全力で、愛していいかな?

大手建設会社に勤める30歳の千世は、セクハラおじさんや自分勝手な若い男子に悩まされる毎日を過ごしていた。千世の癒やしは、昼休みにお気に入りのご飯屋で過ごす、45歳のイケオジ、瀬尾との時間だった。不良たちに絡まれていた瀬尾を、柔道の心得がある千世が助けたことがきっかけで知り合い、二人は昼ご飯をともにする仲になっていた。そんなある日、千世は瀬尾に告白されてしまう。恋愛から遠ざかっているが、一人が気楽だと考える千世は、交際を断るつもりでいた。しかし、数日会えないだけで寂しさを感じたことや、千世のことを気遣う瀬尾の態度に考えを変え、交際の「お試し期間」が欲しいと提案。瀬尾はそれを受け入れ、「僕に、君を全力で愛させてくれるかい?」と答えた。こうして二人の、3か月間にわたるお試し交際が始まる。

30歳のOL、千世は、嫌味な上司と同僚、扱いが難しい現場の労働者、逃亡した後輩のおかげで業務が増え、恋愛する余裕がない状況である。恋愛から遠ざかり何か渇いた感情を自覚しているが、今更何かを変えようとは思っていなかった。一方、瀬尾は、大手外資系企業のハイスペックな45歳のイケオジである。何人もの女性と交際してきたが、いつもフラれて終わってしまう。一見クールなプレイボーイの瀬尾だが、恋愛に関しては友人に心配されるほどピュアだった。本作は、そんな30歳と45歳の大人同士の、「初恋」のようなドキドキする恋愛を描く。

まだ、千世と瀬尾が会釈するだけの間柄だった頃、千世はデザイン企画部部長の紅山にセクハラ行為を受けたことがあった。妻帯者でプレイボーイの紅山は、立場を利用して距離を詰めていき、ある日ホテルに連れ込もうとした。紅山の誘いをきっぱり断ったが、その後、紅山と気まずくなり、なぜか千世が紅山を好きだという誤解が社内で広まる。噂に押しつぶされそうになる千世だったが、瀬尾に誘われて行ったジャズバーで「我慢せずに怒っていい」という瀬尾の言葉に救われた。千世が「オジさん」と呼ばれる人種が苦手になったのは、紅山というセクハラ上司が原因であった。