ゼロの白鷹

ゼロの白鷹

第二次大戦中の日本を舞台に、神風特攻隊の隊員となった若者たちの生き様とその最期を描いた戦争ドラマ。5人の特攻隊員のエピソードをそれぞれまとめたオムニバスだが、特に二番機の中山義竜に比重が置かれており、彼が実質的な主人公となっている。

正式名称
ゼロの白鷹
ふりがな
ぜろのはくたか
作者
ジャンル
ヒューマンドラマ
関連商品
Amazon 楽天

概要・あらすじ

昭和20年5月7日。鹿児島県鹿屋基地から沖縄方面の米機動部隊に肉弾特攻すべく5機の零戦が飛び立つ。その前夜、一番機に乗る山吹建夫少尉は新妻の山吹つや子と最初で最後の契りを交わしていた。「どんなことがあっても強く生きて欲しい」。そうつや子に告げ、発進した建夫は部隊を率いて目標の地点へと向かう。途中、米軍機の襲撃を受けるが、いち早く敵の接近に気づいた二番機の中山義竜二飛曹が編隊から離脱。

単独で敵機を迎え撃ち、瞬く間にすべて撃墜する。彼は二飛曹ながら、数々の戦果を挙げてきた凄腕の零戦乗りだった。

登場人物・キャラクター

中山 義竜 (なかやま よしたつ)

第五黄桜隊二番機のパイロットで、25歳。同期生のほとんどが戦死し、数少ない生き残りがすべて士官となっているにもかかわらず、いまだに二飛曹という下士官階級に留まっている変わり種。少年時代はケンカと女が大好きな村の厄介者だったが、番外生として予科練(海軍飛行予科練習生)に入隊。厳しい訓練に耐え、念願の戦闘機乗りになった。 操縦の腕は超一級で真珠湾、珊瑚海、ミッドウェーなど数々の激戦を生き残るが、その過程で次々と仲間を失い、この戦争の無意味さを噛みしめることになる。

山吹 建夫 (やまぶき たてお)

第五黄桜隊隊長で、22歳。階級は少尉。名家の生まれで、東京帝国大学法学部を卒業したインテリである。故郷の両親から何度も結婚を勧められていたが、すでに特攻隊員となり出撃命令を待つ身だったため縁談を断ろうと故郷に帰る。だが、両親や年老いた祖母にどうしても特攻のことを切り出せず、勧められるまま式を挙げてしまう。妻となった山吹つや子とは面識がなかったが、初対面で強く心を奪われ、彼女を守るために死のうと決意する。

和田 辰実 (わだ たつみ)

第五黄桜隊三番機のパイロットで、階級は二飛曹。まだ16歳で実戦参加の経験はなく、特攻が訓練以外での初めての飛行となった。特攻の前夜に酒場で中山義竜に遊郭に連れていかれるが、そこで女郎の清花と出会い、幼い頃に亡くした母の面影を彼女に重ねる。

島崎 剛助 (しまざき ごうすけ)

第五黄桜隊五番機のパイロット。19歳で階級は二飛曹。両親を早くに亡くしたため、中学を退学して働きに出たが、幼い妹と弟を預けた親戚のいる町に米軍機が来襲。妹と弟が目前で無残な最期を遂げたことから憎き鬼畜米英を皆殺しにすると意気込む。

筒井 敏明 (つつい としあき)

第五黄桜隊四番機のパイロット。18歳で階級は二飛曹。子供の頃から医者を志していたが、親戚たちに半ば強制される形で予科練(海軍飛行予科練習生)に入隊した。特攻での死にどうしても意義を見出せず、エンジンの不調を理由に編隊を離脱するが、両親に迷惑がかかることを恐れ苦悩する。

遠山 ちえみ (とおやま ちえみ)

中山義竜のことを「義ちゃん」と呼ぶ義竜の同郷の娘。村一番のべっぴんさんと言われるほどの美貌で、零戦パイロットとなって故郷に凱旋した義竜を驚かせた。義竜が予科練(海軍飛行予科練習生)に入隊する前から好意を寄せており、彼女が「待っている」と告白するが、ついにその思いが叶うことはなかった。

山吹 つや子 (たぐち つやこ)

海軍大佐の娘で旧姓は田口。初対面の山吹建夫のもとに嫁ぐが、かねてから彼のことは両親からよく聞かされており、実際に会って建夫を強く愛するようになる。特攻隊員であることを自分に明かし、故郷を去った建夫のことがどうしても忘れられず、特攻の前夜に基地を訪ねる。

北島 (きたじま)

番外生として予科練(海軍飛行予科練習生)に入隊した中山義竜の同期。義竜の隣村の生まれで、中学時代は義竜と激しい抗争を繰り広げていたが、予科練入隊後は良き仲間となる。喧嘩の腕は義竜に引けを取らないが、意外と冷静なタイプで、予科練ではすぐ騒ぎを起こそうとする義竜をたびたび制止していた。

平岩 (ひらいわ)

中山義竜や北島らと共に番外生として予科練(海軍飛行予科練習生)に入隊した暴力団平岩組の若親分。喧嘩とバクチが得意な大男で、義竜とは初対面でいきなり他の予科練生を巻きこんでの大乱闘となった。だが、同じ番外生同士ということですぐに打ち解け、共に零戦パイロットとして戦っていくことになる。

絹代 (きぬしろ)

中山義竜らと同期の番外生。外見、言葉使い共に女そのものだが、れっきとした男である。顔に似合わず喧嘩好きで、予科練(海軍飛行予科練習生)入隊時に義竜と平岩が乱闘騒ぎを起こした時には真っ先に参加していた。教官の暴力に動じないタフさも持ち合わせており、義竜らと共に零戦乗りとして活躍する。

(はま)

中山義竜たちと共に予科練(海軍飛行予科練習生)に入隊した番外生。小柄だが気が強く、正規入隊組に集団で痛めつけられた時には単身で報復に行こうとした。順調に訓練をこなし飛練へと進むが、空母着艦に失敗。重傷を負ったため、戦闘機乗りの道を断念することとなった。

田中 (たなか)

艦攻(艦上攻撃機)に配属された中山義竜らの予科練(海軍飛行予科練習生)の同期。予科練には正規生として入隊しており義竜たち番外生と対立していたが、鹿児島での訓練飛行で互いの技量を認め合った。空母赤城に搭乗し、義竜らと共に真珠湾に出撃する。

集団・組織

第五黄桜隊 (だいごきざくらたい)

沖縄方面の米機動艦隊を攻撃するため、鹿児島県鹿屋基地で結成された神風特攻隊。隊員は山吹建夫、中山義竜、和田辰実、島崎剛助、筒井敏明の5名。パイロットとしてのキャリアや腕は義竜が群を抜いているが、階級が二飛曹のため少尉の山吹が隊長を務める。

番外生 (ばんがいせい)

予科練(海軍飛行予科練習生)に合格する学力はまったく持ち合わせていないが、戦闘機乗りに不可欠な優れた身体能力や反射神経、強靭なメンタルを持つ者を集めた非正規の予科練生。学科の授業は一切なく、戦闘機を操縦する訓練のみが徹底的に行われる。喧嘩だけが取り柄のゴロツキがほとんどで、中山義竜や北島らもこの番外生として予科練に入った。

SHARE
EC
Amazon
logo