あらすじ
第1巻
幼い頃の神静真は声優になりたくて、漫画家の叔母・橘杯音に作品がアニメ化されたら出演させてほしいと願い出るも、杯音は作品に迷惑が掛かるので出演させないと返答。その言葉にショックを受けた静真は高校卒業後、引きこもりになってしまう。それを見かねた姉に、一度でいいからどこかの企業の面接を受けてみる事を勧められた静真は、絶対受からなさそうな競争率の高い声優事務所を受ける事に決める。しかし、下手な演技をして事務所に迷惑を掛ける事を恐れた静真は、鬼気迫る演技力を披露して、声優事務所「ダストボックス」の採用面接に受かってしまう。だが「ダストボックス」に所属する声優は、実力だけは秀でているものの、人格破綻者ばかりであった。(Try.1。ほか、20エピソード収録)
第2巻
橘杯音の漫画がアニメ化された際、下手な演技で作品を台無しにした声優が芥田衛であった。これにより衛は、杯音が自分のせいでねじれた人格になってしまった事に責任を感じ、大人な対応を見せる杯音に対してもっと罵ってほしいと迫る。杯音はアニメが台無しになったのは衛だけのせいではないと言うが、衛は何かお詫びをさせてほしいと願い出る。これ以上、漫画の主人公の声でしゃべり掛けないでほしいと答える杯音に対し、衛は杯音に嫌われている事を再確認してしまう。(Try.22。ほか、20エピソード収録)
登場人物・キャラクター
神 静真 (じん しずま)
声優事務所「ダストボックス」に所属する男性声優。年齢は19歳。緑色の短髪で、優男風の外見をしている。幼い頃は劇団に所属しており、子役としてCMなどにも出演していた。その時に声優になりたいという夢を抱き、漫画家の叔母・橘杯音に作品がアニメ化されたら声優として出演させてほしいと願い出る。しかし、杯音にはそのレベルに達していないと断られた。 その時から「人に迷惑を掛けてはいけない」と思うようになり、高校卒業後は1年以上引きこもりとして生活していた。その後、姉に一度でいいから仕事の面接を受けるように強要される。そして、絶対に受からなさそうな企業の面接を受けて落ちてしまえばいいと考え、競争率の高そうな「ダストボックス」の面接を受ける事に決めた。 しかし、その面接で鬼気迫るような演技力を披露した結果、採用されてしまう。その後、声優をしながら「ダストボックス」の事務職を兼任する事になった。
小川 日歌里 (おがわ ひかり)
声優事務所「ダストボックス」に所属する女性声優。年齢は19歳。金髪をショートヘアにしている。非常にまじめな性格をしているため、考え過ぎて行動できない事が多い。高校生の頃に同じ学校に通っていた神静真の声を廊下で聞いて、その声に惚れる。静真の声が聴きたくて、彼のクラスを調べた挙句、彼に付きまとっていた。高校卒業後は「ダストボックス」に所属して、声優として活動を始める。 そんな中、人づてに静真が引きこもりになったと聞いて、自分の責任かもしれないと気にしていた。その後、「ダストボックス」で静真と再会する。新人であるために大きな役をつかめずにいたが、アニメの主役に抜擢される。しかし、そのアニメはエッチな内容で、色っぽい演技ができなかった。 それにより思い詰めた結果、喘ぎ声を出せばいい事に気づき、静真に告白したうえで抱いてほしいと詰め寄った。
小川 星人 (おがわ せいと)
声優事務所「ダストボックス」に所属する男性声優。癖のある金色の短髪で、泣きぼくろがある。非常に明るい性格ながら、行動の読めない天然な一面がある。そのため、周囲からは「小川星人(おがわせいじん)」や「宇宙人」などのあだ名で呼ばれている。また、収録現場に向かう際に寄り道などをする事が多く、そのせいで遅刻が多い。そのため、業界では扱いづらい人物として知られているが声優としての実力は超一流で、その力で地位を確立した天才肌。 ちなみに小川日歌里の兄ではあるが、日歌里が兄妹である事を恥ずかしがっているために、暫くのあいだは周囲に隠していた。なお、自分が変だという自覚はなく、日歌里の方が変な妹だと認識している。
輪島 みこと (わじま みこと)
声優事務所「ダストボックス」に所属する女性声優。紫色の髪をロングヘアにしている。覇気のない表情をしたミステリアスな雰囲気を漂わせ、胸元の空いた服を着ている事が多い。容姿が整っているため、若い頃はアイドル声優として活動していた時期がある。非常にクールな性格である一方、予想外の事態が起こると取り乱してしまうメンタル面の弱さがある。 また、占いや怪しげなグッズなどにのめり込んでおり、水晶玉などを肌身離さずに身につけている。よく若い女性声優に対して胡散臭いグッズなどをオススメしている。それにより現場には迷惑を掛けがちだが、実力は超一流の人気声優。声優として演技をする際はイタコのように、役に合った霊を憑依させている。梅木智章とは両思いの関係にあり、以前智章による告白を受けている。 しかし、占いによる相性が悪いという理由でその告白を断った。
早乙女 教一 (さおとめ きょういち)
声優事務所「ダストボックス」に所属する男性声優。金色の短髪。若い頃は非常にまじめだった事から、収録現場の空気をよくするために女性声優の気持ちを一生懸命に勉強していた。しかし勉強し過ぎた結果、つねにオネエ口調になってしまう。ただし、感情が昂ぶった時には男性口調に戻る。現実主義者で、金に対しては非常にうるさい。同じ事務所に所属している吊橋勇羽から好意を寄せられているが、その好意を邪険に扱う事が多い。 勇羽といっしょの収録現場にならないように、芥田衛に掛け合って勇羽を共演NGにしてもらっている。
吊橋 勇羽 (つりばし ゆう)
声優事務所「ダストボックス」に所属する女性声優。年齢は20歳。黒髪のセミロングヘアで、前髪を切り揃えている。ファンによるアドバイスのもと、派手でかわいらしい服装を着ている事が多い。もともと早乙女教一のファンで、彼を追って「ダストボックス」に所属する事となり、事務所の方針でアイドル声優として活動している。周囲に教一の事が好きだと公言しており、ファンにも理解を得られているが、その思いが強過ぎるあまり、教一からは共演を拒否されている。 それでもあきらめる事なく、彼に付きまとっている。一方で緊張すると、大胆な性格から一転して非常にお淑やかに振る舞うようになり相手との距離を取るため、長いあいだ友人がいなかった。のちに、小川日歌里となかよくなってからは、彼女を親友と呼ぶほど慕っている。
皆瀬 カイ (みなせ かい)
声優事務所「ダストボックス」に所属する子役の声優。小学校に通いながら声優の仕事をこなしている。短髪で、かわいらしい外見をしている。父子家庭で育ったため、年上好きで15歳以上年上の女性と付き合いたいと考えている。その一方で非常に純粋な性格をしており、大人な思考を併せ持つ。ちなみに輪島みことが好みの女性像であるらしく婚約を申し出た事があるが、好きな人がいると言われて断られている。
大峰 朋波 (おおみね ほなみ)
神静真、小川星人が道で出会ったショートヘアの女性。池に落ちそうな小犬を助けるなど純粋な心の持ち主であるが、小犬を助けて喜んだ拍子に足を滑らせて池に転落するなど非常にドジなところがある。求職中、星人のアドバイスで池に落ちた直後の濡れた状態で、声優事務所「ダストボックス」のマネージャー面接を受けた。その姿に驚いた芥田衛により採用されて、「ダストボックス」のマネージャーとして働く事になった。
芥田 衛 (あくた まもる)
声優事務所「ダストボックス」の社長を務めている男性。黒髪の短髪。もともと声優をしていたが、演技力がなかった事から引退。その後、声優業で培った人脈などを活かして「ダストボックス」を立ち上げた。声優時代には橘杯音の作品がアニメ化された際に主役を務めているが、自分の下手な演技のせいで作品を台無しにしてしまったと、後ろめたさを感じている。 その経験から実力を重視して事務所の採用面接を行った結果、実力はあっても人間性に乏しい役者ばかりを採用してしまう。しかし、声優時代から気の遣える人物として評判だった事から、所属の声優は多方面に渡って活躍している。それらの経験を鑑みて演技力があり、比較的まともそうな神静真を所属声優として採用した。 その縁から杯音と再会する事になる。そして、杯音がねじれた人格になってしまった事に対して責任を感じ、彼女に贖罪をしたいと食事を誘うようになった。ただし、杯音の容姿が幼いせいで、周囲からはロリコン扱いされている。
梅木 智章 (うめき ともあき)
声優事務所「スターツリー」に所属する男性声優。短髪で眼鏡をかけている。非常に面倒見のいいため、小川星人や輪島みことの面倒を押しつけられている。その事から周囲から「業界の介護人」というあだ名を付けられている。普段から「ダストボックス」所属の声優達に迷惑を掛けられっぱなしであるため、初めて会った神静真にも敵対心をあらわにしていた。 しかし、静真が常識的な人物である事がわかってからは、手のひらを返すように優しく接している。さらに静真に対しては星人や吊橋勇羽などの扱い方のコツを伝授している。なお、輪島みこととは両思いの関係にあり、以前彼女に対して告白をしているが、占いによる相性が悪いという理由で断られている。 しかし、それ以降もみことに対して一途な恋心を寄せている。ちなみに芥田衛だけは尊敬しており、衛が社長でなければ「ダストボックス」所属の声優達全員を共演NGにしたいと漏らした事がある。
橘 杯音 (たちばな はいね)
神静真の叔母で、女性漫画家。年齢は26歳。金髪で、縦ロールの髪型をしている。幼びた外見をしており、ゴスロリ系の服を好んで着ている。小学生の頃に漫画家としてデビューし、中学生の頃に作品のアニメ化が決定した。しかし、主役を務めていた芥田衛の演技が下手過ぎたせいで、作品が台無しなってしまう。これに大きなショックを受けて若干ひねくれた性格になり、声優になりたいと口にした静真に対して厳しい事を言ってしまう。 のちに当時のアニメ製作はスケジュールが切迫していた事もあり、失敗した要因が衛一人のせいではないと気づく。また、この経験を糧にして漫画家としての努力を重ね、現在も漫画家として活動を続けている。しかし当時のアニメ作品に対して、気持ちの整理がついているわけではなく、当時のDVDが市場に出回った際はまとめて購入して、人の目に触れないように保管している。 26歳になってから静真を通じて衛と再会し、以降は贖罪を望む彼と時おり食事に出掛ける仲となる。
円 辰巳 (まどか たつみ)
橘杯音と同じ雑誌で連載している女性漫画家。「円辰巳」はペンネームで、本名は「辰巳円香」。癖のある茶髪のポニーテールで、キャバ嬢のような派手な外見をしている。非常に明るい性格で、スキンシップが過多になりがち。少々エッチな冗談を口にする事も多い。もともとキャバクラで働いており、客から色々な話を聞いた事による知識を活かして漫画家の道を志した。 その後、描いた「月白の屍術師」が人気作品となり、日本でトップ10に入るほどの大人気漫画となった。また、多くの優秀なアシスタントの手を借りているため、月刊誌であるにもかかわらず、週刊誌のようなペースでコミックスを発売している。また、作品が面白くなるかも知れないという軽いノリでキャラクターを退場させてしまう事が多く、キャラクターを大事にしている杯音とは意見が対立する事もしばしば。 ちなみに杯音とは飲み友達の間柄で、非常に酒が強い。
場所
ダストボックス
芥田衛が社長を務めている声優事務所で、神静真などが所属している。実力は超一流であるが、人間性に問題を抱えた声優達が数多く所属していると業界内で非常に有名。その一方で、社長の衛が人格者だと業界内で知れ渡っているお陰もあって、所属している声優の多くは多方面で活躍している。