不登校少女・民子の狂気
夏休みの最終日、民子のクラスメイト、白川七子が謎の自殺を遂げる。七子のクラスメイトたちは騒然となり、特に七子と親しかった梨香は深い悲しみに暮れる。そんな中、不登校だった民子が突然登校し、自身をいじめていた三浦英子と早川隼子、さらには特に接点のなかった田辺曜子に対して、唐突に執着を見せ始める。まずは英子と隼子に危害を加えようとするが、二人は命こそ助かったものの、民子の常軌を逸した行動に強い恐怖を抱き、民子と入れ替わるように不登校になってしまう。さらに民子は曜子に近づき、英子たちを殺害しようとしたことを打ち明けるが、曜子はその言葉に恐怖を感じることなく、淡々とした態度で民子に向き合う。曜子の不可思議な対応に感銘を受けた民子は、彼女に独占欲を抱くようになる。
心の闇を抱えた女子生徒たち
本作に登場する女子生徒たちは、多くが悲惨な過去を抱えている。英子と隼子は、実の親から過度な期待を寄せられ、精神的に追い詰められていた。彼女たちは学校ではできる限りふつうに振る舞おうと努力する一方で、心の中では強い憎悪に支配されており、自分にはない魅力を持つ民子に執拗な嫌がらせを行う。また、民子自身も身勝手な男性に振り回された経験から、男性そのものに対して嫌悪感を抱いており、「死」という概念にあこがれに近い感情を持っている。彼女たちは壮絶な過去に囚われているため、自分自身のことを考えるだけで精一杯であり、コンプレックスや嫉妬から周囲に悪意を振り撒き、さらなる悲劇を招いてしまう。
七子の死と少女たちの秘密
七子の自殺は、クラスメイトたちに大きな衝撃を与え、夏休み明けの教室ではその話題が尽きることがなかった。しかし、自殺の原因は不明であり、いじめや家庭環境の問題、恋愛のもつれなど、根拠のない噂が飛び交う中で、「七子は自殺に見せかけて殺された」と主張する生徒も現れるが、これらの推測はすべて誤りであった。七子が死を選んだ真の理由は、彼女の内面に抱えていた「願望」と深くかかわっていた。この願望は、彼女の親友である梨香だけでなく、民子や曜子にも影響を及ぼし、民子が歪んだ死生観を持つ遠因の一つであったことが明らかになる。
登場人物・キャラクター
如月 民子 (きさらぎ たみこ)
とある高校に通う女子。容姿端麗で成績も優秀。多くの男性を魅了する美貌を持ちながらも、突然奇妙な唸り声を上げたり、無関係な人に対して暴力を振るうなど、狂気じみた一面が目立つ。また、過去に下心を抱えた男性からひどい目に遭った経験があり、その影響ですべての男性に対して生理的な嫌悪感を抱いている。さらに、「死にたがっている人間が実際に死ぬ時の表情を見たい」と公言するなど、歪んだ死生観を持っている。自らを「黒い箱の中にいる」と称し、そこから出るためには二つの目標を達成する必要があると考えている。英子と隼子からの嫌がらせにより不登校になっていたが、2学期の開始時に突然学校に現れ、英子と隼子を次々と襲い、さらには無関係な曜子にも接近する。
田辺 曜子 (たなべ ようこ)
民子と同じ高校に通う女子。民子のクラスメイト。母子家庭で育ったが、特に不自由なく生活をしている。母親が一人で自分を育ててくれていることには感謝しているが、互いに歩み寄ろうとはせず、ふだんはほとんど会話を交わすこともない。食事については「単なる生命維持に過ぎず、何を食べても同じ味だ」と公言し、「何をするにも面倒くさい」と口にするなど、日常生活を味気ないものと感じている。また、恐怖という感情が欠如しており、民子から「死にたがっている人の死に顔を見たい」と聞かされた際も、表情一つ変えずに受け入れている。これらのことから、民子からは「空っぽの人間」と評され、彼女の執着の対象となる。当初はその干渉を鬱陶しく感じていたが、次第に彼女の狂気の源に興味を抱き、共に行動することが増えていく。
書誌情報
センコウガール 完全版 4巻 小学館〈裏少年サンデーコミックス〉
第1巻
(2020-01-10発行、978-4091295767)
第2巻
(2020-01-10発行、978-4091295774)
第3巻
(2020-02-12発行、978-4091295781)
第4巻
(2020-02-12発行、978-4091295798)







