軍隊に飛び込み、相続権も半ば放棄しているため、リプトン家の実質的な跡継ぎとなっている。貴族としての責務であるノブレス・オブリージュに忠実な考えを持っており、将来的にリプトン家の小作農家達を自立させ、家としては社会的奉仕を最優先に、規模を縮小しようと考えている。
フランク
ユージーン・リプトンの生家であるリプトン家の執事。初老の男性で、リプトンの幼い頃を知る人物。そのため、リプトンの性癖をよく知っており、女性にセクハラを働いたのを見てもまったく動じる事がなかった。リプトンが実家に帰省した際に、送迎を担当するなど運転手を務める事もある。
グクマッツ
デルウィード・ベルコンテの前に突如として現れた謎の青年。色黒の肌をしており、上半身は裸に近い民族衣装のような服装をしている。正体は巨大な空飛ぶ船である「翼蛇神」の心であり、意識そのもの。生物として対になる存在、すなわち彼女がいなくてやる気が出ないと嘯(うそぶ)いており、やる気の原動力となる女性の提供を求めた。 テスカトリポカという兄にあたる存在がいるが、彼の事を非常に嫌っている。
諏訪 友也 (すわ ともや)
茅野つばさの幼なじみの青年。7年前にスフィアが現れてから消息不明となっていたが、「ノーザンデルタ・アクエリズ」の最中に、つばさと思わぬ再会を果たした。卓越した戦闘機乗りで、階級は大尉。つばさとは家が近所で、年の差もあり、兄妹のような関係にあった。しかし、スフィアの影響によって異なる時間の流れを生きた事により、再会した際には年の差が縮まっていた。 性格はどこか天然なところがあり、マイペース。スケベな一面があり、女性に目移りしがちなところなど、ユージーン・リプトンと似た部分が多い。
ルオ・ゾネンブルーメ (るおぞねんぶるーめ)
「鷲の鋏」の管理者を名乗る少女。髪を頭の両側で太めにまとめたツインテールの髪型をしており、ドレスのような服装に身を包んでいる。ユージーン・リプトンらと同年代の外見だが、「鷲の鋏」の搭乗員らからは「親方」と呼ばれており、実質的な指導者の立場にある。本人としては「親方」と呼ばれるのが不服なようで、毎度のように「船長」だ、と訂正を入れている。 「スフィア」の事を「エル・ソラール」と呼び、「骸骨兵」の事や、「RAL」の原理について説明するなど、連合王国の人間にとって長らく謎のままとなっていた事柄の答えの、多くを知っている。また、連合王国へ諏訪友也を遣わせた張本人でもある。背中に水滴型の盾とメイスを担っており、「骸骨兵」を相手に近接戦闘をこなす勇敢さも持ち合わせている。
ジャネット・ルイス (じゃねっとるいす)
茅野つばさの里親である女性。ウェーブのかかった髪を肩ほどまで伸ばした髪型をしている。姐御肌な性格をしており、口調もどことなく男勝り。軍内部に広く知り合いがおり、つばさが軍に入隊する際には、顔見知りであるロビン・ランドルマンに手引きして貰った。また、陸軍参謀総長であるマーシャルはジャネット・ルイスの弟の友人であり、つばさの性別が周囲に露見した際には、圧力を掛けて問題をもみ消した。
マリー・マーティン (まりーまーてぃん)
ユージーン・リプトンの生家であるリプトン家に仕えるメイド長。肩口でまっすぐに切りそろえられたショートヘアの女性で、フランクと同様にリプトンの幼い頃を知る人物。マーガレット・マーティンとは実の姉妹で、彼女の姉にあたる。11歳頃からリプトンが男らしく成長していく事が許せず、帰省したリプトンがこれ以上、男らしく成長しないようにと去勢を企んだ。 幼い頃からリプトンに性の目覚めの予兆があるたび、「悪」として厳しく躾を施しており、スケベな今のリプトンを形作るうえで強い影響を与えている。
マーガレット・マーティン (まーがれっとまーてぃん)
整備隊の整備長を務めている女傑で、階級は一等曹長。メガネをかけており、髪を頭の後ろでまとめ上げている。気が強く、規則にうるさい性格で、女子班の代表的な立場にある。そのため、女性陣を率いてはユージーン・リプトンをはじめとする男性陣の覗き作戦と日夜戦いを繰り広げている。リプトンの生家であるリプトン家で働くメイドのマリー・マーティンとは実の姉妹で、妹にあたる。 姉のマリーとは手紙のやりとりをしており、リプトンが日頃から起こしているセクハラや覗きといった騒動を逐一報告していた。ロビン・ランドルマンやトーマス・ウィンタースらとは彼女が新兵だった時代からの付き合いである。
ミリス・ウェルシュ (みりすうぇるしゅ)
衛生隊に所属する女性。いつも目を細めた柔和な表情を浮かべた、快活で無邪気な性格の人物。同じジュニアハイスクールの出身の先輩である蒼天にあこがれて軍隊まで追いかけてきた。軍隊に入隊するために年齢を誤魔化しており、実の年齢は14歳。外見からは実年齢がわからないほど、はっきりとした凹凸のある体形をしている。茅野つばさの性別を知る数少ない人物の一人で、男性として暮らしているつばさの生活を何くれとなく助けている。
アプリコット・ウェブスター (あぷりこっとうぇぶすたー)
整備補給群検査隊に所属する少女。長めの髪を頭の後ろで二つにまとめているが、髪の先端部だけがカールしている特徴的な髪型をしている。自他共に認める元気が取り柄の人物で、挨拶や報告をつねに大きな声で話す。落下物から茅野つばさにかばわれて以来、つばさに対して淡い思いを抱いている。また、7年前につばさと同じく「スフィア」の向こう側から飛ばされて来た東の大陸の人間でもある。 ミュール・スピアーズとはお互いの恋愛を応援し、協力し合う「ライプチヒ条約機構」を締結した恋愛仲間の関係にある。
パシティア
衛生隊の女性。ジャッカル・ソベルの恋人で、ポニーテールを大きめのリボンでまとめた髪型をしている。気が強い性格をしているが、恋人であるジャッカルには従う一途な一面がある。しかし、彼と仲のよくないユージーン・リプトンや茅野つばさにきつい言葉を投げかけたり、嫌がらせを働く事で尽くそうとするなど、思いが行きすぎてしまう場合も見受けられる。
ラフレシア・フープラー (らふれしあふーぷらー)
衛生隊に所属する特務曹長で、フープラー三姉妹の次女。女性だが男性と見まごうほどにたくましい、筋骨隆々とした人物。体格に見合った怪力の持ち主でもあり、負傷兵二人を両肩に担って平然と歩く事ができるほど。また前線での衛生隊隊長を務めており、戦闘になれない新兵達を叱咤激励しながらも、衛生大隊の心得を説いて回るなど、精神的にも頼もしい一面を持ち合わせる。
ディオネア・フープラー (でぃおねあふーぷらー)
基地で働く栄養士で、フープラー三姉妹の三女。姉であるラフレシア・フープラーと似た筋骨逞しい体格の人物で、髪をボブカットにまとめた外見をしている。飛行機からパラシュートなしで着地したという伝説の持ち主で、姉のサラセニア・フープラーと共に最強の栄養士として恐れられている。
サラセニア・フープラー (さらせにあふーぷらー)
基地で働く栄養士でフープラー三姉妹の長女。姉妹の中で最も小柄な体格をしており、筋骨逞しい次女や三女に比べ、非常に少女らしい外見をしている。また、姉妹の中では唯一、頭の両隣で髪をまとめたツーテールの髪型をしている。その体格に見合わず、ラフレシア・フープラーに蹴りを見舞った際には、受け止めたラフレシアの足下が陥没するほどの怪力の持ち主。 人員輸送車を投げたという伝説がまことしやかに語られており、同じく、栄養士として働くディオネア・フープラーと共に最強の栄養士として恐れられている。
集団・組織
東方航空旅団 (とうほうこうくうりょだん)
スフィア作戦のために編成された連合王国の軍組織。7年前にスフィアが現れて以来、音信不通の状態となっている東の大陸へ渡って調査する作戦、スフィア作戦の遂行を目的としており、100年にわたり戦争経験のない連合王国にありながら、第2航空騎兵隊などの新設の部隊が設けられている。編成の目的上、航空戦力が主体となっており、歩兵部隊は唯一、空挺部隊のみとなっている。
第2航空騎兵隊 (だいにこうくうきへいたい)
ユージーン・リプトンらが所属する、東方航空旅団に新設された航空機部隊。採用している航空機の名前から取って「第2航騎(ククルカン)」と呼ばれる事もある。部隊の隊長はロビン・ランドルマン。新規採用の新人隊員や、戦闘飛行隊からの引き抜かれた隊員によって構成されている。世界初のククルカンの操縦訓練が行われるなど、実験的な側面の強い部隊で、運用の方針などについても未知数の部分が多い。 また、部隊の存在価値に関しても疑問視される部分が残されており、上層部からの予算割当てや機体の配備数などで苦労している部分もある。
戦闘航空隊 (せんとうこうくうたい)
戦闘機を中心とする航空機部隊。第2航空騎兵隊の設立と共に部隊員が引き抜かれており、以前は蒼天やジャッカル・ソベルらが所属していた。戦闘航空隊に所属していた隊員は、既に空戦の訓練経験があり、新入隊員であるユージーン・リプトン達とのあいだに実力差が生じている。蒼天とジャッカルが所属していた101戦闘航空隊では、蒼天がトップエースの成績を誇っていた。
場所
連合王国 (のいんつぇーん)
9つの国がまとまる事で1つの国家としての形を取った、その名の通りの連合王国。国旗は9つの国の集合体である事を表す9本のラインとなっている。100年にわたって戦争をした事がないとされており、戦争の経験もない。ユンカース海峡を挟んで131キロの対岸に位置する東の大陸と、7年前にスフィアと呼ばれる巨大な球体が現れた時を境に、いっさいの音信が不通となっている。 この現状を打破するために、東方航空旅団を編成し、戦争の経験がない軍隊で海峡を渡るスフィア作戦を決行しようとしている。
スフィア
巨大な謎の球体で、スフィア作戦の名の由来にもなった。連合王国と東の大陸とのあいだに広がるユンカース海峡の上に浮遊した状態で存在する。スフィアの直径は観測による推定で1キロほどとされているが、その内部は直径以上に広い。また、周辺には独立した時間が流れており、その影響から内部と外部で時差が生じている。 その形状から、単に「球」と表現される事がある。また、ルオ・ゾネンブルーメらスフィアの住民からは「エル・ソラール」という名称で呼ばれている。
東の大陸 (ひがしのたいりく)
連合王国からユンカース海峡を挟んで、131キロの位置にある大陸。7年前に突如として音信不通となり、以後、いっさいの連絡が取れておらず、また時期を同じくして巨大な球体であるスフィアが現れた。大陸の現状を知るために、連合王国内ではスフィア作戦という大規模な軍事作戦が計画されている。茅野つばさや諏訪友也の出身地であるミリオーネンもこの大陸に存在している。
ミリオーネン
東の大陸に存在する国の1つ。茅野つばさや諏訪友也の出身地だが、スフィアが現れて以後、連合王国側からは現状をいっさい知る事ができずにいる。スフィア作戦における上陸地点に選ばれており、前哨地点となった。また、テスカトリポカが送り込んだ骸骨兵をはじめとする敵との決戦の場ともなった。
ユンカース海峡 (ゆんかーすかいきょう)
連合王国と東の大陸の国、ミリオーネンとのあいだに広がる海峡。距離にして131キロあり、ククルカンの最高速度で30分ほど。スフィアが現れて以後、航空機27機、船舶97隻が横断を試みたが未帰還に終わっており、7年にわたって事実上、封鎖状態にある。
ルイスブルグ島 (るいすぶるぐとう)
連合王国の沖合にある島。100年間戦闘がないといわれている連合王国で、唯一、スフィア出現の7年前から局地的戦闘が行われている。戦闘は年に2回の決まった時期に行われており、4月26日の戦闘をエータ・アクエリズ、7月16日の戦闘をノーザンデルタ・アクエリズと呼んでいる。かつては住民が住んでいたが、戦闘が行われるようになって以後、誰も住んでいない。
イベント・出来事
アロンダイト作戦 (あろんだいとさくせん)
1943年6月6日に実行した覗き見大作戦。マーガレット・マーティンによる激しさを増す取り締まりに業を煮やした男衆が、「トライデント作戦」に続く大規模覗き計画として立案された。立案者はゼノール・ニクソンが中央より呼び寄せた名軍師であるディルウィード・ベルコンテ。前回同様、作戦実行前に密告によって計画が漏洩していた。
グングニル作戦 (ぐんぐにるさくせん)
「アロンダイト作戦」を欺瞞として立案されていた真の覗き作戦。ディルウィード・ベルコンテによって立案計画された。陽動として戦車の投入を始め、空挺部隊による女子寮への落下傘降下など非常に大規模な作戦となった。最終目的は、女子に変装してあらかじめ女子寮に潜入していたユージーン・リプトンによる、女子寮風呂場の盗撮となっている。
叢雲作戦 (むらくもさくせん)
トライデント作戦、グングニル作戦に続く第3の覗き作戦。スフィア作戦で上陸した東の大陸で行われた。敵地で覗き作戦を行うはずがない、という意識の陥穽(かんせい)をついた作戦で、慎重に慎重を期した侵入ルートが特徴となっている。作戦立案者であるディルウィード・ベルコンテをはじめ、ユージーン・リプトンや蒼天など名だたるメンバーが全員参加。 さらに、茅野つばさの個人データと引き換えに、女子からの内通者としてアプリコット・ウェブスターが参加している。作戦はほぼ成功を収めたが、女子風呂を覗く直前に骸骨兵による襲撃というトラブルが発生したため、作戦放棄へと追いやられた。
エータ・アクエリズ (えーたあくえりず)
4月26日の敵による侵攻、またはその時期を指す。4月26日と7月16日の年2回、ミリオーネンの方角から連合王国のルイスブルグ島に侵攻して来る敵とのあいだで行われる局地的戦闘のうちの1つ。スフィアが発生した7年前から行われており、攻めて来る敵はいずれも亡霊のような骸骨兵である。人間との戦争とは異なり、「RAL」と命名された敵の前線より後方へ追いやられた人間は、原因不明の力によって灰になってしまう、といった超常的な現象が記録されている。 名称は4月26日の時期に見られるみずがめ座流星群にちなんで「エータ・アクエリズ」名付けられた。反対に7月16日の侵攻は「ノーザンデルタ・アクエリズ」と呼ばれている。
ノーザンデルタ・アクエリズ (のーざんでるたあくえりず)
7月16日の敵による侵攻、またはその時期を指す。4月26日と7月16日の年2回、ミリオーネンの方角から連合王国のルイスブルグ島に侵攻して来る敵とのあいだで行われる局地的戦闘のうちの1つ。同様に局地的戦闘が行われる4月26日はエータ・アクエリズと呼んでいる。エータ・アクエリズと同様にスフィアが発生した7年前から行われており、侵攻して来る敵はいずれも亡霊のような骸骨兵となっている。 ユージーン・リプトンらが経験したノーザンデルタ・アクエリズでは過去とは違い、敵が新たに航空戦力を投入してきた。
その他キーワード
ククルカン
「輾石」と呼ばれる特殊な動力源を利用した小型航空機。航空機ながら翼のない巨大な筒のような形状をしている。型式番号は「XF-5」。100馬力と非力ながら最高で時速300キロの速度で飛行が可能。反面、80キロという非常な低速でも飛行が可能となっており、微細な機動が可能となっている。越えると灰になってしまう敵前線「RAL」が存在するために、航空戦力の投入が原則禁止されている「エータ・アクエリズ」において、低速での安定性を利用して、状況の危機を打破するため、作戦へと投入された。 初期は基本武装として機銃のみを搭載していたが、のちに改造によって爆弾懸架装置が取り付けられ、275ポンド爆弾の搭載が可能となっている。
航空機 (こうくうき)
空を飛ぶ乗り物全般。通常の飛行機や戦闘機に加え、「ククルカン」と呼ばれる巨大な鉄の筒のような形をした乗り物も、航空機のうちの1つとして含まれる。
スフィア作戦 (すふぃあさくせん)
7年前に連絡が突如として途絶えた東の大陸へ、海峡を越えて調査する事を目的とした作戦。東の大陸へは連絡が途絶して以後、さまざまな方法で情報を得る事が試みられたが、民間も含めて誰一人も海峡を越え、帰還した者がいない。作戦遂行のために東方航空旅団が編成された。スフィア作戦は大まかに、3つの柱で構成されており、戦闘航空隊、航空支援隊、空挺隊がそれぞれの柱を務める。
トライデント作戦 (とらいでんとさくせん)
基地司令であるゼノール・ニクソンによって考案・実行に移された作戦。ニクソン本人が作成した地図をもとに行われた、女子寮への侵入作戦で、女子の着替えを覗く事を目的としている。しかし密告によって事前に作戦内容が漏出していた。
骸骨兵
エータ・アクエリズとノーザンデルタ・アクエリズの年2回、連合王国のルイスブルグ島へ侵攻して来る敵。亡霊のように、骸骨が軍服を身にまとった姿をしており、ライフルなどで攻撃もして来る。一方で射撃の精度は低く、行動も愚直に前進してくるだけなので大した脅威とは思われていない。また、急所に弾を受けると灰になるという特徴を持っており、通常の銃火器での応戦が可能となっている。 人間の軍隊と同じく、服装に応じた階級が定まっており、指揮官を倒すと指揮下にある骸骨兵達も灰になる性質がある。また、上位の骸骨兵は人間と見分けがつかず、知能を持っている。一括りに「骸骨兵」と呼ばれるているが、「スカル・トループス」や「骸骨兵士(トーテンコープ・ゾルグート)」といった名称で表される場合もある。 その他、骸骨兵の種類を区別するための名称や、兵達の間のスラングなど、数多くの呼ばれ方が存在している。
RAL (れっどあろーらいん)
敵の最前線。ルイスブルグ島で決まった時期に行われる敵侵攻部隊との局地的戦闘「エータ・アクエリズ」「ノーザンデルタ・アクエリズ」において定義される。戦闘のノウハウのなかった最初の年、1935年の「エータ・アクエリズ」の際に、撤退が遅れて「RAL」の後方に回った分隊員9人が灰となる現象が確認された。それ以後、決して「RAL」の後方に人員が回らないように徹底した作戦が採られている。 そのため、上空から「RAL」を越えてしまう危険性の高い航空機を使用できず、「エータ・アクエリズ」「ノーザンデルタ・アクエリズ」の双方の作戦で、航空戦力を使用できない原因となっている。
亡霊の風 (げしゅぺんすとるふと)
敵が持っている物体を灰に変える力であり、「RAL」の正体。大別して2種類の力が混在しており、主に人工物を灰に変えるものを「灰色の風(アッシュファルベルフト)」、狭い意味での有機体を灰に変えるものを「純白の風(ラインヴァイスルフト)」と呼ぶ。空気よりずっと重い特性を有しており、60メートル以上の高度であれば影響がない。 また、「灰色の風」は物質として不安定で、3秒ほどしか効果がなく、25秒に1回の周期でスカル・トループス自身の体から発せられている。
ウォータードロップ
「スフィアの向こう側から来た人々」を指す隠語。一般にはその存在が秘されているため、連合王国の政府に所属する一部高官と、当事者のあいだでのみ意味が通じる。推定で連合王国内に9200人の「ウォータードロップ」が存在しているとされている。当事者には、証明として「ウォータードロップコイン」というコインが渡されており、所有している人物は、政府による「ウォータードロップ保護プログラム」を受ける事ができる。
ウォータードロップコイン
「ウォータードロップ」の人々に与えられているコイン。「スフィアの向こう側から来た人々」である「ウォータードロップ」だと証明するため、連合王国の政府から渡される。「ウォータードロップ保護プログラム」を受けられる人だけが持っている。一般には存在が秘されているため、一部の政府高官と当事者間でしかコインの意味が通じない。
ライプチヒ条約機構 (らいぷちひじょうやくきこう)
恋愛に関する共同戦線。ミュール・スピアーズとアプリコット・ウェブスターのあいだで結ばれた。ミュールの思い人であるユージーン・リプトンと、アプリコットの思い人である茅野つばさが同室であるため、互いに互いの恋愛を応援すると同時に、牽制する必要性から締結される事となった。
輾石 (てんせき)
ククルカンに搭載されている動力源。電球の中に入ったプレートのような形状をしており、精製が非常に困難。また、その材料も希少であるために数が限られている。弱い回転を与える事で、重力に斥力を発生させるという特徴を持っており、固定翼や回転翼がなくとも物体を安定して飛行させられる。反面、輾石の大きさによって持ち上げられる重量に限りがあり、大型の航空機は持ち上げられない。 そのため、ククルカンのような小型の航空機の動力として使用されている。
翼蛇神 (よくじゃしん、けつぁるこあとる)
ルイスブルグ島の地面に埋められていた巨大な船。帆船のような形状をしているが、空を飛び、さらには幻のように物質を透過する性質を持つ。骸骨兵達がルイスブルグ島を襲撃する主目的であるとされるが、「翼蛇神」の持つ能力の大半は謎とされており、その存在の情報をもたらしたルオ・ゾネンブルーメも詳細を知らなかった。 船でありながら心が存在しており、ググマッツという青年の形を取って行動している。「翼蛇神」のほかに「ケツァルコアトル」と呼ばれており、同名の神が登場するアステカ神話との関連性が疑われた。
テスカトリポカ
「翼蛇神」の対となる船であり、巨人。翼蛇神の兄にあたる存在で、弟の存在を消し去ろうと攻撃を続けている。「翼蛇神」と同様に情報の不足から、その正体や詳細が明らかとなっていない。スフィアはこの存在と100年間戦い続けており、時間の流れが異なるスフィアの外部では300年の時間が流れていた。「骸骨兵」達をルイスブルグ島に送り込み、連合王国を脅かしていた張本人でもある。
鷲の鋏 (てぃへらどあぎら)
スフィアが所有する飛行する船。ルオ・ゾネンブルーメが船長を務めている。スフィアの内側と外側を行き来する力を持っており、スフィアの外へ派遣された諏訪友也を回収するために現れた。細長い円柱の先端にV字のパーツが付いた独特の形状をしている。アプリコット・ウェブスターが東の大陸から飛ばされた際に撮影した写真に、シルエットが残されており、以前からその存在を知られていた。
赤い翼 (ろーとふりゅーげる)
天然輾石を利用した降下装備。宝石のような形状をしており、ルオ・ゾネンブルーメは、髪飾りのようにしてツインテールの根元に装着している。数十メートルの上空から飛び降りても安全に着地できる能力を持った装備で、効果が発動した際に短い翼のようなものが生える。
リプトン家 (りぷとんけ)
ユージーン・リプトンの生家。古くは伯爵家の血筋だが、現在は往時に比べて没落している。車で敷地に入ってから本邸まで10分以上かかるほど雄大な土地を持ち、直営の荘園を経営しているなど、一般人の感覚からすると非常に裕福な家柄。また本邸は巨大な館であり、100人以上の使用人が常駐している。