概要・あらすじ
中学生の鈴木サトルは友人たちと洞窟探検をしていたが、突然、巨大地震に襲われる。友人とはぐれた彼が外へ出てみると、地形は激しく変化し、海に囲まれた小さな島になっていた。たった一人になってしまったサトルは、家族に再会したいという強い想いから、知識と知恵をふり絞り失敗や経験を積み重ねて、生き残る方法を模索し実践して身につけてゆく。
幾度となく苦難の日々が続いたあと、ふたたび地殻変動をともなう大地震が発生する。水没していた土地がふたたび隆起して、サトルの住んでいた街への道が開いたのである。サトルは本州だった場所に戻り、家族との再会を信じて長い旅に出る。だがそこにはこれまで以上の試練が待っているのだった。
登場人物・キャラクター
鈴木 サトル (すずき さとる)
中学生の少年。物語開始時は13歳で、3話目で14歳の誕生日を迎えるが、以後につては不詳。洞窟を友人と探検中に巨大地震に遭遇する。洞窟から脱出した彼は、地殻変動によってできた小さな島に自分がいることに気づく。そこで約1年ほど生き残るための苦難の日々を過ごしたあと、ふたたび起きた地殻変動で隆起した土地へ、家族との再会を信じて向かう。 以後、東京を経て富士山へと進み、それから本州の山間部を移動する。震災前は特に才能がある少年ではなかったが、島で一人暮らしを始めてから知恵と経験で生き残りの技術(猟や薬草の選別など)を身につけ、成長していく。手先は器用で、様々な道具を手作りする。歩くことも得意で、昔イベントに参加して60キロの道を休まず歩いたことがある。
アキコ
鈴木サトルが震災後初めて出会った人間で、向かいに見える島から、ボートで漂着した若く美しい女性。地震後の100m級の巨大な津波で、日本の海沿いの主要都市が壊滅し、さらにはそれが世界規模でも起こったという噂も語る。残った人々は絶望して暴徒となったため、彼女はそれから逃げてきた。 サトルの作った住居で同居するが、サバイバル生活に慣れずに彼の足を引っ張り続ける(土器やカスミ網などは作ったが)。様々な心労と事故から精神を病んでしまい、昔の恋人、俊夫に手紙を書いては返事を求めサトルを困らせる。苗字や名前の漢字は不明。
男 (おとこ)
鈴木サトルが震災後、二番目に出会った人間で、地震で廃墟と化した東京に一人で暮らしていた。サトルがビルの屋上に作った野菜畑を見て、使える奴と思い、同居を始める。大災害の顛末や、富士山が形を変えた理由などを語った。自動車の運転を、サトルに教える。暴力的で疑い深く、常に猟銃を持ち、次第にサトルを自分の下僕のように扱おうとする。 生き残った人々を射殺し、紙幣や宝石を奪っていた。姓名は不明で、ナレーションも「男」としか語らなかった。
志賀 (しが)
鈴木サトルが震災後、三番目に出会った人間。老人で、自動車の排気ガスで自殺をしようとしていたところをサトルに助けられる。災害を予測し、食料などを備蓄したせいで生き延びたが、それも底をついた上、視力が急激に低下したことに絶望しての行為であった。震災後、欲望をむき出しにして暴力に走った者の話のあと、「人間らしさを保っていた一家」をサトルに話すが、その家族の特徴はサトルの家族にとても似ていた。 志賀老人は、家族の姓名は思い出せなかったが、高地の方へ向かったと述べ、サトルに希望を抱かせた。
ロバート
鈴木サトルが富士山の近くで出会ったアメリカの軍人(サトルは富士山の近くにある母の実家を訪ねようとしていた)。P2哨戒機から落下傘で中尉と一緒に降下してきた。米国防総省の命令で、富士山近辺に誤って打ち込まれた、金星テラフォーミング用の藍藻類の調査にやってきたのである。 ロバートは日本語ができるので駆りだされた学生で、ウィリアムの部下。サトルに、アメリカでも震災があり、自分の恋人が死んでしまったことを話す。階級や苗字は不明。植物や動物のサンプルの収集を行い、拾った子犬(サトルがシロと命名)をサンプルにしようとする。その後、サトルもいっしょに調査を続けるが、突然に富士山が噴火を起こす。
マリ
鈴木サトルが、人がいなくなった集落で出会った幼女。バッタの大群の飛来と疫病で集落は壊滅し、生き残った者は移動していった。マリの父も疫病で動けなくなり、マリも移動集団に連れられていったが、父を思うあまり戻ってきてしまった。サトルは二人を助けようと尽力する。
ゲン
鈴木サトルをとらえたグループのリーダー。元囚人。男性ばかり9人の集団で山中の洞窟に隠れている。皆、震災に紛れて脱獄した終身刑や死刑囚であり、自分たちの存在を知ってしまったサトルを監禁して殺そうとする。サトルは「もう警察など無いから、隠れていても意味が無い」と説くが、他のメンバーをいいように使ってきたゲンは、解散すれば地位を失ってしまうため耳を貸さない。 元リーダーだった隠居と呼ばれる老人だけは、サトルの詳しい話を聞き、脱出を助けようとする。
辰野 (たつの)
鈴木サトルが、高地で出会った人物で、たった一人でダイコンやイモの畑を耕していた。他の仲間は、全員インフルエンザに似た病気で死んでしまったとサトルに話し、もぐらの肉と野菜のシチューを振るまう。実は彼はプロ野球チーム「イーグルス」のピッチャーで、プロ入り初勝利を目前にして大震災ですべてを失った過去があった。 サトルの訪問と同じ頃、東京から流れてきた30人ほどの集団に作物を盗まれ、さらに土地そのものを渡すように迫られるが、毅然としてこれに立ち向かう。
小見山 晴彦 (こみやま はるひこ)
一般にも名を知られた地球物理学者であったが、精神を病んでしまっていた。T大学地震研究所長で、地震予知連絡会議のメンバーでもあり、今回の地殻変動を半年前から予知していたが、あまりの規模の大きさに学会もマスコミもそれを信じようとせず、自らもその数値にショックを受けて錯乱していたところに、実際の超巨大地震の襲来を目の当たりにして心のタガが外れてしまったのだった。 東海道線のトンネルの廃墟で、助手の瀬川に世話をしてもらい、暮らしている。鈴木サトルは雨宿りのためトンネルに入り、二人と出会う。小見山博士が持っていたピッケルが、自分の父親のものだとサトルが気付き、なんとか話を聞き出したいと思っていた。 その後、散歩に出たときに遭遇した地震のショックで博士は正気を取り戻し、サトルの家族は西に向かったと告げる。
さつき
鈴木サトルが訪れた村の神主の娘。大地震を予言して村人の命を救ったことで、父によって「生き神様」とされ、人々の信仰を集めていた。神主は、村人のさつき様を崇める心を利用して、村をコントロールしており、意思決定をさつき様に頼り、村人はすっかり無気力になっていた。やって来たサトルにより、さつき様に対する忠誠心が失われることを恐れた神主は、「災いをもたらす」としてサトルを排除しようとする。
シゲオ
鈴木サトルが訪れた、湖のほとりの学校の廃墟で暮らす子どもたちのリーダー。双子の兄のユウジと対立し、別々のグループを形成している。ユウジたちは「穴の家」と呼ぶ場所に暮らしており、弱肉強食の掟で子どもたちを束ねていた。ユウジは弓矢でサトルと決闘をするが、その途中で大きな地震が起きる。
ツネ
鈴木サトルが訪れた村の青年。実はその村に、かつてサトルの家族は暮らしており、ツネはサトルの父が大事にしていた時計を持っていた。真実を求めるサトルの悲痛な叫びに、ツネと彼の父親の岩造と母親のセイは、過去にあったことを語り始める。
鈴木 信一郎 (すずき しんいちろう)
鈴木サトルの父。終盤で、地質学者であったことがわかる。大震災を生き延び、妻と娘の恵(サトルの姉)を連れて、東京から高地へと向かう。サトルが辰野に自分の家族のことを尋ねたとき、「父の歳が42歳、母が40歳、姉さんは、17歳で母より背が高く」と発言している。山登りが好きで、サトルを連れて丹沢を登ったことがある。 大災害の後の秩序が無くなってしまった世界でも、人間性を失わなかった。
シロ
『サバイバル』に登場する動物。富士山の樹海にいた野犬の子犬。調査に来た米軍人のウィリアム中尉とロバートがサンプルとして捕獲した。名前はサトルがつけた。富士山の噴火で、軍人二人がいなくなったあと、サトルと旅をする。子犬なので、サトルを困らせることもしたが、猟の手伝いをするなど、一人前の犬らしくなっていく。 サトルが海を渡ろうとしたとき、別れることとなるが、のちに意外なところで再会する。