スーサイドガール

スーサイドガール

謎の老人・流汐の導きで救世の「自殺少女」となった青木ヶ原星と、人間を自殺させる悪魔・フォビアの戦いを描いた異能バトルアクション。コミックス各巻末には、星の婚約者・朝比奈太陽に焦点を当てた短編「太陽が沈むまで」が掲載されている。集英社「ウルトラジャンプ」2020年5月号から2024年2月号まで連載。

正式名称
スーサイドガール
ふりがな
すーさいどがーる
作者
ジャンル
自殺
 
魔法使い・魔法少女
レーベル
ヤングジャンプコミックス(集英社)
巻数
既刊10巻
関連商品
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あらすじ

首吊少女の誕生

青木ヶ原星は婚約者・朝比奈太陽の後追い自殺を決行するべく、自殺オフ会に参加する。しかし、オフ会の主催者・流汐が用意したものはふつうの練炭ではなかった様子で、参加者の多くは自殺願望を失い、晴れやかな表情で帰途に就いた。一方、星だけは依然として自殺願望を維持しており、帰宅後もさまざまな方法で自殺を試みたが、失敗に終わる。そんな星の前に流汐が現れ、自殺を望むならば、ある少女を救えと言い放つ。星は流汐の言葉に従い、眼鏡の女子高校生の自殺を阻止するが、星の説得に応じたはずの彼女は線路に飛び降りて死んでしまう。流汐によれば、眼鏡の女子高校生は人間を自殺に駆り立てる悪魔・フォビアに取り憑かれていたと語る。また、星にはフォビアと戦う自殺少女の素質があり、自殺の発生から4時間44分44秒以内にフォビアを駆除できれば、その自殺をなかったことにできるという。流汐から変身用の魔導具を授かった星は首吊少女へと姿を変え、フォビアに戦いを挑むのだった。

生きる歓び

青木ヶ原星眼鏡の女子高校生を救ったことで使命感に目覚め、流汐シーサイドカフェでアルバイトをしながら、自殺少女としての活動を続けることを決意する。しかし、星の魔導具は血のような液体で真っ黒に染まっていた。流汐によれば、これは星の精神の負傷を意味しており、「生きる歓び」を実感して傷を癒さなければ、大変なことになるという。魔導具を没収された星はレジャーを満喫するが、つねに孤独がつきまとい、歓びは見いだせなかった。無情にも星の回復を待たずして、フォビアによる少年の飛び降り自殺が発生する。星はフォビアに戦いを挑むが、生身では歯が立たず、窮地に陥ってしまう。駆けつけた流汐は星に撤退をうながすが、星は少年を見捨てることを拒み、一歩も引かなかった。こうして再び首吊少女に変身した星はフォビアを撃破し、少年の自殺を覆すことに成功する。そればかりか、少年を救い出せたことに「生きる歓び」を実感し、自らの精神の傷を癒すことにも成功するのだった。

手首切少女の自殺配信

廃寺で集団自殺が行われることを知った流汐は、青木ヶ原星と人気アイドルにして自殺少女金門橋満天フォビアの殲滅(せんめつ)を指示する。手首切少女へと姿を変えた満天によってフォビアは駆逐されたが、星が自殺志願者に帰宅をうながしている最中に事件が起こる。満天が正体不明のフォビアに襲われ、自殺してしまったのだ。しかも、その光景は873万人の登録者数を誇る「満天ちゃんねる」を通して配信され、ウェルテル効果による自殺の連鎖が始まってしまう。これを受けて、星は満天のアカウントで自殺のライブ配信を行い、満天を自殺させたフォビア・を誘き出すことに成功するが、彼女の正体はフォビアとは一線を画すメガロフォビアだった。戦いは熾烈(しれつ)を極めたが、視聴者の「高評価」、そして魂だけの存在として自殺者の森に送られていた満天のエールが力となり、星は奇跡的な勝利を収める。さらに、満天が自殺者の森に逃げ込んだ歪にトドメを刺したことで、満天の自殺はリセットされた。こうして一連の騒動は幕を閉じたが、歪はメガロフォビア・永遠夜から心臓を授かり、復活を遂げていた。

フォビアの卵

流汐自殺者の森から帰還した金門橋満天フォビアの卵が付着していることに気づき、その処分を試みる。しかし、処置の最中に卵からハーピーの雛が孵化してしまう。流汐と満天は咄嗟に武器を構えたが、青木ヶ原星は誰も殺していない雛の処分に反対する。そして、全責任を引き受けることを約束し、雛を育てることにするのだった。メランと名づけられた雛は星に懐いて学校にまでついて来るようになり、フォビアを感知する能力を発揮して、星の活動をアシストするようになった。

過服薬少女の誕生

青木ヶ原星は「目々戸森市7大自殺聖地」の水蛭子岬で女子中学生の心中を食い止める。救われた少女の片割れである新谷響夕空は、奇しくも流汐自殺少女の素質を見いだし、魔導具を与えていた少女だった。運命的なものを感じた夕空は星との無理心中を望むようになり、過服薬少女に変身して星を拉致する。これを受けて、星に特別な感情を抱くようになっていた金門橋満天が夕空を追走し、星の争奪戦へと発展するが、突如として水蛭子岬のフォビアが出現し、星と夕空を飲み込んでしまう。体内で夕空の過去を幻視した星は、夕空と家族を引き裂いた水蛭子岬のフォビアに怒りを覚え、駆けつけた満天とのコンビネーションで水蛭子岬のフォビアを撃破する。しかし水蛭子岬のフォビアは、どこからともなく現れた謎の幼女の血を受けて、人型の「進化(スーパー)フォビア」として再誕する。星と満天はパワーを増した水蛭子岬のフォビアを相手に苦戦を強いられるが、星の言葉によって過去を乗り越えた夕空が仲間に加わり、ついに水蛭子岬のフォビアの討伐を成し遂げるのだった。

被弾丸少女の乱入

青木ヶ原星は高層ビルからの同時多発投身自殺の阻止に成功するが、という三体のメガロフォビアを同時に相手取ることになり、苦戦を強いられる。彼女たちの呼び出した薔薇のフォビアはこれまでにない強敵で、追い込まれた星は死を覚悟する。その時、見知らぬ自殺少女が乱入し、星は九死に一生を得る。強力な自殺少女の参戦に星は快哉の声を上げるが、謎の自殺少女は星に銃口を向け、フォビアのみならず、自殺少女も全滅させると宣言するのだった。金門橋満天新谷響夕空が星の救援に現れ、自殺少女たちのあいだに一触即発の空気が漂い始めるが、遅ればせながら駆けつけた流汐が一喝すると、謎の自殺少女はあっさりと銃を下ろしておとなしくなった。やがて自殺少女たちの追及を受けて流汐は重い口を開き、「謎の自殺少女」ことルナ・エッフェルと自らの過去について語り始めた。

登場人物

自殺少女の素質を持つ登場キャラクターの名称は、実在する自殺の名所が元ネタになっている。例えば、金門橋満天はゴールデンゲートブリッジ、新谷響夕空はナイアガラの滝をもじった名称である。それ以外の登場キャラクターに関しても、自殺した著名人の名前や自殺に関連する語句をもじったネーミングが多い。

登場人物・キャラクター

青木ヶ原 星 (あおきがはら きらり)

自殺した婚約者・朝比奈太陽との再会を夢見る女子高校生。桃色の髪を三つ編みのピッグテールにしている。感情表現が豊かで、「ワギャン」や「ぶっ吊るす」などの口癖がある。「海馬がヤバイ」と揶揄されるほど物覚えが悪くド天然だが、太陽の遺言を胸に笑顔を絶やさず前向きに生きている。四回も転校経験があり、不登校の時期もあったが、太陽の影響で再び学校に通うようになった。太陽の自殺を受けて、結婚できる年齢になった時点での後追い自殺を決意し、他者との交流を絶って一人で暮らしていた。だが、16歳の誕生日に参加した自殺オフ会で自殺少女としての素質を見いだされ、首吊少女に変身してフォビアとの戦いに身を投じることになった。フォビアとの戦いで蓄積する精神の傷を癒すには「生きる歓び」を見つける必要があるが、青木ヶ原星はフォビアから人を助けること自体に歓びを感じるため、自殺少女としての適性が極めて高く、流汐から活躍を期待されている。当初は娯楽を心から楽しむことができなかったが、シーサイドカフェでのアルバイトや仲間との交流をきっかけに日常に幸せを見いだせるようになった。しかし、太陽に対する申し訳なさに苛まれ、「ジグジグ」と胸が痛むようになってしまった。自己評価が低く、元気だけが取り柄と思い込んでいるが、カフェの制服として通用する品質のメイド服を自作したり、カフェで提供できるレベルのスイーツを考案したりと、意外な才能を発揮して流汐を驚かせている。なお、金門橋満天からは「キラピッピ」という愛称で呼ばれている。

首吊少女 (はんぐどがーる)

青木ヶ原星の自殺少女としての姿。星が首吊ロープ型の魔導具で首をつることで、桃色を基調としたエプロンドレス風の「自殺装束(スーサイドレス)」をまとった首吊少女に変身できる。この際、小振りだったピッグテールがボリュームアップし、腰に届くほどの長さとなる。ロープを用いた戦闘が持ち味で、対象の首をくくる断末魔法「トゥインクルハンガー」を多用する。歪と交戦した際には戦いを見守る人々の応援を受けてパワーアップし、断末魔法「メテオブレイズ」という強力な決め技を披露した。

金門橋 満天 (きんもんばし まんてん)

「美しい死」を求める女性アイドルで、自殺少女でもある。年齢は17歳。もみあげの長い青髪おかっぱ頭で、後頭部に蝶の髪飾りをつけている。スレンダーな体型で、「スモールペッタン」と揶揄されている。一人称が「ボク」のいわゆる「ボクっ娘」。自分の美しさを自覚し、老醜を晒す前に自らの意思で人生に幕を引きたいと考えており、両手首にはリストカット跡がある。アイドルとしては武道館で単独ライブを実施するほどの人気の高さで、1st写真集「STARRY SKY」はベストセラーになっている。インフルエンサーとしても有名で、「満天ちゃんねる」は873万人の登録者数を誇り、取り上げた商品が即完売するほど影響力がある。しかしオンオフの切り替えが激しく、平時は気だるげで、気に入らない相手を「ドブネズミ」と罵ることもある。自殺少女としての実力は10年に一人の逸材と評されるほどで、消極的ながら手首切少女に変身して流汐に協力していた。歪との戦いを通して青木ヶ原星を溺愛するようになり、これをきっかけに自殺少女としての活動にも積極的になった。なお、当人は星との関係を「トモダチ」と表現しているが、窓を割って星の部屋に侵入するなど、ストーカーまがいの行動に出ることも少なくない。新谷響夕空の胸の大きさを妬んでおり、のちに星を巡って争う好敵手となる。

手首切少女 (りすかがーる)

金門橋満天の自殺少女としての姿。満天が折りたたみカミソリ型の魔導具で手首を切ることで、黒を基調とした和風ゴシック系の「自殺装束(スーサイドレス)」をまとった手首切少女に変身できる。この際、頭部に勾玉型の突起が六つ出現し、鬢(びん)が太腿の辺りまで伸長する。能力は近接戦闘に特化しており、固有スキルとして背丈ほどもある大きな刃で対象を斬り裂く断末魔法「ゴールドソードレイン」、間合いに入ったものを自動的に切断する断末魔法「フルスカイディスタンス」などがある。新谷響夕空と交戦した際には、0.01ミリグラムでアフリカ象も眠らせてしまう強力な薬を打ち込まれているが、意識を失うことなく戦闘を継続している。ただし、これが手首切少女としての特性なのか、満天の気力のなせるワザなのかは不明である。

新谷響 夕空 (にやがら あかね)

「運命の人」を求める女子中学生。年齢は15歳。ロングヘアにしていて眉毛が太く、縁なし眼鏡をかけており、瞳の中心に十字が描かれることが多い。また、長身でメリハリのある体つきで、「ビッグボイン」と評されるほど胸が大きい。何事もそつなくこなす優等生タイプで、お嬢様風の丁寧な言葉づかいだが、雰囲気に反して行動力がある。10年前に夕空の父が起こした無理心中の影響で、心中を「愛の証明」と解釈するようになり、「運命の人」を求めてさまざまな女性との交際と心中未遂を繰り返すうちに「死にたがりの心中少女」と呼ばれるようになった。6年前には流汐の主催した自殺オフ会に参加し、自殺少女としての素質を見いだされている。しかし、自殺少女として活動することはなく、「運命の人」探しに明け暮れていた。やがて、水蛭子岬で出会った青木ヶ原星を「天使様」と慕うようになり、彼女を拉致して心中を成し遂げる目的で過服薬少女に変身する。しかし、星の言葉を受けて思い直し、星や金門橋満天と協力して因縁の相手である水蛭子岬のフォビアを撃破した。その後は学業、シーサイドカフェでの職業体験、自殺少女としての活動を掛け持ちしている。なお、満天と同様にストーカー気質があり、彼女とは星を奪い合うライバル関係になる。

過服薬少女 (おーばーどーずがーる)

新谷響夕空の自殺少女としての姿。夕空が薬瓶型の魔導具から取り出した錠剤を飲むことで、白を基調としたナース風の「自殺装束(スーサイドレス)」をまとった過服薬少女に変身できる。この際、眼鏡が消えて髪が緑色になり、髪と舌に毒々しい斑点が出現する。固有スキルとして無数の注射器を飛ばす断末魔法「トワイライトミサイル」、幻覚作用のある霧を散布するドリーミングミスト、特定の能力を向上させるバーストステロイドなど、攻守に役立つさまざまなものがある。また、彼女の唾液を経口摂取することでも薬効が得られ、この唾液には傷を癒すヒールシロップ、昏睡させるトキシシロップなどの種類がある。過服薬少女となった夕空は初めて変身したにもかかわらず、上述の能力を巧みに使いこなし、10年に一人の逸材と評された金門橋満天と互角の戦いを繰り広げている。

ルナ・エッフェル

43年前まで、流汐の相棒としてフォビアとの戦いを繰り広げていた自殺少女。赤毛でニット帽をかぶり、フード付きのパーカーを身につけ、耳にバツ印の装飾品をつけている。攻撃的な性格で口調は荒々しく、一人称は「俺」。過去や未来にとらわれず今を生きることを重視しており、他人にも過去や未来への執着の放棄をせまる悪癖がある。流汐に惚れ込み、一方的ながらキスも済ませていたが、年齢差などを理由に交際を拒否されていた。「歴代最強の素質」と「一騎当千の精神力(パワー)」を兼ね備えた逸材で、その実力は流汐に世界中のフォビアを駆逐できると夢想させたほどだった。しかし、神民寺院の事件で一夜にして918体ものフォビアを討伐する事態となり、戦いの果てに肉体を失い、魂だけの存在になってしまった。現在は銃型の魔導具に意識を宿して現世にとどまっている状態だが、魔導具を拾った「そばかすの少女」の体を乗っ取ることで、一時的に被弾丸少女として活動できる。青木ヶ原星とメガロフォビア三姉妹の戦いに乱入し、結果的に星の命を救っているが、「今を生きていない」として星への協力を拒否し、フォビアだけでなく、自殺少女までも全滅させると宣言した。なお、流汐への恋心は現在進行形であり、彼の言葉には素直に耳を傾ける。

被弾丸少女 (とりがーがーる)

ルナ・エッフェルの自殺少女としての姿。ルナが銃型の魔導具で側頭部を撃ち抜くことで、黒と赤を基調としたゴシックパンク風の「自殺装束(スーサイドレス)」をまとった被弾丸少女に変身できる。断末魔法「月光丸(ゲッコーガン)」の威力は凄まじく、青木ヶ原星とメガロフォビア三姉妹の戦いに乱入した際には数十体の薔薇のフォビアを単独で殲滅(せんめつ)し、三姉妹すら退けている。

流汐 (るしお)

時に優しく、時に厳しく自殺少女を導く謎の老人。総白髪で口髭を蓄え、黒縁の眼鏡をかけている。十字架付きのクロスタイがトレードマークで、フォーマルなジレスタイルを好んでいる。愛車はロールスロイスで、外出時にはハットとコートを身につけることもある。「人生は素晴らしいもの」という哲学の持ち主で、永遠夜とは対立関係にある。平時は自ら経営するシーサイドカフェでマスターを務めているが、自殺サイト「スーサイドカフェ」の管理人という裏の顔もあり、定期的に自殺オフ会を主催している。しかし、自殺を助長する意思はなく、魔練炭を用いて参加者からフォビアを落とすこと、自殺少女の素質がある持ち主を探し出してスカウトすることを目的としている。戦力としては自殺少女には及ばないが、特殊精製した聖水や可搬式魔練炭を用いて自らフォビアと戦うこともある。また、奥の手を隠している節もあるが、多くを語ろうとはしない。佇まいは紳士然としているがおちゃめなところもあり、悪ふざけのようなカフェのメニュー名に性格が滲み出ている。また、感動すると「素晴らしい(アメイジング)」「超美味(グレートヤミー)」など英語が出てしまうこともある。コーヒーの味には一家言あり、村上幸雄からは「コーヒーに命を懸けるストイック野郎」と評されている。

メラン

ハーピーの雛と目されている鳥型のフォビア。自殺者の森より帰還した金門橋満天に付着していた卵から孵化した。二頭身で、大きさは人の頭部ほど。前面は白く、背面は露草色で黒い斑点がある。顔には縁取りがあり、頰は赤く、嘴は小振りで蠟膜が発達している。目はつぶらで、瞼を縫い付けられたような見た目ながら開閉に支障はない。流汐に処分されそうだったところを青木ヶ原星に救われ、彼女の使い魔のような立ち位置におさまった。星からは「自殺少女とフォビアをつなぐ懸け橋」「朝比奈太陽の魂を見つける鍵」と期待されているが、メランが人を殺した場合は星が責任を取る約束になっている。フォビアを感知する能力が備わっており、この能力を生かして自殺少女の活動に貢献している。また、瘴気が濃くなると無数の眼球と六本の尾羽を持つ怪鳥へと変貌する。この姿なら自殺少女を乗せて飛翔することも可能だが、瘴気が薄まると雛鳥の姿に戻ってしまう。なお、星の頭の上がお気に入りで、やたらと頭に乗って羽ばたきたがる。この動作には人を憂鬱にさせる力があり、星が「死にたい」と呟きながらメランを引き剥がす展開はギャグシーンのお約束となっている。命名は星によるもので、「憂鬱(メランコリー)」に由来する。

永遠夜 (えんや)

自殺少女を闇に堕として世界に「闇より昏い虚無」をもたらそうと企んでいるメガロフォビア。「希死念慮のメガロフォビア」の異名を持つ。見た目は栗色の長髪にベールを被せたグラマーな修道女で、額、顎、右目の下、左目の下に二つずつホクロがあり、つねにほほ笑んでいる。また、外からはうかがい知れないが、心臓が13個ある。ふだんは目々戸森市にある教会のような施設で児童の面倒を見ており、母親代わりとして慕われている。しかし、神の教えを説く立場にありながら、従来の教義を真実から目を逸らすためのウソと否定し、真の教義として「絶命信仰(スーサイドグマ)」を掲げている。その内容を要約すると「人生は苦しみの連続」「肉体は魂の牢獄」「自殺して牢獄を壊せば魂は自由になる」というもので、人生の素晴らしさを訴える流汐とは思想が根本から異なり、彼を敵視している。歪、無、崩の三姉妹を従えており、特に歪に目を掛けている。彼女が自殺少女に敗れた際には、自らの心臓を分け与えて蘇生させた。この処置は無から甘いと評されているが、飴だけでなく鞭も強烈で、歪の慢心を咎めたうえで苦痛を伴う「説教部屋」に放り込むというお仕置きを敢行した。なお、神民寺院への関与が匂わされている。

(ゆがめ)

永遠夜を母親と仰ぐメガロフォビア三姉妹の三女。空の悪魔・ハーピーの一族で、フォビアになって間もない。見た目は右目を瞑った黒髪ツインテールの少女で、へそが見える丈の袖なしブラウスにホットパンツを合わせ、髑髏モチーフのリボンタイで胸元を飾っている。会話は可能だが、片言でしか話せず、情緒も安定していない。永遠夜からは反抗的でヤンチャな娘と評されながらも目を掛けられているため、無に妬まれている。また食事が大好きで、ご馳走を前にすると目を輝かせてガツガツと食べる。戦闘時には衣服が消失し、胸部と腰部が羽毛で覆われ、両腕が硬質化し、足が鳥の趾(あしゅび)のようになる。さらに眼球が角に、ツインテールが翼に変化し、腰部からも翼が生える。金門橋満天を自殺させ、彼女のファンを次々と後追い自殺させることに成功するものの、功を焦って青木ヶ原星に敗北した。その後、自殺者の森で満天に一刀両断されて死亡したが、永遠夜から心臓を与えられて復活した。これをきっかけに星を倒すことに執着するようになり、やがて姉妹との共闘を拒んで拠点から出奔した。なお、当初は三姉妹の共通モチーフである黒の縞模様が入った赤いリボンが付いていなかったが、復活と同時に右目の位置にリボンが出現した。

(なかれ)

永遠夜を母親と仰ぐメガロフォビア三姉妹の次女。海の悪魔・リヴァイアサンの一族で、「不完全みのメガロフォビア」の異名を持つ。見た目は幼い少女で、金髪を無造作なミディアムショートにしており、俗に言う麻呂眉で、瞳には光点が四つある。また、右耳の位置にはファーのようなもの、左耳の位置には黒の縞模様が入った赤いリボンが付いており、腿丈のホルターネックチューブトップワンピースを着て、袖を余らせている。頭足類を思わせる吸盤のある腕を生やすことが可能で、この腕には歪を一時的に押さえつけるほどのパワーがある。また、首を切断されても絶命せずに平然と会話を継続するなど、底知れぬ力を秘めている。語尾に「っち」を付けて話す癖が幼い印象を強めているが、人間を「ゴミムシ」と表現するなど、言葉選びは辛辣。永遠夜のお気に入りである歪への当たりも強く、顔を会わせるたびに嫌みを言ったり、罵ったりしている。私情を捨て、歪に共闘を持ち掛ける場面もあるが、歪の反発を受けて姉妹ゲンカへと発展した。水蛭子岬のフォビアに血を与えて強化したり、薔薇のフォビアを放ったり、あらゆる手段を使って自殺少女を倒そうとしていたが、ルナ・エッフェルとの直接対決に敗北し、右腕に再生困難な深手を負ってしまった。

(くずれ)

永遠夜を母親と仰ぐメガロフォビア三姉妹の長女。大地の悪魔・バハムートの一族で、「苦しみのメガロフォビア」の異名を持つ。見た目はスタイル抜群の長身の女性で、引きずりそうなほど長い紫色の長髪を二房に分けて、毛先に近い位置でくくっている。口許を覆うヴェールには黒の縞模様が入った赤いリボンが付いており、袖のないイブニングドレスにハイヒールを合わせている。全身の筋肉を膨張させることが可能で、力を解放すると平時とは別人のような体貌に変化する。腕部など特定の部位だけを大きくすることも可能で、巨大化させた腕を用いて放つパンチには舗装路を粉砕するほどの威力がある。また、体から木の枝のような形状の頑強な器官を生やす能力も有しており、攻防に役立てることができる。異様に無口で感情表現に乏しく、目の前で無と歪が壮絶な姉妹ゲンカを始めた際にも止めに入らず、黙々とドリンクを楽しんでいた。しかし、無がルナ・エッフェルに追い込まれた際には身を呈して救い出し、拠点へと連れ帰っている。また、無が歪への嫉妬心から自傷行為に及んだ際には、無を抱き締めて落ち着かせるなどの姉らしい振る舞いをしている。

水蛭子岬のフォビア (ひるこみさきのふぉびあ)

水蛭子岬に巣食う群れのフォビア。毛玉のような形状をしていて大きな口があり、歯は二列ある。また、出し入れが可能な枝分かれした人の手のような器官が無数に生えている。個々のサイズはふつうの自動車ほどもあり、人間を丸呑みできる。密集してさらに巨大なフォビアに擬態することも可能で、仕留めるには群れの中心に潜む本体とも言うべき一つ目のフォビアを倒す必要がある。水蛭子岬が「目々戸森市7大自殺聖地」に数えられるようになった元凶であり、10年前に発生した一家心中事件を皮切りに多くの人間を自殺させ、その命を糧に成長を続けていた。かつて新谷響夕空を取り逃がしたことを悔やんでおり、彼女が自殺少女になってから捕食し、その力を得ようと企んでいた。集合と離散を繰り返して青木ヶ原星を翻弄するものの、金門橋満天とのコンビネーション攻撃により、敗北を喫している。しかし、無の血を受けて連獅子のごとき頭髪、珊瑚のような角、八つの目を持つ半魚人のような姿の「進化(スーパー)フォビア」として復活し、再び自殺少女に牙を剥いた。この際、人語を発して夕空のトラウマを抉るが、彼女の心を折るには至らず、自殺少女たちの連携攻撃によって撃破されている。

薔薇のフォビア (ばらのふぉびあ)

無と崩の血液から出現した人型のフォビア。頭部は薔薇のブーケのような形状で髪が長く、顔には口だけがあり、歯が剥き出しになっている。首が異様に長く、両腕を前に突き出している。胴体はセーラー服のようなデザインで、胸元にはメガロフォビア三姉妹が付けているものと同種のリボンが付いており、鋏で武装している。スカートの裾を持ち上げる動作をすると敵の周囲に無数の薔薇が出現し、その薔薇から鋏を構えた腕を生やして全方位攻撃を仕掛けることができる。また、五指から糸のようなものを伸ばして、対象の動きを封じることもできる。青木ヶ原星と交戦した際には、彼女の必殺技である断末魔法「トゥインクルハンガー」を鋏で軽々と迎撃し、そのまま反撃に転じて星に死を覚悟させるほど追い詰めている。しかし、飛び入りで参戦したルナ・エッフェルには上述の全方位攻撃も通用せず、手も足も出ずに敗れ去った。

朝比奈 太陽 (あさひな そる)

青木ヶ原星の婚約者であり、故人。困っている人を放っておけない知勇兼備の朗らかな少年で、クラス委員を任されていた。星からは「男子にも女子にもモテる陽キャの王様」と評されていた。祖母からは「細かい奴」と揶揄されていたが、星の髪型の些細な変化に気づくなど、細かさも魅力を引き立てる要素になっていた。照れ屋でデリカシーに欠ける一面もあり、不登校の星に「余ったプリンをもらえるから来なくてよい」という旨の暴言を言い放ったこともある。また、星がトイレの個室に隠れて一人で食事しようとしていた際には、誤解から星を泣かせてしまい、必死に宥めている。しかし、これをきっかけに連絡先を交換することになり、二人の仲が進展した。周囲を自分のペースに引き込むのが得意で、男性禁止のプリクラコーナーに迷い込んだ際には、星を抱き寄せてカップルを装い、恋人風のプリクラ写真を撮影している。この写真は星のスマホのカバーを外すと見える位置に貼付され、太陽が亡くなってからも遺されている。充実した日々を送る一方で、将来を思い描くことができず悩んでいたが、星の提案で自らの性分を生かせる街のヒーロー(警察官)を目指すようになった。中学2年生の夏には星へ早すぎるプロポーズを敢行するものの、その翌日に飛び降り自殺した。なお、プロポーズの言葉や遺書の内容はどちらも星の笑顔に関するもので、星の生き方に大きな影響を与えた。

夕空の父 (あかねのちち)

新谷響夕空の父親であり、故人。口髭と顎髭を蓄えた男性で、夕空の誕生日には妻と共にメッセージプレート付きのケーキでお祝いをするなど、温かい家庭を築いていた。しかし、10年前に水蛭子岬で妻と無理心中を決行し、帰らぬ人となった。心中の直前には最期の思い出づくりとばかりに家族でオシャレをして、各種レジャーを満喫している。自殺の方法は自動車でガードレールを突き破って海に飛び込むというもので、水没しながらも後部座席に乗っていた夕空を車外に突き飛ばし、自殺に巻き込まれるのを防いでいる。この際、助手席の妻と笑顔で見つめ合いながら沈んでいったことで夕空に強い疎外感を与え、「心中は愛の証明」という思想を植えつけてしまった。のちに水蛭子岬のフォビアの影響で海に飛び込んでいたこと、夕空の救助に成功し、安堵の笑みを浮かべていたことが判明する。

眼鏡の女子高校生 (めがねのじょしこうこうせい)

大学受験を控えた高校生の少女。ショートボブヘアで、黒縁の眼鏡をかけている。頭がよくないことを自覚し、受験に失敗するであろうことを確信しているが、眼鏡の女子高校生自身よりも母親が受験に必死になっており、生活スケジュールを徹底管理され、裕福でもないのに高額な予備校に通わされている。この状況に監視されているような息苦しさを感じ、目々戸森駅のホームで鉄道自殺を図ろうとしていたが、青木ヶ原星から「目撃者にトラウマを植えつける」「遺族に莫大な損害賠償が発生する」などの問題点を指摘されて踏みとどまり、星に悩みを打ち明けた。この際、星の説得に応じて母親と話し合うことを約束するものの、フォビアの影響で線路への飛び込みを決行し、星の目の前でミンチになってしまった。しかし、眼鏡の女子高校生を自殺させたフォビアが星によって4時間44分44秒以内に討伐されたことで、彼女の自殺は覆った。その後、口論の末に母親を殴り飛ばし、和解に至っている。

市谷 由紀夫 (いちがや ゆきお)

青木ヶ原星と同じ高等学校に通う長身瘦軀の青年。前髪の右側にボリュームを持たせたアシンメトリーの目隠しマッシュの髪型で、両目は共に隠れているが、まれに左目が覗くこともある。両耳にピアスをつけている。整った顔立ちで、幼なじみのみすゞからは頭もよいと評されている。しかし、自己評価が極めて低く、自らを容姿、頭脳、才能、情熱に欠けた平凡な人間と認識し、この先の「一番になれない人生」に絶望している。フォビアの後押しで校舎の屋上から飛び降り自殺を決行したが、星に抱き止められ、転落死を免れた。その後、星の活躍によって市谷由紀夫に取り憑いていたフォビアは駆除された。由紀夫の抱いていた絶望も、みすゞのビンタと告白によって払拭されている。

みすゞ

青木ヶ原星と同じ高等学校に通う少女。明るい色の髪を頭の左側でサイドテールにまとめている。ピアスやネックレスで身を飾っており、左腕には髪留めに使っているものと同じシュシュを巻いている。喜怒哀楽のハッキリした性格で、ギャル言葉を多用する。また強調の意味で、言葉の頭に「鬼」をつける癖がある。幼なじみの市谷由紀夫に恋をしているが、現在の関係性が壊れることを恐れて、あと一歩を踏み出せずにいた。ある日、由紀夫が星を目で追っていたことに気づき、嫉妬から仲間を引き連れて星に因縁をつけ始めるが、星の過去を知って滂沱(ぼうだ)の涙を流し、自らの軽率な行動を謝罪した。この際、星から「大切な人は突然いなくなる」「したいことをせずに生きるのは緩やかな自殺」という旨の後押しを受けている。のちに自殺願望を抱いていた由紀夫に強烈な平手打ちを食らわせたうえで、ある告白を敢行し、彼を絶望の淵から救っている。

村上 幸雄

村上珈琲店のオーナーを務める男性。肥満体で乱雑に伸びた長髪、極太の眉毛、無精髭、パンキッシュな服装が相まって近寄り難い雰囲気を放っている。その外見に反して、ひたすら豆と向き合ってきたコーヒーの求道者であり、ラテアートも修得している。特にカプチーノは絶品で、その味は「魂のライバル」と尊敬する流汐からも高く評価されている。違いのわかる客の減少に伴って店を畳もうとしていたところ、流汐のシーサイドカフェが客足を伸ばしていることを知り、偵察に乗り出した。しかし、あからさまな変装が仇となり、ストーカーとカンちがいされてしまった。この際、流汐のカフェが繁盛している理由を、芸能人を含む美少女がメイド姿で働いている点に尽きると分析し、去り際には流汐に対して「悪魔(メイド)に魂を売った」という旨の捨て台詞を吐いている。その後、フォビアの影響により、カプチーノで大量の薬を飲み下して自殺したが、青木ヶ原星と仲間たちがフォビアを討伐したことで、自殺は覆された。のちに村上珈琲店の新装開店に伴って髭を剃り、髪型を整えて小ざっぱりした外見に変貌する。

集団・組織

神民寺院 (しんみんじいん)

かつてアメリカに存在していた新興宗教。サングラスがトレードマークの男性教祖を中心に「God Peoples Agricultural Project(V town)」というコミューンを形成して活動していた。43年前に教祖と900人以上の信者が集団自殺を遂げたことで、カルト教団として有名になった。この集団自殺にはフォビアが関与しており、流汐や生前のルナ・エッフェルが解決に向けて奔走していた。なお、教祖の背後に永遠夜と酷似した何者かのシルエットが描かれるなど、メガロフォビアとのかかわりも匂わされている。

場所

目々戸森市 (めめともりし)

K県の南西部に位置する中核都市で、人口は37万人。出生率は全国トップクラスの2.8を記録しているが、自殺死亡率も33.88という常軌を逸した数値を記録しており、「日本で最も夭逝者の多い街」という不名誉な評価を得ている。市内には異様に自殺の多い場所が7か所存在し、「目々戸森市7大自殺聖地」と呼ばれている。ランドマークの目々戸森天主堂は、世界文化遺産にも登録されている巨大な宗教施設で、超高層と定義されるビルよりも高くそびえており、青木ヶ原星が暮らすマンションの窓からも望むことができる。

水蛭子岬 (ひるこみさき)

目々戸森市にある星の見える美しい岬。10年前に新谷響夕空の両親が心中を遂げた場所でもある。心中事件後に自殺の聖地として有名になり、やがて「目々戸森市7大自殺聖地」に数えられるまでになった。現在でも多くの自殺志願者が訪れており、月間3.5人が岬から身を投げて死んでいる。なお、突端部の手前には自殺を水際で食い止めるべく、「救いの電話」という公衆電話ボックスが設置されている。

自殺者の森 (じさつしゃのもり)

ハーピー族のフォビアが棲む人外の魔境。森を構成する木々はハーピー族のフォビアに自殺させられた人間の魂が変貌したもので、幹からは自殺者の生前の姿が浮かび上がり、悲痛な叫びを響かせている。この樹木は、不気味な鳴き声を発しながら森の上空を飛び交っているハーピー族のフォビアの食事であり、いずれむさぼり食われる運命にある。歪に襲われて自殺させられた金門橋満天の魂も、自殺者の森にたどり着くことになった。満天は自殺者の森をじかに見て、ダンテ・アリギエーリの『神曲』に描かれた地獄の森を連想している。法則に照らせば満天も樹木になるはずだったが、彼女の場合はほかの自殺者とは異なり、腕が翼に、足が趾(あしゆび)に変じるなど、ハーピーに変貌する兆しを見せていた。なお、領域には鼻が捻れるような臭気を放つフォビアの卵が付いた特別な樹木も存在する。流汐の推察によれば、メランが孵った卵は自殺者の森にあったものである。

シーサイドカフェ

流汐がオーナーとマスターを兼任する喫茶店。流汐が管理運営する自殺サイト「スーサイドカフェ」のオフ会を実施する会場でもあり、シーサイドカフェの異名として「スーサイドカフェ」を用いる場合もある。立地は繁華街から離れた丘のような場所で、周囲を木々に囲まれている。店内にはカウンターのほか、テーブル席も用意されている。「秘密の転校生は私にだけなぜかビターなカプチーノ」「幼馴染のあの子が作ってくれたパンケーキセット」などメニュー名は異彩を放っているが、流汐が淹(い)れるコーヒーの味は確かで、カフェ経営者の村上幸雄からも高く評価されている。「オシャレでレトロな純喫茶」という流汐の理想が詰まった店で、流汐はこのカフェを「聖域」と表現していた。しかし、アルバイトとして雇った青木ヶ原星が制服としてメイド風の衣装を持ち込んだことで雰囲気が一変する。やがて新谷響夕空や金門橋満天もメイド姿で店を手伝うようになり、客足は増加の一途をたどったが、流汐は不純喫茶になってしまったことを嘆いている。のちに星の開発した「太陽のプリン」が新メニューとして採用された。なお、過服薬少女に変身した夕空の跳躍の余波で半壊したことがあるが、カフェを閉めていた描写はなく、事件の解決後には何事もなかったかのように営業を再開している。

村上珈琲店 (むらかみこーひーてん)

村上幸雄が経営する駅裏に立地するカフェ。香りと味を追求する本格志向の珈琲店で、幸雄の淹(い)れるカプチーノは違いのわかる同業者を唸らせるほどの高いレベルに達していたが、時流に圧されて客足が遠退き、閉店の危機に陥ってしまう。のちにシーサイドカフェの影響を受けた幸雄が「至高の味の追求」に加えて「客の心を照らす」ことをテーマとして掲げるようになり、従来とはまったく違ったコンセプトの珈琲店として新装開店することになった。そのビフォーアフターはあまりに劇的で、再出発のお祝いに訪れた流汐を驚愕させている。なお、流汐が金門橋満天の自殺に動揺する青木ヶ原星を気遣って差し入れたカプチーノは村上珈琲店のものだった。また、星と歪が死闘を繰り広げた場所は村上珈琲店の前の路上である。

その他キーワード

断末魔法 (だんまつまじかる)

自殺少女が使用する固有の必殺技。二人の自殺少女が連携して放つ「断末魔法心中(ダンマツマジカルユニゾン)」、三人の自殺少女が連携して放つ「断末魔法心中(ダンマツマジカルトリニティ)」など、名称に「心中」を冠した強力な合体断末魔法も存在する。

魔練炭 (まれんたん)

流汐が独自に調合した特別な練炭。「対魔物質から精製した特殊な練炭」とも説明されている。着火すると立ち込める煙には、フォビアを宿主の自殺志願者から引き剥がす効果がある。消火器のような形状のボンベに魔練炭の煙を込めた可搬式魔練炭、携帯性に優れた煙草型の魔練炭なども存在する。魔練炭だけでフォビアを処理することも可能だが、その場合はフォビアによる自殺を覆すための制限時間である4時間44分44秒をオーバーしてしまう。なお、自殺少女の素質を持つ者が魔練炭の煙を吸った場合、自分の意思では死ねない体になる。流汐は自殺オフ会を主催し、自殺志願者に魔練炭を吸わせてフォビアの処理を行うと同時に、自殺少女の素質を持つ者を探していた。

魔導具 (まじかるあいてむ)

所有者の覚悟と勇気を力に変えるマジカルアイテム。いわゆる魔法少女の変身アイテムのようなもので、過去の自分を殺すことで、新しい自分に生まれ変わると説明されている。自殺少女の精神(ココロ)が具現化したものとされているが、流汐から手渡されるのが通例となっている。ロープ型、カミソリ型など形状はそれぞれ異なるが、共通デザインとしてリボンが付いている。所有者の精神が負傷すると血のような黒い液体が流れ出る。こうなった場合、所有者が「生きる歓び」を実感して精神の傷を癒さなければ、最終的に自殺を超える苦しみを味わうことになる。ルナ・エッフェルの銃型の魔導具はフォビアとの連戦の果てに体を失ったルナの魂を宿し、ルナそのものとなった。なお、青木ヶ原星が所持するロープ型の魔導具は、星が気を失っている状態にもかかわらず、金門橋満天と新谷響夕空の争いを止めたいという星の気持ちを汲み取り、一人でに動いたことがある。

自殺少女 (すーさいどがーる)

フォビアと戦う力を秘めた救世の少女。フォビアが取り憑いていないこと、自らの信念に基づいて前向きに自殺を望んでいることが自殺少女に選ばれる要件であり、その見極めは流汐が魔練炭を用いて行う。人の心に宿る希望(キラメキ)と祝福(トキメキ)の象徴でもあり、自殺少女が増えると人々の心に陽が灯り、フォビアが人間に手を出しづらくなるとされている。素質の持ち主が専用の魔導具を使って自殺を図ると、「自殺装束(スーサイドレス)」と呼ばれる固有の衣装を瞬時に装着することが可能で、これを「自殺装束着装(スーサイドレスアップ)」と呼ぶ。自殺少女がフォビアを介さずに死ぬことは基本的にはないが、例外として自殺少女は自殺少女を殺すことができる。なお、「自殺乙女」と呼称されたこともあるが、これが「自殺少女」と異なる存在なのか、誤植なのかはコミックス5巻の刊行時点では明らかになっていない。

フォビア

人間を自殺させる悪魔。大きく分けて空の悪魔・ハーピー、大地の悪魔・バハムート、海の悪魔・リヴァイアサンの三種族が存在し、それぞれ異なる領域を住処としている。人型、獣型など個体ごとに姿はさまざまだが、その多くは目と口が糸のようなもので閉じられている。人間に取り憑いて心の闇を増幅させる力が備わっており、取り憑かれた人間は瞳がぐるぐると渦を巻いたようになり、やがて自殺してしまう。その犠牲者は年間3万人にも及び、流汐はフォビアを「自殺大国日本に巣食う歴史上最凶最悪の害敵」と言い表している。フォビアの影響で自殺した人間の魂は、自殺させたフォビアの領域に捕らわれる。自殺の発生から4時間44分44秒以内にフォビアを駆除できれば自殺はなかったことになり、自殺が発生したタイミングまで時間が巻き戻る。また、宿主を自殺させたフォビアは次の標的として自殺者の縁者を選ぶ傾向がある。一般人は基本的にフォビアの姿を見ることができないが、例外もあり、流汐や自殺少女はフォビアを目視できる。

メガロフォビア

人間を自殺させる悪魔・フォビアの上位種。通常のフォビアの能力に加えて、鏡面や水面を通って別の場所に転移する特殊能力が備わっている。また、通常のフォビアとは比較にならない高い戦闘力を有しており、自らの血を分け与えることでフォビアを「進化(スーパー)フォビア」にパワーアップさせることもできる。歪、無、崩のメガロフォビア三姉妹は人間の女性の姿で市井に溶け込んでおり、レストランで食事を楽しむことさえある。三姉妹を従える立場の永遠夜も外見は人間の女性にしか見えず、人間の子供たちから慕われている。

書誌情報

スーサイドガール 10巻 集英社〈ヤングジャンプコミックス〉

第6巻

(2022-06-17発行、 978-4088923659)

第7巻

(2023-02-17発行、 978-4088926100)

第8巻

(2023-12-19発行、 978-4088928340)

第9巻

(2024-01-18発行、 978-4088928685)

第10巻

(2024-02-19発行、 978-4088931159)

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