史実に基づく人物描写
「まんが王国・土佐」のホームページに掲載されたインタビューによると、作者には、「武市半平太が学校の先生になって、侍のまま授業している」「近所で噂の変な人が、ホームレスの坂本龍馬だった」という妄想が、連載前からあったという。本作は、そういった作者のイメージをブラッシュアップしたものである。また、登場人物にはこだわりがあり、ほくろに由来する「アザ」というあだ名の龍馬には、ちゃんとほくろを描き、鼻が高くアゴがしゃくれていたという武市の描写にも気を使っているという。なお本作は、時代考証家の山田順子の協力を得ており、史実に基づいて創作された歴史上の人物が複数登場する。
異文化&ハートフルコメディ
幕末の志士である主人公の武市にとって、平成の世は見るもの聞くもの不思議なものばかりである。例えば、ガングロギャルを見て山賊と間違え、ゲーム機や掃除機といった文明の利器に振り回されてしまう。しかしそんな武市も、逃亡犯から子どもを救った事件を経て、周囲に受け入れられていく。そして、学習塾の「サムライせんせい」として、子どもや保護者から慕われる存在になるのだ。本作は、堅物のサムライ、武市が、カルチャーショックに翻弄される姿と人間ドラマが魅力のハートフルコメディである。
竜馬との再会、以蔵のタイムスリップ
平成の世にタイムスリップした幕末の志士は、武市だけではない。武市の幼なじみである坂本竜馬もまた同様であった。しかし竜馬は、武市が切腹した後に平成にタイムスリップしている。しかも、それは5年も前のことであり、今やすっかりこの世界になじみ、フリーライターの楢崎梅太郎として生活していた。武市はそんな竜馬から、幕末で二人とも命を失った事実を知らされる。武市は、なんとかして元の世界に戻って日本を変えるというが、竜馬は自分たちが奔走した結果が、この平成の世であるという。考えの異なる二人が意見をかわす中、武市の愛弟子で竜馬の幼なじみでもある岡田以蔵が、過去からやってくる。
登場人物・キャラクター
武市 半平太 (たけち はんぺいた)
ちょんまげ頭、羽織袴のお侍。土佐勤王党の盟主。幕末、弾圧を受けて投獄されていたが、気がつくと現代にタイムスリップしていた。訳もわからずさまよううちに佐伯という老人の家にたどり着く。そこで居候することになり、元歴史教師である佐伯が道楽でやっている学習教室で子どもたちの先生になる。元の世に妻・富子を残してきており、幕末に帰りたいと願っている。生真面目な熱血漢で、普段は丁寧な言葉づかいだが、興奮すると土佐弁が出る。尊皇攘夷論者のため、現代の若者の異人かぶれには我慢できない。先に現代にタイムスリップし、楢崎梅太郎を名乗る坂本竜馬とは幼なじみ。竜馬からは「アギ」と呼ばれている。同名の実在人物をモチーフとしている。
楢崎 梅太郎 (ならさき うめたろう)
土佐出身の幕末の志士。武市半平太の同志で幼なじみ。半平太からは「アザ」と呼ばれている。半平太より5年も前に現代にタイムスリップしており「楢崎梅太郎」という名のフリーライターとして活動している。黒メガネと横分けの髪型、洋装、左目の下と唇の左下にあるほくろが特徴。明るく元気なお調子者。実在した坂本竜馬をモチーフとしている。
書誌情報
サムライせんせい 全8巻 リブレ〈クロフネCOMICS クロフネ×LINEマンガシリーズ〉
第1巻
(2014-11-10発行、 978-4799724439)
第8巻
(2020-12-19発行、 978-4799748961)