概要・あらすじ
アマゾン川上空を飛ぶ旅客機が、謎のミサイルの攻撃を受けて消息不明となった事件から18年。惨事に巻き込まれた娘夫婦の消息を求めて、毎年アマゾンを訪れていた蘭妙頼裳は、事故機の破片がジャングルの奥地で見つかったことを知り、捜索隊を組織して現地に向かう。だが、そこは植物や獣と同化した人間たちがうごめく、この世の地獄だった。
実は、乗客の1人だったロベルト・ダーズリー教授が、闇の巨大組織「S・C・A」の犯罪を告発するため、証拠となる遺伝子異変を起こす薬品サンプルを持って、同機に搭乗していたのである。そして、機体の爆発によって薬品が散布されてしまった結果、乗客や周辺の動物たちは異形の生物と化してしまったのであった。だが、この惨劇を奇跡的に生き延びていた者がいた。
頼裳の孫の蘭妙広樹である。ジャングルの奥地で自然とともに育った広樹は、アマゾンの守り神である精霊「緑の瞳」を名乗り、大自然に仇なす「S・C・A」に戦いを挑む。
登場人物・キャラクター
蘭妙 広樹 (らんみょう ひろき)
緑色の瞳を持つ青年。アマゾンの守り神とされる精霊「緑の瞳」を名乗る。蘭妙頼裳の孫で、蘭妙範子、蘭妙広一夫婦の一人息子。18年前に闇の巨大組織「S・C・A」のミサイル攻撃を受けて墜落した旅客機に、両親とともに搭乗していた。しかし、奇跡的に生き延び、アマゾンで自然に囲まれて育った。この事故の影響で、両親が植物と同化してしまったため、文明人を嫌っている。 スーパーカドヘリンの影響を受けていない普通の人間だが、幼い頃から弱肉強食の野生の世界を1人で生き抜いてきたため、常人をはるかにしのぐ身体能力と野生の勘を備えている。さらに、植物の心を読む能力があり、大自然の力を借りて、「S・C・A」の超生物兵器「P4W」たちと死闘を繰り広げることになる。
マリア・ダーズリー (まりあだーずりー)
生物学の世界的権威、ロベルト・ダーズリー教授の娘。父親の乗っていた旅客機の墜落が、闇の巨大組織「S・C・A」の仕業であったことを知り、蘭妙頼裳が組織した旅客機の捜索チームにガイド役として同行。「緑の瞳」を名乗る蘭妙広樹と出会うこととなった。
蘭妙 頼裳 (らんみょう たのも)
日本有数の製薬会社「蘭妙薬品工業」の会長。蘭妙広樹の祖父。18年前にアマゾン上空で消息を絶った娘夫婦一家の行方を求めて、捜索隊を組織。娘たちが乗っていた飛行機の破片が発見されたアマゾンの奥地に自ら足を踏み入れ、そこで広樹と再会することとなった。第二次大戦中、日本陸軍からの生物兵器製造の要請を断り続け、特高警察の拷問にも耐え切った気骨のある人物。 広樹からは「日本のじいちゃん」と呼ばれている。
生鬼 麻虎 (うぶき あさこ)
各種武道合わせて10段という凄腕を誇る熱血刑事。屈強な男性だが、下の名前の読みが「アサコ」で女性と間違えられやすいため、この名で呼ばれるのを極端に嫌っている。地走蟲兵の政界汚職の捜査を進めていたが、上司の命令で、蘭妙広樹や蘭妙頼裳らを殺人容疑で逮捕、警察へ護送する。だが、これは地走の秘密に迫りすぎた生鬼を、広樹たちもろとも抹殺するための罠だった。 護送中に闇の巨大組織「S・C・A」の襲撃を受けるが、広樹と協力して撃退。この一件で「S・C・A」の陰謀を知り、広樹たちとともに戦うことを決意する。
地走 蟲兵衛 (じばしり ちゅうべえ)
日本の政財界の黒幕とされる男性。「妖怪」と恐れられている人物。戦後の日本を裏から立て直した功労者の1人。蘭妙頼裳が心服するほどの人格者だったが、金銭万能の現代日本に絶望。選ばれた者だけの理想社会を生み出す、という闇の巨大組織「S・C・A」の思想に共鳴し、その協力者となった。齢96歳の老人だが、他の生物の細胞を身体に注入して若さを保っている。 しかし、取り入れた細胞が、それぞれ勝手に動き出すという副作用に苦しめられており、普段は細胞の暴走を制御するための筋肉細胞制御マスクを被っている。
四荷島 丈二 (しにじま じょうじ)
闇の巨大組織「S・C・A」の超生物兵器「P4W」の1人。地走蟲兵衛に仕えている男性。四荷島刺江の兄。サソリとの合成人間で、尾から強力な神経毒を注入することができる。さらに、無数のサソリを自在に操り、サソリの外皮を模した皮膚装甲は、バズーカ砲をもはね返す強度を誇る。実はかつて「S・C・A」に敵対していた澁宮電気の会長の息子。 四荷島丈二当人は、自分が「S・C・A」の実験で試験管から生まれた、と信じ込んでいる。
四荷島 刺江 (しにじま しえ)
闇の巨大組織「S・C・A」の超生物兵器「P4W」の1人。地走蟲兵衛に仕えている女性。四荷島丈二の妹。サソリとの合成人間で、いかなる相手をも自白させる強力な毒を、尾の針に仕込んでいる。また、サソリの外皮を模した強力な皮膚装甲を持つ。四荷島刺江当人は知らないが、実はかつて「S・C・A」に敵対していた澁宮電気の会長の娘。 自白毒の影響で朦朧とする蘭妙頼裳から偶然その事実を聞き出し、激しく動揺することとなる。
ローデス・クリューガー (ろーですくりゅーがー)
闇の巨大組織「S・C・A」のメンバー。超生物兵器「P4W」の1人。シェパードとの合成人間で、常人をはるかにしのぐ身体能力と、鋼鉄の装甲をも引き裂く鋭い爪、常人の1000倍の嗅覚を持つ。さらに、全身を覆う体毛も鋼のように固く、あらゆる攻撃をはね返すことができる。
北田 英心 (きただ えいしん)
闇の巨大組織「S・C・A」のメンバー。超生物兵器「P4W」の1人。ハリネズミとの合成人間で、体内の強化鉄分を凝縮させた無数のハリを、全身に生やすことができる。刑事として警察組織に潜り込んでおり、地走蟲兵衛の汚職疑惑を捜査する生鬼麻虎を、日本にやって来た蘭妙広樹ともども抹殺しようとする。
ビクター・アーゴ (びくたーあーご)
闇の巨大組織「S・C・A」のメンバー。超生物兵器「P4W」の1人。カメレオンとの合成人間で、ひとつひとつの細胞の色素を変えることにより、別の人間に化けることができる。この能力を駆使して、相手が親しくしている人間に姿を変え、動揺した隙に頭部のツノで突き殺す、という戦法を得意としている。
ロードレオン
闇の巨大組織「S・C・A」の軍部隊を率いる男性。階級は大佐。蘭妙頼裳をスパイしていた垣谷の連絡を受け、大部隊を引き連れてアマゾンの奥地に侵攻。墜落現場に残る「S・C・A」の犯罪の証拠を焼き払い、ダーズリー・レポートを奪おうとする。
垣谷 (かきや)
闇の巨大組織「S・C・A」の組織員の男性。「A4」というコードネームを持つ。10年前から製薬会社「蘭妙薬品工業」に社員として潜り込み、生物兵器に利用するための研究を組織に横流ししていた。スーパーカドヘリンの痕跡の抹消とダーズリー・レポートの奪取のため、蘭妙頼裳が組織した捜索チームに同行していたが、蘭妙広樹に正体を見破られる。
瀬古田 (せこた)
製薬会社「蘭妙薬品工業」の社員。蘭妙頼裳が、娘夫婦の消息を探すために組織した捜索チームの1人。ややお調子者なところがあるが、正義感の強い青年。闇の巨大組織「S・C・A」との抗争に巻き込まれながらも、頼裳の良き部下であり続ける。
蘭妙 範子 (らんみょう のりこ)
製薬会社「蘭妙薬品工業」の会長、蘭妙頼裳の一人娘。蘭妙広樹の母親。夫の蘭妙広一の「蘭妙薬品工業」がメキシコ支社長に就任。これに伴い、一家で現地に向かう途中、搭乗機が闇の巨大組織「S・C・A」の攻撃を受けて墜落。一命をとりとめたものの、夫ともども瀕死の重傷を負った。さらに、事故の際に周辺に散布されてしまったスーパーカドヘリンの影響で、傷口から入り込んだ植物細胞と同化。 植物との合成人間と化してしまう。
蘭妙 広一 (らんみょう こういち)
蘭妙頼裳の一人娘である蘭妙範子の夫。蘭妙広樹の父親。製薬会社「蘭妙薬品工業」のメキシコ支社長となり、一家で現地に向かう途中、搭乗機が闇の巨大組織「S・C・A」の攻撃を受けて墜落。一命をとりとめたものの、妻ともども瀕死の重傷を負った。さらに、事故の際に周辺に散布されてしまったスーパーカドヘリンの影響で、傷口から入り込んだ植物細胞と同化。 植物との合成人間と化してしまう。
ロベルト・ダーズリー (ろべるとだーずりー)
ノーベル賞受賞者として知られる世界的な生物学の権威。マリア・ダーズリーの父親。闇の巨大組織「S・C・A」が超生物兵器を作り出そうとしていることを知り、証拠となる遺伝子異変を起こす薬品のサンプルを入手。国連議会で彼らの陰謀を告発しようとしてしていたが、搭乗機が「S・C・A」のミサイル攻撃を受けたため死亡した。
集団・組織
S・C・A (かんぱにー)
世界を裏で動かしているといわれる闇の武器密売組織。「カンパニー」と呼ばれる。正式名称は「シャドー・カンパニー・オブ・アメリカ」。世界中のあらゆる大企業にスパイを送り込んでいる巨大組織。世界の殲滅と、組織に選ばれた人間のみが生きる理想郷の建設を目論んでおり、野望達成のために、遺伝子合成による超生物兵器の製造計画を推し進めている。
場所
回廊地獄御殿 (かいろうじごくごてん)
地走蟲兵衛の住む御殿の通称。中心部に建つ地走の屋敷を、4つの門と回廊が守っている。第一の門で追い返された者は政界から抹殺、第二の門で追い返された者は政界の片隅で冷や飯食らい、第三の門でようやく中央政界に席が与えられ、第四の門にたどり着いた者にのみ、本物の権力が与えられる、といわれている。政治家にとっては、ひとつひとつの門に鬼の門番がいるようなものなので、このように呼ばれるようになった。
その他キーワード
ダーズリー・レポート (だーずりーれぽーと)
ロベルト・ダーズリー教授の研究レポート。遺伝子合成液「スーパーカドヘリン」によって合成された遺伝子細胞を、無傷で切り離す方法を研究したもの。この研究が完成すれば、闇の巨大組織「S・C・A」の生物兵器を無力化することができる。そのため、超生物兵器「P4W」の製造を進める「S・C・A」が、その行方を追っている。
スーパーカドヘリン
闇の巨大組織「S・C・A」が、超生物兵器を製造するために生み出した遺伝子合成液。遺伝子細胞の接着を司る物質「カドヘリン」を原料としている。人間のカドヘリンは胎児の時にもっとも活性化するので、「S・C・A」はこのスーパーカドヘリンを製造するため、母体もろとも胎児を殺しまくっている。
緑の瞳(精霊) (ぐりーんあいず)
アマゾンの守り神とされる精霊の名。かつてはインディオたちから敬われていたが、アマゾンの自然破壊が進んでいるため、悪霊と化して都市に出たインディオたちに、罰を与えにくると恐れられている。アマゾンの奥地に立つ「緑の瞳」を祀った石像には、目の部分に緑色の石がはめこまれており、同じ緑色の目を持つ蘭妙広樹が自らの異名としている。
超生物兵器 (ちょうせいぶつへいき)
闇の巨大組織「S・C・A」が理想郷建設の尖兵とするべく、異なる生物の遺伝子を組み合わせることによって作り出した異形のモンスター。「S・C・A」は、あらゆる生物の攻撃能力と、限りなく不死に近い生命力を併せ持つ、まったく新しい生命体の創造を目標としており、その一環として「P4W」が生み出された。
P4W (ぴーふぉーうえぽん)
闇の巨大組織「S・C・A」が、スーパーカドヘリンで人間と別種の動物を合成することによって生み出した最強クラスの超生物兵器。正式名称は「絶対隔離レベル遺伝子合成兵器」。遺伝子研究にはP1からP4までのレベルがあり、もっとも危険な遺伝子合成を行うP4レベルの実験で生み出されたので、このように呼ばれる。
昆虫細胞制御針 (いんせくとりぷれっさー)
蘭妙広樹が「P4W」と戦うために編み出した必殺技。月桂樹のペンダントに仕込んだジガバチの細胞をP4Wの体内に打ち込んで、敵の合成細胞と同化・成長させる。ジガバチは家畜などの身体に卵を産みつけ、その生物を内側から食って成長する習性を持つため、合成細胞の力で急速成長した無数のジガバチが、瞬時に敵の肉体を食らいつくすこととなる。