あらすじ
第1巻
イギリスの小さな劇団の看板女優として活動しているライラ・アレンは、どんな役柄でも完璧にこなすことで有名だった。そんなライラの噂を聞きつけたアイザック・ワグナーは、ライラに対して自分の婚約者を演じてほしいと頼み込む。そしてアイザックは、活動資金不足のために休止が決まっていたライラの劇団に援助を開始。そのおかげで劇団の存続が決まったこともあり、ライラはお礼としてアイザックからの依頼を引き受ける。その後、ライラはワグナー家を取り仕切るデイビッド・ワグナー、ギデオン・ワグナーの理想の花嫁をみごとに演じ切り、あとはペネロープ・ワグナーに認められれば、アイザックからの依頼は完了というところまでこぎつける。着々と依頼が遂行される一方で、自分が偽物の婚約者役をお願いした身でありながらも、アイザックは次第にライラを異性として意識し始めていた。そんな中、ライラの劇団では次の劇で重要な役柄を担う俳優が、突如風疹を患ってしまう。このまま公演は中止されるかと思われたが、アイザックは今度は自分がライラの力になりたいと代役を名乗り出る。
登場人物・キャラクター
ライラ・アレン
フランクリン・アンダーソンが運営する劇団に所属している女優。どんな役柄でも完璧にこなすことから、アイザック・ワグナーの婚約者役を依頼される。ステージ上では華やかに振る舞う美女ながら、私生活は地味で身なりもまったく気にしていない。両親は行方不明で、幼い頃に行き場所がなかったところを、今の劇団のスタッフに拾われて働くことになった経緯を持つ。劇団のスタッフとして働いていた時に、泣いている自分を励ましてくれた男の子に恋をしており、再会するために今の劇団で活動を続けている。
アイザック・ワグナー
弁護士および税理士を務める男性。旧伯爵家に生まれており、家督を継ぐことを目標としている。そのためにはワグナー家を取り仕切るデイビッド・ワグナー、ギデオン・ワグナー、ペネロープ・ワグナーの三人を納得させる花嫁を見つけることが条件となっており、高い演技力を持つライラ・アレンに偽の婚約者役を依頼する。頭脳明晰でルックスも完璧でありながら、節税できそうな事柄を見つけると過剰に反応してしまうといった残念な一面を持った、いわゆる三枚目。
クインシー
ライラ・アレンと同じ小さな劇団に所属している美男子。中性的な雰囲気を漂わせている。裏方として活動しており、メイクと衣装を担当している。特に衣装はまるで魔法がかかったような早着替えの仕掛けがある服を作るのが得意で、舞台を盛り上げることに一役買っている。美少年に関する事柄が話題に出ると口うるさくなる。
フランクリン・アンダーソン
ライラ・アレンと同じ小さな劇団を運営している男性。長らく使用していた練習場兼劇場を追い出されることになり、財政難から一時は劇団を休止すると決めていた。しかし、アイザック・ワグナーが練習場兼劇場を買い取ってくれたことにより、そのまま劇団を続けている。
ローザ
ライラ・アレンと同じ小さな劇団に所属している女性。裏方として活動している。ライラといっしょに住んでいることもあり、親しい間柄。
レオナルド
アイザック・ワグナーが住む屋敷で、税理士を務める男性。趣味で執事としても働いており、キティと行動を共にすることが多い。料理が趣味でその腕はプロ級。クインシーにあこがれている。
キティ
アイザック・ワグナーが住む屋敷で、公認会計士を務める女性。趣味でメイドとしても働いており、レオナルドと行動を共にすることが多い。
デイビッド・ワグナー
アイザック・ワグナーの父親で、美術商を生業としている。ギデオン・ワグナー、ペネロープ・ワグナーと共にワグナー家を取り仕切っている。忙しく海外を飛び回っており、アイザックとはほとんどいっしょに暮らしたことがない。古風な考え方の持ち主で、非常に頑固な性格をしている。アイザックの花嫁に相応しいのは「淑女と呼ぶにふさわしい上品で優雅な女性」だと言ってゆずらない。亡くなった妻のメアリー・ワグナーを今でも愛しており、アイザックに勧めている理想の花嫁像もメアリーをイメージしたもの。
メアリー・ワグナー
アイザック・ワグナーの母親で故人。若くして亡くなっており、アイザックの中でもほとんど記憶がない。一般庶民の家庭で生まれ育ったが、上品な優しい性格の持ち主で、身分を超えて自分を愛してくれる夫のデイビッド・ワグナーのことを心から大切に思っていた。デイビッドがアイザックの理想の花嫁像として語っている「淑女と呼ぶにふさわしい上品で優雅な女性」とはすなわち、メアリー・ワグナーのような女性をイメージしている。
ギデオン・ワグナー
アイザック・ワグナーの父方の祖父。現在はイギリスの郊外で隠居生活を送っている。元イギリス軍中佐で、典型的な軍人気質の人物。笑顔を見せることはほとんどなく、規律に非常に厳しい。デイビッド・ワグナー、ペネロープ・ワグナーと共にワグナー家を取り仕切っている。アイザックの花嫁に相応しいのは「質実剛健な女性」だと言ってゆずらない。
ペネロープ・ワグナー
アイザック・ワグナーの叔母で、音楽教師を生業にしている。独身で非常に気丈な性格の持ち主。その一方で、男性同士の恋愛を目にすると思わず我を忘れて興奮してしまう、ボーイズラブ好きな意外な一面を持つ。デイビッド・ワグナー、ギデオン・ワグナーと共にワグナー家を取り仕切っている。アイザックの花嫁に相応しいのは「美少年と見間違うような中性的で美しい女性」だと言ってゆずらない。