作品の概要
基本情報
田中一行の代表作。
要旨と舞台設定
現代日本のカラス銀行中央支店を舞台に、金融業務の裏で行われる秘密の賭博ゲームを描いた物語。カラス銀行中央支店では、「特別業務部第二課 特別企画管理課」が運営する地下賭場で、金と命を賭けた過酷なギャンブルが繰り広げられている。ここでは銀行員が「キャリア(勤続年数)」を通貨として権力抗争を行う一方、ギャンブラーたちは独自のルールによるオリジナルゲームで戦っている。
ストーリー展開
物語は、特別業務部に異動した新人銀行員の御手洗暉が、超人ギャンブラーの真経津晨の担当者に任命されることから始まる。御手洗は真経津のギャンブル勝負に同行しながら、次第に賭博の世界に深くかかわっていく。各ゲームは緻密な心理戦と駆け引きによって展開され、敗者には深刻なペナルティが課される。ゲームごとに異なるルールと戦略が要求され、登場人物たちの関係性も勝負を通じて変化していく。
ジャンル的特徴と位置づけ
本作は、オリジナルの賭博ゲームとそれに伴う緻密な心理描写が特徴の青年向けギャンブル漫画。登場するゲームは、童話や逸話をモチーフに設計されており、単純な勝負を超えた寓意性を持つ。一方で、銀行員たちも自分の命を守るため、キャリアを奪い合う戦いに身を投じていく。
作品固有の表現技法と特徴
作中では、各ゲームごとにエピソードが展開され、ルール説明から心理戦、決着に至るまでの流れが詳細に描写される。登場人物の表情や仕草による心理描写に重点を置くことで、勝負の緊張感が視覚的に表現されている。また、ゲームは子供でも理解できる簡単な遊びがベースとなっており、複雑な心理戦や駆け引きをより深く演出している。
世界観の構築と設定
世界設定として、銀行の特別業務部による賭場運営システムや「担当ギャンブラー指名権(通称ジャンケット権)」の獲得競争、キャリアを通貨とした内部権力抗争が構築されている。賭博ゲームは「特別業務部第二課 特別企画管理課」が開発し、情報の機密性が厳格に管理されている。また、カラス銀行以外の金融機関にも同様の賭博システムが存在することが示唆されている。
連載状況
集英社「週刊ヤングジャンプ」2020年35号から連載。また、集英社「少年ジャンプ+」でも2022年3月から連載。
受賞歴
2023年第6回「アニメ化してほしいマンガランキング」第8位。
命を賭けたギャンブル
本作は、カラス銀行が運営する賭博場に集うギャンブラーたちが金と命を賭け、選ばれた者のみが得られる特権を求めて、日夜、危険なギャンブルに挑んでいる。ギャンブルのルールは、カラス銀行の「特別企画管理課」こと特別業務部二課の手により考案され、ギャンブラーのランクが上がるほど、勝った時に獲得できる報酬と負けた時に受けるペナルティの危険度が高くなり、ハイリスクなギャンブルとなっている。特に、最高ランクの「1ヘッド」は敗者が確実に命を落とし、1ヘッドに次ぐランクの「1/2ライフ」も、生きて帰れる可能性が低い。なお、勝者が獲得する多額の賞金を簡単に用意できるのは、カラス銀行の「特別営業課」こと特別業務部五課が、スポンサーの資産家を賭博場に招いているためで、彼らはギャンブルで命のやり取りをするギャンブラーたちの様子を楽しんでいる。
個性あふれるギャンブラーたちの戦い
カラス銀行が主催する賭場には、主人公の一人である真経津晨のほか、ギャンブルを医療の一環としてとらえている村雨礼二や、自らを「神」と称して憚(はばか)らない天堂弓彦など、ギャンブル依存症のさまざまなギャンブラーたちが通っている。彼らは卓越した頭脳とメンタルの強さ、それに加えてリスクをいとわない行動力を誇る。ギャンブラーたちの繰り広げる真剣勝負は、観客や主催するカラス銀行の関係者たちすら魅了し、彼らはある種の異色アイドルとして君臨していると言っても過言ではない。なお、小学校教師の眞鍋瑚太郎や、飲食店チェーンの代表取締役を務める牙頭猛晴など、本業を持つギャンブラーも多く、中には自分の仕事を完璧にこなすための手段としてギャンブルを利用する者もいる。
カラス銀行の暗部「特別業務部」
主人公の一人である御手洗暉が勤務するカラス銀行には、銀行の通常業務のほか、主催している賭博場の管理を行う「特別業務部審査課」こと特別業務部四課(通称「特四」)が存在する。職場はいわゆる年功序列で、キャリア(勤続年数)が多い者がより多くの権利と金を得られる。ただし、キャリアはただ勤め続ければアップするわけではなく、ほかの行員とキャリアを通貨として交換、あるいは奪い合うシステムでキャリアを築いていく。またキャリアを失ったり、業務で不祥事を起こすと「倉庫」と呼ばれる劣悪な環境の施設に送られ、最悪の場合は命を奪われることもあるため、その実態はギャンブラーに匹敵するほどの危険な業務といえる。なお、同じ班に所属する同僚同士は基本的に良好な関係を築いているが、ほかの課や班に所属する行員同士の関係は険悪な場合が多い。中でも、暉が所属する宇佐美班と、宇佐美銭丸をライバル視する伊藤吉兆が率いる伊藤班は極めて仲が悪く、やがて互いの班の存続を賭けた勝負が始まる。
登場人物・キャラクター
真経津 晨 (まふつ しん)
ギャンブルを生業としている青年。年齢は22歳で、魚座のAB型。カラス銀行が主催する賭博場に身を置き、「ヘッド1」と呼ばれる、ハイリスクハイリターンのギャンブルを行える立場への昇格を目指している。つねに笑みを浮かべているため、一見温和な印象を与えるが、ひょうひょうとしたつかみどころのない性格の持ち主。集中力を高める際は、真経津晨自身のこめかみを人差し指で軽く叩(たた)くクセがある。ギャンブルセンスに長(た)け、つねに二手三手先を見据えて相手を翻弄する戦術を得意としている。また、イカサマをしたように装い、疑心暗鬼に陥った相手の自爆を誘うなど、心理面においても相手を圧倒することから、カラス銀行の社員たちに「デギズマン」と呼ばれ警戒されている。その一方で、趣味で作っている陶芸品の出来栄えが、素人の御手洗よりも悪いなど、美的センスが壊滅的。パンが大好物で、カラス銀行の賭博で知り合った神林の焼いたパンをたびたび購入している。
御手洗 暉 (みたらい あきら)
カラス銀行に勤務する青年。中央支店の窓口業務を担当していた。年齢は24歳。天才的な計算能力を誇り、軽く書類に目を通しただけでどこが間違っているか瞬時に把握できる。しかし、御手洗暉自身は計算が得意程度に考えており、退屈な毎日を余儀なくされていた。そんなある日、突然宇佐美銭丸から特別業務部審査課(特四)にスカウトされ、さらにその業務が銀行が主催する賭博の運営と審査であることを伝えられる。さらに、その賭博場で真経津晨のギャンブルを目の当たりにし、彼の技量や賭博のあり方にたちまち魅了され、真経津を専属で審査することを望むようになる。ギャンブルに関してはまったくの素人で、考えていることが表情に出やすいことから、およそギャンブルには向いていない感性の持ち主。しかし、目的のためなら合法的な脅迫や、感情を気取られないため自らの身体を傷つけるなど、手段を選ばないことから、真経津や特別業務部審査課の同僚たちからは面白い存在として高く評価されている。
書誌情報
ジャンケットバンク 20巻 集英社〈ヤングジャンプコミックス〉
第1巻
(2020-11-19発行、978-4088916576)
第2巻
(2021-02-01発行、978-4088918303)
第3巻
(2021-05-01発行、978-4088918440)
第4巻
(2021-08-01発行、978-4088920481)
第5巻
(2021-11-01発行、978-4088921334)
第6巻
(2022-02-01発行、978-4088922201)
第7巻
(2022-05-01発行、978-4088922973)
第8巻
(2022-08-19発行、978-4088924021)
第9巻
(2022-11-17発行、978-4088924632)
第10巻
(2023-02-17発行、978-4088926209)
第11巻
(2023-05-19発行、978-4088926896)
第12巻
(2023-08-18発行、978-4088927916)
第13巻
(2023-11-17発行、978-4088930091)
第14巻
(2024-03-18発行、978-4088931203)
第15巻
(2024-06-19発行、978-4088932385)
第16巻
(2024-09-19発行、978-4088933764)
第17巻
(2024-12-18発行、978-4088934808)
第18巻
(2025-04-17発行、978-4088935850)
第19巻
(2025-08-19発行、978-4088937380)
第20巻
(2025-11-19発行、978-4088938790)







