ダブルアーツ

ダブルアーツ

少女を死の病から救った少年は、病の再発を防ぐために、彼女から片時も離れることなく旅をすることを決意する。2人の果てのない旅路を描いたアクション・ファンタジー。「週刊少年ジャンプ」2008年17号から2008年41号にかけて連載された作品。

正式名称
ダブルアーツ
ふりがな
だぶるあーつ
作者
ジャンル
ファンタジー
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あらすじ

第1巻

発作が起きれば助からない死の病「トロイ」の蔓延する世界で、エルレイン・フィガレットはその治療を専門とするシスターの仕事に励んでいた。しかし、トロイの危険と隣合わせのシスターの仕事の最中に、遂に限界が来てエルレインは倒れてしまう。このままでは死亡してしまうと思われたが、偶然居合わせたキリ・ルチルの介抱によって一命を取り留める。原因は不明ながらキリと手を触れ合っている限りはトロイの症状の進行が止まる事に、トロイ治療のヒントがあると見たシスター協会本部は、自らのもとにキリを連れて来るようにエルレインに指令を下す。しかし、トロイ治療を妨害する謎の組織「ガゼル」の暗殺者ヴィグに襲撃され、キリとエルレインは危機にさらされてしまう。ヴィグを辛くも撃退したものの、キリとエルレインは手を触れ合い続けていなければトロイの症状を抑えられないため、風呂もトイレも手をつないだまま生活する奇妙な同居生活を始める事となった。

第2巻

シスター協会本部からの迎えが来るまで、キリ・ルチルエルレイン・フィガレットはいっしょに生活をしていたが、ルーシー・ゼズゥの襲撃を機に街を離れる事を決心する。ゼズゥの気まぐれによって見逃されたものの、周囲の人々が危険にさらされるのを恐れた二人は、シスター協会本部からの勧めもあり、高名な武術家であるファラン・デンゼルを仲間にするため「デオドラド」の街を目指すのだった。強敵と戦えるからとスイも二人の旅に同行し、一行は無事にデオドラドの街に到着。だがファランは気難しい人物で、キリ達は同行を断られてしまう。その夜、ガゼルの暗殺者であるアブロ・リベリカがキリ達を襲撃する。そんな中、ティセラ・ゴードンの助言を受けてキリ達に会いに来たファランを見たアブロは、強者への興味から彼に戦いを挑む。アブロは、これまでキリ達に襲い掛かって来た暗殺者の中でも屈指の実力の持ち主だったが、ファランはあっさり彼を返り討ちにしてしまう。 

第3巻

ファラン・デンゼルの助けもあり、無事に敵を退ける事に成功したキリ・ルチルエルレイン・フィガレットは、シスター協会本部からの迎えが来るまでデオドラドの街に留まる事となった。ハイネ・クローチェとの交流など明るい話題があったが、そんなエルレイン達のもとに迎えに向かっていた「ファルゼン部隊」が全滅したという知らせが届く。これ以上犠牲者を出さないために、キリとエルレインは自らを守る術を手に入れる決心をし、ファランに弟子入りするのだった。そして過酷な特訓を経て、二人は新たな力を手にする。

登場人物・キャラクター

エルレイン・フィガレット (えるれいんふぃがれっと)

16歳のシスターの少女。心優しい性格で、わずか8歳でシスターの資格を取得し、数多くの人々を救ってきた。トロイ患者を治すためにタームへとやって来た。タームでのトロイ患者の治療中に発作を起こして死にかけていたところ、キリ・ルチルに触れられることで発作が収まり九死に一生を得たが、その代償として常にキリと触れていないと発作が再発する身体になってしまう。 トロイに感染しないキリの身体にトロイ治療の手がかりがあると確信し、彼をシスター協会本部まで連れていく旅をすることを決意する。

キリ・ルチル (きりるちる)

タームに住む16歳の少年。直情的で、自分のために他人が傷つくことを何よりも嫌う性格。発作を起こしたエルレイン・フィガレット(エルー)に触れることで彼女を救い、トロイの治療法が見つかるまで常に彼女に触れることを決意する。世界で唯一トロイに感染しない肉体を持っており、マーサ・ラグナからは「世界の希望」と称されている。 また、自分に触れている人間の身体能力を向上させる力「フレア」が生まれつき備わっており、その力を用いてエルーとともにガゼルに立ち向かう。

スイ

タームに住む「純血の武の民(クリアナギン)」の少女。享楽的な性格で、足元まで届く長い黒髪をしている。キリ・ルチルとは幼なじみの間柄で、一時期はスイの方から告白して交際していた。だが非常に飽きっぽい性格をしているため、次の日にすぐに別れている。このような経緯を日常から繰り返しているため、タームの街に住んでいるほとんどの男性は「元彼」となっている。また血の気が多く喧嘩好き。「武の民」特有の優れた身体能力を持ち、鋼鉄製のフープを利用して戦う。その実力は非常に高く、街中の男に飽き足らず、流れの傭兵や剣士とまで戦い、3年間で1000人以上の人間を倒している。タームにはすでに相手になる人間がいないため街を出るつもりだったが、キリ達がガゼルの暗殺者に襲われるのを知り、強敵を求めて半ば押しかける形で彼らの旅に同行している。さくらんぼが大好物で、食事のほとんどをさくらんぼで済ませるほど。さらに鞄の中にはいくつものさくらんぼの缶詰が入っている。

マーサ・ラグナ (まーさらぐな)

シスター協会本部に勤める女性。エルレイン・フィガレット(エルー)をタームに派遣した人物で、エルーの発作を止めたキリ・ルチルの力に興味を持ち、シスター協会本部まで彼を連れて来るようエルーに指令を出す。ファラン・デンゼルとは旧知の仲であり、彼にエルーたちの護衛をするよう要請する。

ファラン・デンゼル (ふぁらんでんぜる)

若くして世界中に弟子を持つ高名な武術家。圧倒的な戦闘力を有しており、襲って来たガゼルの暗殺者を一瞬で返り討ちにした。自分の身を護るためにしか力を使わないことを信条としており、キリ・ルチルたちからの護衛の依頼を突っぱねる。お子様ランチが大好物で、ご飯の上に刺さった旗を集めている。

ティセラ・ゴードン (てぃせらごーどん)

未来を見通すことができる予言者の女性。大酒飲みで、酒の入った樽をいつも持ち歩いている。いくつもの偽名を使っており、自分でも名乗る名前をしばしば間違える。マーサ・ラグナと同じくファラン・デンゼルとは旧知の仲であり、護衛の依頼を突っぱねた彼の説得を試みる。

ウラテス・ルチル (うらてするちる)

キリ・ルチルの父親。寡黙かつ見上げるような長身の大男だが、気さくで心優しい性格。キリとともにやって来たエルレイン・フィガレット(エルー)をトロイ感染者だと知りながらも快く歓迎する男気の持ち主でもあり、エルーを感激させる。

ミンク・ルチル (みんくるちる)

キリ・ルチルの母親。非常に小柄な身体と幼い顔つきをしており、エルレイン・フィガレット(エルー)からはキリの妹だと勘違いされた。キリとともにやって来たエルーをトロイ感染者だと知りながら快く歓迎し、エルーを感激させる。

ヴィグ

ガゼルの暗殺者の1人で、凶悪な人相の男性。タームにてキリ・ルチルとエルレイン・フィガレットに襲いかかったが、2人の連携の前に敗北し、投獄される。その後レンケの手により脱獄を果たし、再びキリたちの前に立ちはだかる。

レンケ

ガゼルの暗殺者の1人で、白衣を着た壮年の男性。柔和な顔立ちと口調だが、実際は残忍な性格をしている。投獄されたヴィグを助け出し、キリ・ルチルとエルレイン・フィガレットの暗殺を企てる。得物はナイフで、身体のいたるところに仕込んでいる。

アブロ・リベリカ (あぶろりべりか)

ガゼルの暗殺者の1人で、屈強な肉体を持つ男性。一夜で200人を毒殺した経験を持ち、「毒殺アブロ」の名で通っている。「この世で最も苦しく死ねる毒」を求めて日々研究を重ねており、何人ものシスターが犠牲になっている。

ルーシー・ゼズゥ (るーしーぜずぅ)

ガゼルの暗殺者で、ガゼルの創始者の1人。暗殺者たちをまとめ上げるリーダー格の男性で、部下からはひどく恐れられている。トロイに感染しない少年の噂を聞きつけキリ・ルチルとエルレイン・フィガレットを襲撃し、圧倒的な戦闘力で2人をねじ伏せる。

ハイネ・クローチェ

明るく人懐っこい性格をしたシスターの少女。敬語は苦手で、関西弁のようなしゃべり方をする。エルレイン・フィガレットの事を尊敬しており、デオドラドの街に来たエルレインとキリ・ルチルと偶然出会った事に感激した。手先が器用で、絵を描くのが趣味。そのためキリと意気投合し、画家になる夢を語った。シスターの到着が遅れたためトロイで家族を亡くした過去を持ち、遅れて来たシスターの事を責めた。その後、行き場を失って嫌々シスターの仕事に従事したが、不運が重なって現場への到着が遅れ、自分と同じ境遇に陥った人を見てしまう。その際に罵倒ではなく、感謝の言葉を贈られた事で心を改め、シスターの仕事に誇りと感謝の気持ちを持つようになった。実はキリ達と出会った時点で限界寸前で、あと1回トロイの治療をしたら死亡すると通告されていた。それでもシスターの役目に最後まで殉ずるつもりだったが、キリとエルレインに助けられ一命を取り留める。その後は生きている事に感謝し、再び画家を目指す意欲を見せた。

集団・組織

シスター協会

世界中のシスターをまとめる組織。世界各地へのシスターの派遣やトロイの治療法の研究などを行っている。また、トロイへの耐性が高い女性をシスターとして育て上げる指導も行っており、ガゼルに対抗するための武術の教育までしている。

ガゼル

シスターの暗殺を目的とする正体不明の集団。名うての暗殺者がそろっており、何人ものシスターが犠牲になっている。シスターを狙う理由は不明だが、ルーシー・ゼズゥは、「トロイの治療をされると困る」という旨の発言をしている。

場所

ターム

キリ・ルチルが住む田舎町。人口は少ないが、多くの芸術家が訪れることで有名になっている。年に一度、芸術家たちが作品を展示する感謝祭が行われており、キリがその祭りの責任者を務めている。

その他キーワード

トロイ

世界中に蔓延する正体不明の病。感染者に触れることで発症する。感染した人間の身体には徐々に毒が回り、毒の蓄積が臨界点を越えると、身体が透明になり跡形もなく消えてしまう。一度感染すると完治は不可能で、症状を緩和するにはシスターに毒を吸い取ってもらう他に方法はない。発見されたのは約700年前で、現在までに10億人以上がこの病気で命を落としている。

シスター

トロイの治療を行う人々の総称。治療専門の「メイルシスター」とその護衛を担当する「修道騎士(ミリティア)シスター」が存在するが、一般的に「シスター」と認識されているのは「メイルシスター」の方である。メイルシスターはトロイへの耐性が高い者で構成されており、患者からトロイの毒を吸収する事でその症状を肩代わりする事ができる。ただし毒そのものを消し去る事は不可能なため、いずれ蓄積した毒で消滅する運命にある。そのためメイルシスターの寿命は総じて短いとされている。またメイルシスターは全員トロイ感染者ともいえるため、他者に触れる事はできず、特殊な制服を着る事で、自身がトロイ感染者である事を周囲に警告している。そのため時にトロイへの恐れから迫害の対象になったり、ガゼルから標的として付け狙われたりする。 

フレア

キリ・ルチルが生まれつき備えている謎の力。触れている人間の肉体的な力を飛躍的に上昇させることができる。上昇の程度はキリに触れている人間の数で増減し、1人なら2倍、2人なら3倍……と、人数に比例して増えていく。

壁の民 (べいがー)

大陸に存在する四つの種族のうち、最も手先が器用な一族。建造物や工芸品を作らせたら天下一品の腕前を誇る。デオドラドの街には壁の民が多く、デオドラドの中州に存在する大きな橋は大昔に壁の民が作ったとされる。

武の民 (なぎん)

数百年にわたり武勇をもって大陸を支配し続けた過去を持つ、戦いの一族。大陸に存在する四つの種族のうち、最も勇猛で力強い肉体を持ち、また人口も最も多い。ただし平和な時代が続いて混血化が進んでおり、「純血の武の民(クリアナギン)」は数が少なく、珍しいとされている。

双戦舞 (だぶるあーつ)

キリ・ルチルとエルレイン・フィガレットがファラン・デンゼルに弟子入りして身につけた武術。ファランが二人の適正を見て編み出した。ダンスを基にした武術で、息の合ったコンビネーションとフレアの力で戦場を軽やかに舞い、強烈無比な力を発揮する。総合格闘術(マーシャルアーツ)と、二人一組で戦う事を組み合わせて、ファランが即興で名付けた。

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