現代日本に潜む殺し屋を狩る殺し屋
現代の日本は一見すると平和に見えるが、その裏側では犯罪や汚職が蔓延し、法の手が及ばない悪を葬る殺し屋たちが存在している。桐野もまた、殺しを生業とする一人だが、彼が所属する組織「極楽協会」が標的とするのは、同じく殺し屋だけである。卓越した戦闘能力と、未来を朧(おぼろ)げに見る左目を武器に、桐野は裏社会の強者たちを次々と始末していく。しかし、桐野は単なる冷酷な殺し屋ではなく、姉の仇討ちのために殺し屋となった藤原光を死地から救い出し、彼女を極楽協会に迎え入れた。また、病気の息子のために罪を犯した殺し屋の河内を手にかけるも、その成功報酬のすべてを寄付するなど、複雑な事情を抱える殺し屋には密かに温情を示すこともある。
殺し屋トラブルを解決する闇の組織とその内部構造
極楽協会は、殺し屋にかかわるあらゆるトラブルの解決を請け負う謎に包まれた闇の組織。表向きはバー「シガンバナ」として営業しており、合言葉「般若湯(はんにゃとう)を花冷え」を伝えることで依頼が可能となる。組織内部は役割ごとに分業制が敷かれ、依頼者との交渉や指令を担当する「交渉役」、ターゲットの殺害を行う「殺し屋」、身辺調査を行う「調査役」などが存在する。任務はこれらの専門家がチームを組んで遂行しており、桐野が殺し屋、藤原が調査役を務めている。その性質上、裏社会の有力組織とのつながりも深く、亜加坂組や芽自路組といった大手暴力団が主要な依頼主となっている。
両親を殺害した「ヤマ」への挑戦
桐野が殺し屋となったのは、両親を殺害した謎の男「ヤマ」への復讐心がきっかけだった。幼い頃、両親が殺される現場に居合わせた桐野は、実行犯の身体に浮かび上がる彼岸花のような紋様を目撃する。桐野がその紋様に気づいたにもかかわらず、犯人は不敵にも「ヤマ」と名乗り、彼に危害を加えずに姿を消す。この出来事は桐野の心に深い傷を残し、なぜ自分だけが生き残ったのかという罪悪感と、両親を守れなかった無力感に苛まれる。そんな桐野の苦悩を見かねた両親の友人、凪は、「ヤマ」が腕利きの殺し屋であると考え、復讐を望む桐野の思いを汲み取り、旧知の殺し屋、久蔵への弟子入りを勧めた。
登場人物・キャラクター
桐野 葵 (きりの あおい)
極楽協会に所属するエージェントの男性。主に殺し屋の始末を任務としている。左目には、人の未来を朧げに映し出す力が備わっているが、そのビジョンは抽象的であり、正確な予知はできない。卓越した身体能力を誇り、凄腕の殺し屋とも正面から渡り合える実力者でもある。多くの女性を魅了する美貌は、時に任務遂行のための情報収集にも役立っている。また、非情な仕事の裏には、心優しい本性が隠されており、標的の事情を汲み取り、情状酌量の余地があれば命を助けることもある。桐野が協会に身を置き、危険な任務に挑むのは、両親を殺害した「ヤマ」の情報をつかむためである。
藤原 光 (ふじわら ひかり)
極楽協会の調査員を務める女性。かつては人気アイドルグループ「撫子Quartz」のセンターとして活躍していた。姉を残虐な方法で殺された憎しみを胸に抱きつつ、表向きはアイドルの仮面をかぶり、裏では復讐に手を染めていた。最後の標的である平田透との戦いで窮地に陥った際、桐野に救われる。平田が再起不能となったため、殺し屋稼業とアイドル活動の両方を引退し、極楽協会の調査員として新たな道を歩み始めた。現在は、元アイドルならではの卓越した演技力を武器に、「藤代伶」と名乗り天蘭学園女子高等学校の生徒として、さらに「西野明梨」としてクラブ「緋牡丹」に潜入するなど、複数の偽名を使い分けながら任務を遂行している。
書誌情報
シガンバナ 4巻 講談社〈ヤンマガKCスペシャル〉
第1巻
(2024-10-04発行、978-4065363485)
第2巻
(2024-12-06発行、978-4065379066)
第3巻
(2025-03-06発行、978-4065389188)
第4巻
(2025-06-06発行、978-4065399507)







