世界観
本作『クロックワーク・プラネット』は、電磁気のテクノロジーが失われ、すべてが「時計仕掛け」の技術に置き換えられた遠い未来の地球「時計仕掛けの惑星」を舞台としている。この世界を作り上げたのは、1000年前に存在した天才時計技師・Yである。世界は「区画(グリッド)」という単位で呼ばれる巨大な歯車に分かれており、その上に都市が築かれている。
時代設定
滅亡した地球が天才時計技師・Yによって時計仕掛けの惑星に変えられてから1000年後の世界を舞台とする。200年ほど前までは四季が存在していたが、時計仕掛けの惑星の経年劣化によって、現在は四季の移り変わりが起こらなくなっている。
あらすじ
京都編
ある日、見浦ナオトの自宅に、女の子の姿をした自動人形のリューズが降って来て、彼女を修理したナオトに仕えることを宣言する。夢見ていた機械の少女との暮らしに歓喜するナオトであったが、マリー・ベル・ブレゲという少女と出会い、のちに京都パージ未遂事件と呼ばれることになる事件に、否応なく巻き込まれていくことになる。
三重編
京都パージ未遂事件の解決後、リューズから「自分には妹がいる」という話を聞かされて、興味津々の見浦ナオトは、その妹・アンクルの行方を追って区画・三重に辿り着く。しかし、そこで見たのは、奇妙な仮面によって意思を奪われ、テロリストの手先にさせられているアンクルの姿であった。こうして、アンクルを救うための戦いが始まる。
東京編
アンクルを救出し、そのマスターとなった見浦ナオトは、マリー・ベル・ブレゲの誘いを受けてテロ組織セカンド・イプシロンの代表者となり、多重区画領域・東京に対して宣戦布告を行う。しかし、その真意は、区画・滋賀の軍と日本政府の全面戦争を回避させるということであった。区画・滋賀の軍の指導者、比良山ゲンナイを相手に、ナオトたちは戦いを繰り広げることになる。
楽園編
区画・滋賀の軍との戦いの後、日本を離れた見浦ナオトらセカンド・イプシロンの面々は、「楽園」と呼ばれる犯罪都市、区画・シャングリラに辿り着く。リューズにホテルの部屋で誘われて、いい雰囲気になったりもするナオトであったが、この楽園で待ち受けていたのは、信じていたかつての味方の裏切りという悲劇であった。
特殊設定
時計仕掛けの惑星においては電磁技術は禁制となっており、電気・磁気・電波などを利用した技術は、表向きは存在しないことになっている。したがって、文明の進んだ惑星だが、基本的にすべてのテクノロジーが「時計仕掛け」によって成立している。
関連作品
小説
榎宮祐と暇奈椿の共著によるライトノベル『クロックワーク・プラネット』が、本漫画版作品の原作となっている。2013年より講談社ラノベ文庫から刊行されている。イラストは茨乃。漫画版では一部カットされているシーンなどもあるが、基本的なストーリーラインは同一。
メディアミックス
アニメ
2017年の4月から6月にかけて、本作『クロックワーク・プラネット』のテレビアニメ版がTBS他で放映された。全12話で、監督は長澤剛が務めている。見浦ナオト役を南條愛乃、リューズ役を加隈亜衣、マリー・ベル・ブレゲ役を大西沙織、ヴァイネイ・ハルター役を松田健一郎、アンクル役を千本木彩花が演じている。
WEBラジオ
『レディオワーク・プラネット~時計仕掛けのラジオ~』のタイトルで、2017年3月23日から6月29日にかけ、隔週木曜日にインターネットラジオステーション「音泉」にてWEBラジオが配信された。メインパーソナリティは見浦ナオト役の南條愛乃、リューズ役の加隈亜衣、マリー・ベル・ブレゲ役の大西沙織らが交代制で務めた。
原作
榎宮祐はブラジル出身で、日系ブラジル人のクリエイターの男性。小説『クロックワーク・プラネット』の原作者であるが、漫画家・イラストレーターとしても活動しており、漫画家としては『グリードパケット∞』、挿絵の仕事は鏡貴也作の『いつか天魔の黒ウサギ』が知られている。暇奈椿は小説『クロックワーク・プラネット』の共著者の1人だが、プロフィールなどは公開していない。もともと榎宮祐に本作品の原稿の清書を頼まれ、それに応じたことがきっかけとなって、共著者として参加するようになった。基本的な設定などは榎宮祐が作成しているが、共著者の暇奈椿とは、相互に原稿を往復させる形で共同執筆を行っている。
キャラクター原案
茨乃は静岡県出身のイラストレーター。1987年11月17日生まれ。血液型はB型。富士見ファンタジア文庫『神さまのいない日曜日』、講談社ラノベ文庫『クロックワーク・プラネット』、ぽにきゃんBOOKS『ランス・アンド・マスクス』、PHP研究所『ファタモルガーナの館 あなたの始まりを告げる物語』などの小説の挿絵を手がけている。
登場人物・キャラクター
見浦 ナオト (みうら なおと)
区画・京都にある糺ノ森高校の男子生徒。学校の成績は極めて悪く、学校内ではいじめられているが、本人は大好きな機械のことで頭がいっぱいで、あまり気にしていない。ある日、突如として空から降って来たリューズを修理して起動させ、そのマスターとなった。異常聴覚の持ち主でもあり、のちにテロリスト組織「セカンド・イプシロン」の代表者となる。 アンクルには「おとうさん」と呼ばれ、比良山ゲンナイからは何故か「Y」と呼ばれている。
リューズ
自動人形・Initial-Yシリーズの壱番機。コードネームは「付き従う者」。作られたのは1000年前だが、外見は少女の姿をしている。稼働不能の状態でマリー・ベル・ブレゲの管理下にあった。マリーには修理することができず、見浦ナオトによって再起動させられ、ナオトをマスターと認めるようになった。非常に毒舌であるが、リューズ自身にはその自覚はない。 服の中から鎌を出して戦う。ナオトに従い、テロリスト組織「セカンド・イプシロン」に参加する。アンクルには「おねえちゃん」と呼ばれており、糺ノ森高校に生徒として入学した時は、「リューズ・ユアスレイブ」と名乗った。
マリー・ベル・ブレゲ (まりーべるぶれげ)
国境なき技師団に所属していた、第一級時計技師(マイスター)の少女。複数の有名大学を首席で卒業、歴代最年少で第一級時計技師になったという天才。そのうえ美貌の持ち主で、モデル業もやっている。人前では強気で毒舌家だが、ヴァイネイ・ハルターの前でだけは精神的に脆く、気弱な面を見せる。政治的な争いから国境なき技師団を除名された後、自らの死を偽装して潜伏。 さまざまな経緯を経て、テロリスト組織「セカンド・イプシロン」の結成者となる。見浦ナオトには「地雷女」、アンクルには「おかあさん」と呼ばれており、糺ノ森高校に生徒として入学した時は、「マエリベル・ハルター」という偽名を名乗った。チョコレートが大好物。
ヴァイネイ・ハルター (ゔぁいねいはるたー)
元軍人の全身義体(サイボーグ)。見た目は中年男性の姿をしている。マリー・ベル・ブレゲのボディーガードを務め、また精神的な面でも支柱となっている人物。リューズやアンクルには遠く及ばないものの、それなりに高い戦闘能力を持つ。マリーとともに糺ノ森高校にやって来て、短期間だけ教師も務めていた。一時、首から下のボディを失って、大型軍用自動人形に接続されることになったが、後日もとの姿に戻った。 テロリスト組織「セカンド・イプシロン」のメンバーの1人である。
アンクル
自動人形・Initial-Yシリーズの肆(よん)番機。コードネームは「撃滅する者」。作られたのは1000年前だが、外見は12歳ほどの少女の姿をしている。その姿とは裏腹に、Initial-Yシリーズの中で唯一、戦闘だけを目的に造られた存在であり、それ故にInitial-Yシリーズの中で最も高い戦闘能力を持つ。キューブ状の武器を飛ばし、空間を切断したり爆破したりできる。 戦闘に専念するために自我を封じることもできるが、自我を前面に出している時は、子供っぽい性格になる。ナオトをマスターと認め、テロリスト組織「セカンド・イプシロン」に加わる。
ベルモット
全身義体(サイボーグ)の諜報工作員。もともと壮年男性の姿をしていたが、とある任務でアンクルによって仲間を殺されて首をもがれた。首だけの状態でマリー・ベル・ブレゲによって回収され、その後改造されて、若い女性型のボディで暮らすことになった。のちにテロ組織「セカンド・イプシロン」のメンバーの1人となる。煙草が大好き。
コンラッド
ベテランの整備士の老人。マリー・ベル・ブレゲのもとで整備士長の職責にある。戦闘能力は高く、並の自動人形程度が相手なら、ドライバー1本で何とかしてしまうという力量の持ち主。マリーに護身術を教えた師匠にあたる人物でもある。
唐沢 ユウ (からさわ ゆう)
民間の第一級時計技師(マイスター)である青年。八束脛の騒動が起こった時、技術顧問として日本政府の総理たちの前に現れた。かつては国境なき技師団でマリー・ベル・ブレゲの派閥に属しており、現在もマリーに協力して、諜報員のような仕事をこなしている。
星宮 蓬子 (ほしのみや ほうこ)
日本の皇族の若い女性。天御柱で暮らしている。多くの人からは「殿下」、見浦ナオトからは「皇女さま」と呼ばれている。マリー・ベル・ブレゲの学友で、親友と呼ぶべき間柄であり、テロ組織「セカンド・イプシロン」を密かに支援している。普段は変声器まで使って凛然とした風を装っているが、公務を離れれば、年相応の精神性を持った女性。
比良山 ゲンナイ (ひらやま げんない)
区画・滋賀の軍の指導者である老人。かつては一流の時計技師であった。Yとは何者であったのか、電磁技術とはいかなるものであったのか、ということに興味を抱いて禁断の研究領域に足を踏み入れ、政府の諜報機関の肝煎りで、八束脛を作り上げた。区画・滋賀がパージされた後は、区画・三重の地下に潜伏。区画・滋賀の軍を一手に掌握し、政府に対抗するテロリストとなる。 見浦ナオトこそがYである、と主張していたが、その理由を明らかにしないまま、Ωによって殺害された。
Ω (おめが)
性別も年齢も不詳の謎の人物。比良山ゲンナイが、自分たちの黒幕であると言っている。日本政府内にも息がかかった勢力を持っており、防衛大臣によるクーデターも陰から操っていた。遠隔攻撃のできる何らかの装置を用いて、テロ組織「セカンド・イプシロン」の拘束下にあった比良山ゲンナイを殺害した。
リモンズ
国境なき技師団の連絡員の青年。マリー・ベル・ブレゲとは政治的に対立しているグループの一員であり、マリーを失脚させ、国境なき技師団から追放した。マリーを殺すつもりはなかったが、失脚後自らの死を偽装したマリーによって、逆に暗殺の主犯であるという濡れ衣をかけられることになった。
総理 (そうり)
日本政府の総理を務めている壮年男性。あまり有能な人物とは言い難く、比良山ゲンナイら区画・滋賀の軍が暗躍し始めた時、右往左往するばかりで、唐沢ユウを呆れさせた。のちに防衛大臣にクーデターを起こされて失脚する。
防衛大臣 (ぼうえいだいじん)
軍の権力を握る、防衛大臣の職にある壮年男性。総理が八束脛に対抗するために神の杖を用いる決定をした時、これに反抗してクーデターを起こした。総理同様、たいして有能な人物というわけではなく、Ωによって陰から操られている。
キウ・タイユウ (きうたいゆう)
年齢不詳の男性。区画・シャングリラの事実上の支配者といわれる。「倉庫(アーセナル)」と呼ばれる、武器兵器の流通、並びに時計技師たちを掌握している組織のボスとして、6年間町に君臨している。楽しみながら人を殺す、残忍で非情な人物。
Y
天才時計技師。1000年前、死に瀕していた地球を救い、歯車だけで時計仕掛けの惑星を作り上げた。Initial-Yシリーズの生みの親でもあるが、その人物像については不明で、現在では男だったのか女だったのか、そもそも本当に人間だったのかどうかすらも伝わっていない。比良山ゲンナイは見浦ナオトこそがYその人である、と口にしていたが、詳しいことを語る前に死亡したため、その謎は明かされていない。
集団・組織
セカンド・イプシロン (せかんどいぷしろん)
テロリストの集団。京都パージ未遂事件の後、マリー・ベル・ブレゲが見浦ナオト、リューズ、ヴァイネイ・ハルターらを誘って結成した。世界には非常にたくさんの陰謀があるので、それを自由気ままに潰して回るのが目的、という集まりである。
国境なき技師団 (まいすたーぎるど)
時計仕掛けの惑星のメンテナンスを行っている国際非政府組織。略して「技師団」と呼ばれることが多い。世界に6305人いる第一級時計技師(マイスター)の過半数がここに所属している。軍とはあまり仲が良くなく、また内部にも派閥間の政治的な対立を抱えている。
軍 (ぐん)
日本政府に属する軍隊。国境なき技師団とはあまり仲が良くなく、その活動に対してさまざまな横槍を入れたり、嫌がらせをしたりしている。京都パージ未遂事件では、修復されてパージの必要がなくなった区画・京都を、政治的陰謀のために強制的にパージしようとしたりするなど、悪辣な行いを辞さない。
区画・滋賀の軍 (ぐりっどしがのぐん)
テロリストの地下組織。区画・滋賀がパージされた後、そこに属していた軍の一部の人員が区画・三重に移り、潜伏して築き上げた。12年の歳月をかけ、区画・三重を事実上の支配下に置いている。比良山ゲンナイが独裁的な権力を掌握している。
場所
時計仕掛けの惑星 (くろっくわーくぷらねっと)
死の星と化した地球を、1000年前の天才時計技師・Yがすべてを時計仕掛けにして蘇らせた星。現在の人類の総数は約45億人で、区画・京都をはじめとする多くの都市が存在する。それぞれの区画は「大支柱(コア・タワー)」と呼ばれる中枢によって管理されており、大支柱は全土に2万ほど存在する。内部は、コアの一部分を除いて掘り尽くされて空洞状になっており、生身の人間が地下に落ちたら生きては戻れない。
区画・京都 (ぐりっどきょうと)
時計仕掛けの惑星にある、見浦ナオトが暮らしていた都市。人口は2000万人ほど。比較的保存状態が良く、太古の神社仏閣などが残っているように見える。しかし、それらも実際は時計仕掛けに置き換えられており、大支柱(コア・タワー)を補助する12の時計塔が、宗教施設に偽装されて街中に存在している。
糺ノ森高校 (ただすのもりこうこう)
見浦ナオトが通っていた高校。ナオトは糺ノ森高校では、成績が悪いので落ちこぼれの生徒とみなされていた。リューズ、マリー・ベル・ブレゲが生徒として転入し、ヴァイネイ・ハルターは教師として入り込んだ。
セントラル・ホテル (せんとらるほてる)
区画・京都にある高級ホテル。空から降って来たリューズによって、自宅を破壊されたために住処に困っていた見浦ナオトが、泊まりにやって来た。そこで、国境なき技師団の任務の関係で訪れていたマリー・ベル・ブレゲと、初めて遭遇することになった。
区画・三重 (ぐりっどみえ)
区画・京都と隣接している工業都市。隣にあった区画・滋賀がパージされてしまった影響で、やたらと蒸し暑い。区画・滋賀の軍の密かな支配下に置かれており、都市内の重要な構造物は彼らによって奪い去られていて、都市機能のほとんどを失っている。
多重区画領域・東京 (まるちぷるぐりっどとうきょう)
4000万人の人口を擁する、日本で最大の都市区域。1つの歯車からなる区画ではなく、区画・秋葉原など、複数の区画が組み合わさって成立している。1つでもパージすると、他の区画にどういう悪影響が及ぶか分からないので、実質的に、特定の1つの区画だけをパージすることができない構造になっている。
天御柱 (あまのみはしら)
国の要とされる建造物。日本の各区画を管理している中枢である。正式名称は「国家区画中枢管理制御塔」であるが、皇族である星宮蓬子が暮らしているので、「皇宮」とも呼ばれている。ここを悪用すれば、多重区画領域・東京を丸ごとパージしてしまうことも可能である。
区画・秋葉原 (ぐりっどあきはばら)
多重区画領域・東京を構成する区画の1つ。テロ組織「セカンド・イプシロン」が実況映像を用いて公の場にデビューした時、死傷者を出さないように慎重に気を遣いつつ、ここで破壊活動を行った。のちに区画・三重から侵攻して来た八束脛によって、占拠されてしまう。
ストリップ・ザ・ウエノ (すとりっぷざうえの)
多重区画領域・東京の区画・上野にある、廃ストリップ劇場。旗揚げして間もない頃のテロ組織「セカンド・イプシロン」が、一時拠点を置いていた。ストリップに使われていた女性型の自動人形が多数転がっていて、その中の一体がベルモットのボディとして利用された。
区画・シャングリラ (ぐりっどしゃんぐりら)
日本ではない、アジアのどこかにある都市。「楽園」の通称で知られる。ドラッグ、違法銃器が流通し、人身売買すら当たり前に行われる犯罪都市。「ここで買えないもの、売れないものはない」といわれるほど、物流面では栄えている都市でもある。キウ・タイユウが事実上の支配者として君臨している。
イベント・出来事
京都パージ未遂事件 (きょうとぱーじみすいじけん)
軍が区画・京都のパージを強行しようとした一連の事件。見浦ナオト、リューズ、マリー・ベル・ブレゲ、ヴァイネイ・ハルターらが食い止めた。のちにテロ組織「セカンド・イプシロン」を結成することになるナオトたちは、この事件を契機に出会った。
その他キーワード
Initial-Y
人間そっくりの知性と感情、そしてそれぞれに固有の特殊な能力を持つ自動人形。Yによって1000年前に造られた。何を目的として作られたものなのか分かっておらず、マリー・ベル・ブレゲは時計仕掛けの惑星のメンテナンスを行うために遺された存在なのではないか、という自説を持っていた。当のInitial-Yであるリューズは、それを否定している。
自動人形 (おーとまた)
完全に機械でできている、ロボットのようなものの総称。Initial-Yのような、高度な人工知能を持った人間型のものもいれば、人間が搭乗して用いる大型の軍用のものもある。それらすべてをまとめて、自動人形と呼称されている。
異常聴覚 (いじょうちょうかく)
見浦ナオトの持つ能力。単に耳がとてもいいというだけではなく、音を聞き取っただけで、時計仕掛けの構造、異常を生じている部分などをすべて見抜いて指摘することができる。また、やって来る敵の種類、数、方角などを指摘することもできる。
相対機動 (みゅーとすくりーむ)
リューズの持つ、自身を超高速化する能力。他者にとってはほんの一瞬の間に、リューズ自身の主観的な時間では数時間分の戦闘行動を取ることができる。ただし、これを使った後のリューズは行動停止状態に陥るため、誰かがゼンマイを巻きなおさなければならない。
虚数運動機関 (いまじなりーぎあ)
リューズのパーツの1つである歯車。外見は、内側に歯車が刻まれた、指輪のような物体。右回りに回るのに左回りの運動エネルギーを出力するという「あり得ないはずの存在」であり、相対機動を行うために必要な機関でもある。エネルギーを反転することができる力を持っているため、京都パージ未遂事件では、マリー・ベル・ブレゲによって区画・京都のパージを食い止めるための切札となった。
絶対機動 (ぶらっでぃまーだー)
アンクルの持つ、空間を操る能力。一定範囲を空間もろとも消滅させたり、空間を歪ませて盾を作り出したりすることができる。時空間に干渉できるため、アンクルはリューズの相対機動の中にも、強引に侵入することができる。
共振破砕砲 (れぞなんすかのん)
三重共振接続運動という原理で作動する大型破壊兵器。本来、駆逐艦や重装ヘリなどが装備する兵器であるが、アンクルは奥の手として、片腕を共振破砕砲に変化させ、これを用いることができる。直撃すれば、高層ビルが一撃で吹き飛ぶ威力を持つ。
永久運動機関 (ぱーぺちゅあるぎあ)
アンクルの駆動機関。永久に動き続ける自動巻きのゼンマイであり、得られるエネルギーは一切消費されることなく、熱量に変換されてキューブに保存される。絶対機動による空間操作も、共振破砕砲の召喚も、保存された無限の熱量を利用して行われている。
仮面 (かめん)
目元を覆う、蝶のような形をした機械的な構造の仮面。アンクルが当初着けていた。稼働はしているが機能していなかった状態のアンクルを無理やり動かし、区画・滋賀の軍に従わせていた。リューズによって破壊され、アンクルが正気を取り戻した。
パージ
時計仕掛けの惑星において、その構成要素である「区画」(グリッド)を分離・放棄すること。破壊的な工作によって強引に行われる場合もあるが、修復不可能となった区画が、政治的判断によってパージされることもある。パージされた区画は、時計仕掛けの惑星の地下に向かって投棄される。
オートマタファン
見浦ナオトが愛読し、毎号購読している雑誌。さまざまなメーカーの自動人形や、そのパーツについて紹介するという内容のもの。マリー・ベル・ブレゲは何度か表紙モデルを務めたことがあるが、生身の人間にほぼ興味がないナオトは、マリーの顔すら記憶していなかった。
羅針盤時計 (くろのこんぱす)
第一級時計技師(マイスター)だけが持つことを許される、その証。複数の歯車が組み合わさった形状をしている。片手で持つにはちょっと大きいが、一応身分証明代わりのアイテムとしても用いられる。唐沢ユウが所持しており、マリー・ベル・ブレゲも持っていたが、京都パージ未遂事件に前後して、自らの死を偽装するために、自分の羅針盤時計を破壊した。
円筒鉄道 (しりんだとれいん)
都市区画を行き来するための交通手段。異なる都市区画同士は、恒常的には連絡しておらず、歯車同士がかみ合う時、双方に穿たれた直径10mほどの穴が重なり合うので、その瞬間、乗客や貨物を乗せた巨大な円筒を相互に一斉に交換する。そのための穴は、都市歯車の外壁に無数に存在する。
電磁技術 (でんじぎじゅつ)
電力や磁力を用いた科学技術。かつては盛んに利用されていたが、1000年前に地球が時計仕掛けの惑星となって以降は、歯車機構に悪影響が及ぼす電力や磁力の使用は、国際条約によって堅く禁止されている。しかし、軍事的に利用できるので、実際には日本をはじめ諸国で秘密裏に研究が行われている。
八束脛 (やつかはぎ)
時計技術と電磁技術の融合を目指した複合技術によって作動する巨大兵器。正式名称は「複合電磁式戦略級機動兵器『八束脛』」。もともとは日本政府が比良山ゲンナイの研究のもと秘密裏に造ったものであった。のちに区画・滋賀の軍の管理下に入り、反政府活動に用いられた。極めて頑丈であるうえ、強力な主砲を持ち、電磁パルスを発生させて都市区画を丸ごと機能不全に陥らせることもできる。
神の杖 (とーるわんど)
日本政府の管理下にある、旧時代の理論で作られたという対地大量破壊兵器。衛星軌道上にあり、地上へ重金属の棒を投下するという単純な原理であるが、都市1つを丸ごと破壊するだけの威力を持つとされる。八束脛に対抗するために運用が検討されたが、実際に使われたことは一度もない。
クレジット
- 原作
-
榎宮 祐 , 暇奈 椿
- キャラクター原案
-
茨乃
書誌情報
クロックワーク・プラネット 10巻 講談社〈シリウスKC〉
第1巻
(2014-02-07発行、 978-4063764451)
第2巻
(2014-10-31発行、 978-4063764871)
第3巻
(2015-03-09発行、 978-4063765298)
第4巻
(2015-09-09発行、 978-4063765717)
第5巻
(2016-03-09発行、 978-4063906110)
第6巻
(2017-01-06発行、 978-4063906745)
第7巻
(2017-04-07発行、 978-4063906943)
第8巻
(2017-09-08発行、 978-4063907292)
第9巻
(2018-03-09発行、 978-4065110218)
第10巻
(2018-10-09発行、 978-4065130575)