あらすじ
東方仗助 登場~虹村億泰・形兆~広瀬康一(29巻~31巻)
1999年の日本。空条承太郎がエジプトで、ジョースター家とDIOとの100年間に渡る因縁に決着をつけてから、10年以上の月日が流れた。承太郎は海洋冒険家になっていた。
物語は、杜王町に住む高校生広瀬康一の視点で語られていく。
空条承太郎は、M県S市杜王町に住む高校生・東方仗助に、彼がアメリカの不動産王となったジョセフ・ジョースターの婚外子であることを伝えるために街を訪れる。遺産分配のことが問題となっていた。仗助は気弱な性格だが、自慢のリーゼントをけなされると途端に豹変し、スタンド能力を発現させる。承太郎は、そのスタンドを目にし、スタンド使いであったジョセフの能力が遺伝していたことと、それに伴う杜王町に迫る危機を察知する。その後、凶悪なスタンド使いのアンジェロが潜んでいることが判明。アンジェロは、スタンド能力を覚醒させる「弓と矢」で射られてスタンドを発現させており、その何者はDIOと深い関わりを持っていることがわかってくる。
杜王町では、何者かが「弓と矢」で無差別に人を射り、スタンド使いを増やし続けている。ある日、学校から帰宅途中の康一と仗助は虹村億泰とその兄の虹村形兆に因縁をつけられ、康一は「弓と矢」で射られてしまう。形兆の「バッド・カンパニー」の攻撃に傷つきながらも撃破した仗助は「弓と矢」を破壊しようとするが、何者かに奪われる。
山岸由花子は恋をする~岸辺露伴の冒険(32巻~41巻)
スタンドが覚醒した康一の協力もあり、「弓と矢」を奪った音石明を見つけて倒した承太郎は「弓と矢」を回収する。しかし、杜王町にはすでに「弓と矢」で射られスタンド使いとなった者たちが多数、蠢いていた。スタンドたちが引き起こす数々の奇妙な事件に、仗助と康一は立ち向かう。なぜか康一を偏愛する女学生・山岸由花子や天才漫画家・岸辺露伴、金には汚いがどこか憎めない中学生・重ちー(矢安宮重清)、他人の顔と運勢を操るエステティシャン・辻彩などといったスタンド使いたちとの、奇妙な交流も深まっていく。
重ちーは、スタンド使いで連続殺人鬼・吉良吉影と偶然出会ってしまう。重ちーが遺した手がかりから仗助たちは吉良を追い詰めていくが、吉良は自分の顔を他人とすり替え逃亡する。幽霊である吉良の父親・吉良吉廣は、溺愛する息子を守るため、もう一つの「弓と矢」を使い、スタンド使いを刺客として送り込んでくる。
猫は吉良吉影が好き~ぼくのパパはパパじゃない(42巻~47巻)
吉良は別人・川尻浩作となり彼の家庭に隠れ住んでいる。浩作の妻、川尻しのぶは夫の性格が急に良くなったと喜ぶが、まさか別人であることには気づかない。しかし、息子の小学生・川尻早人は父・浩作の変化に不審感を抱き調査を始める。正体の発覚を恐れた吉良は事故に見せかけ早人を殺してしまうが、いずれ捜査が自分にも及ぶことを悟り絶望する。
しかし再び矢に射貫かれ吉良に第3の能力が発現。新しい吉良の能力は、「時間を爆破して時を戻す」能力だった。この能力は、早人に取り付いて作動する。 時間の巻き戻しにより生き返った早人だったが、吉良を葬ろうとする者たちを誘き寄せ排除するための地雷として利用されてしまう。吉良は勝利を確信するが、早人の機転に破られ、仗助と対決せざるを得なくなった。一進一退の攻防が続き、仗助の仲間や町の人々も集まって来る。吉良は大衆の面前に晒されるという一番恐れていたことに耐えられず、逃亡を図るが、阻止され、最期の戦いが始まっていく。
登場人物・キャラクター
東方 仗助 (ひがしかた じょうすけ)
M県S市杜王町に暮らしている、ぶどうヶ丘高校に通う高校1年生。父親はジョセフ・ジョースター。母親の東方朋子が大学生当時ジョセフ・ジョースターと不倫関係にあり、そのときに身ごもった子供である。ある恩人の影響により、流行遅れともいえるリーゼントと改造学ランという出立ちを通している。 そのため不良であると誤解を受けやすいが、実際は至って礼儀正しく温厚な性格。ただし、髪型をけなされることは恩人への侮辱ととらえており、一度怒ると手がつけられない状態になる。4歳の頃よりスタンドが発現。空条承太郎に「クレイジー・ダイヤモンド」と命名されたスタンドは、破壊された物の修復が固有の能力。 無機物だけでなく生物も修復可能で、さらに凶悪犯の片桐安十郎を岩石と一体化させたように、複数の物を融合させることも可能。ただし、失われた命を戻すことはできず、また、自分に対しては修復能力は無効となる。空条承太郎には、何よりも優しい性質の能力であると評されている。
広瀬 康一 (ひろせ こういち)
東方仗助と同じクラスの友人。今作の語り部でもある。両親と姉との4人暮らしで、老犬・ポリスを飼っている。当初はスタンド能力の無い一般人だったが、虹村形兆にスタンドを発現させる矢で射抜かれスタンド使いとなる。なぜか一癖ある人物からも好かれやすく、岸辺露伴に親友だと思われているほか、敵であった小林玉美や間田敏和からも慕われる。 そして山岸由花子には異常なまでの求愛を受け、そのことから監禁されたこともあった。しかし、やがては彼女の内面の魅力に惹かれ、両思いとなっている。スタンド使いになって間もないためスタンドの「エコーズ」も成長中で、卵から孵化するようにして誕生したACT1は、漫画の擬音のようなものを対象に貼り付けて音を出す能力を持つ。 そして脱皮により誕生したACT2は擬音で熱や風圧を感じさせることができるようになり、さらに進化した人型のACT3は、殴った物に強烈な加重を与える能力を得ている。
虹村 億泰 (にじむら おくやす)
東方仗助たちの友人。学年は同じだが、クラスは違う。虹村形兆の弟でもある。右肩に「億」、左肩に「BILLION」と書かれた学ランを着用し、物語序盤は敵スタンド使いとして登場。「怪物と化した父親を殺せるスタンド使い」を産み出すという兄の手助けをしていた。 しかし東方仗助によって、父親が息子との思い出を求めていたことを知らされて考えを改め、やがて彼とは親友となる。性格は直情的かつ単純。また、かなりの甘党。辛いものは苦手であり、幕の内弁当にミルクティーという組み合わせを東方仗助に気持ち悪がられる一幕もあった。使用するスタンドは「ザ・ハンド」。 人間型のビジョンで、パワータイプのスタンド。右手で空間ごと物体を削り取る能力があり、その応用で対象と自分の間の空間を削って自分の側に引き寄せることもできる。
岸辺 露伴 (きしべ ろはん)
杜王町に住む漫画家。スタンド使いでもある。東方仗助たちとともに、殺人鬼の謎に迫る。ただし東方仗助とは性格的にそりが合わず、その一方で広瀬康一のことは親友として接している。漫画家としての代表作は、16歳の時より『週刊少年ジャンプ』にて連載しているデビュー作『ピンクダークの少年』。 東京に在住していたこともあったが、創作環境としてより快適な故郷の杜王町に戻っている。漫画の創作を何よりも至上としており、リアリティの追求や題材を得るためなら、他人への迷惑はまったく顧みない性格。スタンドの能力も創作と密接に関連しており、「ヘブンズ・ドアー(天国への扉)」と名付けられたスタンドは、対象の人物や生物などを「本」にして、その体験を読むことができるもの。 また命令を書き込むことで、相手の行動に制限を与えることもできる。当初は自身の作品のファンのような「波長の合う相手」にしか通用しない能力だったが、度重なる戦闘の中でその適応範囲を進化させている。
空条 承太郎 (くうじょう じょうたろう)
『ジョジョの奇妙な冒険』第3部では主人公だったが、本作では東方仗助の血縁者として登場し、その後も行動を共にする。作中では28歳となっており、職業は海洋学者。年老いた祖父のジョセフ・ジョースターに何かあったことを考えて財産を整理していたところ、〝隠し子〟として東方仗助の存在を知ったため、そのことを伝えるために杜王町を来訪。 その後、街に潜む邪悪なスタンド使いを調査するため、引き続き杜王町に滞在することとなる。性格は以前と比べると落ち着いたものとなっており、鋭い洞察力や冷静な判断力で東方仗助たちを強力にサポート。また、自身のスタンドである「スタープラチナ」の能力も完成されたものとなっている。 ただし、時間停止の能力は久しく使っていなかったため、第3部で最後に使用したときよりも止められる時間は短い。
ジョセフ・ジョースター
『ジョジョの奇妙な冒険』第2部の主人公で、第3部にも登場。本作では79歳となっており、東方仗助が息子であることを知って、対面するために杜王町へ来訪する。なお、浮気が発覚したことにより、妻のスージーQは結婚45年目にして怒りの頂点に達しているらしい。 当初は東方仗助とお互い気まずい思いをしていたうえ、認知症の症状も出始めており、コミュニケーションがあまりうまくいっていなかった。しかし「透明の赤ちゃん」の一件がきっかけで、少しずつ東方仗助との関係が改善されるとともに、かつての活力を取り戻しつつある。
静・ジョースター (しずか・じょーすたー、とうめいのあかちゃん)
杜王町にて迷子になっているところをジョセフ・ジョースター保護された、身元不明の赤ん坊。性別は女の子。本人が無自覚の内にスタンド能力を発現させており、ストレスを受けると自身を含めた周囲の物体を透明にしてしまう。やがてジョセフ・ジョースターには心を開くようになり、彼が近くにいるときは能力が暴走することはなくなった。 その後、母親が不明のままジョセフ・ジョースターの養女として迎えられ、静・ジョースターとなる。スタンドは「アクトン・ベイビー」と名付けられた。
吉良 吉影 (きら よしかげ)
東方仗助たちが追う殺人鬼の正体。杜王町で表向きは平凡なサラリーマンとして生活しつつ、手の美しい女性ばかりを48人も殺害した連続殺人鬼である。触れたものを爆弾に変えるスタンド「キラークイーン」を持ち、それによって証拠となる死体や、正体に気付いた者を消滅させていた。 平穏な生活を望み、目立つことを非常に嫌う性格だが、その一方で殺害した女性の手首を持ち歩き、それに話しかけたり高価なアクセサリーを与える異常な嗜好を持つ。それがきっかけとなり、一度は東方仗助たちに追い詰められることとなるが、スタンドによって整形を施術するエステティシャン・辻彩を脅迫して、自身と似た背格好の川尻浩作に成り代わって逃走。 しかし、彼の息子である川尻早人の行動によって正体が露呈し、激闘の末に救急車の後輪に顔を轢かれて事故死する最期を迎える。忌まわしき魂は、杜王町の「ふり向いてはいけない小道」に宿る謎の力によって、何処かへと引きずり込まれて消滅した。
吉良 吉廣 (きら よしひろ、しゃしんのおやじ)
吉良吉影の父親。彼が21歳のときに癌によって肉体は死亡しているが、息子の異常な性癖を知っており、息子を影から守ろうとする一念から幽霊となって現世に留まっている。エンヤ婆からスタンドを発現させる弓と矢を譲渡されており、それによって息子に近づく東方仗助たちを排除するためのスタンド使いを次々と作り出していた。 自身のスタンドは、自分が写り込んでいる写真の空間を支配し、現実にもその影響を及ぼす能力を持つ「アトム・ハート・ファーザー」。最終決戦では川尻早人のポケットに写真ごと潜んで吉良吉影を援護していたが、最後はそれに気付いた東方仗助によってキラークイーンの空気爆弾を誘導され、誤爆によって消滅させられる。
矢安宮 重清 (やんぐう しげきよ、しげちー)
ぶどうヶ丘中学校に通う中学二年生。東方仗助と虹村億泰の友人。性格は基本的にがめつく、お金に細かい。その性格を反映したかのような、落ちている小銭などを拾い集めるスタンド「ハーヴェスト(収穫)」を持つ。それを知った東方仗助たちと協力して一千万円が当選していた宝くじを入手するが、当選金の分配を巡って争いが勃発。 その後改心の末、友人関係となっている。しかし、たまたま吉良吉影が女性の手首を入れて持ち歩いていたパン屋の紙袋と、自分の昼食を間違えたことから重大な秘密を知ることとなり、キラークイーンの爆弾の能力によって殺害されてしまう。だが、死の間際に吉良吉影から奪ったコートのボタンをハーヴェストによって東方仗助に届けたことが手がかりとなり、殺人鬼の正体に迫るきっかけを作った。
山岸 由花子 (やまぎし ゆかこ)
広瀬康一の恋人となる、容姿端麗な女子高生。東方仗助たちと同級生で、虹村億泰とは同じクラス。腰まである長い黒髪が特徴。弓と矢によってスタンド「ラブ・デラックス」が発現しており、その自身の黒髪を自在に操ることができる。広瀬康一を異常なまでに愛しており、愛情を告白をしたのち、彼に接近する女生徒を殺害しようとするなど次第に行動がエスカレート。 そして広瀬康一がわざと嫌われるために東方仗助と虹村億泰に悪評を流してもらったり、結果的にテストの結果が思わしくなかったことが逆効果となり、彼を監禁して理想の男性として教育しようとする。結果としてそれが広瀬康一のスタンドの成長を促すこととなり、逆襲を受けて敗北。 しかし、それでも最後は自分を護ってくれた広瀬康一の優しさに打たれ、以前にも増して彼を愛し続けることとなる。
トニオ・トラサルディー
杜王町 にてイタリア料理店「トラサルディー」を営む料理人。イタリアのナポリ出身。料理に情熱の全てをかける男で、虹村億泰には「天使のような料理人」と評される。理想とする料理を求めて世界中を旅する過程でスタンド「パール・ジャム」が覚醒。 料理にスタンドを混入させることで、食べた者の体調不良を劇的に治癒する能力を持つ。しかし、その効果の発露が「眼球がしぼむほど涙が出る」「内臓が露出したように腹が破裂する」といった異常な現象を伴うため、東方仗助にはスタンドによる攻撃だと誤解をされてしまった。
辻 彩 (つじ あや)
杜王町 にてエステティックサロン「シンデレラ」を営むエステティシャン。本人曰く「低血圧っぽい」と言う、気だるい口調が特徴。「魔法使い」を自称し、「愛と出遭うためのメイク」を謳い文句に、スタンド「シンデレラ」の能力で客に施術を続けていた。 ただし、エステティシャンとしても、世界各国のコンクールで優勝した経験を持つ実力派である。スタンド能力は、全身のパーツを理想とする運勢が表れる形状に変換するというもの。山岸由花子と広瀬康一の関係の発展に大きな役割を果たすが、その後、逃走中の吉良吉影にその能力を悪用され、川尻浩作の顔と指紋を移植させられた末に爆殺されてしまう。
噴上 裕也 (ふんがみ ゆうや)
杜王町 に住む、暴走族の高校生。弓と矢によってスタンド使いとなり、岸辺露伴と東方仗助を襲撃した。交通事故によって入院しており、負傷を回復させたいという願いを反映したスタンド「ハイウェイ・スター」が発現。時速60kmで標的をどこまでも追跡し、体内に侵入して養分を吸い取る。 追跡は嗅覚を頼りにしているため、スタンドが発現してからは噴上裕也自身も嗅覚が異常に鋭敏となっている。非常にナルシスティックな性格で、アケミ、ヨシエ、レイコという不良女学生をいつも侍らせている。東方仗助には広瀬康一の協力によって病室まで踏み込まれてしまい、一度クレイジー・ダイヤモンドの能力で治療された直後に全力で殴られ、再び入院生活を継続。 その後、エニグマの少年によって行方不明となった広瀬康一を嗅覚で探索するため、怪我を治すという条件で一度だけ共闘している。
虹村 形兆 (にじむら けいちょう)
虹村億泰の兄。18歳。弓と矢によって杜王町にスタンド使いを増やしていた最初の人物。とある事情により怪物と化し、不死身の再生能力を持つ父親を殺すことができるスタンド使いを求めていたが、弓と矢に射られてスタンドが発現しなかった者は死んでしまうため、結果として凶行を繰り返すこととなってしまった。 自身のスタンドは、ミニチュアの軍隊のようなビジョンの「バッド・カンパニー(極悪中隊)」。歩兵60名、戦車7台、ヘリコプター(AH-64 アパッチ)4機からなる群体のスタンドで、本人の几帳面な性格を反映して、非常に規律正しく行動する。東方仗助との戦いで敗北したのち、弓と矢を音石明に狙われ、身を挺して弟を庇ったために死亡。 自宅近隣の電線で感電した状態で発見される。
小林 玉美 (こばやし たまみ)
東方仗助たちの通うぶどうヶ丘高校のOB。虹村形兆によってスタンドを覚醒させられた者のひとりで、その能力でゆすり屋をしている小悪党。スタンド名は「ザ・ロック(錠前)」。自分に対して少しでも罪悪感を抱いた者の体に取り憑き、重圧を与える。 罪の意識が大きくなりすぎると自殺に至ることすらある。それによって広瀬康一の一家から金品を巻き上げようとしたが、エコーズの能力で敗北。以降は、一方的に広瀬康一の舎弟を自称する。
間田 敏和 (はざまだ としかず)
東方仗助たちの通うぶどうヶ丘高校の3年生。虹村形兆によってスタンドを覚醒させられた者のひとり。デッサン人形のような等身大の木の人形に触れた者をコピーし、さらに人形が動く通りに本人をコントロールするという能力のスタンド「サーフィス(うわっ面)」を使う。 この能力により、口論となった友人が自ら片目をシャープペンシルでえぐるように仕向けるなど、性格は極めて陰湿。また、空条承太郎の存在を非常に警戒しており、コピーした東方仗助で空条承太郎を負傷させ、街から追い出すことを画策する。しかし、東方仗助の機転によって敗北。人形を破壊されたため、その後はスタンドを使用していない。 のちに杜王町に大のファンである岸辺露伴が住んでいることを知り、一方的に「気が合いそう」だと思っている広瀬康一を誘って仕事場を訪問。そこで岸辺露伴のヘブンズ・ドアーで本にされて経歴を読まれ、「最低なヤツ」と切り捨てられている。
支倉 未起隆 (はぜくら みきたか)
東方仗助たちの通うぶどうヶ丘高校に転入してきた謎の青年。宇宙人を自称し、マゼラン星雲から来たヌ・ミキタカゾ・ンシを名乗っている。吉良吉廣の持つ弓と矢に選ばれるが、矢は弾かれており、果たしてスタンド使いなのか宇宙人なのかは最後まで謎のまま。 そのため作中ではスタンドの名前が登場しなかったが、後に画集『JOJO A-GO!GO!』が出版された際、「アース・ウインド・アンド・ファイヤー」と命名されている。能力は体を変形させて任意の物体になること。一対のスニーカーや3個のサイコロなど、複数の物にもなることが可能だが、複雑な機械や、自分以上に力が出る物にはなることができない。 また、サイレンの音に対してアレルギーのような症状を示し、音を聞くとじんましんが出て変身状態を保っていられなくなる。
片桐 安十郎 (かたぎり あんじゅうろう)
本作で最初に東方仗助と敵対するスタンド使い。IQ160の天才だが、「日本犯罪史上最低の殺人鬼」と評される凶悪犯罪者。アンジェロの通称で呼ばれる。34歳までに合計20年を刑務所で過ごし、少年誘拐と殺人の罪により死刑が確定。しかし獄中で虹村形兆に弓と矢で射られてスタンド使いとなり脱獄し、生まれ故郷の杜王町に戻って犯罪を繰り返していた。 発現したスタンド「アクア・ネックレス」は液体と一体化する能力があり、人間の体内に侵入して破壊したり、操ることができる。そしてスタンドで操っていた男の強盗を阻止した東方仗助をターゲットとするが、彼の祖父が自分を最初に捕まえた警官・東方良平であることを知って復讐のために殺害。 その後も狡猾に東方仗助を狙うが、最後はクレイジー・ダイヤモンドによって岩石と一体化させられ、生きたまま「アンジェロ岩」と呼ばれる杜王町の「名所」と化す。
音石 明 (おといし あきら)
ギターを愛する19歳のロッカー。虹村形兆の弓と矢によってスタンド使いとなるが、その弓と矢を狙って虹村形兆を殺害。虹村億泰にとっては兄の仇となるスタンド使い。電気と一体化するスタンド「レッド・ホット・チリ・ペッパー」を使う。 スタンドが触れた物体も一時的に電気にすることが可能で、その能力で攻撃対象をコンセントや高圧電線に引き込むほか、被害総額が5億円にも及ぶ窃盗を繰り返していた。東方仗助の前に姿を現したときは、ギターによるパフォーマンスを誇示。電力によってパワーアップするレッド・ホット・チリ・ペッパーの能力を活かして東方仗助を翻弄する。 しかしスタンドが海に落下したことでパワーが拡散して弱体化。それでもなお船上のジョセフ・ジョースターを狙うが、最後は虹村億泰に殴られて敗北し、刑務所で服役することとなった。
大柳 賢 (おおやなぎ けん、じゃんけんこぞう)
吉良吉廣の持つ弓と矢に選ばれ、スタンド使いとなった11歳の少年。ジャンケンに勝利するたび相手のスタンド能力を奪うスタンド「ボーイ・II・マン」を使う。ジャンケンは5回勝負となっており、3回勝てば完全に能力を奪える。また、左の頬に矢で射られたときの穴が空いたままになっており、スタンドを奪う際はその穴に吸い込むようにして吸収する。 最初の標的に選んだ岸辺露伴に執拗にジャンケン勝負を挑み、不審に思った岸辺露伴は彼のスタンド能力によって経歴を読み取ったが、ジャンケンに1勝しないとスタンドが発動しないため、その時点ではスタンド使いだということが発覚していない。 その後、岸辺露伴のスタンドの2/3を奪うところまで追い詰めたが、透明の赤ちゃんを利用した策略によって敗北。イカサマを申し立てて再勝負に挑むが、勝負の流れはすでに失われ、二度と勝利することはできなかった。
宮本 輝之輔 (みやもと てるのすけ、えにぐまのしょうねん)
吉良吉廣の持つ弓と矢によってスタンド使いとなった謎の少年。物体を2次元に変換して紙に閉じ込めるスタンド「エニグマ」を使う。性格は非常に陰湿。人間を閉じ込めるためには、怯えたときに見せる「恐怖のサイン」を見つけることが条件となっており、恐怖を煽るために不快かつ卑怯な手段を次々と講じる。 紙にした東方朋子や広瀬康一を利用して東方仗助に一度は勝利するが、噴上裕也の機転によって形成が逆転。数々の卑劣な行為が東方仗助の強い怒りを買うこととなり、紙くずと融合させられて本になった末、生きたまま杜王町立図書館に寄贈されてしまう。なお、作中に名前は登場せず、宮本輝之輔の名は画集『JOJO A-GO!GO!』が出版された際につけられたものである。
川尻 早人 (かわじり はやと)
吉良吉影がすり替わっている会社員・川尻浩作の息子。11歳。スタンド能力は持たない一般人の少年だが、物語の終盤で東方仗助たちの危機を救うキーパーソンとなる。最近の父親の行動を不審に思い、ビデオカメラで盗撮するなどして正体を察知。一度は逆に東方仗助たち5人の命を奪うために利用されてしまうが、とある行動によって吉良吉影の正体を東方仗助に伝えることに成功する。 また、虹村億泰が爆弾に変えられた際にはそれを解除するために自らを犠牲にするなど、東方仗助も驚く行動力を示す。戦いが終わったあとも、本当の川尻浩作が殺されたことを知らない母親の川尻しのぶを気遣うなど、精神的にも大きな成長を見せた。
川尻 しのぶ (かわじり しのぶ)
吉良吉影がすり替わっている会社員・川尻浩作の妻。本来の夫には結婚後の平凡な生活から強い不満を抱いていたが、吉良吉影がすり替わったことによって図らずも見せることになってしまった大胆な行動にときめきを感じ、好意を抱くようになる。最後の決戦で吉良吉影が死亡したことにより、川尻浩作もまた帰らぬ人となってしまったが、事情を知らない彼女はいつまでも帰りを待っている様子がエピローグで描かれている。
杉本 鈴美 (すぎもと れいみ)
杜王町のコンビニ「オーソン」と薬局「ドラッグのキサラ」の間の、地図にはない道に佇む地縛霊。実は15年前に吉良吉影が初めて殺した少女であり、その際いっしょに殺された飼い犬のアーノルドと共に現世に留まり、吉良吉影の存在を杜王町の住人に伝えようとしている。 また、殺された際、近隣に住んでいた幼少時の岸辺露伴を預かっており、吉良吉影の凶行から岸辺露伴を守ったのは彼女であった。そのため岸辺露伴のことを親しげに「露伴ちゃん」と呼んでいる。戦いが終わり、吉良吉影の魂が連れ去られたことを見届けると、岸辺露伴や杜王町の人々に見守られながら、アーノルドと共にようやく成仏することができた。
虹村兄弟の父親
作中に名前は登場しないが、虹村億泰と虹村形兆の父親。かつてDIOにスタンドの才能を見出されて配下の者となっていたが、彼の死によって脳に植え付けられていた「肉の芽」が暴走し、醜悪な怪物のような姿となっている。それと共に言語能力を失い、かわりに切断されてもすぐに再生する不死身の肉体となる。 そのため虹村形兆は父親を殺すことができるスタンド使いを求めることになるが、東方仗助によっていまだ息子を思う気持ちが残っていることが明らかにされ、姿は戻らないながらも平穏な暮らしを送るようになった。
東方 朋子 (ひがしかた ともこ)
東方仗助の母親。現在の職業は教師。鎌倉カスターが好物。大学生の頃に、当時62歳だったジョセフ・ジョースターと真剣に恋をし、そのときに身ごもった東方仗助をひそかに出産した。今でもジョセフ・ジョースターのことは愛しており、その面影を感じた空条承太郎には、初対面で間違って抱きついてしまっている。 性格は気丈だがキレやすい面があり、東方仗助とよく似ている。また、片桐安十郎が変装した牛乳配達員がいつもの人と違うことや、牛乳ビンに小さな開けた跡があるのに気がつくなど、洞察力も非常に鋭い。しかし、自宅に不法侵入した宮本輝之輔の不可解な脅迫にはさすがに恐怖を隠せず、彼のスタンド能力によって紙にされたこともある。
場所
杜王町 (もりおうちょう)
『ジョジョの奇妙な冒険 Part 4 ダイヤモンドは砕けない』の舞台となる地方都市。M県S市に存在する。人口は1994年の国勢調査時点では5万8713人。町の花は「フクジュソウ」。特産品は「牛たんのみそづけ」。S市のベッドタウンとして1980年頃から急速に発展したが、縄文時代の住居跡があるなど町の歴史は古い。しかし町には不気味なデータがあり、1999年に入っての行方不明者が81人もおり、他の同規模の都市と比べると7〜8倍もの数字になっている。 なお、モデルとなっているのは作者の荒木飛呂彦の出身地である宮城県仙台市だが、殺人鬼が潜む町という描写になるため、「なるべく迷惑がかからないように」という配慮からM県S市とされている。
その他キーワード
ストレイ・キャット (すとれいきゃっと)
『ジョジョの奇妙な冒険 Part 4 ダイヤモンドは砕けない』に登場する、元はブリティッシュ・ブルー種の猫だった奇妙な生物。普通の猫だった頃の名はタマ。弓と矢によってスタンド使いとなるが、不注意で殺してしまったと思い込んだ川尻しのぶと、彼女の夫になりすましている吉良吉影に仮死状態のまま庭に埋葬された結果、スタンドの影響で猫のような植物として復活した。 空気を操る能力を持ち、圧縮した空気を発射して攻撃するほか、周囲を真空にして吉良吉影のスタンドが作り出す爆弾を不発にすることも可能。その後、自分の父親が何者かにすり替わっていると気付いた川尻早人に、吉良吉影を攻撃されるために利用されるが、逆に吉良吉影に奪われ、キラークイーンの能力と合わせて「空気弾を爆弾に変える」という攻撃に使われてしまう。
弓と矢 (ゆみとや)
この矢に射抜かれて生存した者からスタンドの能力を引き出す。矢さえあれば、弓は無くてもその効力を発揮することが可能。本作中では2本の矢が登場し、それぞれ虹村形兆と吉良吉廣がスタンド使いを増やすために使われた。吉良吉廣の使用した物は矢自体がスタンドの才能がある者を選びだしており、また、すでにスタンド使いである吉良吉影を再び射抜くことで、新たな能力を与える効果も見せている。 なお、引き続き第5部にも登場。来歴など謎の多くは以降で描写されている。
関連
ジョジョの奇妙な冒険シリーズ (じょじょのきみょうなぼうけんしりーず)
荒木飛呂彦の代表作。最初は「週刊少年ジャンプ」、Part7『スティール・ボール・ラン』の途中から「ウルトラジャンプ」に舞台を移して長期にわたって連載。「日本のメディア芸術100選」(2006年)のマン... 関連ページ:ジョジョの奇妙な冒険シリーズ