生志摩妄のギャンブルを描くスピンオフ
原作となる『賭ケグルイ』は、スクウェア・エニックス「ガンガンJOKER」で2014年4月号から連載された尚村透の人気作品。斎木桂の『賭ケグルイ 双』、川村拓の『賭ケグルイ(仮)』といったスピンオフ作品のほか、小説やテレビアニメ、テレビドラマ、実写映画、アンソロジーコミック、ファンブックなど、さまざまなメディアミックスが展開されている。本作は、原作の主役である蛇喰夢子と奇妙な因縁を持つ生志摩妄を主人公に、命懸けのギャンブルが織りなす狂気の世界が描かれる。
曲者ぞろいの美化委員
生志摩妄が所属する美化委員は、私立百花王学園で絶対的の権力を持つ生徒会直属の委員会。その役割は、学園の美化活動にとどまらず、学内のギャンブルによって発生した借金の支払いを滞らせている生徒からの取り立てといった荒事も含まれる。美化委員長の妄は、自らの欲望や楽しみのためにエゴを押し通そうとする人間こそ美化委員にふさわしいと考えており、濡羽綾女がギャンブル「ナイフ・ハンド・トリック」に挑戦した際に、妄自身の指を傷つけることに愉悦を感じていたことを見抜き、その精神性を見込んで直々に美化委員への加入をうながす。また、副部長の羽々斬直愛は、表向きは妄に反抗的な態度を見せつつも、内心では彼女に心酔している。
スリリングなギャンブルの数々
生志摩妄は、金銭のやり取りにはさほど興味を持っておらず、負けることで傷ついたり、命の危険にさらされるような狂気のギャンブルを求めている。そんな妄の提案するギャンブルは、コンパスの針で指のあいだを順番に素早く刺す「ナイフ・ハンド・トリック」や、数字が書かれたシートに指を置いて、ルーレットで止められた数字のシートにナイフを刺す「チキンサークル」など、危険極まりないリスクを負ったものから、3枚のカードから正解のカード当てるだけのシンプルなものまで存在する。また、作中で繰り広げられたギャンブルのルールと醍醐味を、河本ほむらが巻末で解説している。
登場人物・キャラクター
生志摩 妄 (いきしま みだり)
私立百花王学園に通う3年生の女子。生徒会役員および美化委員長を務めている。かつて生徒会長の桃喰綺羅莉とのギャンブルに敗北して左目を失い、眼帯をつけている。その時の体験から、ギャンブルの負けの対価として与えられる苦痛に執着するようになり、生きるか死ぬかの狂気のギャンブルにのめり込むようになる。生徒会から美化委員長に任命されると、その立場を利用してリスクの高いギャンブルを繰り返している。そんな中、屋上から身を投げようとしていた濡羽綾女に興味を抱き、綾女と彼女に売春を強要する鳳那々のギャンブルを見届ける。そして、自分の身を守るためなら周囲を利用し犠牲にすることも厭(いと)わない彼女を美化委員に誘う。
濡羽 綾女 (ぬれば あやめ)
私立百花王学園に通う女子。気弱な性格で、相手のイカサマを見抜くことができないためカモにされている。ギャンブルの才能にも欠けているが、自らが生き延びるためなら他者を危険に晒(さら)すことも厭わず、ここぞという時には並外れた度胸を見せる。同じクラスの鳳那々の度重なるイカサマにより、1000万の借金を背負ってしまう。さらに、その返済のために売春を強要され、自らの境遇を苦に校舎の屋上から身を投げようとした。しかし、生志摩妄に突き飛ばされた際に「他人に自分の命を左右されたくない」という欲望に目覚め、妄の差し出した手に摑まり一命を取り留める。
クレジット
- 原作
ベース
賭ケグルイ (かけぐるい)
原作の河本ほむらの連載デビュー作にして代表作。ギャンブルの勝敗がすべてを決める私立百花王学園に転校してきた謎の美少女である蛇喰夢子が、学園を牛耳る生徒会の面々と、時には巨額の賭け金を、時には自分の体を... 関連ページ:賭ケグルイ
関連
賭ケグルイ双 (かけぐるいついん)
原作・河本ほむら、作画・尚村透による『賭ケグルイ』のスピンオフ作品。時系列は本編の1年前となり、早乙女芽亜里が私立百花王学園に編入して来たところから物語がスタートする。有力者の親を持つ周囲の登場人物達... 関連ページ:賭ケグルイ双
書誌情報
賭ケグルイ妄 全4巻 スクウェア・エニックス〈ガンガンコミックスJOKER〉
第1巻
(2017-07-22発行、 978-4757554153)
第4巻
(2020-06-22発行、 978-4757567061)