シグナル100

シグナル100

下部によって後催眠をかけられた樫村怜奈をはじめとする生徒たちが、生き残りを懸けて学園デスゲームを繰り広げていく姿を描くミステリーサスペンス。「ヤングアニマル」2015年No.15から2016年No.20にかけて連載された作品。

正式名称
シグナル100
ふりがな
しぐなるひゃく
原作者
宮月 新
作画
ジャンル
デスゲーム
関連商品
Amazon 楽天

あらすじ

第1巻

私立聖新高等学校2年C組の担任を務める下部は、生徒たちから「下僕」呼ばわりされ、毎日のように陰湿ないじめを受けていた。さらに下部は校長から、C組が学級崩壊して成績も落ちた責任を問われ、なんらかの対策を講じないと厳重な処分を下すと言い渡される。下部が絶望の淵に追い詰められていることを知らない、和田隼をはじめとする生徒たちは下部へのいじめをやめなかった。唯一いじめにかかわっていない樫村怜奈は、荒れたクラスの現状とつまらない日常に呆れながらも、傍観を続けていた。そんな中、C組の生徒たちは下部によって視聴覚室に集められ、謎の轟音と奇妙な映像を見せられる。怜奈たちが気づいた瞬間、下部は不気味な笑みを浮かべながら、「C組の生徒たちに後催眠をかけた」と告げる。下部が仕掛けた後催眠は、日常的な行動の一部を禁止行動とし、それらを実行した者は暗示が発動して自殺するという、恐ろしい催眠誘導法だった。禁止行動を実行した二人の生徒が目の前で自殺したことで、怜奈たちは自分たちの日常の自由が奪われた事実を悟る。下部は後催眠を解く条件が「自分以外のクラスメート全員の死を見届けること」だと告げて自殺するが、彼が死んだあとも怜奈たちの後催眠は残ったままだった。こうして過酷な学園デスゲームを強いられた怜奈たちは、つねに死の危険ととなり合わせの時間を送りながら、生き残りを懸けて戦う中で極限状態に陥っていく。

第2巻

学園デスゲーム開始からすでに4時間以上が経ち、樫村怜奈をはじめとする2年C組の生徒たちは、クラスメートの自殺を次々と目の当たりにしたことで精神をすり減らしていた。そんな中、後催眠を受けていない榊蒼汰が学園デスゲームに参加することになり、怜奈は救世主ともいえる彼に希望の光を見いだしていた。後催眠に仕込まれていた下部の幻影によって新たな特別ルールが告げられ、ボーナスタイムが開始される。それは「制限時間内に四人の自殺を見届けた者は後催眠から解放され、学園デスゲームを抜け出せる」という内容だった。和田隼はクラスの大半を味方として従え、三人の生徒を「生贄」と称して自殺に導く。さらに、以前から蒼汰に対抗心を抱いていた隼は、蒼汰の思い人である怜奈を四人目の生贄にすることで復讐しようともくろむ。一方、信頼していた蒼汰の様子にとまどう怜奈は、隼たちに狙われているのを知らないまま教室に戻ろうとする。怜奈が教室に入った瞬間、隼の合図でクラスメートの大半が一斉に、怜奈に向かって指差しをしていた。隼の狙いは、禁止行動の一つである「25人以上のクラスメートに指差しされる」によって、怜奈を自殺に導くことであった。しかし蒼汰の妨害と、朝比奈優子がためらったことで条件は満たされず、ボーナスタイムは終了。命を取り留めた怜奈は、生贄として狙われたことで周囲への信頼をなくし、絶望と孤独に追いやられてしまう。

第3巻

研修棟に集められた樫村怜奈たちに下部の幻影が告げた二度目のボーナスタイムは、制限時間と二枚のカードを用いた「指名制特別ルール」であった。研修棟のあちこちに隠された封筒を見つけた者は、中に入った二枚のカードをもとに「指名者」となる。カードにはそれぞれ別の禁止行動が書かれているが、その禁止行動のどちらかが本物でどちらかが偽物。指名者から指名された者は、どちらかのカードを選んでそれに書かれた行動を実行しなければならず、偽物を選ぶことができれば命を取り留めることができる、というルールだった。このボーナスタイムの途中で、朝比奈優子が下部と内通していた「裏切者」であったことが判明。優子はクラスメートへの復讐と称して、次々と生徒たちを絶望と恐怖に陥れていく。優子の策略により、ボーナスタイムは攻略者が一人もいないままで終了し、怜奈たちは多数の犠牲者と数々の奮闘や屈辱が無駄に終わった事実を悟り、気力を大きく削がれてしまう。その頃、下部の復讐対象となった校長を中心とする五人の教師が学園デスゲームに乱入し、家族にかけられた後催眠を解くために、2年C組の生徒を皆殺しにしようと動き出していた。武器を携えた校長らは問答無用で生徒を殺害し始め、怜奈たちはあちこちで逃げ惑う。そんな中、榊蒼汰は一人で下部の自宅に向かい、後催眠を解く手がかりを見つけ出そうとしていた。

第4巻

下部の幻影が告げた新たなボーナスタイムは、「榊蒼汰を殺せば後催眠が解除され、学園デスゲームから抜け出せる」という内容だった。それを知った樫村怜奈は、蒼汰に急いで逃げるように告げ、クラスメートを説得して彼を守ろうとする。一方、蒼汰の命を狙う和田隼は、蒼汰の殺害にとまどう羽柴健太たちに、「あいつの本性を見せてやる」と告げる。隼が見せたのは、かつて岩崎に襲われていた玲奈を蒼汰が救った事件が、蒼汰と井沢学によって仕組まれていたとわかる映像だった。怜奈もその映像を目にしてしまい、蒼汰の本性を知った生徒たちは失望し、彼を守ろうとする者はほとんどいなくなっていた。隼はある出来事から蒼汰を激しく恨んでいる藤田陽太郎DH-01を飲ませ、蒼汰を殺すように命じる。陽太郎に首を絞められ、命をあきらめかけた蒼汰だったが、箕輪紀子はそれを必死で止めようとする。以前から蒼汰に思いを寄せていた紀子は、怜奈を妬んでいた自分こそが、岩崎を利用して彼女を貶めようとした張本人だと語る。これによって蒼汰が無実であったことがわかり、それでも殺すべきだと隼たちが主張する中、陽太郎は蒼汰の殺害をためらい始める。そんな陽太郎を後ろからナイフで刺したのは、小宮山澪織だった。澪織は自分こそが下部の本当の仲間であると暴露し、学園デスゲーム開始前に起こった、ある出来事について語り出す。

関連作品

本作『シグナル100』のスピンオフ作品として、Ryukiの漫画『シグナル100 零』がある。『シグナル100 零』は後催眠が発明された経緯など、本作の前日譚を描くスリラー作品。行方不明の兄を捜す霜月春哉が入った寮での奇妙な出来事や、春哉をはじめとする寮生たちが見せられた催眠動画「シグナル10」が引き起こす惨劇を描いている。

メディアミックス

2020年1月より、本作『シグナル100』の実写劇場版が公開された。キャストは樫村怜奈を橋本環奈、榊蒼汰を小関裕太、下部を中村獅童が演じている。

登場人物・キャラクター

樫村 怜奈 (かしむら れな)

私立聖新高等学校2年C組に在籍する女子。荒れ果てたクラスと担任の下部の現状に呆れ、クラスメートたちとは距離を置きながらつまらない日々を送っている。黒髪ボブヘアの地味な見た目で、メガネを掛けている。冷淡な態度や毒舌家なことから冷たい人間と思われがちだが、一部の男子生徒からは好意を寄せられている。過去に岩崎から襲われていた際、榊蒼汰に助けられたことがあるが、そのせいで彼が停学処分になったことに負い目を感じている。この出来事をきっかけに、他人と深くかかわるのを避けるようになった。担任の下部へのいじめには加担していなかったが、助けもしなかったため、学園デスゲームに参加させられることになる。以前から和田隼をよく思っておらず、学級崩壊と学園デスゲームが起こった元凶でもある彼には、憎悪に近い感情を抱いている。隼の不審な言動、行動を警戒して反抗的な態度を取ることも多いため、ほかの生徒から反感を買うことも多い。蒼汰に勇気づけられてからは、これまでクラスに無関心な傍観者であったことを反省し、それからは毅然とした姿勢で困難に立ち向かうようになる。また、ボーナスタイムを含め、いかなる状況においても「自分が生き残るために誰かを死なせるような行為はしない」という信念を抱いている。蒼汰のことを信頼して頼りにしていたが、積極的に隼を殺そうとするなど、不審な行動が見られるようになった彼に不信感を抱くようになる。のちに蒼汰に思いを告げられ、相思相愛の仲となる。

下部 (しもべ)

私立聖新高等学校2年C組の担任を務める男性教師。かなり気弱な性格で荒れたC組の生徒から激しいいじめを受けており、和田隼たちからは「下僕」のあだ名で呼ばれている。校長からは、C組の成績が落ちている責任を問われて追い詰められている。いつになっても言うことを聞かない生徒たちに、復讐する機会をうかがっていた。教師になる前はアメリカの有名な心理学研究所に勤めていたため、心理学に造詣が深い。この経験を生かしてある宗教団体に心理学のノウハウを指導していた過去を持ち、その研究成果であるDH-01のサンプルをあらかじめ盗み出していた。C組の生徒たちに後催眠をかけてあらゆる自由を奪い、過酷な学園デスゲームに強制参加させることで復讐をもくろむ。開始直後にルールの一部を告げ、二人の生徒が禁止行動で自殺したのを見届けたあと、窓から飛び降りて自殺した。その後も生徒たちの後催眠が解けることはなく、後催眠に仕込まれた幻影という形でチャイムやボーナスタイムなどとともに現れては、生徒たちに新たなメッセージや特別ルールを伝えるようになる。それぞれの生徒の行動を先読みしたうえでルールを構成し、後催眠にかかっていない榊蒼汰が途中参加してくることも計算に入れていた。実は学園デスゲームの前に開催された教職員親睦会で、自分をないがしろにしてきた校長をはじめとする五人の教師にも復讐を企て、彼らの家族にも後催眠をかけていた。これにより、校長たちの家族を人質に取ってC組の生徒たちを襲撃させ、学園デスゲームをさらに加速させようとする。

榊 蒼汰 (さかき そうた)

私立聖新高等学校2年C組に在籍する男子。停学処分中だったため、偶然にも下部の企てた後催眠を逃れていた。久しぶりに登校した際、樫村怜奈に助けを求められて学園デスゲームのことを知り、後催眠にかかっていない部外者でありながら、自らも参加するようになる。天性のカリスマ性とリーダーシップを持ち、和田隼の罠にかかって危険に晒された生徒の大半を救出したことで、怜奈を中心に多くのクラスメートから救世主のように扱われている。その後も過酷な学園デスゲームから逃れようと、積極的にクラスメートをまとめながら行動している。過去に岩崎に襲われていた怜奈を助け出し、彼女を救うために暴力を振るって、停学処分を受けていた。もともとリーダーとしてクラスをまとめていた榊蒼汰が停学となり、隼が新たなリーダーとなったことは、C組が学級崩壊した大きな原因となっている。転校生ながら成績やスポーツにおいても優秀な成績をおさめていたため、隼からは激しい対抗心を燃やされていた。このため、隼とは以前から確執を抱えていたが、学園デスゲームに参加してクラスの空気を変えたことで、彼と本格的に対立するようになる。実は怜奈にただならぬ好意を寄せており、危険を承知で学園デスゲームに途中参加したのは、他者を犠牲にしてでも彼女を助け出すためであった。のちに怜奈に告白し、相思相愛の仲となったあとも、彼女の生存を最優先にした行動を続ける。

和田 隼 (わだ はやと)

私立聖新高等学校2年C組に在籍する男子。下部を毎日のようにいじめて学級崩壊に導いた人物で、榊蒼汰とは真逆のカリスマ性とリーダーシップを持つ。蒼汰が停学になった途端に好機と見て和田グループを作り上げ、新たなリーダーとして君臨する。学園デスゲームが開始されたあとも強気な発言を繰り返し、「下部をいじめてデスゲームを引き起こした元凶」として樫村怜奈から憎まれながらも、リーダーシップを発揮し続けている。この資質に加えて頭の回転の早さを認められる一方、あっさりと裏切る可能性が高い生徒として、怜奈から警戒されている。自分本位なわがままな性格で、いかなる状況でも自分が生き残ることを真っ先に優先して行動する。そのため、他者を利用したり、巧みに禁止行動に導いて自殺させたりしようとすることも多い。その一方で、強気な態度や発言が極限状態に追い詰められた生徒の精神的支柱となることも多く、井沢学が撮っていた動画で得た情報をにぎりながら周囲を導き、学園デスゲームをコントロールするようになる。また、信頼を得るために自ら実験台を名乗り出るなど、肝の据わった行動も多い。しかし蒼汰が学園デスゲームに参加したことで、クラスの雰囲気が変わったことを機に、以前から確執を抱えていた彼への復讐をもくろむようになる。最初のボーナスタイムでの復讐は失敗に終わるものの、それ以降も蒼汰や怜奈とはたびたび対立している。途中で乱入した校長たちに襲撃されて負傷するが、怜奈に救出されて命を取り留めた。

山本 英司 (やまもと えいじ)

私立聖新高等学校2年C組に在籍する男子で、和田隼とつるんでいる不良。学園デスゲームの最初の犠牲者。後催眠をかけられた直後に下部に殴りかかり、一番目の禁止行動「他人に暴力を振るう」で自殺暗示が発動して死亡した。

小泉 はるか (こいずみ はるか)

私立聖新高等学校2年C組に在籍する女子で、学園デスゲームの二番目の犠牲者。後催眠をかけられた直後に混乱から携帯電話で母親に助けを求めようとするが、二番目の禁止行動「クラスメート以外に視聴覚室で起きたことを知らせる」で自殺暗示が発動して死亡した。

井沢 学 (いさわ まなぶ)

私立聖新高等学校2年C組に在籍する男子で、盗撮趣味を持つ。日頃から更衣室などに盗撮カメラを仕掛けて女子の着替えを盗撮していた。後催眠をかけられた当日は、偶然にも視聴覚室にカメラを仕掛けていたため、後催眠に使われた映像や当日の出来事を記録していた。この記録映像には禁止行動に関する情報も含まれていたため、この情報をエサに女子を従えて、自らのハーレムを作ろうともくろんでいた。しかし日頃の盗撮行為とそれらの企みを察していた和田隼に利用され、八番目の禁止行動「勃起した性器に手を触れる」を実行してしまい、自殺暗示が発動して死亡した。

君津 早苗 (きみつ さなえ)

私立聖新高等学校2年C組に在籍する女子。学園デスゲームでは和田隼に味方する。ショートカットの髪型で爽やかな雰囲気を漂わせ、スポーツ万能。クラスの精神的支柱となっていた隼を信頼し好意を寄せていたが、それを彼に利用され、八番目の禁止行動「勃起した性器に手を触れる」を実行したことで自殺暗示が発動し死亡した。

園田 樹里 (そのだ じゅり)

私立聖新高等学校2年C組に在籍する女子。朝比奈優子に執拗ないじめ行為を繰り返していた主犯格で、学園デスゲーム開始後に和田隼の策略でバスに乗り、禁止行動「学校の外へ出る」で死にかけるが生き残る。最初のボーナスタイムでは条件をクリアして生き残るために、隼に協力する。その後も自分が生き残るために、優子に実験台になるように命令するなど身勝手な行動が目立っていたが、二度目のボーナスタイムでは彼女の復讐で数々の屈辱を味わい、心身ともに大きな傷を負う。また、この際に羽柴健太に片思いしていたことを、優子によって暴露されている。さらに優子の策略にはまり、数々の奮闘や屈辱がすべて無駄に終わってしまい、それを悟った瞬間に精神が崩壊した。これ以降は精神が幼児退行したため、誰の指示にも従わないことが増え、周囲の足を引っ張るお荷物状態となる。しばらくは健太によって守られていたが、なんらかのきっかけで後催眠が解除されていたことが、のちに判明する。

三井 今日子 (みつい きょうこ)

私立聖新高等学校2年C組に在籍する女子で、ボブカットの髪型をしている。園田樹里と共に朝比奈優子に執拗ないじめ行為を繰り返していた。学園デスゲームにおいても、樹里や佐々木萌香と共に行動することが多い。二度目のボーナスタイムで優子に命を狙われた際、彼女に行ったいじめ行為の内容を覚えていなかったために選択を誤り、禁止行動「顔にチョークの粉を塗る」を実行したことで自殺暗示が発動して死亡した。

佐々木 萌香 (ささき もえか)

私立聖新高等学校2年C組に在籍する女子で、ツインテールの髪型をしている。園田樹里と共に朝比奈優子に執拗ないじめ行為を繰り返していた。学園デスゲームでは二度目のボーナスタイムで村瀬駿の罠にはまり、禁止行動「ハサミで髪を切る」を実行したことで自殺暗示が発動して死亡した。

小宮山 澪織 (こみやま みおり)

私立聖新高等学校2年C組に在籍する女子で、ヘアバンドで髪をまとめている。箕輪紀子の親友で、おっとりした性格のお嬢様。学園デスゲームでは最初のボーナスタイムの条件をクリアするために和田隼に協力し、樫村怜奈を禁止行動に導こうとした。これ以降、怜奈とは一時的に気まずい雰囲気になっていたが、二度目のボーナスタイムをきっかけに過去の行為を反省し、紀子や羽柴健太と共に、怜奈や榊蒼汰に協力することが多くなる。昔からピアノが得意だったが、過去のある出来事をきっかけに弾けなくなっている。

箕輪 紀子 (みのわ のりこ)

私立聖新高等学校2年C組に在籍する女子で、クラス委員長を務めている。小宮山澪織の親友だが、おっとりした彼女とは対照的に気の強い性格をしている。学園デスゲームでは最初のボーナスタイムの条件をクリアするために和田隼に協力し、樫村怜奈を禁止行動に導こうとした。これ以降、怜奈とは一時的に気まずい雰囲気になっていたが、二度目のボーナスタイムをきっかけに過去の行為を反省し、澪織や羽柴健太と共に、怜奈や榊蒼汰に協力することが多くなる。園田樹里のグループとはもともと対立することが多かったが、彼女たちとは別のところで朝比奈優子をいじめたことがあり、その場にいた澪織にもいじめ行為を強制していた。以前から蒼汰にひそかに片思いしていたが、彼が怜奈に思いを寄せていたことも知っていたため、妬みから彼女をある事件に巻き込んで貶めようとしたことがある。

朝比奈 優子 (あさひな ゆうこ)

私立聖新高等学校2年C組に在籍する女子。園田樹里、佐々木萌香、三井今日子の三人グループから陰湿ないじめを受けている。髪を三つ編みにまとめ、頰にはそばかすがある。地味な見た目で影が薄く、気弱でおとなしい性格をしている。学園デスゲームでも居場所がなく、クラスから孤立しがちだった樫村怜奈に共感するようになる。当初は怜奈に協力的な態度を見せ、樹里に命令されたり恨みを買ったりすることもあったが、二度目のボーナスタイムから態度が急変し、榊蒼汰をスタンガンで気絶させるなど不審な行動が増える。実は下部と内通していた「裏切者」であり、学園デスゲーム開始前から彼の提案で、クラスメートへの復讐をもくろんでいた。このため後催眠も受けておらず、本性を明かしたあとはボーナスタイムを先導しながら、自分が受けてきたいじめ行為をそのまま返すように、今日子を自殺に導いた。復讐の途中で怜奈が救出した蒼汰に妨害されるが、禁止行動の内容など有力な情報を持っていたことから、イスに縛られた状態で彼の尋問を受ける。それでも樹里たちへの復讐心が消えることはなく、ボーナスタイムを通じて彼女に多くの屈辱を与え、ほかの生徒たちの気力を削いで絶望へと導いた。しかし、校長たちから命を狙われるようになったため、自分も下部の手駒でしかなかったことを自覚。これにより、一度は死を受け入れようとするが、怜奈の必死の説得を受け、彼女たちと協力しながら襲ってくる教師たちに立ち向かう。

羽柴 健太 (はしば けんた)

私立聖新高等学校2年C組に在籍する男子で、まじめな性格の優等生。学園デスゲームにおいては、意見が分かれがちなクラスメートを説得したり、進んで仲裁に入ったりすることが多い善人。もともと仲間同士の揉め事を避けていたが、二度目のボーナスタイムで園田樹里の思いを知ってからは、むやみに他者を貶める行為をしないと誓う。その後は精神崩壊した樹里を守りながら、樫村怜奈や榊蒼汰に協力することが多くなる。三度目のボーナスタイムでも、和田隼たちに命を狙われることになった蒼汰を殺すべきではないと判断し、箕輪紀子や小宮山澪織と共に彼を匿う。

村瀬 駿 (むらせ しゅん)

私立聖新高等学校2年C組に在籍する男子。学園デスゲームでは主に和田隼に味方している。糸目で頭にカチューシャをしている。最初のボーナスタイムに失敗したことで、二度目のボーナスタイムにすがりつき、積極的に参加しようとする。それまでは隼に乗せられているだけの行動が多かったものの、ボーナスタイムの条件をクリアするために佐々木萌香を自殺に導き、初めて自らの意思で仲間を死に追いやった事実を痛感してショックを受ける。

日野 匠 (ひの たくみ)

私立聖新高等学校2年C組に在籍する男子。藤田陽太郎とは幼稚園からの親友同士。愛称は「日野っち」で、坊主頭の小柄な体型をしている。学園デスゲームでは三度目のボーナスタイムにおいて榊蒼汰のことを誤解し、彼への信頼をなくす。音楽室で遭遇した蒼汰に殺害されたと思われていたが、彼に怯えて禁止行動「小便を漏らす」を実行して自殺暗示が発動したことが、本当の死因だった。

藤田 陽太郎 (ふじた ようたろう)

私立聖新高等学校2年C組に在籍する男子で、アフロヘアの髪型をしている。日野匠とは幼稚園からの親友同士。学園デスゲームでは三度目のボーナスタイムで榊蒼汰のことを誤解して彼への信頼をなくし、さらに匠が蒼汰に殺されたと勘違いして怒りが爆発。その怒りを察した和田隼にDH-01を飲まされ、蒼汰は匠だけでなくほかの複数の生徒も殺したと思い込まされる。蒼汰の首を絞めて殺そうとするが、彼の無実が明かされたことでためらい、葛藤に苦しむ中で小宮山澪織に刺殺された。

岩崎 (いわさき)

私立聖新高等学校の体育教師を務める男性。日頃から女子生徒にセクハラ行為を繰り返していたため、生徒たちからは嫌われていた。ある出来事から樫村怜奈が自分に好意を寄せていると勘違いし、体育倉庫で彼女を襲う。それを発見した榊蒼汰によって止められると同時に暴行を受け、怜奈を案じた彼の要求によって退職した。

校長 (こうちょう)

私立聖新高等学校の校長を務める男性。2年C組が学級崩壊した責任を下部に問い続け、彼の精神を追い詰めていた。これによって下部の復讐対象となり、教職員親睦会で家族もろとも後催眠をかけられ、家族を人質に取られた状態でC組の生徒を殺すように命じられる。同じく家族に後催眠をかけられた篠田や八代と共に学園デスゲームに乱入し、家族を守るためにC組の生徒たちを襲撃する。C組の生徒は全員不良扱いしてまったく信用しておらず、樫村怜奈たちの味方に回ろうとした八代のことも邪魔者と見做して惨殺した。

篠田 (しのだ)

私立聖新高等学校の教員の男性。下部をないがしろにしていたために、彼の復讐対象となった教師の一人。教職員親睦会で家族といっしょに後催眠をかけられ、妻と息子を人質に取られた状態でC組の生徒を殺すように命じられ、校長たちと共に学園デスゲームに乱入する。しかし途中で榊蒼汰がDH-01を発見し、その量産法を見つけるように樫村怜奈に懇願される。家に戻って真っ先に家族を救おうとするものの、DH-01の解催眠効果が30分しかなかったために目の前で家族を失う。これによりC組の生徒たちに激しい復讐心を抱き、学校に戻ったあとは再び生徒たちを襲うようになる。しかし和田隼の策略で返り討ちにされて死亡し、ポケットに入れていた残りのDH-01は彼の手に渡った。

八代 (やしろ)

私立聖新高等学校の養護教諭を務める女性。下部をないがしろにしていたために、彼の復讐対象となった教師の一人。園田樹里たちからのいじめにより、保健室登校が多かった朝比奈優子を受け入れて励ましていたため、彼女からは恩師として慕われている。教職員親睦会で10歳の一人娘と共に後催眠をかけられ、娘を人質に取られた状態でC組の生徒を殺すように命じられる。校長たちと共に学園デスゲームに乱入するものの、娘のためとはいえ生徒を殺すことにはためらい続けていた。負傷した優子に応急処置を施し、葛藤の末に樫村怜奈たちの味方に回る。その後、怜奈たちと共に犠牲者を出さずに助かる方法を模索したいと校長に訴えるものの、C組の生徒をまったく信用していない彼によって惨殺された。

その他キーワード

後催眠 (あとさいみん)

下部が視聴覚室に呼び出した2年C組の生徒たちにかけた、奇妙な催眠。催眠中に仕込んだ暗示を目覚めと同時に一度忘れさせ、特定の合図をきっかけに再び催眠状態に引き戻し、暗示を実行させるという特殊な催眠誘導法。これにより、生徒たちは「学校の外に出る」など禁止行動にあたる行為をすべて禁じられ、生き残りを懸けた過酷な学園デスゲームを強いられる。ただし、学園デスゲームが開始された当日に停学中で出席していなかった榊蒼汰と、下部と内通していた朝比奈優子は、C組の生徒でありながらこの催眠を受けていない。C組の生徒にかけられた後催眠を解除するためには、「自分以外のクラスメート全員の死を見届ける」という条件を満たす必要があるが、ボーナスタイムで出された特別条件をはじめ、ほかにもいくつかの解催眠手段が隠されている。

学園デスゲーム (がくえんですげーむ)

下部が私立聖新高等学校2年C組に在籍する生徒たちに復讐すべく始めたパニックデスゲーム。視聴覚室に集めた37人の生徒に後催眠をかけたうえで引き起こした。自殺の合図となる禁止行動がいくつも定められており、参加させられた生徒たちは平凡な日常と自由を奪われ、つねに死の危険がせまった極限状態を強いられている。後催眠から逃れて学園デスゲームから抜け出すための条件は、「自分以外のクラスメートが全員自殺するのを見届けること」であり、生き残れる生徒は一人だけとなっている。また、ゲームを加速させたりさらなる絶望に陥れたりすることを目的とした、いくつかのボーナスタイムが用意されている。

ボーナスタイム

下部が学園デスゲームに用意していた、特別ルールと制限時間を用いたチャンスタイム。学園デスゲーム中に何度か開催され、下部が指定した制限時間内にある条件を満たすことで、禁止行動の詳細など有力な情報を得ることができ、条件によっては後催眠から逃れて助かることもできる。しかしその条件は、他者を犠牲にしたり屈辱を与えたりする内容が多く、生徒同士のいがみ合いや潰し合いなどを次々と引き起こしている。最初のボーナスタイムでは「制限時間内に四人のクラスメートの自殺を見届けた者は、後催眠が解除される」という、特殊ルールが用いられた。二度目のボーナスタイムではさらにルールが複雑化し、複数の封筒に入った二枚のカードを使った「指名制特別ルール」が用いられた。

DH-01 (でぃーえいちぜろわん)

下部が協力していたカルト宗教団体が、PTSD治療を基に開発した解催眠の薬。学園デスゲームの途中で下部の自宅を捜索した榊蒼汰によって、5錠のサンプルが持ち出された。心に強い負荷を与えている記憶へのアクセスを阻害することで、後催眠を含むあらゆる催眠の原因となっている記憶を封じる効果がある。しかし試作段階の薬であるため、正確な効果は保証されていないうえに、いくつかのリスクもある。解催眠効果自体は30分しか発動しないが、ボーナスタイムなどでうまく使いこなせば、学園デスゲームを抜け出す鍵ともなる。

禁止行動 (しぐなる)

下部が2年C組の生徒たちにかけた後催眠において、自殺暗示の発動条件を定めた行動の数々。これらの行動を実行した者は、その瞬間に後催眠に仕込まれた自殺暗示が発動し、本人の意思とは関係なく自殺して命を落とすようになっている。自殺に導く合図として定められたのは全部で100種類もあり、その中には日常的な行動も多く含まれている。しかしその内容は、ほんの一部しか知らされておらず、生徒自身で考察や実験を重ねて、何が禁止行動に該当するのかをつき止める必要がある。具体的には「他人に暴力を振るう」「クラスメート以外に視聴覚室で起きたことを知らせる」などがあり、「学校の外に出る」も禁止行動に含まれているため、学校の敷地外に逃げ出したり自宅に帰ったりすることはできない。のちに井沢学の盗撮カメラに残っていた映像により、33個目までの禁止行動の内容が判明する。

クレジット

原作

宮月 新

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