クロノ・モノクローム

クロノ・モノクローム

作者・磯見仁月の初連載作品。トラウマを負ってしまった少年がタイムスリップした18世紀の神聖ローマ帝国を舞台に、チェスを通して戦い成長する姿を描く。歴史上に実在した人物が多数登場するのも特徴。小学館「週刊少年サンデー」2014年1号から2015年1号まで連載された作品。

正式名称
クロノ・モノクローム
ふりがな
くろの ものくろーむ
作者
ジャンル
頭脳スポーツ
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概要・あらすじ

かつてチェス界のスターと目されていた天才棋士でありながら、トラウマによって対局できなくなってしまった犬伏黒六(クロ)。彼はチェスへの想いを抱えながら、鬱屈した日々を過ごしていた。ある日彼はインターネットでタークと名乗るプレイヤーとチェスの対戦をするが、タークの指し手はかつてクロにトラウマを植え付けたプレイヤーに酷似していた。

さらにその対戦中、クロは突如18世紀の神聖ローマ帝国にタイムスリップしてしまう。その先では、彼の運命を大きく動かす出会いが待っていた。

登場人物・キャラクター

犬伏 黒六 (いぬぶせ くろむ)

14歳の中学生。チェス界における日本屈指のスターとして、将来を期待されていた天才プレイヤー。しかし、シロス・ラスカー・ヴァルブルグと対局した際に、完膚無きまでに敗北。その敗戦におけるショックで精神に大きなダメージを負い、人と向かい合って座ることができなくなってしまう。結果、チェス界から姿を消さざるを得なくなる。それからは学業に精を出しつつ、インターネットで世界中のプレイヤーとチェスを打つ日々を送っていた。 ところが「ターク」というプレイヤーとの対戦中、突如タイムスリップに巻き込まれ、18世紀の神聖ローマ帝国へと迷いこんでしまう。普段はおとなしく、トラウマの影響もあり控えめな性格。かつては傲慢な部分も見られたが、今では恥ずかしい過去であると認識している。 ただし、チェスに対しては非常に貪欲で、対戦時は常人を遥かに超える集中力を発揮する。また、強敵と対局する際には、時折凶暴な人格が顔を出すことがある。

ヴォルフガング・フォン・ケンペレン (ゔぉるふがんぐふぉんけんぺれん)

男爵位を持つ、ハンガリー出身の青年。代々発明家として名を馳せており、チェス用の機械人形であるタークを製作している。飄々とした性格で、サディストとしての一面も持ち合わせている。身分を隠して酒場で賭けチェスに興じていたところ、犬伏黒六と遭遇。そのチェスの腕を見込んでタークの操縦者に任命した。かつてモノクロームにおける騒動で恋人を失っており、タークを開発していたのはその復讐のため。 実在した発明家ケンペレンがモデルとなっている。

アントン

ヴォルフガング・フォン・ケンペレンの使用人。ハンガリー出身の少年で、かつて地元をケンペレンに救われたことがあり、その恩を返すために使用人となった。一生懸命な性格だが、家事の腕はからっきしで、家事オンチの王様とまで呼ばれたことがある。ケンペレンに重用される犬伏黒六を最初は快く思っていなかったが、チェスに対する熱意を見て態度を改めている。

ピロシュカ

ヴォルフガング・フォン・ケンペレンの使用人。黒いショートヘアの小柄な少女。極めて無口だが家事の腕は卓越しており、使用人としては完璧な仕事ぶりを見せる。アントンとは名コンビぶりを発揮しており、度々犬伏黒六のピンチを救っている。

レベッカ

工芸組合に所属する時計職人。犬伏黒六と同年代の金髪の少女。ヴォルフガング・フォン・ケンペレンには飢饉を救われたことで好意を寄せており、自らをケンペレンの恋人と公言してはばからない。組合の中ではまだまだ見習いの立場にあるが、対局時計の原型となる時計を開発したことがケンペレンの目に留まり、タークのメンテナンスを任される。

シロス・ラスカー・ヴァルブルグ (しろすらすかーゔぁるぶるぐ)

生意気な性格と不気味な雰囲気を持つ白髪の少年。かつてロシアで犬伏黒六(クロ)と対局した。その並々ならぬ殺気によってクロの精神を蝕み、トラウマを植え付けた。クロと同様に18世紀の神聖ローマ帝国にタイムスリップしており、プロイセンのモノクローム代表として、再びクロの前に立ちはだかる。駒を操作する際に、王が命令を下すような言葉を発する癖がある。

ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト (ゔぉるふがんぐあまでうすもーつぁると)

ウィーンに住む放蕩少年。周囲を顧みず遊び更けており、住民からの評判もすこぶる悪いが、オーストリアのモノクローム代表候補に抜擢されるほどのチェスの腕と、後に世界で1、2を争うほどの、音楽家としての才能を併せ持つ。もう1人のモノクローム代表候補であるタークと、代表の座を賭けた対局を繰り広げる。実在した音楽家モーツァルトがモデルとなっている。

フランソワ=アンドレ・ダニカン・フィリドール (ふらんそわあんどれだにかんふぃりどーる)

18世紀最強のプレイヤーと名高い、フランスのモノクローム代表。パリのカフェ・ド・ラ・レジャンスにて犬伏黒六(クロ)と出会い、対局。勝利を収めるものの、クロの未来における戦術に並々ならぬ興味を抱く。クロもまた、母親からフランソワ=アンドレ・ダニカン・フィリドールの逸話を聞かされていたため、意気投合。 一時的にクロを弟子に取る。かつてはヴォルフガング・フォン・ケンペレンの師匠で、ある事件により疎遠になってしまったが、今でも彼のことを気にかけている。実在した作曲家、およびチェスプレイヤーであるフィリドールがモデルとなっている。

犬伏 フランチスカ (いぬぶせ ふらんちすか)

犬伏黒六(クロ)の母。日系の女性で、クロとよく似た容姿を持つ。かつて事故により急逝したとされており、既に故人である。卓越したチェスの腕を持っており、クロは彼女からチェスを学んだ。また、最もチェスに精通した存在にフランソワ=アンドレ・ダニカン・フィリドールを挙げるなど、18世紀の神聖ローマ帝国に詳しいような素振りを見せる。

飛梅 慧

チェスにおける日本チャンピオンの青年。犬伏黒六(クロ)や犬伏フランチスカとも知己の間柄で、やんちゃなクロに手を焼きつつも、彼が日本のチェス界を背負って立つトップスターになると断言している。チェスを精神の削り合いであるとしており、トラウマを抱えてしまったクロに、自らも対局前は震えが止まらないと漏らす。

レオ

ウィーンに住む少年。18世紀にタイムスリップした犬伏黒六(クロ)が関わった最初の人物である。実家が酒場を経営しており、自らも従業員として学校に通うための資金を稼いでいる。酒場で流行している賭けチェスを通じて、クロのチェスの腕前に驚嘆する。

マリア・テレジア (まりあてれじあ)

ハプスブルグ家の息女。オーストリア大公で、神聖ローマ帝国の実質上のトップ。臣下を重んじ高い信頼を集める妙齢の女性。現在は息子のヨーゼフ2世と共に共同で帝国を統治している。タークが自らの運命を変えるとの予言を受け、パーティー会場でタークの活躍に心を奪われる。プロイセンの不穏な動向を強く警戒しており、その対策の一環として、タークをモノクロームのオーストリア代表として選出している。 実在した偉人マリア・テレジアがモデルとなっている。

ルートヴィヒ・フォン・コベンツル (るーとゔぃひふぉんこべんつる)

マリア・テレジアの廷臣。外交官で、伯爵の地位を持つ青年。真面目な性格で、テレジアに強い忠誠心を抱いている反面、天才肌で飄々としたヴォルフガング・フォン・ケンペレンとはそりが合わない。チェスの腕は抜きんでており、防衛戦を得意とすることから「鉄壁のコベンツル」と呼ばれ、ケンペレンを常に圧倒していた。実在した貴族コベンツルがモデルとなっている。

ヨハン・エーリヒ・アイスラー (よはんえーりひあいすらー)

ハプスブルグ王宮付の財務官の青年。ルートヴィヒ・フォン・コベンツルの友人だが、彼とは対照的に柔らかい物腰で、常に人懐っこそうな笑みを浮かべている。その裏では狂気と残虐性を秘めており、人が殺された瞬間すら不気味な笑顔を保ち続けている。

フリードリヒ2世 (ふりーどりににせい)

プロイセン王国国王。軍事において優れた才能を持っており、「大王」の尊称で呼ばれている黒髪の男性。自他共に厳しく苛烈な性格だが、統治者としての実力は高く領民にも慕われている。おべっかを使う人間を嫌い、自信に満ち溢れた態度とそれに裏打ちされた実力を持つ者を好む。度々女性に対して辟易しているような発言をしている。実在する偉人フリードリヒ2世がモデルとなっている。

ヨーゼフ2世 (よーぜふにせい)

マリア・テレジアの息子。無気力な性格の青年。神聖ローマ帝国を母親と共同統治しているが、親子仲は良くない。プロイセンの王であるフリードリヒ2世(フリードリヒ)に心酔しており、パーティーでは母親が嫌っているプロイセンの軍服を平然と着こなす。フリードリヒを侮辱するものには殺意を隠そうとすらせず、実際に侮辱した神聖ローマ帝国の臣下を殺害しようとしたことすらある。 実在する偉人ヨーゼフ2世がモデルとなっている。

シュヴァルツ・フォン・ナハト (しゅゔぁるつふぉんなはと)

ヨーゼフ2世の近衛を務める、男装の令嬢。自分を必要としていると思える相手には狂的なまでの忠誠を尽くすが、逆に自分を失望させたものに対しては強い殺意を抱く。ベルリンにてシロス・ラスカー・ヴァルブルグとチェスの対局をしており、彼の実力に真っ先に目をつけている。

マリー・アントワネット (まりーあんとわねっと)

マリア・テレジアの娘で、ヨーゼフ2世の妹。母譲りの容貌を持つ、活発な少女。現在はフランスの王大子妃の立場にある。かつてヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトに求婚されたことがあり、それ自体は断ったものの、時折手紙によって交流をしており、その伝手でタークについての知識も持っている。実在した偉人マリー・アントワネットがモデルとなっている。

場所

オーストリア

ハプスブルグ家の拠点で、神聖ローマ帝国の中枢。度重なる戦争によって国力が弱まっており、イギリスやロシア、プロイセンなどに付け狙われ、さらに内乱の火種を多数抱えているなど、内外問わず問題を抱えている。これらに対処すべく、モノクロームの代表としてタークを選出している。

プロイセン

オーストリアの北に位置する国家。大王フリードリヒ2世の元で大きな発展を遂げている。オーストリアの制圧を狙っており、そのための布石としてシュヴァルツ・フォン・ナハトを間諜として差し向けていた。また、偶然現れたシロス・ラスカー・ヴァルブルグをモノクローム代表に選出し、ますます勢いを強めている。

その他キーワード

ターク

ヴォルフガング・フォン・ケンペレンにより作られたからくり人形。自動でチェスを打つという売り込みで多くの貴族の心を掴み、マリア・テレジアも大いにその出来を賞賛している。実際は自動式ではなく中に人が入ってチェスを打つというものだが、人と向かい合って座れない犬伏黒六が操縦者に志願。彼の腕によって公式戦では常に勝利を収めており、人形の出来とチェスの腕の双方を認められ、モノクロームのオーストリア代表に抜擢されている。

モノクローム

国家間による、チェスを用いた代理戦争。代表に選ばれたプレイヤーは、褒美として破格の報奨金や地位、名誉などを約束されるが、ひとたび敗北すれば、命を落としたり、親族に咎を課せられることとなる。褒美や、命を懸けて国家に報いる高揚感を求めて、代表を夢見るプレイヤーは多い。

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