概要・あらすじ
合唱指導の才能はあるものの、やる気のないボンボン教師だった久我山は、元教え子の田中吾妻から音楽学校受験のための指導を頼まれる。これまで指導を受けたなかで一番楽しかったという吾妻に、教師の自覚が芽生えた久我山は、指導を引き受けて公私共に面倒を見ることを決める。そんな生活のなか、次第に吾妻に惹かれていく久我山は、ささいなことからついに関係を持ってしまう。
その関係が露見するに至り、久我山はかねてから考えていた吾妻のイタリア留学を強引に進めるのだった。こうして一度は別れた2人の人生は、10年後にオペラ歌手となった吾妻の帰国により再び交差することになる。
登場人物・キャラクター
久我山 (くがやま)
小学校の音楽教師で、田中吾妻に合唱を教えていた。やる気のないお坊ちゃん教師だったが、卒業生の吾妻に「先生に合唱教わってた時が今までで一番楽しかったから、声楽をやるために音楽学校を受験するので指導して欲しい」と頼まれ、教師としての自覚に目覚めて面倒を見ることになった。吾妻の母親が倒れて入院したのをきっかけに同居生活を始める。 1年後、母親が退院したため同居は解消されたが、ささいなきっかけで吾妻と関係を持ってしまう。教え子との肉体関係という危ない橋を渡っていることを自覚しており、長続きはしないと考えていた。ついに後藤に吾妻とのことが露見すると、すぐさまイタリアへ留学するよう告げて決別する。その後、吾妻によく似た諸隅淳と出会い付き合い始める。
田中 吾妻 (たなか あづま)
久我山の元教え子。小学校で合唱を教えてもらったことをきっかけに、声楽の道を志す。久我山に音楽学校の受験指導を頼み、それ以来、公私ともに面倒を見てくれる久我山に好意を抱くようになる。身体は大きいが中身はまだ幼さを残しており、複雑な家庭環境に悩む反面、無邪気なところがある。肉体関係を持つようになってからも一途に久我山を慕うが、つい口を滑らせて後藤に久我山とのことを話してしまう。 久我山に別れを告げられると共に留学を勧められてイタリアへ渡り、オペラ歌手として成功する。
後藤 (ごとう)
友人の久我山に頼まれて、田中吾妻の声楽指導をしている。吾妻の才能を見込み、イタリア留学を勧める。久我山と吾妻の関係を知り、吾妻がイタリアに発つまで自宅に引き取って世話をしていた。10年ぶりに日本に戻ってきた吾妻に、久我山の消息を伝える。
津守 (つもり)
久我山の教え子で、田中吾妻の後輩。吾妻と同様に合唱部で指導を受けていた。頭も勘も良く、久我山と吾妻の間に何らかの強い絆があることを察している。成長してからは、久我山の影響により音楽教師になった。
諸隅 淳 (もろずみ じゅん)
19歳の大学2年生。初対面の久我山が見間違えるほど、田中吾妻によく似ている。大学合格と同時にゲイであることが親にばれてしまい、逃げるように実家を出て上京した。新宿2丁目で久我山に声をかけられて以来、1年ほど付き合っている。久我山の部屋に入り浸っているが、同棲を頑なに拒む久我山に不信感を抱いているところに、部屋にあった雑誌を見て吾妻を知り、自分が身代わりだと気づいてしまう。