天空侵犯

天空侵犯

ごくふつうの女子高校生の本城遊理が、神を生み出すために作られたとされる、吊り橋でつながった高層ビル群だけの世界「領域」の中で生き残りを懸けたバトルを繰り広げる。「天使」と呼ばれる殺人鬼や、己の欲望のために神になろうとする人間たちを相手に、遊理と仲間たちが自らの知らなかった一面と向き合い、さらなる強さを手に入れていく姿を描いたサバイバルデスゲーム。「マンガボックス」2014年第1号から2019年第2号にかけて掲載された作品。2021年2月、ネット配信アニメ化。

正式名称
天空侵犯
ふりがな
てんくうしんぱん
原作者
三浦 追儺
漫画
ジャンル
バトル
 
デスゲーム
レーベル
KCデラックス(講談社)
巻数
既刊21巻
関連商品
Amazon 楽天

世界観

元の世界で実在しないはずの高い塔を目にした人間たちが、突然、「領域」と呼ばれる高層ビルしかない街に召喚された。ビル同士をつなぐ吊り橋しか移動手段のないその世界で、彼らは「天使」と呼ばれる仮面をかぶった人間たちに次々と襲われ、絶望して自殺するか、他者を殺して生き残るかの選択をせまられる。領域に入った人間が元の世界に戻るためには、ヘリコプターに乗って脱出するか、「完全なる神」と呼ばれる存在が誕生するか、領域を管理している管理者が新たなルールを設定するしかない。

あらすじ

領域放浪編

学校の教室にいた本城遊理は、東京スカイツリーの横に存在しないはずの高い塔を目にした瞬間、目の前の光景が一変。仮面をかぶった「天使」と呼ばれる者が、人間を殺害する場面を目の当たりにする。理解しがたい状況にパニックに陥って逃げ出した遊理だが、目の前に広がる景色が元の世界とはまったく違うことから、ここが別の世界「領域」である事実を理解する。偶然にも兄の本城理火も領域に来ていることを知った遊理は「助けに行くまで必ず無事でいろ」という理火の言葉を支えに、遊理はなんとしてでも領域で生き抜くことを決意する。そんな中、尋常ならざる状況で正気を失った警察官の水下留希也たちと出会い、遊理は天使の目的が人間を殺すことではなく、自殺に追い込むことにある点、さらに仮面をはずせば天使もただの人間である点に気づく。この世界の多くの疑問点に頭を悩ませる遊理は、先にこの領域に転移されて謎を解き明かそうとしている中学生の野村西浦中崎に出会う。冷静沈着に、領域で入手した情報をまとめている野村の聡明さに興味を覚え、今後いっしょに行動することも視野に入れ始めた遊理だったが、見回りに出ていたはずの西浦が天使となって野村を殺害してしまう。

協力編

領域のとあるビルに降りたヘリコプターを追ってやって来た本城遊理は、そこで天使だけでなくふつうの人間もためらいなく殺害する二瀬真由子と出会う。真由子は問答無用で遊理に襲いかかり、ヘリコプターに乗る権利をゆずれば殺害しないと脅しをかける真由子に、遊理はどう対応すればいいのかを苦悩する。しかしその最中、二人はスナイパー仮面から襲撃を受け、その防戦に追われているあいだにヘリコプターは飛び立ってしまう。怒りに任せてヘリコプターに発砲した遊理だが、ヘリコプターに乗った守護天使が過剰なまでに反撃してきたことで、ヘリコプターこそが領域の弱点の一つだと推察する。この推理を真由子にも話した遊理は、仲間を集めてヘリコプターを奪取し、領域から脱出することを計画。遊理からその計画を聞いた本城理火もまたその計画に参加することを伝え、沖原真司を含めた数人の仲間と共にあらためて遊理との合流を目指して動き始める。一方その頃、遊理と真由子から撃退されたスナイパー仮面は、仮面にヒビが入ったために自我を取り戻しつつあった。

神に近い人物編

仮面にヒビが入ったままのスナイパー仮面は、天使から攻撃を受けない「神に近い人物」とされる女子高校生の新崎九遠と出会う。領域や仮面について詳しく知るために九遠と行動を共にすることにしたスナイパー仮面は、九遠を本城遊理たちと合流させるため、遊理たちのあとを追うことにする。その頃、二瀬真由子は欠陥のある仮面をかぶったことで、自我を残したまま超人的な身体能力を身につけた天使のコックさん仮面に狙われていた。首尾よくコックさん仮面を倒した遊理たちは、「領域を終わらせるための仲間」を募集しているという張り紙を張っていた月野社長と合流する。しかし、社長たちは協力を申し出てきた人間を捕縛し、無理やり仮面をかぶらせて神のコードを探そうとしている、悪意を持った人間だった。ライダー仮面の乱入と真由子の活躍で難を逃れた遊理だったが、次に出会った田辺幸雄から神に近い人物の一人である青原和馬を殺害するために協力してほしいと依頼される。

相川守暗躍編

青原和馬への牽制のために新崎九遠がレールガンを放ったことで、三人目の神に近い人物とされる相川守に従う天使たちが動き出していた。スナイパー仮面は、九遠と話すことでかつての記憶を取り戻しつつあり、自分が守の配下にいる天使の日下部弥生によって無理やり仮面をかぶらされたことを思い出す。一方、欠陥のある仮面をかぶったことで不完全な天使となった二瀬真由子には、不完全な天使を排除する強制プログラム「ハイバネーション」が発動し、命の危機にさらされていた。本城遊理は真由子を救うため、ディーラー仮面に教えられた場所に赴き、クチナシの仮面をかぶって五人目の神に近い人物となる。一方の本城理火は、仲間を率いて四人目の神に近い人物の吉田陸矢との合流を目指して動いていたが、その動向は日下部によって監視されていた。やがて弥生は水泳仮面をはじめとする複数の天使を使って理火たちを襲い、理火を拉致することに成功する。理火の仲間である山波康平から理火拉致の連絡を受けた遊理は、我を忘れた怒りに飲まれてしまう。

大天使編

本城遊理の周辺を調査させていた学徒仮面の報告を受けた相川守は、遊理やスナイパー仮面二瀬真由子らの戦力を分析し、遊理を暗殺するために大天使を起用することを決定する。天使であるにもかかわらず自我が強いうえに力も強く、守を敵視しているために制御すらできないため、天使としての能力のすべてや、守と敵対していた記憶を封印されていた大天使は、日下部弥生たちからも恐れられていた。遊理たちは守側の天使による襲撃に備え、スナイパー仮面を迎撃態勢に入らせていたが、スナイパー仮面は弥生こそが日下部卯月の捜していた母親であると知らされ、とっさに狙いをはずしてしまう。弥生の作った煙幕の中、水泳仮面と共に遊理たちが本拠地としているビルまでやって来た大天使は、遊理たちが守の配下だと思い込まされたうえで、遊理たちを全滅させることを決意する。水泳仮面と遊理が戦っているあいだ、青原和馬アインを撤退させた大天使と対峙した真由子は、処理能力を劇的に向上させるデフラグメンテーションを発動させることで互角に渡り合う。

使徒覚醒編

相川守の持つ「使徒を生成する能力」によって一時はすべての記憶を失い、幼児退行していた本城理火が、守の使徒として完全に覚醒する。あまりに強力な使徒の出現によって、守が「完全なる神」に最も近づいたことから、守への新たな試練として守護天使による攻撃許可が下された。理火ともども守を殲滅しようとする巫女仮面を止めるべく、本城遊理は再び記憶と能力を封印して従えている大天使を連れてあとを追う。しかし巫女仮面の力は強力で、守の右腕として働き続けていた木島をも簡単に殺害してしまう。だが、遊理によって封印を解かれた大天使は、巫女仮面を圧倒しながら戦うことに成功する。そんな中、守側の天使や、守護天使の視線が大天使に釘付けになっているあいだに、レールガンによって取得できる神のコードを得ようと画策していた新崎九遠が、ホワイトフェザーによって射殺されてしまう。九遠の死と同時に決定的なハイバネーションが発動したスナイパー仮面は絶望に打ちひしがれるが、そんなスナイパー仮面の脳内世界に、死んだはずの九遠の自我が姿を持って現れる。

魔と十王編

本城理火を守りきれず、新崎九遠の肉体も救えず、目の前で殺される人間を救うこともできない無力感に苛まれた本城遊理は、神に近い人物の義務である「完全なる神」になることをあきらめようとしていた。しかし、そこに至って遊理は領域に来た当初、この場所そのものを消滅させようと考えていたことを思い出す。さらにその結果、「管理者を殺害することが一番の近道」であると結論づけ、管理者を殺害することを決意した。それと同時に「境界を越える能力」を発現させた遊理は暴走状態となり、巫女仮面の肉体を借りた管理者、そしてディーラー仮面と対峙する。しかしあわや殺害される直前で、相川守の洗脳を解かれた理火が助けに入った。正気に戻った遊理は、「境界を越える能力」によって理火たちにまで危害を加えてしまうことを危惧し、しばらく姿をくらますと言い残して、その場を去ってしまう。その後理火は、領域に来て間もない頃に出会っていた十王から呼び出しを受ける。

決戦編

本城理火と三人の守護天使との戦いに、神のコードを取得したスナイパー仮面が現れる。「守護天使を操る能力」によって守護天使たちの脳にあった管理者の支配を解いたスナイパー仮面は、統括者によって教えられた「管理者自身が完全なる神を目指して暴走状態にあること」「管理者自身がルール違反を繰り返していること」を語り始める。しかしその最中、領域の中に存在するすべての生命体が殺害対象となる終末段階(ターミナル・フェイズ)に入り、無差別殺戮が始まってしまう。領域全体でこれまで以上の死闘が繰り広げられる中、管理者の保護下に置かれていた日下部弥生は「統括者に対し、管理者こそが完全なる神に就くことの正当性を説いて欲しい」と依頼を持ちかけられていた。さらに管理者は、本城遊理を完全なる神と正反対の立場である「天魔」だと断定し、遊理を排除することでさらに正当性を主張できると話す。そんな中、遊理もまた神のコードを取得し、管理者との直接対決に向けた準備を進めていた。

メディアミックス

ネット配信アニメ

本作『天空侵犯』のWEBアニメ版『天空侵犯』が、2021年2月から全12話構成でネットで配信された。ストーリーは本城遊理二瀬真由子が出会う「協力編」から、大天使との戦いが繰り広げられる「大天使編」までとなっている。キャストは、本城遊理を白石晴香、二瀬真由子を青木志貴、新崎九遠を関根明良、スナイパー仮面を梅原裕一郎が演じている。

登場人物・キャラクター

本城 遊理 (ほんじょう ゆり)

腰まである黒髪を下ろしたままにしている女子高校生。年齢は16歳。突然、学校から領域に放り込まれて軽いパニックに陥るものの、兄の本城理火もまた領域にいることを知り、落ち着きを取り戻す。極度のブラコンで、理火との再会を唯一の希望として領域内で生き残りを懸けている。領域に入った初日に七人以上もの死を目の当たりにしながらも正気を保ち、天使が人間を自殺に追いやろうとしていることを即座に察するなど、非常時においても冷静沈着で適応能力も非常に高い。ハイバネーションが発動した二瀬真由子を救うため、自らクチナシの仮面をかぶって神に近い人物となる。天使から狙われない能力の発現より前に身体能力の強化能力を発現しており、それを高い次元で使いこなしている。ただし、スナイパー仮面に対しては領域に来た当初に追い詰められた経験がトラウマとなり、新崎九遠を通じて仲間となってからもしばらくは怯えた様子を見せていた。理火が相川守の使徒として完全に敵となってしまった際には激しく動揺したが、完全に境界を終了させるためには管理者を殺害することが最重要であると結論づけ、同時に管理者にのみ与えられている「境界を越える能力」が発現している。別次元を移動する能力を得たため、「完全なる神」とは正反対の立場である「天魔」となった。武器は拳銃を扱う。11月6日生まれ。

二瀬 真由子 (にせ まゆこ)

ウエーブがかった金髪をポニーテールにしている女子高校生。年齢は16歳。生まれた時から親をはじめとした周囲の人たちから虐待を受けていたため、つねに冷酷無比に振る舞っている。領域では弱肉強食こそがルールとの持論を持ち、目的の障害になると考えた場合は、天使に限らず命乞いする人間まで殺害していた。しかし、敵対していたはずの本城遊理に命を救われてからはその優しさに惹かれ、行動を共にしている。領域に来てからは遊理に大切にされることで、元の世界では得られなかった幸福を感じており、遊理に恋愛にも似た感情を抱いているため、遊理が他人と仲よくしている場面を目撃すると嫉妬する態度を見せる。遊理からは「ニセちゃん」と呼ばれている。遊理を守るため、コックさん仮面がかぶっていた欠陥品の仮面を身につけて超人的な身体能力を得たが、「コマンド」が重複実行されて制御不能になっていることからハイバネーションが発動された。その後、デフラグメンテーションをも発動し、守護天使とも渡り合える能力を身につけたあと、さらに新崎九遠と同化することで神に近い人物としての能力と、「審判」の称号を得たスナイパー仮面から「強さをあげる能力」によって強化されている。武器は戦闘ナイフを扱う。6月19日生まれ。

本城 理火 (ほんじょう りか)

本城遊理の兄で、高校生の少年。年齢は18歳。ハネ癖のある黒髪をショートカットにしている。さまざまな知識を持ち、つねに冷静で判断能力も優れていることから遊理から非常に尊敬されている。領域においては優しさが命取りになることは理解しているため非情な判断を下すこともあるが、仲間と共に行動するなど、優しさを捨てきれない部分がある。少々性格に難があり、遊理が二瀬真由子と友達になった際には真由子を殺害しろと命じて遊理の覚悟を試すなど、遊理の怒りを買うこともある。相川守からもその状況判断の的確さから有能な人物として認められたため、守から拉致された。遊理が神に近い人物となったことを守から聞かされた際には、自分の存在が足枷になるのではないかと考え、即座に自殺を図っている。守の後継者に選ばれ、使徒にするべく専用のバーコードを見せられたが、一時的に記憶を失って幼児退行した。しかしその後、正式に使徒として覚醒し、即座に守護天使に攻撃許可命令が下されるほど強力な能力を持つ。守の死後は、守によって施されていた洗脳と命令がすべて解除されている。スナイパー仮面といっしょに領域に入り、行動を共にしていたが、スナイパー仮面が天使となってからはずっとその動向を気にかけていた。スナイパー仮面とは、理火が守の使徒となってから再会を果たしている。武器は大型ハンマーを扱う。7月3日生まれ。

新崎 九遠 (しんざき くおん)

腰まである青みがかった髪を三つ編みハーフアップにしている女子高校生。年齢は16歳。お嬢様口調でしゃべり、非常におっとりとした性格をしている。領域に入って早々に神に近い人物となったが、その自覚はまったくなく、天使のことも話ができないだけで危険な存在ではないと認識していた。ほかの人間に暴行を受けそうになって逃げる途中、スナイパー仮面と出会い、いっしょに行動するようになる。スナイパー仮面を信頼するあまり慕うようになり、仮面の下の素顔を見れないくらい恥ずかしがっている。殺し合いに関しては覚悟ができておらず、震えて動けなくなることもあったが、スナイパー仮面が新崎九遠を守るために悔しい思いを押し殺して戦いからの離脱を視野に入れていることを知り、九遠自身も戦いに身を投じる覚悟を決めた。領域中央にそびえ立つ塔からレールガンを発射することのできる「審判」の称号を持っている。ホワイトフェザーによって肉体は滅んでいるものの、自我だけをスナイパー仮面の内部に転送し、人間に取り憑いた幽霊のような状態で存在し続けている。12月1日生まれ。

スナイパー仮面 (すないぱーかめん)

スナイパーライフルを持った天使の男性で、大学院生。ダークスーツにボルサリーノ帽をかぶっている。ライフルの狙撃を得意としており、かなり離れたビルからの狙撃や跳弾させてターゲットを狙うなど、かなり高度な狙撃技術を持っている。本城遊理との対決では、仮面にヒビが入ったために自我を取り戻すきっかけを得たが、「コマンド」から完全に脱却していない状態にもかかわらず、ほかの天使からも命を狙われる存在となる。新崎九遠と出会ってからは、九遠を遊理たちに合流させるべく遊理たちの動向を探りつつ、領域についての情報を集めている。本城理火とは旧知の仲であることが暗示されており、領域でもいっしょに行動していたが、日下部弥生と水泳仮面によって天使にさせられた。ハイバネーションになった際には、九遠と二瀬真由子の二人で解除作業に当たったが、不完全な処理だったために再発動している。九遠の肉体が滅したあとは、九遠の意識だけがスナイパー仮面自身の中に転送されたことで、九遠の持っていた神に近い人物としての能力と、「審判」の称号を譲渡された。のちに高所恐怖症で、スマートフォンの使い方も知らないほどの機械音痴であることが判明している。本名は「誠勇火」で、理火からは「ユウちゃん」、九遠からは「仮面さん」と呼ばれている。武器はライフルやナイフを扱う。愛煙家。9月13日生まれ。

田辺 幸雄 (たなべ さちお)

田辺機械工業を経営していて銃の整備を行うことができる老齢の男性。年齢は59歳。もみあげに白髪をオールバックにし、口ひげを蓄えている。社長の張り紙を目にして仲間を求めて行動していた際に、本城遊理たちと出会った。青原和馬によって仲間が殺害されたため、和馬への復讐心を抱き、和馬に対しては冷静さを失ってしまうことがある。しかし、相川守の方が邪悪だと理解してからは、和馬と協力することを約束した。基本的に人の話を聞かないところがあり、遊理たちの立てた計画からはずれた行動を取ることも多いが、結果的にそれがいい方向に向かう場合もある。若者に対しては慈悲深く、味方に大きなダメージを与えた大天使や学徒仮面に対しても、更生の可能性を信じて生き残らせようとしている。武器は槍を扱う。11月6日生まれ。

青原 和馬 (あおはら かずま)

神に近い人物であり、天使のアインとツヴァイを従えている医者の男性。明るい茶髪のおかっぱ頭で、眼鏡を掛けている。大きなパラボラアンテナのあるビルを拠点としており、そこから動くことはない。自らを非常に優れた存在であると自負しており、領域に関しては優れた者が優遇される理想の世界だと考えていた。そのため、早く領域の役目を終わらせようとする人間たちを殺害していた。しかし、本城遊理との戦いで敗北を認めたあとは、これまで人を殺してきた償いとして、負傷者の手当てを請け負うことを約束した。遊理と二瀬真由子が、学徒仮面を捕えたあとに「敵の動きを1秒間停止させる能力」を発現した。

アイン

青原和馬が従えている天使の少女。黒髪をツインテールにして甘ロリ系の服を身につけている。和馬の手持ちの天使として表立って活動しており、敵対者の殺害や偵察までやってのける。しかし、小柄であまり体力はなく、長期の戦闘には向いていない。当初は単語のような簡単な言葉しか話せなかったが、相川守の陣営と戦闘を行うようになってからは、片言ながらも話すことができるようになる。和馬の死後は、和馬の最後の命令に従って本城遊理に従っており、和馬から神に近い人物の能力の一つである「敵の動きを1秒間停止させる能力」を譲渡されている。武器は日本刀を扱う。

ツヴァイ

青原和馬が従えている天使の女性。暗い茶髪を外ハネのショートカットヘアにしている。和馬の隠し玉であり、いざとなったときに敵対者を強襲する役目を担っているため、表立った活動はしておらず、田辺幸雄にはその存在を知られていなかった。武器はアーチェリーを扱う。

日下部 卯月 (くさかべ うづき)

青原和馬と共に行動している少年。ウエーブがかった短髪で、頭に包帯を巻いている。年齢は10歳。武器が擬人化したゲームにハマっているため、銃や槍などのさまざまな武器に精通している。弾丸詰まりしやすい銃の撃ち方も心得ており、即戦力ではないが本城遊理の助けとなっている。領域で離れ離れとなった母親を捜しているが、相川守が従えている天使の中に母親の日下部弥生を発見し、強く動揺した。しかし大天使の襲撃の際は、遊理や和馬を置いて逃げることをよしとせず、弥生に二度と会えなくなることも覚悟したうえで戦場へと戻った。また、ホワイトフェザーによって新崎九遠の肉体が滅せられた際にも、パニックに陥る速水晋太郎を尻目に冷静にホワイトフェザーに交渉を持ちかけるなど、肝の据わったところがある。

吉田 陸矢 (よしだ りくや)

肩までのロングヘアで、前髪だけアップにしている男子高校生。年齢は16歳。領域にやって来て、すぐに神に近い人物となった。元の世界ではいじめを受けていたことから、天使をあやつれる能力は正しいことに使いたいと考えており、本城理火の頭のよさを信頼して協力を申し出た。天使の強さをある程度測れる能力を持ち、より強い天使を選んで配下にしている。理火が相川守に拉致されてからは、本城遊理と連携を取っていたが、遥華の父親の裏切りを経て人間不信となり、完全に別行動を取っていた。しかしそこで十王と出くわし、従えている天使もろとも人質となってしまう。十王と理火の戦いが中断されてからも吉田陸矢だけは解放されず、十王と沖原真司の捕虜となっていた。4月8日生まれ。

僧侶仮面 (そうりょかめん)

吉田陸矢が従えている天使の男性。僧侶服を身につけ、編み笠をかぶっている。空手の使い手で、素手で天使と渡り合える。斉藤恵を天使から救出したあと、本城理火をはじめとする仲間たちを陸矢のいるビルに連れていくまで護衛を務めた。中華ちゃんからは「和尚サン」と呼ばれている。

貴族仮面 (きぞくかめん)

吉田陸矢が従えている天使の男性。腰まである金髪を三つ編みにしており、中世の欧州貴族のような服を身につけている。インドのジャマダハルという武器を扱う。身体能力も高く、吊り橋でもジャンプすることができる。斉藤恵の特訓相手を務めている。

中華ちゃん (ちゅうかちゃん)

吉田陸矢が従えている天使の女性。長い黒髪を頭の上で二つのお団子ヘアにしており、ミニ丈のチャイナドレスを身につけている。陸矢と完全に波長が合致したため、ふつうに話すことができる。相川守に拉致された本城理火の探索を命じられ、守の本拠地となっているビルをつき止めたあとは偵察を続けていたが、遥華の父親が保身を目的に守側に情報を漏らしたため、人質となる。

柔道仮面 (じゅうどうかめん)

吉田陸矢が従えている天使の男性。金髪のモヒカンヘアで、スタジアムジャンパーを身につけている。陸矢と完全に波長が合致したため、ふつうに話すことができる。「ダルい」が口癖で、あまり積極的に行動することはない。

茶髪のショートヘアの男子大学生。年齢は19歳。額から左目にかけて包帯を巻いている。大学を卒業後はゲーム製作会社への就職を希望していたことから、領域でのルールも比較的早く理解した。天使に襲われ、絶望して... 関連ページ:山波 康平

斉藤 恵 (さいとう めぐみ)

ウェーブがかった肩までのセミロングヘアで、巨乳の女子大学生。年齢は21歳。二人の天使に襲われそうになった際に、吉田陸矢の指示を受けた僧侶仮面と本城理火に助けられた。戦闘能力がないために仲間に助けられてばかりで、みすみす仲間を見殺しにされてから、吉田陸矢の配下である貴族仮面を相手に木刀での特訓を重ねている。

沖原 真司 (おきはら しんじ)

工事用ヘルメットをかぶっている男子中学生。年齢は14歳。本城理火と共に行動しており、理火を全面的に信頼している。銃の腕には自信を持っているが、作戦はすべて理火任せで、指示がないと自分で行動することはない。女性に対して年齢相応の興味を持ち、女性の胸がゆれるシーンでは目を奪われることがある。十王と出会ってからは自らの意思で十王に従っており、理火を十王のいる場所まで案内する役割を務めたあと、十王の持っていたクチナシの仮面をかぶって神に近い人物となった。

東 遥華 (あずま はるか)

金髪を外ハネにしたショートヘアにしている女子小学生。本城理火を自分の父親よりも信頼しており、理火の近くにいる時は無邪気にはしゃぐ小学生らしさを見せた。しかし、理火が水泳仮面によって相川守のもとに拉致されてからは、非常に大人びた言動を取るようになる。

遥華の父親 (はるかのちちおや)

東遥華の父親。黒髪をベリーショートヘアにしている。遥華と自分だけが助かればいいと考えており、そのためには手段を選ばない。本城理火の庇護下にあっても理火をあまり信頼しておらず、若者全体を短絡的で浅はかな存在だと認識している。長いものに巻かれる主義で、理火が相川守に拉致されたあとは、守に内通して吉田陸矢たちの情報を流すことで遥華と自らの安全を確保し、さらに守の死後は十王に従うようになる。元救助隊の隊員で、ヘリコプターの操縦技術を保持していることから、領域上空を飛んでいるヘリコプターを奪取するためのキーパーソンとなる。

相川 守 (あいかわ まもる)

ウェーブがかった茶髪をツーブロックヘアにしている高校教師の男性。年齢は26歳。神に近い人物であり、一度に30人の天使を従えることができる。優生劣廃思想の持ち主で、「完全なる神」になった暁には元の世界にも仮面を導入し、人間を有能と無能に二分しようとしている。劣等な人間には死を与え、生きる苦しみから解放してやることが、優れた人間にとっても救いとなる平和への道だと考えており、この思想には仮面の「コマンド」に関係なく、心酔する天使も存在している。しかし、自分が一般的でふつうの人間であることも自覚しており、そのためつねに冷静で、完全なる神になるために必要な行動は何かを考え続けている。領域において自分が死亡することは許容しているが、優生劣廃世界を実現する野望が潰えることはよしとしておらず、自分が死ぬ可能性を考慮し、思想を継げる後継者を探している。そんな状況でも、冷静で的確な判断を下すことができる本城理火に興味を持ち、水泳仮面に理火を拉致させた。その結果、理火こそが後継者にふさわしいと判断し、使徒にしている。またこのことで、完全なる神に最も近い「天部」の称号を得ている。日下部弥生の胸の谷間に顔を埋めることで、安心感を得る妙な癖がある。配下の天使たちからは「アノカタ」や「アイ様」、本城遊理たちからは「混沌を望む者」と呼ばれている。

日下部 弥生 (くさかべ やよい)

相川守が従えている天使の女性。全体的にシャギーの入ったピンク色のロングヘアにしている。スタイル抜群で、警察官の制服を着用している。腰に結わえた長い鞭を武器としており、すばやく正確に相手の体を破壊することができる。守と完全に波長が合致したため、ふつうに話すことができる。任意の相手を観察し、話していることがウソか真実かなんとなく判別することができる能力を持つ。かつてスナイパー仮面に強制的に仮面を付けさせた人物でもある。守から信頼されており、守が生命の危機を感じた際には木島と共に、優生劣廃世界を実現できる後継者を探すように命じられた。日下部卯月の母親ではあるが、仮面の「コマンド」によってその記憶が失われている。しかし、卯月の声を聞いてからは体が動かなくなるなどの反応を見せ、そのまま守の前から姿を消してしまう。元の世界では弁護士だったことから管理者に目をつけられ、管理者が完全なる神になれるように統括者に対する弁護をしてもらいたいと依頼された。

水泳仮面 (すいえいかめん)

相川守が従えている天使の男性。非常に大柄な体型で、競泳用水着とゴーグルを身につけている。総合格闘技と圧倒的なリーチの長さを駆使して、素手相手の戦いであれば無敵の強さを誇る。かねて「なぜ暴力を振るってはいけないのか」という疑問を抱いており、思いきり相手に拳をぶち込みたいという衝動に駆られていた。そのため、指示されていない人間を勝手に殺害する命令違反をたびたび起こし、日下部弥生によく説教を食らっている。

木島 (きじま)

相川守が従えている天使の老齢な男性。白髪をオールバックにして、執事のような服を身につけている。守と完全に波長が合致したため、ふつうに話すことができる。守が考えをまとめる際の話し相手を務め、守が冷静さを失いそうになった際には諫める役割も担っている。守に従う天使となってからは守の要望を満たせるように日々努力を続け、仮面によって与えられた能力以上の実力を持っている。守から信頼されており、守が生命の危機を感じた際には日下部弥生と共に、優生劣廃世界を実現できる後継者を探すように命じられた。

ホワイトフェザー

相川守が従えている天使の女性。長い金髪に白い羽の付いた中折れ帽をかぶり、露出の高い服装を身につけている。ライフルを武器としており、スナイパー仮面には及ばないものの非常に高い狙撃技術を持っている。初めてスナイパー仮面と対決した際にギリギリまで追い詰めたが、予想外にもスナイパー仮面が死に瀕した時に見せた覚悟の美しさに見惚れ、撃ち損じてしまう。それ以来スナイパー仮面に心惹かれている。守の死後は本城理火に忠誠を誓っている。

学徒仮面 (がくとかめん)

相川守が従えている天使の男性。学ランに学帽、とんびコートを身につけた大正時代の学生のような姿をしている。コートの内部に大量のナイフを携帯しており、投げて攻撃する。元の世界を薄汚い世界であると罵っており、守の優生劣廃思想に深く共感して心酔しているため、忠犬のような言動を見せる。しかし、守には同族嫌悪の感情を抱かれ、嫌われている。一眼レフカメラを常備し、守からは本城遊理たちの定点調査を命じられていた。だが、本城理火から「スナイパー仮面の戦力は天使30人でも勝てない」という情報を得て、より詳細な戦力の調査を行った。一度は遊理たちに捕えられたが、遊理が理火の妹であるという情報を知ると即座に脱出し、守に報告している。

相川守が従えている天使の男性。頭頂部が尖った全身タイツに、登山用ブーツを身につけた屈強な肉体を持つ。しかし、元の世界では白髪をおかっぱ頭にした病弱な少年だった。守が出会った時には暴走状態にあり、天使や... 関連ページ:大天使

速水 晋太郎 (はやみ しんたろう)

神に近い人物で「預言者」の称号を持っている男性。黒髪のショートヘアで羽織袴を着ており、扇子を持っている。大天使との戦いを終えた本城遊理たちのもとに、非戦闘員天使の仮面をかぶって現れた。クチナシの仮面をかぶったものの、戦闘に適した能力が発現しなかったため「完全なる神」になることはあきらめ、最も完全なる神に近いとされる新崎九遠に興味を持ち、協力を申し出た。遊理のことは運と戦闘能力だけで生き残っており、肝心なところで甘さが捨てきれない人物だと考えている。義妹に対して恋愛に似た感情を持ち、義妹と雰囲気の似ている九遠にも恋愛感情に近いものを抱いている。

十王 (じゅうおう)

神に近い人物で、「十王」の称号を持っている男性。黒髪のロングヘアをハーフアップにしている。本名は不明。「すべてをあやつる能力」を持っており、相手が人間であっても、すでに別の神に近い人物に従っている天使であっても、無条件で洗脳することができる。快楽殺人者で、領域にやって来てからは天使だけでなく、人間の殺害も繰り返している。十王自身は、人間を殺せば殺すほど能力が上がっていくと語っている。かつて本城理火に銃口をつきつけられたことを根に持っており、理火との対決を望んでいる。元の世界では女性っぽい名前であることをからかわれていたため、領域では本名の「鈴木えみり」を名乗っていない。

ディーラー仮面 (でぃーらーかめん)

守護天使の女性。年齢は24歳。男性用ディーラーの制服を着て長い髪をうなじでまとめており、前髪の一部に白いメッシュを入れている。本城遊理が初めて会話した守護天使であり、二瀬真由子が欠陥のある仮面をかぶって不完全な天使となった結果、ハイバネーションを起こしているのを確認し、遊理にクチナシの仮面の在りかを教えた。遊理に対しては何かと気遣いも見せ、遊理が巫女仮面に敵意を見せかけた際には、それとなく引き止めて巫女仮面から攻撃されないように配慮した。武器は銃を扱う。

守護天使の女性。年齢は21歳。巫女装束を身につけ、もみあげだけ長く伸ばしたおかっぱ頭で、もみあげは毛先を組紐で括っている。米軍使用の対物ライフルを武器としており、反動にもぶれることなく片手で撃つことが... 関連ページ:巫女仮面

管理者 (かんりしゃ)

領域を管理している者。一番最初に領域に足を踏み入れた人間であり、その頃はまだ領域の形も非常に不安定で形を成していなかった。「境界を越える能力」を持ち、領域内部の秩序を守っている存在でもあるが、「管理、運営担当は神を目指してはいけない」というルールに疑問を持っており、自ら「完全なる神」になる道を模索している。また、そのために完全なる神の誕生を望んでおらず、自分が神になる資格を得るまで領域を終わらせないように画策している。管理者本人が姿を見せることはほとんどなく、姿を見せるのは三つある神のコードすべてが解放されたときに限られている。他人の体に自由に自我を移動することができるため、本城遊理に対抗するべくポテンシャルの高い肉体へ乗り換えることを考えている。管理者が死亡した場合、領域と元の世界の境界が維持できなくなり、元の世界と混ざり合い、元の世界全体が領域のようになってしまう。

統括者 (とうかつしゃ)

領域の全システムを統括しているプログラム人格。クチナシの仮面そのものの見た目で、統括者にアクセスすることができた神に近い人物の脳内世界に現れる。領域内の情報とエネルギーを精査して制御している。「クチナシくん」とは、統括者自身が呼称として推奨した呼び名の一つ。

水下 留希也 (みずした るきや)

たれ目が特徴で、長めの黒髪が外ハネになっている警察官の男性。年齢は27歳。本城遊理が領域において初めて接触した人物だが、領域の異常さからくるストレスによって正気を失い、行動を共にしていた先輩警察官をビルから突き落としたあと、遊理に服を脱ぐように強要した。

野村 (のむら)

黒ぶちの眼鏡を掛けている男子中学生。前髪の長いアシンメトリーヘアにしている。西浦、中崎といっしょに行動しているが、西浦のことを見下しており、見回りなどの危険な役目を担当させている。ディストピアものの映画鑑賞が趣味であることから、領域の異常事態にもすぐに適応している。ビルの中を探索すれば、水や食料が入手できることを本城遊理に教えた。また、領域内で起こったことはすべてノートに書き残しており、遊理の貴重な情報源となっている。

西浦 (にしうら)

下まぶたが目立つ大きな目をしている男子中学生。野村、中崎といっしょに行動しているが、野村からは見下されており、見回りなどの危険な役目を担わされることを不満に思っていた。見回り中に仮面と武器が梱包された「天使セット」を発見し、仮面の裏側に表示されたバーコードを見つめるうちに仮面をかぶってしまい、天使となる。

中崎 (なかざき)

背が高く角刈りヘアにしている男子中学生。野村、西浦といっしょに行動しており、特に西浦とは小学校からの幼なじみで日頃から仲がよかった。西浦が天使になった際にも、西浦を救うために最大限の努力をしていた。

メイド仮面 (めいどかめん)

メイド服を着た天使の女性。ミディアムボブヘアにしている。吊り橋を使わず、助走だけでとなりのビルにジャンプして飛び移ることができるほど身体能力が高い。仮面の「コマンド」に抵抗できないながらも、深層心理では早く誰かに殺してもらいたいと願っており、強そうな人間ばかりを狙っていた。本城遊理との対決で仮面が半壊して自我が戻った際には、遊理に「仮面の裏を絶対に見てはいけない」と忠告した。武器は鎌を扱う。

コックさん仮面 (こっくさんかめん)

コックコートを着た天使の男性。スキンヘッドで、口周りに薄く髭を蓄えている。仮面が不良品で、多少記憶が曖昧ではあるものの、仮面の「コマンド」にある程度逆らうことができる。もともと危険人物で、人間の首を刈り取って集めたいという欲求を抱えていた。領域においてはその欲望を解放し、複数の人間の首を集めて持ち歩いていたが、二瀬真由子こそが至上の獲物であると確信し、ターゲットとして狙っている。

月野 (つきの)

黒髪をマッシュルームヘアにしている中年の男性。目立つ頰骨が特徴。領域のあちこちに仲間募集の張り紙をしており、張り紙を見て集まってきた人間を仮面の実験用として捕獲し、社長に会わせていた。

社長 (しゃちょう)

金髪でまゆ毛が濃く、口周りに髭を蓄えている中年の男性。領域が神を作り出すために存在している機関であることや、仮面に種類があり、神に近い人物になれる仮面もあることをつき止めている。月野に命じて領域のあちこちに仲間募集の張り紙を出し、協力を申し出てきた人間に入手した仮面をかぶせることで神のコードを見つけようと、実験を繰り返していた。ただし、メイド仮面などの強い天使には対面したことがなく、天使はすべて無能で無価値な者だと思い込んでいる。

ライダー仮面 (らいだーかめん)

ライダースーツを着た天使の男性。フルフェイスヘルメットの下に仮面をかぶっている。すばやい動きで人間からの攻撃をかわし、相手の頭部を素手でにぎり潰すほどの怪力の持ち主。領域には彼女と共にやって来たが、不注意から仮面をかぶってしまった自分が彼女を殺害してしまい、非常に後悔している。

場所

領域 (りょういき)

高層ビルばかりで構成された、現実世界と非常によく似た場所。各高層ビルは上層階のみ移動可能になっており、ビルの中から地上に降りることはできない。ほかのビルと行き来するには、ビル同士をつないでいる不安定な吊り橋を渡るしかない。「神を誕生(うみ)だすための機関」だが、「完全なる神」になるためには、まずはクチナシの仮面をかぶって神に近い人物となり、その後、領域のどこかにある神のコードを探さなければならない。領域の中央には東京スカイツリーよりも高い謎の塔がそびえており、「審判」の称号を得た神に近い人物は、その塔から任意の場所に向けてレールガンを発射する指示を下すことができる。また、思いの強さが形となって反映される世界であり、大天使が元の世界とまったく違う姿をしているのも、この特性が適用されているためである。いくつかの段階があり、終末段階(ターミナル・フェイズ)に入ると、領域内に存在するすべての生命体が殺害対象となり、完全なる神を生み出すための生贄として守護天使を含めた全員が、管理者から命を狙われることになる。複数ある次元の中の一つであり、管理者だけが「境界を越える能力」によって元の世界を含めた別次元と行き来することができる。また、なんらかのエラーによって神に近い人物が「境界を越える能力」を発現させた場合は、領域を壊す可能性を持つ存在として「天魔」と称され、排除対象とされる。

その他キーワード

神に近い人物 (かみにちかいじんぶつ)

仮面をかぶった天使たちからも狙われることのない、特別な存在。神の座を争う戦いに参加している。運のいい人間か、領域を慎重に探索した人間だけが取得できるクチナシの仮面をかぶることでなることができる。波長の合う仮面をかぶっている天使をあやつれる能力など、さまざまな能力を潜在的に得ることができる。領域の中央に建っている高い塔から、任意の場所に向けてレールガンを発射する指示を送る能力が目覚めれば「審判」、ある程度の範囲内で起こる情報を傍受する能力が目覚めれば「預言者」など、目覚めた能力によっては称号が与えられる。ただし、天使が仮面を半壊させられた場合や、脱がされた際に生じる自殺命令をはじめ、領域内での重要な「コマンド」を抑制することはできない。

天使 (てんし)

領域に潜んでいる、笑顔の仮面をかぶった人物の総称。さまざまな武器や凶器で、または素手で領域に来た人間に恐怖を与え、人間を神に近づける義務を負っている。基本的には話すことができず、うめき声しか上げられない。人間を自殺に追い込むことが目的であり、飛び降り自殺しづらい屋内にいる人間は殺害しようとするが、手段を問わず自殺しようとする人間に対しては攻撃しなくなる。天使の中にも強い天使と弱い天使が存在し、もともとの身体能力や、特技などが作用しているのではないかと考えられている。また、感情や記憶は仮面によって抑制されているが、スポーツマンシップや異性のトイレに入ってはいけないなど、モラル的な思考は残っている様子が見られる。

守護天使 (しゅごてんし)

領域に潜んでいる、怒り顔の仮面をかぶった人物の総称。管理区域が設定されており、自分の統轄下にあるエリアに配置されたアイテムの場所をすべて把握している。また、神に近い人物の行動や所在を把握しているため、「完全なる神」の誕生を阻止する役目を担っている。大きく神に近づいた者が現れない限り行動することはないが、敵意を向けられた場合は容赦なく攻撃する。

非戦闘員天使 (ひせんとういんてんし)

領域に潜んでいる、無表情の仮面をかぶった人物の総称。領域内に武器や食糧など消耗品を運ぶ役割を担っており、人間に対して攻撃の意思を見せることはない。領域の管理運営のために作製された疑似生命体であり、設備の一つにすぎない。そのため、人間の形態を成しているものの意識を持っておらず、仮面の下は完全な無表情である。会話も可能だが、プログラムに基づいた応対をしているだけにすぎない。管理者と統括者からは「御使い」と呼ばれている。

神のコード (かみのこーど)

領域のどこかに存在しているバーコード。神に近い人物が「完全なる神」になるために必要なバーコードで、三つ存在している。神のコードを得るためには領域中央にそびえている塔から発射できるレールガン、そして領域内を飛行しているヘリコプターの二つが鍵になることは判明しているが、三つめは不明。神のコードを取得すると、「守護天使を操る能力」などが発現する。

預言者 (よげんしゃ)

神に近い人物の一種。千里眼やテレグノシスと似た能力を持っており、ある程度の範囲内で起きたすべての出来事を脳で直接感知できる。起きた事象を直接見聞きする必要がないため、預言者になることは「完全なる神」になる際に非常に有利となる。ただし預言者が使える能力を使用すると非常に疲弊するため、連続での使用はできない。

ハイバネーション

仮面に欠陥があった場合に発動されるモード。複数の仮面の「コマンド」が重複して制御不能となった際や、コマンドが機能しない場合に発動する。欠陥のある天使たちを排除するための強制的なプログラムで、素体となった人物の生命活動を徐々に休止させて殺害することを目的としている。ハイバネーションが発動すると通常、素体となった人物は2時間ほどで死亡する。ただし、神に近い人物の能力があればハイバネーションを解除することができる。

デフラグメンテーション

仮面に内蔵されているツールの一つ。素体となった人間の処理能力を向上させるために、情報の伝達や管理を司っている天使としての人格を削除し、あいた容量を処理能力に充てるもの。簡単に発動させることはできず、仮面と素体の相性が合って、強敵の存在を認知し、素体の精神力が満たされている場合に発動することができる。二瀬真由子が大天使に対峙した際に発動している。

使徒 (しと)

神に近い人物のために力を行使する者の総称。神に近い人物の中でも「使徒を生成する能力」を持った者だけが生み出すことができる。「使徒を生成する能力」を持った神に近い人物が、特定のバーコードを人間に見せることで生成される。しかし、非常に強力な能力が与えられるため、使徒としてふさわしい優秀な人物以外にバーコードを見せても記憶が消えて、何もできない木偶の坊になってしまう。

仮面 (かめん)

天使や守護天使が、かぶっている仮面。目と口の部分だけが大きく開口した平面的な仮面で、上下2か所にベルトが付いている。裏側にびっしりとバーコードが記されており、それを見ると自らの意思に関係なく「仮面をかぶること」「天使以外を自殺に追い込むこと」「自殺させられない場所にいる者、自殺の意思がない者は殺害すること」などの「コマンド」を実行してしまう。一度仮面をかぶると脳をハッキングされたような状態となり、逆らおうとしてもコマンドどおりに行動して自我を抑制される。かぶると人間離れした身体能力や戦闘技術を獲得することができるが、仮面が半壊、もしくは第三者によって仮面をはずされた場合は、「速やかに自らの命を絶つこと」というコマンドが脳に送られる。ただし、食事などの正当な理由があり、仮面側から許可が出された場合は、ごく短時間なら仮面をはずしても自殺することはない。コマンドは大まかに分けて四つあり、「絶望」「殺害」「自殺」「保身」となっているが、複数のコマンドが重複して制御不能に陥るとハイバネーションに移行する。

クチナシの仮面 (くちなしのかめん)

神に近い人物になることができる仮面。口の部分が開口していないことから、「クチナシの仮面」と呼ばれている。運のいい人間か、領域を慎重に探索した人間だけが取得できるが、特例が認められた場合は守護天使から直接クチナシの仮面の配置場所を聞くこともできる。裏側のバーコードを見ると天使たちの仮面と同様、自らの意思に関係なく仮面をかぶらされるが、その後、情報のインストールが完了するとクチナシの仮面を破壊するように「コマンド」が送られる。また、インストール時に天使などの敵対者が確認される場合、緊急パターンとして身体能力をアップする自己強化能力のみが先にインストールされ、敵対者の速やかな排除を求められる。ほかの仮面とは異なり、素体となった人物の自由意志が尊重される。さまざまな能力がインストールされるが、各プログラムは記憶の奥底に眠っており、素体となった人物が自らの意思で思い出して使用しなければならない。素体となった人物と能力の相性によっては、使いやすい能力とまったく使えない能力があり、力の強度も個人によって異なる。

ヘリコプター

領域の上空を飛行するヘリコプター。ヘリポートのあるビルを発着場所として定期的に運行されており、このヘリコプターに乗ると領域から退出、もしくは地上に降りることができる。夜間は運行しておらず、また乗れるのは先着一名に限られているため、権利を巡って人間同士の殺し合いに発展することもある。神のコードの一つを取得するために必要だとされている。

クレジット

原作

三浦 追儺

続編

天空侵犯arrive (てんくうしんぱんあらいぶ)

大羽隆廣の『天空侵犯』の続編。宇宙飛行士にあこがれている男子中学生の松田千夜が突如召喚された、朽ち果てた高層ビルしかない世界「領域」で、クラウドと呼ばれるエネルギー体や仲間の助けを借りながら生き残りを... 関連ページ:天空侵犯arrive

書誌情報

天空侵犯 21巻 講談社〈KCデラックス〉

第1巻

(2014-05-09発行、 978-4063769791)

第2巻

(2014-09-09発行、 978-4063770568)

第3巻

(2015-01-09発行、 978-4063771114)

第4巻

(2015-05-08発行、 978-4063771909)

第5巻

(2015-08-07発行、 978-4063772920)

第6巻

(2015-11-09発行、 978-4063773491)

第7巻

(2016-02-09発行、 978-4063774221)

第8巻

(2016-05-09発行、 978-4063774610)

第9巻

(2016-08-09発行、 978-4063774993)

第10巻

(2016-11-09発行、 978-4063930733)

第11巻

(2017-02-09発行、 978-4063931372)

第12巻

(2017-05-09発行、 978-4063931877)

第13巻

(2017-07-07発行、 978-4065100288)

第14巻

(2017-10-06発行、 978-4065102626)

第15巻

(2018-01-09発行、 978-4065107263)

第16巻

(2018-04-09発行、 978-4065112403)

第17巻

(2018-07-09発行、 978-4065117873)

第18巻

(2018-10-09発行、 978-4065126011)

第19巻

(2019-01-09発行、 978-4065138700)

第20巻

(2019-04-09発行、 978-4065148716)

第21巻

(2019-07-09発行、 978-4065166635)

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