Übel Blatt ~ユーベルブラット~

Übel Blatt ~ユーベルブラット~

ファンタジー世界であるサーランディエンを舞台に、壮大なスケールで描かれる主人公ケインツェルによる偽りの歴史への復讐譚。スクウェア・エニックスの季刊誌「ガンガンYG」2004年壱号から連載をスタートしたが、参号で同誌が休刊となったため、後継誌である「ヤングガンガン」に移籍して2005年創刊号から連載を再開。その後、休載をはさんだ後に隔月刊「増刊ヤングガンガンビッグ」2011年Vol.03に掲載すると、同誌が月刊化および名称変更を行ったのにあわせ「月刊ビッグガンガン」の創刊号である2012年Vol.01から連載が再開された。このように、スクウェア・エニックスの発行する雑誌の名称変更に伴っての移籍と、新しく名称変更された雑誌の創刊号に掲載されてきたことが多い作品である。

正式名称
Übel Blatt ~ユーベルブラット~
ふりがな
ゆーべるぶらっど
作者
ジャンル
ダークファンタジー
関連商品
Amazon 楽天

世界観

本作『Übel Blatt ~ユーベルブラット~』の世界は基本として銃火器の発展していないファンタジー世界となっている。その反面、闇の異邦と呼ばれる異形の怪物たちが使う魔導の技の数々が技術体系として存在しており、炎を呼び出す符を始めに、湖の水を圧縮して妖精黒体と呼ばれる雷として撃ち出す竜の口というような巨大な砲塔が存在していたりするなど、中世ヨーロッパ諸国の文化レベルと称されるファンタジー世界が、独特の文化背景を元に文明発展を遂げた世界設定となっている。また、設定名称の多くには本作のタイトルも含めてドイツ語が使用されており、設定における「選帝侯家」なども現在のドイツに存在した神聖ローマ帝国の制度が元となっているなど、言語、設定の両面で影響が見られる。

時代設定

本作『Übel Blatt ~ユーベルブラット~』における主な舞台となるサーランディエンには帝国と呼ばれる国家が存在している。4000年に迫るとされるその歴史は、巻末において作中に登場した都市や名称のいわれを説明する形でたびたび説明されており、物語中で展開されている登場人物達がどういった歴史的バックボーンを持っているのかを想像する材料として提供されている。作中においては既に滅びたことになっている国家や遺跡などについても書かれており、物語世界で生活する人物たちの常識の一端を設定から読み解くこともできる。

あらすじ

辺境の英雄編

かつて闇の異邦との戦いに明け暮れた時代、闇の異邦を結界に封じる命を帯びた14人の槍の勇者が旅に出た。その内の3人は旅の途中で命を失い「尊き未帰還者」と呼ばれ、その内の4人は敵に寝返って討たれ「裏切りの槍」と呼ばれた。そして使命を果たして帰還した「七英雄」によって平和がもたらされてから20年余り、サーランディエンの辺境において反乱が起こる。討たれたはずの裏切りの槍の名をかたる反逆者たちは、辺境の地で暴虐の限りを尽くし、援軍を求めることもままならない辺境の民は絶望にくれていた。そんななか、大災厄から帝国を救う新しき英雄が辺境の地に存在するという予言が巫女姫によってなされる。「七英雄」の1人グレンが創設した七槍騎士団に所属するロズンは、英雄探しの任務を帯びて辺境の地を訪れ、そこで「裏切りの槍」によって滅ぼされたエクステムス村で1人の少年と出会う。腕から生える黒い剣と、凄まじいほどの剣の腕前を持ったその少年は、名をケインツェルといった。

七英雄の陣編

黒翼剣軍を倒して辺境を救った少年、ケインツェル。その正体は「裏切りの槍」の1人に数えられる刃匠アシェリートその人だった。かつて自分たちを裏切り、汚名を着せた「七英雄」にその報いを与える復讐の旅を続けるケインツェルは、国境の街リエルデ・フェレムで七英雄の治める領邦へ密航しようとしていた。しかし、同じく密航を企て失敗した少女ピーピを助けたことにより、計画は失敗してしまう。計画を練り直そうとするケインツェルは、同じくピーピを助けたヴィドという男の手によって「密航屋」と呼ばれる密航の手助けを生業とするアルテアを紹介される。彼女の手引きで国境を越えることを選択するが、密航の代金がわりにアルテアの一晩の相手を務めなくてはならなくなってしまう。ふてくされたケインツェルは他の道を探そうとするが、「七英雄」が一堂に会して国境近くに陣を張っていると知り、ためらいを消し去る。しかし、そこへ密航を摘発するために僧兵長ラシェブを先頭に僧兵たちがなだれ込んでくるのだった。

自由都市の英雄編

シュテムヴェレヒ方伯を打ち倒したケインツェルが次に目指したのは砲台伯領レムダだった。領内に存在する自由都市ユラス・アプラスで身を潜めていたケインツェルだったが、英雄殺しの逆賊を捜索する命を受けた七槍騎士団の騎士、エルサリア=ラハンクレーブとその部下たちに見つかってしまう。力を回復しきれず、手元に剣もないケインツェルはエルサリアたちの連携と、さらに、旅の途中で別れたはずの仲間、アトが加勢したことが逆に足かせとなって苦戦してしまう。ピーピアルテアの機転もあってその場をしのいだケインツェルたちだったが逃げ切れず、翌朝にはケインツェルだけがエルサリアたちと相対する。だが、逃げている間に剣を取り戻したケインツェルの力量にエルサリアたちは舌を巻く。逆賊とは思えない悲愴な剣を振るうケインツェルにエルサリアが違和感を覚え始めたその時、自由都市ユラス・アプラスへ突如攻撃が加えられる。戸惑うケインツェルやエルサリアたちの前に現れたのは、砲台伯領を治めているはずの砲台伯、バレスターの軍だった。

休載期間

スクウェア・エニックスの発行する「ヤングガンガン」において基本的な連載を行っていたが、2009年22号を最後に2年弱休載する。その間に作者である塩野干支郎次は海外に招かれてのサイン会など、グローバルな活動を展開し、本作の海外販売の広告に尽力した。

登場する武術・格闘技

本作『Übel Blatt ~ユーベルブラット~』の作中には「ルディフト流剣術」と呼ばれるオリジナルの剣術が登場する。登場人物の多くがこの剣術を学んだことのある経験者であり、同門という設定になっている。主人公ケインツェルはこの「ルディフト流剣術」が近年に輩出した最強の剣士であるという設定が下地にあり、それらの名誉のすべてを彼が仲間の裏切りによって失ったという悲劇的事実が同門の登場人物に知られることによって、ケインツェルによる復讐劇が悪か、正義かという葛藤がもたらされる。この悲劇的事実が、ピカレスクロマンの構造を持つ『Übel Blatt ~ユーベルブラット~』の物語に重みを与えている。

特殊設定

本作『Übel Blatt ~ユーベルブラット~』の舞台であるサーランディエンに存在する帝国は、古くから闇の異邦と呼ばれる異形の怪物たちによって侵略の対象となってきた。作中に存在する闇の異邦と呼ばれる存在は、その大半が言葉を話さない巨大な甲冑の形をした化物であったり、人型の爬虫類であったり、巨大な触手の化物であったりとその外見に統一性はなく、人に仇なす人外の存在全般を闇の異邦と称している。サーランディエンという名称は、帝国の始祖が神々から与えられた大地という意味の他に、人々が生活する闇の異邦に侵されていない生存圏という意味合いでも使用されており、作中で20年余り前に行われたとされる闇の異邦と帝国の大戦はこの生存圏を巡る戦いでもあった。知性を持たないように見える闇の異邦だが、一方で魔導の技と呼ばれる独特の技術体系を持ち合わせ、帝国側世界では考えられないような現象を起こして見せたりと、底の知れない存在として描かれている。

タイアップ

作者である塩野干支郎次が複数誌に同時連載していることから、発売日を同日にしてのキャンペーン企画やプレゼント企画がたびたび行われている。合同フェアは出版社の枠を越えて、スクウェア・エニックスの「ビックガンガン」に掲載されている本作『Übel Blatt ~ユーベルブラット~』を始め、過去の例では講談社の『セレスティアルクローズ』、少年画報社の『この人類域のゼルフィー』や『ブロッケンブラッド』、ワニブックスの「心剣機装ムサシデュアル」などと行われた。

読者投稿

「ヤングガンガン」誌上で読者投稿企画として作中に登場するキャラクターを募集したことがあり、投稿されたキャラクターの中からブルーメ、ルドルフ、ネリダの3人が採用されている。これらのキャラクターは、コミックス10巻にてミリエダの護衛である墓守の一族として登場した。

海外からの反応

海外向けに多数の翻訳版が存在しており、ヨーロッパ圏の他、タイなど東南アジアにも翻訳出版されている。「朝日新聞グローブ」の特集記事「MANGA、宴のあとで」ではフランスにおいて「『Übel Blatt ~ユーベルブラット~』」の販売に力を入れた結果、日本国内における売上数を上回る結果を残した一例として紹介されている。海外人気が国内人気を上回っている作品として有名で、フランスのKi-oon社やイタリアのJ-POP社に招待され、作者の塩野干支郎次がヨーロッパへ赴いてサイン会を開いたこともあるほどの人気ぶりとなっている。

著名人との関わり

作者の塩野干支郎次はPCゲームブランド「littlewitch」に所属していたことがあり、ブランドの主宰者である大槍葦人を始め、漫画家の遠藤沖人や佐々原憂樹らと共に既存のADVゲームとは異なる漫画的表現手法をとった「白詰草話」の絵コンテを担当した。

登場人物・キャラクター

ケインツェル

20年余り前の闇の異邦との戦いで、皇帝ラルゴールⅢ世の命によって旅だった14人の槍の勇者の1人にして、「裏切りの槍」に数えられる刃匠、アシェリートその人。刀鍛冶に拾われて育った孤児だったが、人の動作を一目見ただけで完璧に模倣できるという特異な才能を持つ。この才能に時の刃匠、ルディフトが目をつけ、アシェリート(現在のケインツェル)に剣を教えて新たな刃匠に育てた。 かつての旅の最中に、今では七英雄と称えられる7人による残虐な裏切りにあい身体を切り刻まれたが、死の森に住まう高位精霊をその身に取り込むことで、半ば人ならざる存在となって蘇った。七英雄に対して裏切りの報いを与えるため、その命を狙う復讐の旅をしているが、同時に、民に慕われる七英雄を殺すことで帝国の平穏を乱してしまう現実に心を痛めている。 かつて刃匠と称えられた卓越した剣技の他、「黒い剣」と呼ばれる4本の巨大な剣を腕から出すことが可能で、それらを武器に戦いを繰り広げる。

エルサリア=ラハンクレーブ (えるさりあらはんくれーぶ)

次の皇帝を選出する権限を持つ8つの選帝侯家の1つであるラハンクレーブ家の娘で、背中の中程までの黒いロングヘアーに、吊目気味の気の強さを感じさせる瞳を持つ。1000年続く武門の家系であるラハンクレーブ家の人間にふさわしい女騎士然とした人物で、グレンの創設した七槍騎士団に所属し、2年ほど前に起こった貴族の反乱では、自分を含めてわずか4人の手勢で首謀者の首を上げるという武勲を立てている。 確固とした正義感を持った人物で、帝国貴族らしからぬ振る舞いや、弱者をむやみに虐げる行いに断固として立ち向かう行動力があり、英雄殺しの逆賊として帝国の安寧を乱すケインツェルの前にはじめは敵として現れるものの、ケインツェルの正体や七英雄の統治の現状などを知るにつれて、帝国の内情を正すために独自の行動をとり始める。 その強引さや、清廉な正義感は七英雄に対する復讐に強いこだわりを持ったケインツェルをして戸惑わせ、いつかともに戦うと約束させるほどの清々しさに満ちており、また帝国内で逆賊と称されるケインツェルのことを「私の英雄」と呼んではばからないほど確かな、周囲に左右されない信念を有している。 大の風呂好きで、旅の途中だろうと入れる風呂には極力入るという主義を掲げている。

アト

クシャールンド首領家第三王女。辺境伯領ゴルムバルクに存在するクシャールンド人と呼ばれる部族の首領を務める一族の王女で、兄のクラトが黒翼剣軍との戦いによって行方不明となってからは一族の部隊を率いて戦っていた。自らのことを「僕」と呼び、髪を短く切ったボーイッシュな外見をしている。ギュスタフ(黒翼剣軍)に捕らえられていたクラトの身柄を人質に取られ、ケインツェルの乗った飛竜艇へ襲撃を仕掛け暗殺を企てるも失敗。 その後、ギュスタフ(黒翼剣軍)の操り人形と化していたクラトを殺したケインツェルに逆恨みに近い感情を抱き、復讐のために追いかけていた。のちにケインツェルの正体を知り、彼と行動をともにするにつれて心酔していく。

ピーピ

国境の街リエルデ・フェレムで密航し、七英雄の領地へ侵入しようとしていた少女。密航しようとしていたところを僧兵に見つかり、処刑されそうになっていたが、ケインツェルとヴィドに助けられた。ピーピという名前は彼女の名前ではなく、ケインツェルがとっさに自分の妹だと嘘をついた際に付けた偽名。ミルエル・ミラエル族と呼ばれる希少部族の出身だが、戦乱によって部族の大半は村ごと滅ぼされている。

ゲランペン

方伯であるシュテムヴェレヒの軍に所属する百人隊長。禿頭に入れ墨を施した筋骨たくましい大柄な男だが、外見のイメージに反して仕草や口調は女らしく自分のことを「私」と呼ぶ。千人隊長であるファーゴのことを慕っており、義兄弟の契りを交わし、彼のことを「お兄ちゃん」と呼んでいる。

ヴィド

国境の街リエルデ・フェレムで密航しようとしていたピーピとケインツェルが見つかった際、僧兵へ賄賂を渡して助けてくれた男。黒い長髪で、左目に眼帯をしている。目的があって七英雄が治める領邦である英雄の道への密航を企んでおり、密航屋であるアルテアに手引きを頼んでいた。チャクラムのような金属の輪にロープをくくりつけた独特の武器を操り、巧みに戦う。 元は盗賊だったがクシャールンド人のクラトに敗れたことをきっかけに足を洗い、以後はクシャールンド首領家に仕えていた。

アルテア

国境の街リエルデ・フェレムで酒場に扮した密航屋を営み、密航希望者の手引きを行っていた女性。3年前に地下要塞を通って恋人とともに七英雄の治める領邦である英雄の道への密入国を試みたが、要塞に住み着いていた怪物によって恋人が殺され失敗。以後、その出来事がトラウマとなっていた。

ロズン

七英雄であるグレンに仕える騎士で、グレンが創設した七槍騎士団に所属している。月読宮の襲い来る大災厄から帝国を救う新たなる英雄が辺境に現れる、という予言を頼りに辺境伯領ゴルムバルクを訪れた際にケインツェルと出会った。ケインツェルが裏切りの槍と呼ばれる英雄の1人、アシェリートであると一番最初に気づいた人物。 誠実で真面目な性格で、ケインツェルにもその点を評価されている。

グーリェ

先代の刃匠であるルディフトの伝えたルディフト流剣術を教える帝国の剣術師範である女性。剣の舘と呼ばれる場所に住んでいる。20年余り前に行われた闇の異邦との大戦のおりに幼かったアシェリート(現在のケインツェル)と出会い、ルディフトらとともに当時師範代だった彼女も彼に剣術を教え込んだ。大戦終結後、七英雄の帰還とは裏腹に刃匠の名を継いだアシェリートが裏切りの槍とされたことにより、一度は潰えかけた流派を立て直すことに尽力した人物で、現在では剣の舘は往年の姿を取り戻しつつある。 アシェリートを殺したグレンのことを深く憎んでいるが、同時に帝国へ忠誠を誓う剣士の1人としてグレンの判断が正しかったとも思っており、その上で剣の舘を運営し後進を育て上げるといった、相反する心を厳しく律したうえで、すべきことを行うことのできる強い精神力の持ち主である。

イクフェス

グレンに仕える騎士の1人である少年。元は帝国貴族だったが、現在では没落している。家の名誉を復権するために武勲を強く求めており、英雄殺しの逆賊であるケインツェル討伐の命を喜んで受けた。裏切りの槍のアシェリート亡き後、誰にも受け継がれていなかった帝国最強の剣士の称号である刃匠を受け継ぐ可能性のある人物とされており、その才能は剣の舘のグーリェやケインツェルをして驚かせるほどのもの。

グレン

20年余り前に行われた闇の異邦との大戦の際に、皇帝ラルゴールⅢ世の命を帯びて、封印のほつれを死の森の向う側にある封印殿へと修復しに行った槍の勇者の1人であり、無事に帝都へと帰還を果たした「七英雄」の1人。現皇帝ラルゴールⅢ世の息子で、剣の舘でアシェリート(現在のケインツェル)とともに学んだ同門に当たる。 七英雄となってからは人が変わったように冷静沈着で達観した人物となり、自身の領地のみならず方々で善政を行い、七英雄全体の名声を確立した。そのため七英雄の中心的人物で国民的な人気も高く、創設した七槍騎士団には身分の区別なく、グレンを慕う者や、憧れを抱いた者、あるいはその行動理念に賛同した者が多く集まっている。

イシュディーン

20年余り前に行われた闇の異邦との大戦の際に、皇帝ラルゴールⅢ世の命を帯びて、封印のほつれを死の森の向う側にある封印殿へと修復しに行った槍の勇者の1人であり、無事に帝都へと帰還を果たした「七英雄」の1人。昔からのグレンの知り合いで、付き従ってきた男性。七英雄となってからもその姿勢は変わらず、グレンがなそうとしていることを支援し続けている。 飛竜石が多く浮かぶフェルングロガーエをはじめとした、帝国の飛竜部隊に関するものを任されており、大飛竜部隊の運用や飛竜艇の建造などを行っていた。

シュテムヴェレヒ

20年余り前に行われた闇の異邦との大戦の際に、皇帝ラルゴールⅢ世の命を帯びて、封印のほつれを死の森の向う側にある封印殿へと修復しに行った槍の勇者の1人であり、無事に帝都へと帰還を果たした「七英雄」の1人。大戦終結後に功績に対する褒賞として方伯領モランを与えられた。元は石工の家の息子だったが盗賊に身をやつしていたことがある。 大戦の折には、方伯領モランへと迫る闇の異邦に対抗するために、奪い取った敵方の魔導兵器をアシェリート(現在のケインツェル)とともに修復し、敵を撃退した。

バレスター

20年余り前に行われた闇の異邦との大戦の際に、皇帝ラルゴールⅢ世の命を帯びて、封印のほつれを死の森の向う側にある封印殿へと修復しに行った槍の勇者の1人であり、無事に帝都へと帰還を果たした「七英雄」の1人。元は砲台伯領レムダの商人のせがれ。自分以外の兄弟が商人として自立するなか、1人だけ商才がなかったため、時の皇帝が死の森の奥にある封印殿へ向かう勇者を募集しているという声を聞いた父親によって、14人の勇者の1人とされる。 気弱で臆病な性格をしており、英雄殺しの逆賊であるケインツェルの噂が広まるにつれ、精神的に追い詰められていった。

レベロント

20年余り前に行われた闇の異邦との大戦の際に、皇帝ラルゴールⅢ世の命を帯びて、封印のほつれを死の森の向う側にある封印殿へと修復しに行った槍の勇者の1人であり、無事に帝都へと帰還を果たした「七英雄」の1人。同じ七英雄であるグレンとは昔から反りが合わずにいた。封印の旅をしていた当時から、皇帝の座を目指していると公言するなど権力欲の強い男で、同時に冷酷な性格をしている。 自身の領地である侯領クローツェンを武力によって押さえつけており、数多くいる自身の息子や娘にも同じように冷酷であることを幼少時より教育していたが、一方で彼らのことを深く愛し、大事に思っている。正室はデルシャンデ・アマリオーシュという女性で、年若い息子であるグエルードのことを2人で心配していた。 ギュレングルフとニルゲンフェレトの2人を部下のように従えている。

ギュレングルフ

20年余り前に行われた闇の異邦との大戦の際に、皇帝ラルゴールⅢ世の命を帯びて、封印のほつれを死の森の向う側にある封印殿へと修復しに行った槍の勇者の1人であり、無事に帝都へと帰還を果たした「七英雄」の1人。禿頭の太った男で、大戦終結後はレベロントに付き従い、いずれ皇帝になると宣言していた彼にニルゲンフェレトとともに媚びを売っていた。 月読伯領ロゴを治めている。

ニルゲンフェレト

20年余り前に行われた闇の異邦との大戦の際に、皇帝ラルゴールⅢ世の命を帯びて、封印のほつれを死の森の向う側にある封印殿へと修復しに行った槍の勇者の1人であり、無事に帝都へと帰還を果たした「七英雄」の1人。長い髭の生えた老人で、大戦終結後はレベロントに付き従い、いずれ皇帝になると宣言していた彼にギュレングルフとともに媚びを売っていた。 城伯領ツィクヒートを治めている。

クファー(裏切りの槍)

20年余り前に行われた闇の異邦との大戦の際に、皇帝ラルゴールⅢ世の命を帯びて、封印のほつれを死の森の向う側にある封印殿へと修復しに行った槍の勇者の1人。剣の名門であるイェブナレス家の生まれで、長子。帝都を守護する役割を帯びた領邦イェブルを継ぐ予定だった。アシェリート(現在のケインツェル)に匹敵するほどの剣の腕前の持ち主。 故郷にはミリエダという妻がおり、息子が1人存在していた。当代ではルディフト流剣術を収めたアシェリートに奪われた刃匠を息子の代で取り返そうと夢見ていた。帝国を裏切ったとされる、「裏切りの槍」の4人の内の1人。

ギュスタフ(裏切りの槍)

20年余り前に行われた闇の異邦との大戦の際に、皇帝ラルゴールⅢ世の命を帯びて、封印のほつれを死の森の向う側にある封印殿へと修復しに行った槍の勇者の1人。辺境出身の女性で、卓越した戦技を身につけていた。帝国を裏切ったとされる、「裏切りの槍」の4人の内の1人。

クレンテル(裏切りの槍)

20年余り前に行われた闇の異邦との大戦の際に、皇帝ラルゴールⅢ世の命を帯びて、封印のほつれを死の森の向う側にある封印殿へと修復しに行った槍の勇者の1人。少年のような外見をしている。辺境の出身で、魔導の技に詳しかった。帝国を裏切ったとされる、「裏切りの槍」の4人の内の1人。

エルグナッハ

刃匠ルディフトの弟子の1人で、時の軍務大臣にルディフトを招聘するようにと命じられた2人の内の人。軍師をしていた。初老の男性で、忍耐強い精神の持ち主。招聘をはぐらかし続けるルディフトに対して、1日や2日で説得できるとは思っていないと告げ、長期にわたる逗留でかたくななルディフトを説得し続けた。皇帝ラルゴールⅢ世の命を受けて闇の異邦封印の旅へと出かけた14人の内の1人で、「尊き未帰還者達」の1人。 のちに国境の街リエルデ・フェレムとなる地下要塞にて、闇の異邦の大侵攻を防ぐために千の石槍と呼ばれる巨大な壁を構築するために、術式の犠牲となった。

ルディフト

アシェリート(現在のケインツェル)の前に刃匠だった老齢の男性。20年余り前に行われていた闇の異邦との戦い当時、最強の人物とされていた。戦いへ招聘するために時の軍務大臣によって彼の部下であるトマバルとエルグナッハが送られたが、ルディフト自身は招聘を固辞し続けた。馴染みの刀鍛冶に拾われ育っていったアシェリートの才能をいち早く見抜き、刀鍛冶としてのアシェリートにたびたび助言を与えながら彼の成長を余生の楽しみとしていた。

エルツェン

七槍騎士団に所属するエルサリア=ラハンクレーブと行動をともにする3人の騎士の1人。メガネと黒く長い髪が特徴の男性。七槍騎士団に所属しているがグレンに仕えているわけではなく、選帝侯家であるラハンクレーブ家の娘であるエルサリアに付き従っており、彼女のことを「お嬢さま」と呼んでいる。魔導の技が込められた札や、風の妖精である「スフィー」を使っての探索など、サポートを行うことが多い。

ダリステ

七槍騎士団に所属するエルサリア=ラハンクレーブと行動をともにする3人の騎士の1人。短髪にあごひげを蓄えた角張った顔の男で、3人の中では一番体格がいい。剣を振るって前衛として戦うエルサリアの護衛を主に務めており、鎖の先端に短剣の付いた武器を使用して戦う。また、行動の際にはエルサリアに献策を求められるなど、4人の中で軍師としての役割も負っている。

カルクリス

七槍騎士団に所属するエルサリア=ラハンクレーブと行動をともにする3人の騎士の1人。柔らかい癖毛をした少年のような外見の男で、3人の中では最も小柄。幾つもの節のある、折れ曲がったり伸び縮みしたりする独特の槍を武器に、ダリステとともにエルサリアの護衛を務めている。

シェムリェ

七英雄であるグレンに仕える騎士で、グレンが創設した七槍騎士団に所属している。眼鏡をかけ、黒髪をシニョンでまとめた女性。ロズンの部下で、彼をよく補佐している。武器はボウガンや弓で、戦闘の際には遠距離からロズンたちを支援していることが多い。

クレンツ

七英雄であるグレンに仕える騎士で、グレンが創設した七槍騎士団に所属している。角張った顔をした大柄な青年でロズンの部下の1人。ロズンやシェムリェのサポートに回ることが多く、戦闘の際にはシェムリェの使用するボウガンの矢を、大柄な体格を利用して装填したりと、目立たない活躍が多い。

アンギエンデ

七英雄であるグレンに仕える騎士で、グレンが創設した七槍騎士団に所属している。右目の上下に入れ墨をした女性で、黒く長い髪をしている。グレンと同様に正義感が強く、逆賊であるケインツェルとイクフェスの戦いに心動かされるなど、公正な志を持った人物。レベロントとグレンの戦いの後に、レベロント残党に囚われていた。

アルジェラント

グレンに仕える騎士で、七槍騎士団の団長を務める男性。グレンが現在の領邦へと転封になった際に部下数名とともにグレンのもとを訪ねて召し抱えられ、それをきっかけとして七槍騎士団が創設された。グレン御用達の飛竜艇である四ツ辻四世号の艦長はアルジェラントの顔なじみで、その縁から七槍騎士団の公にできない任務を行う際に協力している。

ラルゴールⅢ世

サーラント帝国157代皇帝である現皇帝。20年余り前に行われていた闇の異邦との大戦当時はオプスロント王国の将軍でディスケンと名乗っていた。大戦の最中に皇帝へと即位しており、そのための使者として選帝侯のもとへアシェリート(現在のケインツェル)たちが赴いたことがある。すっかりと老いさらばえており、帝国の政治に関して余り口出しすることはなく、往年の力強さは失われてしまっている。

アルクサルト=ラハンクレーブ (あるくさるとらはんくれーぶ)

次の皇帝を選ぶ権限を持つ8つの選帝侯家の1つ、ラハンクレーブ家の現頭首である男性。エルサリア=ラハンクレーブの父親にあたる。清廉実直を絵に描いた人物で、まっすぐな強い意志を瞳に宿している。レベロントの横暴と、権限を無為に与え、横暴に歯止めをかけられない皇帝の有様を見て帝国の未来を憂慮し新しい皇帝の選出を決意するなど、娘に負けず劣らずの正義感を持つ。 かつて、ラルゴールⅢ世を皇帝の座に据えるための使者としてアルクサルト=ラハンクレーブのもとをアシェリート(現在のケインツェル)が訪れたことがあり、彼とは面識がある。

エルーニェ

辺境伯領ゴルムバルクに位置するエクステムス村に住む、黒く長い髪が特徴的な少女。崖から滑落し川へと転落し、衝撃で気を失うままに流されていたケインツェルを見つけ、手当を行って家で保護していた。女の器を借りて食事をした場合、その女性に夜這いをしなければその男は腰抜け、という村の風習を知っていながらケインツェルに自身の器を使って食事を与えたりと気がある素振りを見せる。 クローヌという弟の他にイェールンという幼なじみがいる。

クローヌ

辺境伯領ゴルムバルクに位置するエクステムス村に住む少年。エルーニェの弟で、村で羊を世話する仕事を行いながら暮らしている。川を漂流してきたケインツェルを姉が拾ってきた際には黒翼剣軍かと警戒していたが、すぐに打ち解け、エルーニェがケインツェルに自分の器で麦粥を飲ませたのを見て、器を借りた女性に夜這いをしなければならないという村の風習を彼に伝えた。

イェールン

アルバヌング辺境伯に仕える代官、リグレスの従者をしている少年。辺境伯領ゴルムバルクに位置するエクステムス村に住まうエルーニェとクローヌの姉弟とは幼なじみのような関係にある。エルーニェに対して浅からぬ想いを抱いており、ケインツェルが彼女の家で保護されていると聞いてあからさまな嫉妬の表情を浮かべていた。

リグレス

アルバヌング辺境伯に仕える代官である青年。老け顔なのか、ケインツェルにおじさんと呼ばれた際には、そのように呼ばれる歳ではないと訂正させている。黒翼剣軍の百人隊を一晩で全滅させた凄腕の剣士を探し出し、辺境伯領ゴルムバルクが立たされている苦境を打破しようと、エクステムス村に漂着したケインツェルを訪ねてきた。 従者としてイェールンを伴っている。

クラト

クシャールンド首領家の人間でアトの兄。クシャールンド人を率いて黒翼剣軍と戦っていたが、最中に行方不明となっていた。ギュスタフ(黒翼剣軍)によって捕らえられて体内、体外を問わずいじくり回され、人外の存在との融合を強制されたことによって完全な傀儡と化している。

シャーレン

クシャールンド首領家第二王女である女性。辺境伯領ゴルムバルクが黒翼剣軍による災禍に見舞われていた際、近隣の豪族へと同盟の交渉を行うために護衛を伴っての旅路に出ていた。旅程の途中で方伯軍に襲われ拉致されると飛竜艇に乗せられ方伯領へと連れて行かれた。

アルバヌング辺境伯

辺境伯領ゴルムバルクを治める辺境伯である初老の男性。領地の周辺で山賊を集めて挙兵した黒翼剣軍に対して、まともな抵抗を示さずにいた。それどころか、黒翼剣軍のリーダー格であるアシェリート(黒翼剣軍)やクレンテル(黒翼剣軍)の甘言に耳を貸し、黒翼剣軍に助力することで辺境の王となる野望を抱いていた。

ゼフィ

宿場町アハドート・シャドでピーピが出会ったミルエル・ミラエル族と呼ばれる種族の少年。ピーピと同族で、種族の特徴である少しとがった耳と独特の髪色をしている。アルテアの手引きによって両親とともに国境の街リエルデ・フェレムから飛竜艇に密航し、方伯領モランへと密入国を果たしていた。辺境の戦乱によって滅びかけていた種族の再建を幼いながらに目指しており、両親とともに生き残ったミルエル・ミラエル族で新しい村を作ろうとしている。

クファー(黒翼剣軍)

辺境伯領ゴルムバルク周辺で山賊を集めて挙兵した黒翼剣軍を名乗る集団のリーダー格の1人。20年余り前に行われた闇の異邦との戦いで、皇帝ラルゴールⅢ世に叛逆した咎で討伐されたとされる「裏切りの槍」の「クファー(裏切りの槍)」を自称している男性。「ザイラス」という名の黒馬を偏愛しており、部下よりも大切にしている。 棘の生えた棍棒のような武器を操る。

ギュスタフ(黒翼剣軍)

辺境伯領ゴルムバルク周辺で山賊を集めて挙兵した黒翼剣軍を名乗る集団のリーダー格の1人。20年余り前に行われた闇の異邦との戦いで、皇帝ラルゴールⅢ世に叛逆した咎で討伐されたとされる「裏切りの槍」の「ギュスタフ(裏切りの槍)」を自称している女性。美しさに対して妄執を抱いており、強い者と美しい者以外は生きていてはいけないと考えている。 己の美を追究するため、積極的に人外の存在との融合を試みており、捕らえてきた美少年などに低位の妖精を融合させては失敗することを繰り返していた。武器として雷撃を操る。

アシェリート(黒翼剣軍)

辺境伯領ゴルムバルク周辺で山賊を集めて挙兵した黒翼剣軍を名乗る集団のリーダー。20年余り前に行われた闇の異邦との戦いで、皇帝ラルゴールⅢ世に叛逆した咎で討伐されたとされる「裏切りの槍」の刃匠「アシェリート(黒翼剣軍)」を自称している男性。2つの剣を巧みに操り戦うが、さらに魔導の力によって背中から2本の剣を更に生やすことで、合計4本の剣を同時に使用することができる。

クレンテル(黒翼剣軍)

辺境伯領ゴルムバルク周辺で山賊を集めて挙兵した黒翼剣軍を名乗る集団のリーダー格の1人。20年余り前に行われた闇の異邦との戦いで、皇帝ラルゴールⅢ世に叛逆した咎で討伐されたとされる「裏切りの槍」の「クレンテル(裏切りの槍)」を自称している男性。魔物と融合し、怪物と化した人間を操り七槍騎士団と戦闘を繰り広げた。

トマバル

刃匠ルディフトの弟子の1人で、時の軍務大臣にルディフトを招聘するようにと命じられた2人のうちの1人。師範代に至るほどの剣の腕を持つ男性。名誉欲に囚われた人物で、説得に首を縦に振らず、ひたすら八の基本型だけを鍛錬するルディフトの姿に業を煮やし、刃匠の名を無理矢理にでも継承しようと画策した。

ラシェブ

シュテムヴェレヒ方伯に国境の街リエルデ・フェレムを任されている僧院に所属する僧兵長の男。僧院は、国境を越えようとする人間が正しい人間かどうかを判断する仕事を任されており、密航者に対しては毎朝、処刑が行われることとなっている。僧兵長であるラシェブは処刑や国境検問の取り仕切りを行っているが、基本的に賄賂や権力に弱い欲深な俗っぽい性格をしている。

クルポド

シュテムヴェレヒ方伯に国境の街リエルデ・フェレムを任されている僧院に所属する僧兵の男。ラシェブの部下の1人で、国教を不法な手段で越えようとする密航者を取り締まる仕事を主に行っている。「徳」と呼ばれる賄賂を上納するシステムが僧院内には存在しており、その額によって出世が行える。クルポドも「徳」を僧院に収めることで出世を目指す1人で、ラシェブに高額の「徳」を収めていたケインツェルたちに襲い掛かった。

大僧正

僧院と呼ばれる組織を作り上げた人物。20年余り前に行われた闇の異邦との大戦の際に、両軍によって占領と再占領が繰り返された地下要塞に、千の石槍と呼ばれる巨大な壁が立ち上り闇の異邦の侵攻を食い止める奇跡を目の当たりにしたのをきっかけとして、当時、商人をしていた大僧正が真理を悟ったとして千の石槍を祭る僧院を作り上げた。 シュテムヴェレヒ方伯によって国境の管理を任されて以後は、僧院組織の強化に努め、通行税を主な収入源として財力と権力を誇っていた。

ラングザッツ

僧兵長ラシェブに雇われてケインツェルたちの前に立ちはだかった傭兵の男。封じられた妖精の叫び声によって対象を切り裂くことのできる魔剣を持っており、その圧倒的な力によってケインツェルたちを苦しめた。仕事に対する依頼料がとても高く、また剣の一振りごとに料金を要求するため、欲深いラシェブは依頼することをためらっていた。 アルテアとの間に浅からぬ縁がある。

巫女姫

月読宮に居を構える少女。千の石槍が消えた時に、月の禍々しさから天律と呼ばれる予言が動き出すと予感したり、とても強い霊感を持っている。黒色のロングヘアーの髪型をしており、少女らしい清楚な外見をしているが、七英雄の前に立たされたとしても予言を違えないどこか超然とした雰囲気と精神の持ち主。

ファーゴ

シュテムヴェレヒ方伯に仕える男性で、方伯軍の千人隊長として軍を束ねている。シュテムヴェレヒに仕える前は悪逆な行いをする地方領主のもとで飼われていた。民のことを思い、弱者に尽くすことをいとわないできた人間を演じているが、その実、シュテムヴェレヒとともに闇の異邦の魔導の技に手を染め、人をさらっては人体実験を行っている。

ヴァルゲ

バレスター砲台伯に仕える男性。おかっぱ頭のような、綺麗に切りそろえられた髪型をしている。代官を務めており、バレスター砲台伯の命で自由都市ユラス・アプラスへと攻め入った。虎の威を借る狐といった性格をしており、バレスター砲台伯の命に従う一方で、エルサリア=ラハンクレーブと出会った際には最初、高圧的に接していたにもかかわらずエルサリアが選帝侯家の娘であると知ったとたんに態度を急変させるなど、権力や名に弱い性格をしている。

ティートレア

砲台伯領レムダに位置する自由都市ユラス・アプラスで、旅の途中でケインツェルに置いて行かれたアルテアたちを自らの酒場でかくまった女性。かつて、国境の街リエルデ・フェレムに戦乱を逃れて住み着いていたことがあり、その時にアルテアの店で働かせてもらったうえ、密航の手引きをしてもらったりと恩義があった。

領主

砲台伯領レムダに位置する自由都市ユラス・アプラスの領主を務める人物。眼鏡をかけた優男然とした外見の男性。領主であるわりに、普段は牧歌的な生活を営んでいるのか釣りに出ようとしていた領民に一緒に行かないかと声をかけられていた。しかし、自由都市の領主であるという誇りを十二分に持ち合わせており、エルサリア=ラハンクレーブとの交渉や、攻撃を仕掛けてきたヴァルゲと対峙した際には毅然と自由都市の自治権利の正当性を主張している。

デルゼレ

砲台伯領レムダに位置する自由都市ユラス・アプラスの自警団長を務める男性。かつて国境の街リエルデ・フェレムでティートレアとともにアルテアに密航の手引きをしてもらい、命を助けられた過去がある。自由都市ユラス・アプラスが攻め込まれた際、敵の圧倒的な軍勢に対して抵抗しようとする民衆をよく抑え、無駄な抵抗による犠牲の拡大を抑圧していた。

アルグロー

砲台伯領レムダに位置する自由都市ユラス・アプラスに住む男性。かつて国境の街リエルデ・フェレムでティートレアやデルゼレとともにアルテアに密航の手引きをしてもらい、命を助けられた過去がある。自由都市ユラス・アプラスが攻め込まれた際には、圧倒的な敵の群勢を前に民衆を率いて抵抗しようとしていたが、自警団の団長であるデルゼレに止められていた。

代官

バレスター砲台伯に仕える代官の1人でヴァルゲの同僚である男性。バレスターの補佐のような立場で、自由都市ユラス・アプラスに攻め込む際など、率先してバレスター砲台伯の命令を実行に移し、決断できない他の代官たちを引っ張っていた。果断な性格で、精神的に追い詰められていたバレスター砲台伯を落ち着けるために、あらゆる行動をとった。

ポレヴィーク

砲台伯軍との戦闘後、混乱した自由都市ユラス・アプラスに捕らえられていたヴァルゲを助けに現れた、小柄で太った人物で、「~でござる」といった独特の口調で話す。自身のことを「砲台伯軍臨時元帥」と称している。崩壊した砲台伯軍の残党を糾合して自由都市へ攻め込もうとする山岳貴族の呼集に応えて、加勢しようとしていた。

山岳貴族

砲台伯軍との戦闘後、混乱した自由都市ユラス・アプラスへと攻め入って次の砲台伯の座をかすめ取ろうとした老人。砲台伯軍の残党を糾合していた。欲深く卑賤で、巨体の息子を伴って現れると、街の至る所で略奪を始めようとしたが民衆の抵抗にあった。

ラヴァーン・ゼフォーレア (らゔぁーんぜふぉーれあ)

グレンの領邦であるイェブルに存在する軍閥の1つで、有力な四家の1つであるゼフォーレア家の現頭首を務める男性。クヴェリア・ゼフォーレアの兄。左腕がなく、顔の右に火傷のような大きな怪我のある外見をしているが、かつては軍閥の中でも特に好戦的だったゼフォーレア家でも有数の猛将だった。現在では落ち着いており、かつての血気にはやる様子は見受けられない。

クヴェリア・ゼフォーレア (くゔぇりあぜふぉーれあ)

グレンの領邦であるイェブルを訪れたケインツェルとアトが出会った少女。歌を集めており、ケインツェルたちを旅人だと思い、辺境の歌を教えてもらえないかと頼み込んできた。イェブルに存在する軍閥の1つで、有力な四家の1つであるゼフォーレア家の娘。エルサリア=ラハンクレーブとは古くからの友人の関係にある。 剣の手ほどきを受けており、令嬢然とした外見ながら、自らが剣を持って戦うこともある。

ナバルド

グレンの領邦であるイェブルに存在する軍閥の1つで、有力な四家の1つであるナバルド家の将軍で、大柄で筋骨たくましい初老の男性。ゼフォーレア家と領地を隣接しており、戦場ではラヴァーン・ゼフォーレアを幾度となく苦しめた存在だったが、グレンがイェブルを統治するようになってからは手を出せずにいた。

ミリエダ

イェブル首領家であった剣の名門イェブナレス家へと嫁いできた女性で、14人の槍の勇者の1人にして、「裏切りの槍」の1人と数えられるクファー(裏切りの槍)の妻。クファー亡き後、配下によって滅ぼされたイェブナレス家の騒動から逃れるために、イェブルの領邦内で身を隠して生きていた。

エリオ

ミリエダの2番目の夫との間に生まれた子供。黒髪の少年で、帝国の大学へと進学し、勉学に励んでいるため剣の名門であるイェブナレス家の人間ながら剣術を学んでいない。剣の修行のために離れている兄の旅先で見た珍しい風物の話を聞かせてもらえるのをいつも心待ちにしている。

ガイエラル

レベロントの数多くいる子供の1人で長男。レベロントがイェブルへと侵攻した際には、ゼフォーレア家を攻めた。他の兄弟に違わず、冷酷で無慈悲な性格をしている。自身の父親であるレベロントの野望を叶えることを第一と考えており、父の命に忠実な人物。

バラント

レベロントの数多くいる子供の1人で四男。レベロントがイェブルへと侵攻した際には、東部に位置する軍閥の1つであるハマーズィア家を攻めた。わずか9歳で軍団を与えられると、領内で抵抗する部族を女子供まで皆殺しにしたうえで、他の部族に対する見せしめに首を杭に刺して並べ立てたという逸話がある。冷酷で無表情な人間だが、その一方で腹違いの弟であるグエルードの軟弱さを笑わず、戦乱が終わった後には必要になる存在だと告げていた。

ロズグナー

レベロントの数多くいる子供の1人で三男。レベロントがイェブルへと侵攻した際には、北部に位置する軍閥の1つであるラゼント家を攻めた。兄弟の中では冷静にして冷酷な性格をしており、自身の野望のためであるならば味方や兄弟でさえ裏切るほど。

スパズ

レベロントの数多くいる子供の1人で五女。レベロントがイェブルへと侵攻した際には、中西部に位置する軍閥の1つであるゾナレリ家を攻めた。大柄で恰幅のよい女性で獣皮のマントを羽織っている。兄たちに負けず劣らずの剛胆で冷酷な性格をしており、野望に必要とあれば魔導の技にも手を出すほど。

グエルード

レベロントの数多くいる子供の1人で六男。レベロントの正室であるデルシャンデ・アマリオーシュとの間に生まれた。兄弟たちの中では年少で、戦場を経験したことがない。レベロントに反旗を翻した選帝侯アルクサルトに対して圧倒的な大艦隊とともに派遣され、初陣を飾った。他の息子たちとは母親が違い、気弱な性格も相まって、母親讓りの軟弱な性格をしていると揶揄されていた。 レベロントが七英雄となってから生まれた子供で、栄光しか知らない幸せな人生を送るだろうと、レベロントからその未来を嘱望されていた。

デルシャンデ・アマリオーシュ (でるしゃんであまりおーしゅ)

レベロントの正室である女性。年若い息子であるグエルードのことを常に案じており、圧倒的な数の軍勢とともに初陣へ向かった彼のことを心配し続けていた。粗暴なレベロントとは対照的にか弱い性格と雰囲気の女性で、金色の髪をシニョンにまとめている。

森の王

イェブル領邦に存在する魔の森の中でケインツェルたちが出会った巨大な怪物。森へ踏み入ったケインツェルたちが進もうとするのを、死体を操り妨害してきた。フルグプロンゲルという何百年も昔に滅んだ街の甘いパンをケインツェルたちに求めるなど、いつから生きていたのか分からないほどの長寿。

エギム

イクフェスのもとへと配置された部隊の古株で、モヒカンのような髪型をした初老の人物。20年余り前に行われた闇の異邦との大戦を経験しており、その際に受けた正体不明の毒に今もなおむしばまれ続けている。毒を抑えるために頭の右側面に入れ墨のようなものが描かれており、それを境にして顔の色が変わっている。

アラド

イクフェスのもとへと配置された部隊の新米隊員の青年。田舎であるビスベルデン地方から兵隊になるために出て来ており、奴隷騎士から成り上がったイクフェスに対して強い憧れを抱いている。レベロントの演説に感化され闇の異邦と戦うと息巻いていたが、その様子を見たエギムによって叱りつけられていた。

ベッツェガルム

攻城戦を得意とした「城攻め屋」と呼ばれる傭兵集団を率いる小太りで、顎と鼻下の全体を髭で覆った男。20年余り前に行われた闇の異邦との戦いにも参加しており、その際、攻城塔に籠城するまで追い詰められたところを槍の勇者たちに助けられた。この経験から彼らに対して恩義を感じており、特にアシェリート(現在のケインツェル)に対しては帰ってきたならば仕えてもいいという約束を交わしていた。

ウルリッツ

南バルクルーネのメヴェスリガー村に住んでいた少年。村が季節外れの地竜に襲われ存亡の危機に陥った時、レベロントの軍隊がいる宿場町ファルキンクスまで1人で軍隊を呼びに向かった。意志が強く、極寒の中で村と町を10日かけて往復した。

ゾルデーン

南バルクルーネに位置する侯領レギアノーシュを収める領主。レギアノーシュは北方諸国と帝国をつなぐ要衝の地で、かつては小国がひしめき合う土地だったがゾルデーンが一代で1つにまとめあげ、その功績から名君と称えられている。槍の名手でかつてはエルサリア=ラハンクレーブの父であるアルクサルト=ラハンクレーブと轡を並べて戦場を駈け抜けた間柄。

アルギド

南バルクルーネに位置する侯領レギアノーシュに住む人物で王子。領主であるゾルデーンの息子にあたる。気が小さく泣き虫な性格で、気に入らないことがあるとすぐに泣き出してしまう。20歳になっても城に籠もって本ばかりを読んでいるような青年で、このところ続いていた戦乱に心をすり減らしていた。

ヴェシェーネ

南バルクルーネに位置する侯領レギアノーシュに住む、領主ゾルデーンの妻。年齢を感じさせない、とても若い外見をした女性。エルサリア=ラハンクレーブの付き人のような立場にあるエルツェンは、10数年前にヴェシェーネとあったことがある。

ドラブ

レベロントの軍の残党とともに洞窟の奥深くで隠れ潜んでいた巨大な怪物。見かけは恐ろしいが、人の言うことをよく聞く心優しい生き物で、敵に襲われた時にはその攻撃から身を挺して人間をかばうこともある。恐ろしい外見を利用して、付近の村人が洞窟に近づかないようにしていた。

ルドルギオ

レベロントに仕えていた兵士の1人で千人隊長を務める初老の男。レベロントとグレンの戦いの以後、残党となったレベロント軍の飛竜艇を整備する技師や家族を保護し、洞窟の中でかくまっていた。ドラブという大きな体躯を持った怪物をてなずけていた。

プランクファン

グレンが創設した騎士団である七槍騎士団に所属していた騎士で、グレンたちとは同輩にあたる青年。のちに、グレンが新しく創設した天槍騎士団に所属し、グレンのことを狂信してその野望のためならばあらゆることを実行する冷酷な人間となる。

ゲドゥーザー

グレンが新しく創設した天槍騎士団に所属する騎士の1人。両手に大きな半円に棘の付いた独特の武器を持って戦う。グレンのことを狂信しており、野望のためならば無辜の民を殺すことですら躊躇しない無慈悲な人物。行動をともにしたプランクファンには浮かれていると言われていた。

デジーダ

グーリェにルディフト流剣術を教えられていた弟子の1人でグレンが創設した天槍騎士団に所属している。妖艶な雰囲気の女性で、グーリェに対して並々ならぬ感情を持ち合わせている。弟子のグノーディスという少女を常に付き従えている。「天槍の雫」と呼ばれる若い肉体と異形の力を与える液体を、グレンからの贈り物としてグーリェ師範へ渡した。

グノーディス

剣の舘でルディフト流剣術を教えるグーリェの弟子、デジーダに付き従う少女。デジーダの弟子で、ともにグレンが創設した天槍騎士団に所属している騎士の1人。グノーディスに対して特別な感情を抱いている。剣の舘の高弟を5人同時に相手にして勝てるほどの実力者。

ハンジアル

剣の舘でグーリェにルディフト流剣術を教えられていた門下生の青年。デジーダの弟子であるグノーディスによって、剣の舘の門下生が敗北するのを見ていた。デジーダが取り出した「天槍の雫」の誘惑に負け、口にしてしまった弱い心の持ち主。

ヴァルゼイル

帝国に仕える将軍。既に退役し、軍を退いた身だったが皇帝であるラルゴールⅢ世が立ち上がったと聞いて帝都へとはせ参じた老人。アルクサルト=ラハンクレーブやエルサリア=ラハンクレーブの知己で、幼い頃のエルサリアを知っている。

ゲナンディクス

帝国へと反旗を翻した男。帝国貴族で、かつてはラルゴールⅢ世とともにゾルングド城で籠城戦を戦い抜いたこともある有能な人間だが、自らの一族が生き延びるにはこれしかないと決意し、ゾルングド城を攻め落とした。リゲナンドという息子がいる。

リゲナンド

帝国へと反旗を翻した帝国貴族、ゲナンディクスの息子。帝国内部で続く内乱の中、自分たちの一族が生き残るためには帝国へ反旗を翻すしかないと決意した父に付き従い、ゾルングド城を攻め落とした。父親よりも落ち着いた、冷静な性格をしている。

ゼマルファー

帝国に忠誠を誓う帝国貴族の1人。ゲナンディクスの手によってゾルングド城が陥落し、帝都へその手が迫るのも時間の問題と思われていたところを、手勢の全兵力を率いてツァーフィア城へと駆けつけた。ゲナンディクスに対して2か月にわたって籠城戦を繰り広げ、耐え忍んでいる。

集団・組織

イェブナレス家

かつてイェブルを統治していた帝国貴族の一族。古くから続く剣の名門で、数多くの刃匠を輩出してきた。神託暦2180年頃、「サール最後の蛮族」と呼ばれるアーギフが時の女帝ラドナグリアⅠ世の姉と結婚したことによって帝国貴族の仲間入りを果たすと、神託暦2900年代に時の領主であるラクフ・イェブナレスがイェブル軍団の戦闘能力を向上させるため、領内のさまざまな剣や槍などの戦闘技術を収集し、研究、洗練したことが剣の名門のイェブナレス家の名声を築き上げることとなった。 200年ほど遅れて剣聖と謳われる剣士、ルディフトを生み出した。ロゴ派と呼ばれる剣の流派が現れるまで名実ともにイェブル流の剣術は帝国最強を誇り、その後も、ロゴ派と帝国最強の称号である刃匠の称号を奪い合うこととなった。 のちに、イェブナレス家は長子であるクファー(裏切りの槍)が闇の異邦との大戦の最中に行われた封印の旅の途中に裏切ったとされ、「裏切りの槍」の1人に数えられたことで没落する憂き目に遭う。

天槍騎士団 (てんそうきしだん)

グレンが新たに創設した騎士団の名前。元は七槍騎士団に所属していた隊員や、グレンの力に憧れた人物たちが多く参加している。天槍騎士団に所属する隊員のほとんどが「天槍の雫」と呼ばれる不思議な液体によって異形の力を与えられており、また、若々しい肉体を手に入れている。

七槍騎士団 (しちそうきしだん)

「七英雄」の1人であるグレンが創設した私設騎士団。生まれた身分に関係なく、個人の努力と志をもとに騎士として採用する特色を持っており、ロズンやシェムリェといった人物が所属している。正式な騎士団としては認められていないため、立場上はあくまでグレンの私兵に過ぎない扱いであるものの、帝国最強の戦力を備えつつあるとされている。 グレンが現在の領邦へ転封した際に、現騎士団長であるアルジェラントが数名の部下とともにグレンを訪ね、召し抱えられたのが七槍騎士団の始まりであるとされている。帝国の未来のために、グレンの指示によって行動することが多く、月読宮の審律官によって予言された大災厄から帝国を救うという、新たな英雄を探しに辺境を訪れることもある。

黒翼剣軍 (こくよくけんぐん)

かつて皇帝ラルゴールⅢ世に叛逆して討伐されたとされる「裏切りの槍」の4人の名前を騙る集団。辺境伯領ゴルムバルク周辺で山賊のたぐいを集めて挙兵し、略奪を繰り返していた。

クシャールンド人

辺境伯領ゴルムバルクに住んでいた部族。クシャールンド首領家の人間をリーダーとしている。黒翼剣軍との戦いで敗退を繰り返し、辺境伯や領地の人間からは腰抜けの蛮族と罵られている。当初はクラトがクシャールンド人を率いていたが、戦いの最中に行方不明となったため、代わりに妹のアトが率いている。

月読宮

帝国の天律を司る組織。帝国の未来に関する予言を占いなどによって行っており、審律官と呼ばれる者たちが皇帝や「七英雄」に対してその内容を伝える役割を負っている。黒翼剣軍によって引き起こされている辺境伯領ゴルムバルクでの騒動は帝国全土を襲う大災厄の始まりに過ぎないと予言し、同時に帝国を救う新たな英雄が辺境に現れると告げていた。

僧院

国境の街リエルデ・フェレムをシュテムヴェレヒ方伯に任され、国境を越えようとする密航者の取り締まりと処刑を行っている集団。僧兵と呼ばれる兵によって構成されており、僧兵長をラシェブが務めている。「徳」と呼ばれる賄賂を上納するシステムがあり、賄賂をどれほど上納したかによって出世が決まる。そのため、賄賂が横行しており僧兵長であるラシェブを初めとして、僧兵たちは積極的に賄賂回収に精を出している。

聖陣守護僧将団

僧院の誇る僧兵の中でも最精鋭の部隊。僧院の最深部である、千の石槍へと通じる通路とその奥にある聖陣を守護している。最精鋭に恥じぬ実力の持ち主たちで、ケインツェルの太刀筋を受け止め、かわしてみせたほど。普段から地下深くで守護をしているため、実戦機会が少なく、暇をもてあましていた。

ミルエル・ミラエル族

ピーピの出身種族。最辺境に住まう希少種族で、わずかにとがった耳と独特の髪色が特徴。言魂をあやつり、高位精霊とも交渉していたとされる。ミルエル・ミラエル族の人物の名前には言魂の力に関連した特殊な法則があるとされているが、体系的な研究をした学者は未だにおらず、その多くが謎に包まれている。闇の異邦との大戦終結後に辺境で起きていた戦乱によって種族全体が滅ぼされかけ、ピーピの村もすでに存在してない。 密航屋による手引きなどで、国境の街リエルデ・フェレムを越えることのできたミルエル・ミラエル族によって新しい村を再建しようという動きがあり、ピーピが宿場町アハドート・シャドで出会ったゼフィという少年もその1人だった。

墓守の一族

イェブルの地に築かれた裏切りの槍の墓碑の墓守を任せられている一族。イェブルに住むかつての首領家イェブナレスに仕えていた重臣の一族で、ミリエダやエリオといったイェブナレス家に縁のあった一族に今もなおよくしてくれている。作中に登場した3名のキャラクターは読者応募のキャラクター募集企画において一般応募から選ばれ、それぞれ「ルドルフ」「ブルーメ」「ネリダ」という名前が付けられている。

場所

サーランディエン

ケインツェルが「七英雄」に復讐するために旅する、主な世界。サーランディエンの他に豊饒の大地、我々の大地、帝国側世界などとさまざまな言い回しが存在しているが、闇の異邦であるヴィシュテヒが治める死の森より向う側と、帝国が主に治めている人間側の領域に世界を分けた際の、人間側の世界のことをいう。 歴史上、たびたび闇の異邦の侵略に晒されてきた。

帝国

サーランディエンと呼ばれる人間たちの住まう領域の大半を占める巨大な国家。神託暦と呼ばれる暦を使用し、帝国が成立した年を基とした神託暦から換算すると4000年近く続いている。帝国を統べる皇帝は偉大なる始祖に連なる血統が失われた後に、選帝侯家と呼ばれる八つの家によって選ばれる仕組みで、世襲されることはほとんどない。 その時代における優れた人物が皇帝となるため、時には辺境の部族出身の人間が皇帝の座につくこともある。主に「帝国」とだけ呼ばれ、正式名称である「サーラント帝国」という名称はほとんど使用されない。中心となる都は帝都サーリオン。

辺境伯領ゴルムバルク

サーランディエンの辺境に位置する土地でアルバヌング辺境伯によって収められている。「黒翼剣軍」を名乗る集団が周辺地域の山賊を集めて挙兵し、隣接するデム、クシャールンドと呼ばれる地方を占領してしまったために包囲されており、危機的状況にある。20年余り前に行われた闇の異邦との大戦後、荒れ果てた領内が内乱に近い形となりいっそうの荒廃をたどっていた。

エクステムス村

辺境伯領ゴルムバルクに位置する辺境の村。「黒翼剣軍」の検問を逃れる際に崖から落ちたケインツェルが川で流されるままにたどり着いた。エルーニェとクローヌという姉弟が住んでおり、ケインツェルの傷が癒えるまでしばらくかくまわれていた。女の食器を借りた男は、その女に夜這いをしなければ腰抜け呼ばわりされるという風習が伝わっている。

国境の街リエルデ・フェレム

「七英雄」が治める7つの領邦である英雄の道の東端にあたる、方伯領モランと辺境伯領ゴルムバルクの国境に位置する街。もともとは20年余り前に行われていた闇の異邦との大戦の折、闇の異邦が築いた地下要塞だったが、大戦の最中に両軍が激しい奪い合いを繰り広げた結果、さまざまな罠が仕掛けられた複雑で危険な構造の地下要塞となった。 刃匠ルディフトの弟子でもあった軍師、エルグナッハによって闇の異邦の大侵攻を食い止めるために千の石槍と呼ばれる巨大な石壁が作り出され、大戦終結後は、千の石槍と地下要塞跡地を基礎として大僧正の作り上げた僧院による管理の下、国境の街として発展した。地下は一度封鎖されたが、辺境の人々が勝手に住み着いた結果、独自の社会が形成されている。

千の石槍

神託暦3969年に、当時行われていた闇の異邦との大戦の最中、闇の異邦の大侵攻を食い止めるために英雄の1人である軍師エルグナッハの手によって築き上げられた巨大な石槍による壁。闇の異邦と激しく奪い合っていた地下要塞に存在していた罠の術式を利用して作り上げられた。起動に際して、エルグナッハは術式に取り込まれ千の石槍の犠牲となったため、大戦終結後に尊き未帰還者達の1人として称えられている。

方伯領モラン

20年余り前に行われた闇の異邦との大戦の終結後、帰還した「七英雄」に対してその功績に対する褒賞としてシュテムヴェレヒへと与えられた領地。通称、英雄の道と呼ばれる「七英雄」に与えられた領地の中でも東端に位置しており、国境の街リエルデ・フェレムにある千の石槍をはさんで辺境伯領ゴルムバルクと隣接している。

宿場町アハドート・シャド

方伯領モランに位置する宿場町。国境の街リエルデ・フェレムに存在し辺境伯領ゴルムバルクと方伯領モランの行き来を制限していた千の石槍が崩壊したことによって、十年余り前に行われた闇の異邦との大戦による戦禍と、その後に行われた内戦による荒廃に苦しんでいた辺境の民が一気に流入し、結果、巨大な難民キャンプを形成しつつある。

砲台伯領レムダ

20年余り前に行われた闇の異邦との大戦の終結後、帰還した「七英雄」に対してその功績に対する褒賞としてバレスターへと与えられた領地。大戦の折に、現在の皇帝であるラルゴールⅢ世が建造した10基の防御砲台が領内に存在しており、砲台伯という名前の由来にもなっている。また、南端には皇帝によって自治権が与えられた自由都市ユラス・アプラスが存在している。

自由都市ユラス・アプラス

砲台伯領レムダの南端に位置する都市。皇帝によって自治権が与えられており、歴代の領主達は自治独立性を誇りと感じ、重んじてきた。そのため、領邦君主達からの干渉を嫌う傾向にあり、それは七英雄の1人であるバレスター砲台伯が領邦の君主となってからも変わっていない。流れ者にとっては素性を隠して潜伏しやすい場所となっている。 商人と職人が集まる街であり、特に城壁に囲まれた飛竜艇造船所は帝国随一の建造力を誇っている。20年余り前に行われた闇の異邦との大戦では自由都市ユラス・アプラスで10隻の巨大飛竜母艦が建造され、大反攻作戦の始まりの狼煙となった。

バルクルーネ地方

2年ほど前に貴族による反乱が起こった地方。当時、4000人の兵を与えられたクパルツェン将軍が派遣され、鎮圧を図ったが1か月ほどかかっても鎮圧できなかった。最終的に、将軍がグレンに援軍を求めたことで、その前準備として戦況の視察に訪れた七槍騎士団の当時15歳の少女に過ぎなかったエルサリア=ラハンクレーブとエルツェン、ダリステ、カルクリスの4名によって首謀者の首が挙げられ、反乱は鎮圧された。

剣の舘 (けんのやかた)

刃匠ルディフトが多くの有能な剣士を育て上げた場所で、月読伯領内の帝国直轄地に存在する舘。帝国最強の騎士である刃匠がじきじきに教える場として、数多くの剣士、あるいは剣士を志す者がここで剣の教えを受けた。幼い頃のアシェリート(現在のケインツェル)もここで剣の教えを受け、やがて刃匠の称号を受け継ぐほどの剣士となった。 しかし、大戦終結後に「七英雄」の帰還とともにアシェリートが「裏切りの槍」といわれるようになると、ルディフト流剣術は一時期はついえかけるほどに衰退した。のちに、ルディフト亡き後に師範を務めていたグーリェの尽力によって往年の輝きを取り戻すこととなり、そのため、現在ではグーリェの舘と呼ばれることもある。 グレンや、彼に仕える七槍騎士団の面々の多くがここで訓練をつんでおり、アシェリートの後、誰も受け継ぐ者の居なかった刃匠を受け継ぐ者と称される奴隷騎士イクフェスもここの門下生の1人である。

シャルバエル大氷原

帝国の最辺境に位置する大氷原のこと。闇の異邦の領域である死の森と接しており、人と遭遇することはほとんどないほどの僻地にある。かつて、20年余り前に行われた闇の異邦との戦いで生き残った英雄を封印殿へと送り届けるために、両軍の総力を賭した大決戦が行われた。

侯領クローツェン

レベロントが治めている領地。砲台伯領レムダの自由都市ユラス・アプラスでの一件から逃れたケインツェルとアトが逃亡し、帝都を目指していた最中に通りすがった。古くからの軍閥が力を持つ土地柄だが、現在はレベロントにより鍛え上げられた配下によって軍閥が押さえ込まれる形となっている。

城伯領ツィクヒート

ニルゲンフェレト城伯が治めている領地。自由都市ユラス・アプラスでの一件の後に、英雄殺しの逆賊であるケインツェルが逃げた候補地の1つとして上げられ、月読伯領ロゴとともにグレン率いる逆賊討伐軍によって監視対象となった。

月読伯領ロゴ

ギュレングルフ月読伯が治めている領地。自由都市ユラス・アプラスでの一件の後に、英雄殺しの逆賊であるケインツェルが逃げた候補地の1つとして上げられ、城伯領ツィクヒートとともにグレン率いる逆賊討伐軍によって監視対象となった。

竜伯領オディーン

イシュディーン竜伯が治めている領地。英雄戦争が勃発した際に逃走するレベロントの艦隊を、ラーキニアから国境を越えて進む天槍城と挟撃するために大竜艦隊が飛び立った地。ここの他に、フェルングロガーエと呼ばれる飛竜石が浮遊している地帯が竜伯領の飛び地として存在している。

イェブル

グレンが治めていた領邦。帝都の前門を守護しており、かつては帝都サーリオンを中心とするサール地方の一地域だった。「裏切りの槍」の1人であるクファー(裏切りの槍)の出身地で、彼の家でもある剣の名門イェブナレス家によって統治されていたが、クファーが「裏切りの槍」となったことによってイェブナレス家の名誉は失われ、領地も没収されることとなった。 しかし、のちに選出された領主に重臣を抑えるだけの力がなくイェブルは分裂、ゼフォーレア家、ハマーズィア家、ラゼント家、ハグリオ家の4家と周辺の軍閥による内乱へと突入した。のちに、「七英雄」となったグレンを受け入れることでひとまず状況の打開を得るが、軍閥は互いに反目したままであり、内乱は平定されたものの、分裂状態は解消されずにいる。 イェブナレス家への忠誠心からくる抵抗を抑えるために建立された「裏切りの槍」を弔うための巨大な墓碑がイェブル中部に建てられている。

大渓谷

グレンが収めていた領邦、イェブルに存在する巨大な渓谷。侵攻を始めたレベロントによって一角に魔導兵器を備えた砦が築かれた。渓谷の底は川になっており、船を利用した商人や旅人が数多く往来しているが、イェブルの抵抗勢力を警戒した関所が数多く設けられ、その往来に制限をかけていた。

クロエズデ

レベロントの治めている領地である侯領クローツェン東部に位置する土地。功績を挙げた奴隷騎士イクフェスに対して与えられた褒賞としての領地。領内には僧院の他、舘などが存在しており、その他、Y字にわかれる二又の川が流れている。

勝利の丘

帝都サーリオンの南東に位置する広大な丘。現皇帝であるラルゴールⅢ世によって20年余り前に行われた闇の異邦との大戦終結を記念して平和の女神像が建てられており、その前には皇帝のみが最上段へ登壇することを許された演壇が存在している。

選定侯領シャリアーディ

選定伯侯であるアルクサルト=ラハンクレーブ選帝侯の治める領地。ラジグレディ要塞と呼ばれる巨大な城がある。レベロントが領内へ攻めてきた際にはアルクサルトをはじめとする選帝侯のうち、領内にいた数人が要塞内に立て籠もり、徹底抗戦の構えを見せた。

ラジグレディ要塞

選定侯領シャリアーディに存在する要塞のこと。アルクサルト=ラハンクレーブ選帝侯の城が存在しており、反抗の姿勢を見せたアルクサルト選帝侯に対してレベロントが息子グエルードに大艦隊を与えて攻めさせたときに、この場所で徹底抗戦を繰り広げた。

選定侯領ラーキニア

選定侯家の領地。竜伯領飛地であるフェルングロガーエと呼ばれる浮遊岩地帯をはさんで、レベロントの治めている侯領クローツェンと接している。8人の選帝侯を集め、次代の皇帝を選出し直そうとした選帝侯家の一家、ジャーノ・ハドス・ヘディスが目指していた場所で、選定侯領ラーキニアにジャーノが到達するのをレベロント軍が妨害していた。

フェルングロガーエ

選定侯領ラーキニアの北部とレベロントの領邦である侯領クローツェンの境に位置する竜伯領飛地。浮遊岩地帯とも、飛竜岩地帯とも呼ばれる、飛竜石の力によって数多くの岩が渓谷内に浮かび上がった不思議な地形をしている。竜の回廊と呼ばれる、激しい風が吹き抜ける峡谷が存在している。

竜の回廊

フェルングロガーエの中に存在する激しい風の吹き抜けている峡谷。風の中には、大量の飛竜石を飲み込んだ巨大な竜が存在しており、数百年もの長きにわたって一度も地上に降りることなく飛び続けていると言い伝えられている。

天槍城

イシュディーン竜伯がフェルングロガーエの洞窟の奥深くに隠していた工房の中で、大量の武器とともに建造していた巨大な浮遊城。数え切れないほどの魔導兵器が備え付けられており、その戦闘力は飛竜艇による大艦隊を圧倒するほどの火力を持っている。

ドラバラナス高地

レベロントの領邦である侯領クローツェンの北東に位置する高地。英雄戦争における決戦の地となった。冬になると風雪の吹き荒れる厳しい土地で、凍死者が簡単に出る極寒の地となる。ドラバラナス高地に存在するヴァリオズナ山にはレガ城と呼ばれる大きな城が存在している。

レガ城

レベロントの領邦である侯領クローツェンの北東に位置する高地、ドラバラナス高地。そこに存在するヴァリオズナ山を利用して建てられた城のこと。英雄戦争における決戦の地となった。城の地下には脱出用の巨大な洞窟と小型の飛竜艇がある。

南バルクルーネ

帝国と北方諸国を結ぶ要衝の土地を含んだ地方全体の名称。宿場町ファルキンクスをはじめ、メヴェスリガー村やゾルデーンが領主を務める侯領レギアノーシュとその城であるレギヌーズ城が南バルクルーネには存在している。

宿場町ファルキンクス

南バルクルーネのグルンドギッド地方に位置する宿場町。季節外れの地竜に襲われたメヴェスリガー村から、ウルリッツが軍隊を呼ぶために訪れた。「七英雄」の1人であるレベロントの軍隊が置かれていたが、すでに引き上げた後だった。

メヴェスリガー村

南バルクルーネのグルンドギッド地方に位置する村。季節外れの地竜に襲われるという村の存亡の危機に見舞われており、家畜小屋の様子を見に行っただけで地竜に食われるというありさまだった。ウルリッツという少年が軍隊を呼ぶために宿場町ファルキンクスまで向かわされていた。

レギアノーシュ

南バルクルーネに位置する帝国と北方諸国をつなぐ要衝の地。小国がひしめきあう土地だったが、現領主であるゾルデーンによって一代でまとめ上げられた。気が滅入るほどに寒い豪雪地帯で、付近には地竜も生息している。

レギヌーズ城

極寒の地である南バルクルーネに位置する帝国と北方諸国を繋ぐ要衝の地、レギアノーシュに建つ現領主ゾルデーンの居城。僻地にある土地の山の上に建っている。城主であるゾルデーンは小国がひしめき合っていたレギアノーシュを一代でまとめ上げ、名君と称えられている。

古代都市ジングェーム

ヴォルゴムリと呼ばれる魔獣達が住み着いた遺跡。ケインツェルたちが天槍騎士団との戦いに備え修行を行うため、この場所を訪れていた。若かりし頃のケインツェルが修行を行った場でもある。剣の舘に所属する門下生にとっては、最上級者のみにここで修行することが許されていた。

アンガ・グリシュガ城

グレンが創設した天槍騎士団の拠点の1つ。第三・百人隊が拠点としている。グーリェ師範の勧誘から帰還したグノーディスが報告のために訪れた場所で、他にも数多くの天槍騎士団がここに詰めており、近々行われるという戦争に備えた準備を行っている。

ツァーフィア城

帝都の北西に位置する山岳地帯に建てられた帝国軍直轄の堅牢な城。ゲナンディクスによって奪い取られたゾルングド城と並ぶ帝都防衛の要で、ゲナンディクスの兵が帝都へ迫るのを2か月にわたり食い止めている。

ゾルングド城

帝都の北西に位置する山岳地帯に建てられた帝国軍直轄の堅牢な城。帝都防衛の要だったが、帝国へ反旗を翻したゲナンディクスによって奪い取られた。かつて北のエルグレー族の反乱をこの城で食い止めたことがあり、その時に行われた籠城戦には現皇帝であるラルゴールⅢ世やゲナンディクスが参加していた。

英雄の道

「七英雄」の治める7つの領邦のこと。20年余り前に行われた闇の異邦との戦いにおいて皇帝ラルゴールⅢ世に与えられた任務を遂げ帰還を果たした「七英雄」が治めているとあって、大戦後も内乱などの戦火にさらされている辺境の人々にとって憧れの地となっている。東端で辺境との国境にあたる方伯領モランを初め、砲台伯領レムダ、月読伯領ロゴなどがそれにあたる。

帝都サーリオン

帝国の中心といえる都市。皇帝ラルゴールⅢ世が住む城が存在している。諸国からさまざまな商人たちが訪れ、絢爛でにぎやかな都だったが、英雄戦争の勃発などをきっかけにして見る影もないほどに輝きを失ってしまった。端的に「帝都」と呼ばれる場合が多い。

カインスラーク

ルディフトが住まう舘の北の方に位置している鉱山の町。町の外れに妖精鉱と呼ばれる希少な金属を抱えたまま捨てられていた赤子、アシェリート(現在のケインツェル)を拾い育てたルディフト馴染みの刀鍛冶が住んでいた。誰にもできなかった妖精鉱の加工を見よう見まねで五歳のアシェリートが剣を作り上げたことをきっかけに、たびたびルディフトが訪れ助言を与えるようになり、その縁から、のちにルディフト流剣術をアシェリートが習い始めることとなる。

死の森

帝国外縁に位置する森。20年余り前に行われた闇の異邦との戦いのおりに、封印を施すため14人の勇者たちが皇帝ラルゴールⅢ世の命を帯びて聖なる槍を片手に森の奥へと進んだ。闇の異邦によって作られた大障壁によって死の森への道はさえぎられており、障壁から向こう側は完全に人間の領地ではなくなっている。

封印殿 (ふういんでん)

闇の異邦の領地である死の森の奥深くに存在する場所。20年余り前に行われた闇の異邦との大戦のおりに、14人の勇者が当時の皇帝ラルゴールⅢ世の命を受けて目指した最終目的地である。封印殿に到達する前に生き残っていた11人の英雄の内、4人が裏切り、残り7人の英雄によって目的は達せられたとされている。

その他キーワード

闇の異邦

神託暦800年頃に行われた内乱の時代、帝国の始祖の血統が失われると同時期に帝国へと襲来してきた謎の軍団のこと。異形の怪物が大半を占めており、また魔導の技など帝国で知られていないさまざまな技術を有している。死の森の奥深くに存在する封印殿と呼ばれる場所の封印によって帝国への侵攻は抑えられているが、封印がとかれるたびに幾度も襲撃を繰り返してきた歴史がある。 帝国に住まう人間にとっては、相容れることのない忌むべき敵に他ならない。

七英雄

かつて行われた闇の異邦との戦いの際に送り出された14人の槍の勇者の内、サーランディエンへと帰還した七人のこと。大戦終結後は帝国に平和をもたらした象徴としてたたえられ、その後の活躍もあって民間に絶大な人気を誇っている。「七英雄」が治めている領邦は英雄の道と称され、大戦終結後も戦禍にさらされ続けた辺境の民にとって国境を越えた先にある憧れの地となっている。

裏切りの槍

かつて行われた闇の異邦との戦いの際に送り出された14人の槍の勇者の内、敵に寝返ったため討たれたとされる4人のこと。辺境伯領ゴルムバルク周辺で山賊を集めて挙兵した無法者集団「黒翼剣軍」のリーダー格の4人が「裏切りの槍」の名を自称し、辺境で暴虐の限りを尽くしていた。イェブルにグレンによって建てられた巨大な墓碑が存在している。

尊き未帰還者達

かつて行われた闇の異邦との戦いの際に送り出された14人の槍の勇者の内、旅の途上で命を落とした3人のこと。千の石槍を生み出し、闇の異邦の大侵攻を防いだエルグナッハの他に2人の勇者が旅路で命を落としたとされている。大戦後に語り継がれる伝説では、七英雄の従者という扱いにされていた。

槍の勇者

かつて行われた闇の異邦との戦いの際に送り出された14人の勇者のこと。シャルバエル大氷原と死の森の境界に存在する障壁を打ち破ることのできる、帝国が秘蔵していた妖精鉱によって鍛造された槍を皇帝ラルゴールⅢ世じきじきに持たされている。

高位妖精

ケインツェルがその身に取り込み、融合している人ならざる存在のこと。または、その種族。月の光を力に代えることで存在しており、月のない夜は極端に力が落ちる。融合を果たしているケインツェルも例外ではなく、月の出ない夜や、一定期間以上月の光を浴びていない場合は力が出せず、外見も幼くなったりと弱体化してしまう。本来であればたやすく人と融合するような存在ではなく、低位の妖精との融合ですら見るも無惨な結果となる場合が大半を占める。

刃匠

帝国剣技院によって帝国最強の剣士として認められた人物に、黒翼と剣の紋章とともに送られる称号。古くから代々受け継がれてきた称号であり、受け継いだ剣士は民衆だけでなく帝国貴族たちや皇帝にすら一目を置かれる存在となる。イェブル流とロゴ派と呼ばれる剣術流派によって長くその座を奪い合って競われていたが、ケインツェルこと裏切りの槍の1人であるアシェリートを最後に20年余り、空位が続いている。

ルディフト流剣術

20年余り前に行われた闇の異邦との大戦前に時の刃匠であるルディフトが創始した剣術流派。ロゴ派と呼ばれる流派の1つに当たる。当初は帝都で教えていたが、権力と名誉欲にまみれた帝都を嫌って月読伯領内の帝国直轄地に剣の舘と呼ばれる舘を作り上げ、後進の育成に努めた。八の基本型と呼ばれる独特の構えを基礎とした剣術体系で、アシェリート(現在のケインツェル)をはじめ、七英雄の1人であるグレンや尊き未帰還者達の1人エルグナッハなど数多くの偉人が剣の舘でルディフト流剣術を学んだ。 ルディフト亡き後はグーリェが師範を務め、現在でも流派は途絶えていない。

黒翼 (こくよく)

20年余り前に存在した当時の刃匠であるルディフトが創始した流派、ルディフト流剣術を極めた先にある奥義の名前。ルディフト流剣術の基礎である八の基本型を完全に習得した時に修得できるとされ、黒翼を使用した際にはほとばしった殺気がまるで黒い翼のように相手へと襲い掛かる。現在では刃匠の代名詞ともいえる奥義である。

八の基本型

20年余り前に存在した当時の刃匠であるルディフトが創始した流派、ルディフト流剣術の基盤にある八つの基本型のこと。ルディフト流に入門した剣士は、この八の基本型を繰り返し練習させられることとなる。八の型が次々と展開する剣の動きを修得することで、最終的には肉体を剣と一体化することを目指す。この八の基本型を極めることで初めて、ルディフト流剣術の奥義である黒翼を修得することが可能になるとされている。

イェブル流

帝国に古くから伝わる剣術の流派。イェブル地方を中心に磨き上げられたことからこの名前が付いた。イェブル領内に存在していた諸部族でそれぞれに継承されていた剣や槍などの戦闘技術を集め、研究した結果生み出された剣術で、ロゴ派と呼ばれる対抗勢力が現れるまでは帝国最強の剣術であり続けた。ロゴ派とはお互いに帝国最強の剣士である刃匠の座を奪い合う関係にあり、現在に至るまで何世代にもわたって競い合ってきた。

魔導の技

闇の異邦が使用している、帝国とは大きく異なる技術の数々のこと。シュテムヴェレヒ方伯の居城に設置されている竜の口をはじめとする魔導兵器や、人体と異形の怪物や亜人、妖精を融合させる技術など、その技術は多岐に渡る。敵が使用するまがまがしい技術ということと、邪教集団や反乱勢力と結びつくことが多かった関係から帝国内で主だって魔導の技を研究することは禁じられているに等しい状態にあったが、邪教集団の信徒であった両親を持つ賢者ハーガンと呼ばれる人物によって密かに研究されており、20年余り前に行われた大戦のおりに敵方の魔導兵器を奪い取って使用する形で研究が活かされた。 今の帝国内では、以前と変わらず忌避されているものの、魔導の技であると知られずに流通している技術も数多く存在している。

天槍の雫 (てんそうのしずく)

天槍騎士団の隊員となったもの、またはその候補や勧誘対象へと与えられる特別な液体のこと。器の中に入った液体を飲むことで、人間を遙かに超越した異形の力が手に入り、さらには老いさらばえた肉体も若さを取り戻すことができる。しかし、その一方で適性のない人間が飲むと理性を失った怪物へと変貌を遂げてしまう危険な液体でもある。

黒翼と剣の紋章

帝国の皇帝から歴代の刃匠に授けられてきた紋章のこと。先代の刃匠であるルディフトが帝都を去る際に皇帝へと返上されており、以後、この紋章を受け継ぐ者は居なかった。かつては刃匠の名とともに畏敬の念で見られていたこの紋章だったが、次に授けられる予定だった刃匠であるアシェリート(現在のケインツェル)が帝国を裏切ったうえで討伐されたため、今では縁起の悪いものとして見られている。 黒翼剣軍が自軍の旗印にこの紋章を使用していた。

グレン侯の紋章

グレンをはじめとして、仕える騎士達や七槍騎士団の面々が身につけている紋章。20年余り前に行われた闇の異邦との大戦の終結後にグレンのために用意されたもので、比較的伝統の短い紋章だが、七英雄の一人であるグレンの人気や功績も相まって、帝国の民衆の間では最も有名な紋章となっている。

飛竜艇

飛竜石と呼ばれる、空中に浮遊する力を持つ石の力を利用して空を飛ぶ船のこと。20年余り前に行われた闇の異邦との大戦時代には各地の領主ならびに傭兵団が所有し、戦場を駆け巡っていた。現在では、使用と所有に制限がかけられており、その多くは解体処理や封印が施されている。建造、所有、運用の際には帝都の竜務大臣の許可が必要となる。

四ツ辻四世号

飛竜艇の名前で、グレン御用達の商船。船長は七槍騎士団の団長を務めるアルジェラントと騎士団結成以前からの知り合いで、七槍騎士団が公にできない、あるいは動くことのできない任務を実行する際に、たびたび協力している。

飛竜石

空中に浮遊する力を持った特殊な石。名前の由来は、野生の飛竜が揚力を補うためにこの石を飲み込み、喉に溜め込んでいたものを人間が利用するために飛竜から取り出していたことに由来する。現在では、飛竜の飲み込んだ飛竜石に頼る必要はなく、もっぱら、原石から直接取り出している。

英雄っ子

命知らずの英雄願望のある子供や、「七英雄」に憧れる子供のことをいう俗語。国境の街リエルデ・フェレムでは「七英雄」に憧れた子供たちが国境を越えた向こう側にある「七英雄」の治める領地を目指すことが多いため、特にそう呼ばれる。他に、「七英雄」のおかげで生きている命という意味もあり、ケインツェルが英雄っ子と呼ばれた際は反吐が出ると嫌悪感をあらわにしていた。

密航屋

国境の街リエルデ・フェレムを根城に、辺境伯領ゴルムバルクをはじめとする辺境から英雄の道と呼ばれる「七英雄」の収める領邦への密航を望む人たちの手引きを生業としている人々。国境の街リエルデ・フェレムはかつて闇の異邦の地下要塞だったが、大戦を経て帝国の街となった。現在は尊き未帰還者のエルグナッハによって闇の異邦の侵攻を食い止めるために築かれた、千の石槍と呼ばれる巨大な石壁によって国境がふさがれており、通行するためには国境の管理を担っている僧院に多額の通行税を納めなければならないため、密航者が後を絶たなかった。

七英雄の陣詣で

辺境伯領ゴルムバルクで続いていた内戦に疲弊した民心を慰撫し沈めるため、国境の街リエルデ・フェレムを越えた先に「七英雄」が陣を張った際、一目見ようと人々が「七英雄」の陣を詣でたことをいう。辺境で苦しんでいた人々をはじめ、「七英雄」に憧れる英雄っ子などが殺到し、客を見込んだ商人が店を開くなど一種のお祭りのような様相となった。 「七英雄」が陣を解散した後は、七英雄の陣詣でを行っていた人々に加えて千の石槍崩壊後に流入した辺境の民が近隣の宿場町アハドート・シャドに溢れかえるなどして、予期せぬ混乱を招いた。

翼狼

20年余り前に行われた闇の異邦との大戦の時代に、闇の異邦が持ち込みサーランディエンに残していった合成獣の一種。野生化しており、死の森に近い辺境の山岳地帯で自然繁殖している。帝国の中央である帝都に近い人々は、闇の異邦のもたらしたこのような生物を忌み嫌っているが、辺境に住まう人々にとっては、比較的人に馴れやすい特徴と相まって抵抗なく受け入れられ、使役されている。 闇の異邦は他にも翼狼との深い意思疎通や、遠隔地からの呼びかけが可能となる「翼狼の王冠」と俗称される装飾品を残しており、帝国側世界にはこれを製作する技術がないために、大変希少な物とされている。

竜の口

シュテムヴェレヒ方伯の住まう城に備え付けられている巨大な魔導兵器。かつて20年余り前に行われていた闇の異邦との大戦の最中に、帝国が奪い取った魔導兵器。「雷の吐息」という、城の周囲にある湖の水を陣核によって超加熱・超圧縮することによって、妖精黒体として撃ち出す。

選帝侯家

諸侯の中から次の皇帝を選任する権利を有する8つの家系のこと。ラハンクレーブ家、エベノス家、ベクレメルト家、クム・ザイランクラール家、イクム・ザイランクラール家、イリ家、ゲルクラルド家、バドス・ヘディス家の八家が現在の選帝侯家である。およそ3000年ほど前に初代皇帝から続く始祖の血統が途絶え、おりしも同時期に始まった闇の異邦の襲来に抗するために若くして才覚に溢れた小国ハルドアルクバハネスの王リトラノスを4人の諸侯が皇帝へ推挙したことに端を発している。 リトラノスは闇の異邦との戦いを見事に戦い抜いた後、推挙した4人に、更に4つの諸侯を加え今の8つの選帝侯家による皇帝の選出という仕組みを作り上げた。

神託暦

サーランディエンで使用されている暦の俗称。「偉大なる始祖が神々から大地を託されし時」を紀元としている。「偉大なる始祖」を大地の支配者として育てる使命を神々から与えられた8人の賢者とその後継の学者たちによって紀元からの歴史が詳細に書き残されており、帝国の書庫には4000年に迫ろうという帝国の歴史が記録、保管されている。

浮遊城

空に浮かぶ城のこと。帝国成立初期の頃、帝国周辺の小王たちの中に空中に浮かぶ岩石塊を根城にする小王たちがおり、天然の浮遊城であったそれが現在の浮遊城の始まりとされている。難攻不落を誇った天然の浮遊城を神託暦1181年に時の皇帝が大飛竜軍団によって攻略することに成功し、浮遊城を徹底的に調べたことによって築城することが可能となった。 多くの浮遊城は飛竜石の生み出す浮力によって浮かび上がっており、その優位性は飛竜艇の発達、大型化が進むにつれて失われていくこととなる。神託暦3960年代までは大型の飛竜母艦建造技術を取り入れた浮遊城の開発、研究が行われていたが大戦終結後に飛竜艇、飛竜母艦とともに浮遊城の築城に対しても制限がかけられたため、現在では新たな浮遊城を築くことは禁止されている。

奴隷騎士

帝国臣民としての権利を持たない、帝国貴族に奉仕する戦闘階級のこと。奴隷商人による売買の他には、奴隷や平民の中から引き立てて重用するなど、奴隷騎士となるにはさまざまな場合がある。武功によって正式な騎士や貴族階級、両方の領主にまで上り詰める者が帝国の歴史上には存在していた。かつては奴隷騎士団と呼ばれる戦闘集団を形成し、領主にとってていのいい戦力として使用されていたが、前線へと安易に駆り出される状況に不満を抱いた奴隷騎士による反乱が相次いだため、現在では小規模の奴隷騎士団がいくつか存在するのみとなっている。 なんらかの理由によって家名を貶めた貴族の子女が奴隷騎士となって、貴族、諸侯へ奉仕することで家名回復の機会を得る場合があり、そうした奴隷騎士を召し抱え、寛容さを示すことが帝国貴族の義務の1つとなっている。

古代種

神託暦が始まる時より以前に、サーランディエンに数多く存在していたといわれる巨大な生き物たち。数百年から数千年ともいわれる長い寿命と、神々と言葉を交わすことのできる深い知性を持っていたといわれる。数万年の長きにわたり地上を支配し、君臨していたとされるが、神託暦の始まりに謳われる始祖が神々より大地を任された時より、神界に去る時が来たと立ち去った神々に付き従い、古代種達も姿を消したといわれる。 少数の古代種達が地上に残ったが、神託暦1000年代にはもはや大地から完全に消え去ったと思われている。その後、ケインツェルたちの時代より2000年ほど前の南サーリオン王エファーレグⅠ世の回顧録に古代種と思われる生物に関する記録が残されているのが確認される最後の記録である。

十王家の円卓 (じゅうおうけのえんたく)

サーランディエンの夜に瞬く満ち欠けの周期が異なる2つの月が数年に一度、2つとも共満月になった時にのみ開催される大規模な会議。諸侯間の問題に対し、帝都を支える10の王家が法典にのっとり厳正なる裁定を下す帝国最高議決機関であり、数日にわたる十王家の円卓の会期中は、連夜にわたって宴席が各所で開かれることとなる。 そのため、数年に一度、帝都を賑わす一大行事となっている。

短翼竜兵

侯領クローツェンの伝統的な兵種。短翼竜の飛行能力を活かし空中から強襲を仕掛けた後に、翼が短いことを利用して地上で騎兵として走り回る強襲部隊である。浮遊城を根城とする辺境の小王との戦いにおいて、飛竜を使用して攻撃を仕掛けてくる彼らに帝国は対応せざるを得ず、運用法を研究していく中で神託暦2000年代に時のクローツェン伯によって短翼竜兵による強襲戦術が作り上げられた。 当時、最強を誇ったことが侯領クローツェンの伝統的な兵種とされたきっかけである。

短翼竜

飛竜の中でも特に翼の短い翼竜のことをいう。帝国領内に存在していた飛竜は、かつて、そのほとんどが短翼竜だった。物資運搬などに利用されていた飛竜が、時を経て浮遊城を根城とする小王たちが飛竜を駆って襲い来るようになると、その運用方法を学ぶ必要と同時に飛竜の調教技術の確立が求められていった。結果、辺境の大型長翼種である飛竜を導入することが可能となると、大飛竜軍団の主力が取って代わられることとなるが、神託暦2000年代に時のクローツェン伯によって、航続距離の長さと地上を走り回れる騎兵としての能力を活かした強襲部隊としての運用がなされると再び短翼竜を主軸にすえた部隊が作られるようになった。 ドズルヌー種を始め、ベモー種やクアーグ種など複数の種が存在しており、それぞれが飛行能力や温厚な性格などといった異なる特徴を持っている。

城攻め屋

卓越した城攻めの技術を有する傭兵のこと。攻城傭兵ともいわれる。神託暦2800年代にハイラード・クレブグルと呼ばれる帝国戦術史を編纂した将軍による内乱をきっかけに、その息子、娘世代に渡って行われた反乱の最中に築城技術と攻城技術に対する研究が進み、それらの技術が帝国軍閥の中で著しく発展を遂げることとなる。内乱の終結後、この時に培われた技術を継承したいくつかの軍閥が「城攻め屋」と呼ばれる傭兵としてさまざまな戦場へと姿を現すようになった。

金の耳

レベロントが使用していた遠隔通信のための装置。闇の異邦の魔導の技を研究し利用した装置で、ザルデフェルギン族と呼ばれる辺境の、妖精に近い亜人が中に埋め込まれており、彼らの遠隔会話能力を魔導の技で高めて利用していた。

英雄戦争

神託暦3992年にイシュディーン竜伯領地の飛び地であるフェルングロガーエにて、グレンの居城である浮遊城、天槍城とレベロントの飛竜艇艦隊が撃ち合ったことに端を発した戦争。闇の異邦との大戦の際に、封印の旅へおもむき生還を果たした「七英雄」同士による戦争であるため英雄戦争と呼ばれる。

大鎧

甲冑のような形をした闇の異邦の上位獣人。巨大で、馬に乗った騎士たちよりも遙かに大きな体格と頑丈な外殻、そして、巨大な剣による圧倒的な攻撃能力を持っている。20年余り前に行われていた闇の異邦と帝国との大戦のおりには決戦で投入され、たった一個体の大鎧を相手に大軍で相手をしていたほどの強さを誇っている。障壁を越えた先の死の森にはこの大鎧が複数体存在しており、まさしく地獄といっていいありさまだった。

ヴォルゴムリ

古代都市ジングェームに住み着いた魔獣たちのこと。生き物を見つけると力比べを挑んでくる生き物で、相手が弱いと分かった途端に自らの高い身体能力を誇示するために、時間をかけて相手をなぶり殺す高慢で邪悪な生き物。人間を見かけても同様に襲い掛かってくるため、剣の舘の門下生の中でも特に最上級者と認められた人間は、ヴォルゴムリを相手に修行を行っていた。

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