あらすじ
単行本第一巻
3月11日の大震災によって、M県S市にある杜王町に突如として出現した壁の目。大学生の広瀬康穂はある日その場所で、全裸のまま土に埋もれた、首すじに「星型のあざ」のある謎の青年を発見する。彼は完全に記憶を失っており、自分の名前すらわからない状態にあった。
病院に運び込まれた青年のもとを訪れた康穂は彼の不思議な魅力に惹かれて、青年の正体を探す手助けをすることに。そして、青年が唯一身につけていた帽子から「吉良吉影」の名と、吉良の自宅の住所が判明する。二人は手がかりを追って吉良のマンションを訪れた。しかし、そこにいたのは全裸で監禁された少女であった。さらに、康穂は部屋の中で緊縛された女性たちの猟奇的な写真を発見してしまう。
この冷酷な吉良こそが青年の正体なのか、考える間もなく上の階の住人がスタンド攻撃を開始。手足の自由を奪う敵の能力に苦しみつつも、青年は自らのスタンド「ソフト&ウェット」で反撃を試みるのだった。
単行本第二巻
青年をスタンドで襲ったのは吉良吉影ではなく、吉良に恨みを持つ男であった。さらにその男の証言によって、青年と吉良は別人であると発覚。青年と康穂は、吉良と「壁の目」が写った写真を手がかりに、青年が倒れていた場所を訪れる。しかし、そこにあったのは吉良の死体であった。
自分の正体に繋がる手がかりを失い、身寄りもない青年は、康穂の幼馴染である東方常秀の父、東方憲助に引き取られることに。青年は「定助」と名付けられ、東方家の一員として新たな生活を始めることになる。
憲助の命令を受け、目の不自由な東方家の末娘、東方大弥の世話をすることになった定助。しかし、「彼女に気を使わせてしまった」ことがきっかけで、大弥からスタンド攻撃を受けてしまう。大弥の「他人の記憶を奪う」能力に、定助は徐々に追い詰められていくのだった。
単行本第三巻
吉良吉影の遺体にあった謎の「印」が、東方家の手すりにもあったことに気がついた定助は、立ち入りが禁じられている二階へと足を踏み入れた。そこで定助が発見したものは「スティール・ボール・ラン全記録集」に記された「東方家の家系図」であった。そこで仗助は東方家の先祖がジョニィ・ジョースターと婚約していたこと、そして東方家と吉良家が血がつながっていたことを知る。
さらに吉良吉影の母親である吉良・ホリー・ジョースターがまだ生きていることを突き止め、彼女を尋ねることに。入院をしているというホリーのもとへ向かう定助だが、突如黒いバイクを駆るスタンドに襲撃されてしまう。神出鬼没の謎のスタンドに苦しめられる定助は、「携帯電話のナビ」が自分を安全な場所に誘導していることに気が付き、自分を助ける「もう一人のスタンド使い」の存在を知るのであった。
単行本第四巻
康穂の力を借りて、謎のスタンドを撃退した定助。そのスタンドの本体は、東方家の家政婦、虹村京であった。さらに、彼女の正体は吉良吉影の妹であるということが判明。東方家の秘密を探るために家政婦として潜り込んでいるという京は、定助に衝撃の事実を告げる。それは、仗助が吉良吉影ともうひとりの誰かが、「壁の目」の特殊な力で融合した人間であるということであった。
定助は、もうひとりの自分の正体を探るため、「学校に行きたい」と憲助に申し出た。常秀とともに学校へと向かう定助は、その途中で「絶対にカツアゲされる道」通称、カツアゲロードに行き当たる。かつて、ここでカツアゲされたという常秀の復讐を手伝うことになってしまった定助だが、不可解な方法で次々と被害にあってしまう。
単行本第五巻
カツアゲロードの法則を見抜いた定助は窮地を脱出。また、危機に陥った常秀もまたスタンドの能力を発現したのだった。一方、康穂はホリーと東方家の関係、そしてかつて起こったジョニィ・ジョースターの死亡事件を知り、定助にそのことを伝えるために動き出す。
定助もまた、ジョニィを祀った「ジョースター地蔵」を発見し、ジョニィがかつて愛する家族を難病から救うために杜王町を訪れ、「聖なる遺体」の力を使ったこと。そしてその結果命を落としたことを知るのだった。
その頃、定助に会うために東方家に向かった康穂は「瞑想の松」に近づいたとたん、何者かに地下に引きずり込まれてしまうのだった。
単行本第六巻
康穂を地下室に引きずり込んだのは東方家の長男である東方常敏の子、東方つるぎであった。不可解な態度をとるつるぎを置いて康穂は外に出るが、つるぎの「他人の顔が認識できなくなる」スタンド能力を受け、行動不能に陥り、再びつるぎの暮らす地下室へと戻らざるを得なくなってしまう。
そこで康穂は、つるぎから「東方家の長男は代々10歳になると必ず病気になる」と聞かされる。その後、疲れ果てた康穂は眠りについてしまう。しかし、突如謎の男、八木山夜露が現れ、彼女に襲いかかるのだった。
単行本第七巻
つるぎの行動を不審に思った定助は、彼を追って動き出す。しかし、その前に憲助が立ちはだかる。定助は彼に「吉良吉影を殺したのあなたか?」問いかける。憲助は否定し、吉良こそが東方家に伝わる謎の奇病を克服する手がかりだったと語るのだった。そして、定助と憲助はつるぎのもとへ向かうが、途中で何者かのスタンド攻撃を受けてしまう。敵の「自分の体に物体が向かってきてしまう」能力から地下室へ逃げ込んだ二人は、敵の正体が、東方家の設計を手がけた建築家の八木山夜露だと、つるぎから聞かされるのだった。さらに、眠っていたはずの康穂が忽然と姿を消してしまう。憲助は「匂いを追跡する」能力で追跡、倒れていた康穂を発見する。だが、「岩」に擬態した夜露に、定助たちは追い詰められてしまう。
登場人物・キャラクター
東方 定助 (ひがしかた じょうすけ)
壁の目で広瀬康穂に発見された、記憶喪失の青年。肩にジョースター家の家系に特徴的な星型の痣を持つ。発見時に唯一身につけていた水兵帽から吉良吉影という男との関わりが明らかになるが、のちに自身が吉良吉影と半分融合した存在であると知ることになる。 その影響で睾丸を4つ持ち、発見時にそれを見てしまった広瀬康穂に衝撃を与える。また、スタンド「ソフト&ウェット」が発現しており、記憶を失っているがスタンドは使いこなしている。スタンドの能力は、体から出すシャボン玉のようなものが触れた物体から、一時的に水分や視力など何かを奪うというもの。当初は肩の痣からシャボン玉が出現していたが、やがて体の中央に碇のようなマークが描かれた人型のビジョンを持つようになる。 なお、東方定助の名は、身元を引き取られた東方憲助によって名付けられたもので、本当の自分が何者なのかを探し求めている。
広瀬 康穂 (ひろせ やすほ)
東方定助と行動を共にする本作のヒロイン。19歳の大学一年生。東方定助を壁の目で発見したことが縁となり、記憶を失っている彼の正体探しに協力することとなる。やがて東方定助と同じく、歯型の傷を受けたことによってスタンドが発現。「ペイズリー・パーク」と名付けられたスタンドは、様々な情報システムを利用して広瀬康穂自身や守るべき対象を安全な方向へ誘導する能力を持つ。 また、危機が差し迫ると携帯電話などに選択肢を表示し、その解答に応じて役立つアイテムを出現させる。
東方 常秀 (ひがしかた じょうしゅう)
東方憲助の息子で次男。18歳。広瀬康穂の幼なじみで、彼女に一方的な好意を抱いている。そして彼女が東方定助を気にかけていることに強い嫉妬心を持ち、父親の東方憲助が彼を引き取ったことを心よく思っていない。東方定助が発見された壁の目付近において、彼と同様に歯型の傷を受け、やがて自身にもスタンド「ナット・キング・コール」が発現する。 スタンドの能力はネジとナットを対象に打ち込み、そこから分解するというもの。相手が人間の場合は出血を伴わず、かつ違う部位と組み替えることも可能となっている。
東方 憲助 (ひがしかた のりすけ)
身寄りのない東方定助を引き取り、後見人となった東方家の当代家長。59歳。第7部『スティール・ボール・ラン』の登場人物ノリスケ・ヒガシカタの曾孫にあたる。なお、経営するフルーツ専門店「ふるうつ東方」は、曾祖父がレースの賞金をもとに始めたフルーツの輸入事業を継いだもの。 名前も元は「常助」だったが、現在は四代目 東方憲助を名乗っている。東方家の長男が代々罹患している奇病を克服したいと考えており、東方定助を引き取ったのも、その秘密と密接な関係をもつ。また、スタンド使いでもあり、ジグソーパズルが組み合わさったような人型のビジョンのスタンド「キング・ナッシング」を使う。 主な能力は対象の匂いを可視化して追跡するというものだが、戦闘には不向きなスタンドである。
東方 常敏 (ひがしかた じょうびん)
東方憲助の息子で長男。東方つるぎの父親。32歳。世界各国を渡り歩くビジネスマンだが、土産物のセンスは若干微妙。また、熱心なクワガタムシのブリーダーでもある。相田みつをのファンであり、会話の中に彼の名言がしばしば引用されている。スタンド使いでもあり、対象の温度を部分的に上昇させる能力を持つ。
東方 大弥 (ひがしかた だいや)
東方憲助の娘で次女。16歳。幼いころに壁の目の付近で転倒して怪我を負い、ほとんど視力を失ったかわりにスタンドが発動する。「思い出を共有する」ことを幸せと考えており、その願望を反映したスタンド「カリフォルニア・キング・ベッドちゃん」は、彼女が決めたルールを破った者から大事な記憶をチェスの駒のようなものに封印して奪い、それを追体験することができる。 そして父から自分の世話役に指定された東方定助を気に入り、彼の記憶を奪って新しい思い出をいっしょに作ろうとした。また、東方定助の大事な記憶となっている広瀬康穂に対抗心を抱き、本人曰く、彼女よりも胸の大きいことが自慢。 なお、スタンド名は「ちゃん」までを含んだものが正式名称。
東方 つるぎ (ひがしかた つるぎ)
東方常敏の息子だが、東方家の長男が代々罹患する奇病を遠ざけるための風習に従い、女の子のような出で立ちで育てられている。年齢は9歳。広瀬康穂に特別な好意を寄せている。当初は病気を治療することを条件に出されて八木山夜露に加担し、東方定助の敵となっていたが、やがて協力的な立場となる。 スタンド「ペーパー・ムーン・キング」を使い、折紙で作った動物に触れた者の顔認識や言語認識を混乱させる能力を持つ。
東方 鳩 (ひがしかた はと)
東方憲助の娘で長女。24歳。職業はモデル。プライベートで荒川静香とスケートに行くなど、広い交友関係を持つ。しかしハワイを日本だと思ってパスポートの準備を忘れるなど、極端に常識が欠落している一面を持つ。
虹村 京 (にじむら きょう)
東方家の家政婦。22歳。メイド服にポリスハットという奇抜なファッションだが、態度は常に冷静であり、淡々と仕事をこなす。しかし、その正体は吉良吉影の妹。第7部『スティール・ボール・ラン』の主人公・ジョニー・ジョースターの子孫でもある。東方家には何か秘密があるとにらんで潜入しており、また唯一残された家族である入院中の母・ホリー・ジョースターを見守っている。 そのため、母親に接近した東方定助を敵と認識し、スタンドによる攻撃を行った。スタンド「ボーン・ディス・ウェイ」は、バイクに乗った人型のスタンド。バイクやヘルメットもスタンドである。 ターゲットが何かを「開く」という行為をきっかけに出現する自動追尾型のスタンドで、強烈な冷気を発しながら突進を繰り返す。その後、東方定助が敵でないと分かると協力関係を結び、東方定助の体に吉良吉影が混じっているという重大な秘密を伝える。
八木山 夜露 (やぎやま よつゆ)
東方家の邸宅や、「ふるうつ東方」のテンポを設計した建築家。東方定助が自身の正体を知ることを阻止するため、殺害を計画する。スタンド使いであり、ターゲットとした人間の中心に向かって「タンク」や「毬栗」など、指定した物体を多数集中させる能力のスタンド「アイ・アム・ア・ロック」を使う。 また、「岩人間」と呼ばれる特殊な体質の持ち主。岩のようになるのはあくまで「体質」であり、スタンド能力ではない。東方定助と東方憲助を危機に追い込むが、東方定助の機転によって海中へ転落。そして肺の中の空気を奪われたことによって敗北し、その場で溺死してしまう。
笹目 桜二郎 (ささめ おうじろう)
東方定助を最初に襲撃した敵スタンド使い。杜王町に住むサーファーで、スタンドを悪用して女性を支配下に置くことを趣味とする。スタンド「ファン・ファン・ファン」は、体に傷をつけた相手の真上に立つことで能力を発動。手足に矢印を描き、その部位を思い通りに操る。 しかし、本来ターゲットとしていたのは東方定助ではなく、恨みを抱く吉良吉影であり、彼を狙ってマンションの真上の部屋を借りていた。そのため吉良吉影の部屋を訪れた東方定助を間違って攻撃したうえ、敗北を喫する。
吉良 吉影 (きら よしかげ)
第7部『スティール・ボール・ラン』の主人公・ジョニー・ジョースターの子孫であり、虹村京の兄。職業は船医。東方定助が広瀬康穂に発見されたときに唯一身につけていた水兵帽の持主であったことからその存在が知られるが、その後、東方定助の発見されたのとほぼ同じ場所ですでに死んでいるのを発見される。 享年29歳。なお、第4部に登場する同姓同名の殺人鬼とは別人である。
岩人間 (いわにんげん)
『ジョジョの奇妙な冒険 Part 8 ジョジョリオン』に登場する、特殊な体質を持った人間の総称。八木山夜露が、その体質を持った最初の登場人物となる。その名の通り、皮膚を岩のように硬化させることが可能であり、岩のようになっている間は通常の生命活動を停止している。その状態で様々な過酷な状況から身を守るが、活動の再開には皮膚呼吸が必要であり、東方定助にその弱点を突かれた八木山夜露は、水中で敗北を喫している。 なお、破壊は非常に困難だが、体の一部が欠けた場合は出血を伴う。
場所
壁の目 (かべのめ)
『ジョジョの奇妙な冒険 Part 8 ジョジョリオン』の舞台である杜王町に存在する、特殊な地質現象によって隆起した土地の名称。作中の3月11日に起きた震災によって出現したものとされる。「壁の目」の名称は、地元の小学生が命名したものが広がった。広瀬康穂が東方定助を発見した場所であるが、この付近で負傷した者はスタンド使いとなるなど、謎の多い土地である。 また、近くに埋めたふたつの物が混じりあってしまうという現象も引き起こしている。東方定助の体はその影響で、吉良吉影と混じりあっていることが後に判明する。
杜王町 (もりおうちょう)
『ジョジョの奇妙な冒険 Part 8 ジョジョリオン』の舞台となる町。M県S市紅葉区にに存在する町とされている。町の名産品は牛たんミソ漬け。別荘地帯と観光、およびマイクロ・チップ部品の製造産業が町の主な財源。また、大震災で深刻な被害を受けており、壁の目によってライフラインの復旧が遅れていることが問題となっている。なお、第4部の舞台となる町と同じ名称だが、物語の上での直接的な関連は無い。
関連
ジョジョの奇妙な冒険シリーズ (じょじょのきみょうなぼうけんしりーず)
荒木飛呂彦の代表作。最初は「週刊少年ジャンプ」、Part7『スティール・ボール・ラン』の途中から「ウルトラジャンプ」に舞台を移して長期にわたって連載。「日本のメディア芸術100選」(2006年)のマン... 関連ページ:ジョジョの奇妙な冒険シリーズ
書誌情報
ジョジョリオン 18巻 集英社〈ジャンプコミックス〉
第1巻
(2011-12-19発行、 978-4088703114)
第2巻
(2012-04-19発行、 978-4088704135)
第3巻
(2012-09-19発行、 978-4088705262)
第4巻
(2013-05-17発行、 978-4088706429)
第5巻
(2013-10-18発行、 978-4088708300)
第6巻
(2014-03-19発行、 978-4088708911)
第7巻
(2014-05-19発行、 978-4088800875)
第8巻
(2014-10-17発行、 978-4088802381)
第9巻
(2015-02-19発行、 978-4088803142)
第10巻
(2015-07-17発行、 978-4088804361)
第11巻
(2015-12-18発行、 978-4088805481)
第12巻
(2016-03-18発行、 978-4088806471)
第13巻
(2016-07-19発行、 978-4088807423)
第14巻
(2016-12-19発行、 978-4088808802)
第15巻
(2017-07-19発行、 978-4088808826)
第16巻
(2017-09-19発行、 978-4088812335)
第17巻
(2017-12-19発行、 978-4088814438)
第18巻
(2018-07-19発行、 978-4088814520)