ダンス・ダンス・ダンスール

ダンス・ダンス・ダンスール

バレエに魅了されながらもそれをひた隠しにしてきた少年が、中学生になってその情熱を再燃させる。さまざまな人との出会いがバレエの秘めた実力を開花させ、やがて彼は選ばれた者だけが立つことを許される世界へと、足を踏み入れていく。バレエに青春のすべてをかけた少年たちを描く物語。「週刊ビッグコミックスピリッツ」2015年第42・43合併号から連載中の作品。

正式名称
ダンス・ダンス・ダンスール
ふりがな
だんす だんす だんすーる
作者
ジャンル
バレエ
レーベル
ビッグ コミックス(小学館)
巻数
既刊29巻
関連商品
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あらすじ

第1巻

13歳の村尾潤平は、幼い頃にバレエに魅了され、バレエスクールに通う事を熱望していたが、父親の死を理由に「家族を守るため男らしくあらねば」とその道をあきらめた。そしてバレエへの情熱を心の奥に秘めたまま、父親が望んでいた格闘技「ジークンドー」の世界に入った。そんな潤平は中学2年生になり、転校生の美少女・五代都と出会う。バレエが大好きな都は、潤平がジークンドーで培った回し蹴りを見て、バレエのジャンプに通じるものを見出し、いっしょにバレエをやろうと、自宅にあるバレエ教室への参加を促し、潤平はこれをきっかけに、長きにわたって心の奥底にしまっていたはずのバレエへの情熱を再燃させる事となる。男性がバレエを踊る事に対する偏見や羞恥心から、潤平は表面上は反発しながらも、毎日都の自宅へ通い、都の母親・五代千鶴からバレエを習い始める。しかし、バレエを始めた事は、家族にも友達にも打ち明けられないままだった。そんな中、潤平は深夜にレッスン場で森流鶯が一心不乱に踊る場面に遭遇。天才的な才能を持った彼の存在は、潤平に衝撃を与える事になる。

第2巻

天才少年・森流鶯のバレエを見た村尾潤平は、自身とのあまりにも大きな力の差に愕然とする。さらに、五代都が流鶯に向ける熱い視線を見て、彼女の思いを察した潤平は、その日以来バレエのレッスンに行く事をやめてしまう。学校では、潤平は、弱い者いじめを楽しむ相良兵太黒島達とつるんでいたが、バレエの事は隠したままになっていた。そんなある日、ずっと不登校だった流鶯が突然登校して来た。流鶯は、レッスン場の威圧的な姿とはまったく違い、学校では弱々しい姿を見せていた。そんな流鶯に目をつけた兵太は、彼をターゲットに陰湿ないじめを始めるが、潤平は傍観したままだった。さらに、流鶯の母親が元アイドルの森真鶴である事が発覚した事で、流鶯へのいじめはエスカレートしていく。学校で開催された合唱コンクール当日、舞台にはたった一人、兵太にセーラー服を着せられた流鶯が立ち尽くしていた。母親のアイドル時代の歌を唄えとはやしたてる兵太の声が響くが、次の瞬間、流鶯はバレエを踊り始める。流鶯の渾身の踊りに感銘を受けた潤平は、涙に震え、真の意味でのかっこよさに気づく。これからはバレエだけに打ち込む事を宣言し、潤平はいじめのグループから脱退。改めて五代千鶴のもとを訪れる。

第3巻

さまざまなバレエ教室が集う「洋舞祭り」で、村尾潤平は念願の王子役を務める事になった。「白鳥の湖」の本番中、潤平は暴走を始める。宿敵ロットバルトとの戦いに敗れて舞台上で息絶えるはずが、潤平は筋書きを無視して起き上がり、何度も戦いを挑む。無謀な彼を相手に、この舞台をなんとか収めようと、ロットバルト役の森流鶯は必死に踊り続けるうちに、流鶯は、これまで感じた事のない未知の感覚へと足を踏み入れるのだった。踊り終えた二人に対し、観客からは嵐のような称賛の拍手が送られた。誰もが、今回のMVPは流鶯に贈られるだろうと考えていた。しかし、特別審査員として参加していた日本バレエ界の重鎮・生川綾子は、表彰式で五代バレエ教室の発表を酷評。MVPはまったく違う者の手に渡る結末となった。これにより、五代バレエ教室内でも内紛が勃発。潤平の勝手な振る舞いに腹を立て、それでも特別扱いしようとする五代千鶴に反旗を翻し、幼い子達の保護者が結託して教室を辞めてしまったのだ。これに責任を感じた潤平は、流鶯を無理矢理連れ出し、綾子に自分達の事を認めさせてやろうと、生川はるかバレエ学校ボーイズサマークラスへ、飛び入りで参加する事になる。

第4巻

村尾潤平森流鶯は、自分達を酷評した生川綾子を見返そうと、生川はるかバレエ学校ボーイズサマークラスに乗り込んだ。そこで出会った田倉大和や安田海咲姫乃小路寿ら同世代の精鋭達とは、ライバルとして切磋琢磨していく中で、さまざまなトラブルを乗り越え、次第に固い友情によってつながり始める。そんなある日、潤平達は、女子のSSクラスと合同でレッスンを行う事になった。そして女子と男子がペアを組んで行うパ・ド・ドゥの相手として、潤平は綾子の娘・夏姫と組む事となった。夏姫はまだ小学校6年生ではあるものの、その実力は群を抜くものであり、存在感は圧倒的だった。潤平は、気の強い彼女とのパ・ド・ドゥが、無難にきちんとまとまるようにと努力していたが、そんな中、「パリの炎」の動画の話で夏姫と意気投合。試しにその動画を再現してみた潤平と夏姫は、ほかでは味わえない不思議な一体感を感じ、相性のよさを実感するのだった。一方で、潤平が相思相愛と信じて疑わなかった流鶯と五代都の仲がゆらぎ始め、ここへ来て三人の関係が大きく動き始める。

第5巻

生川はるかバレエ学校ボーイズサマークラスでは、SSクラスへ推薦される権利を得るたった一つの座「スカラシップ」をかけて、最終日にヴァリエーション発表の場が設けられていた。村尾潤平は、生川綾子から、スカラシップを潤平に決める意思がある事を伝えられ、スカラシップに応じるつもりならば、五代バレエ教室とは完全に縁を切る事を条件として提示される。条件が飲めないならば最終日の発表への参加は認めないと言われた潤平は、悩んだ末、五代バレエ教室に残る事を決める。そしてスカラシップは森流鶯に譲ろうと、彼にヴァリエーション発表に参加するよう話をしに行ったが、そこに流鶯の姿はなかった。そして迎えたサマークラス最終日。ヴァリエーション発表が行われる中、失踪した流鶯の行方を探す潤平と五代都は、流鶯の祖母・小鶴が入所している施設へと足を運ぶ。道々、都の口から語られたのは、流鶯が幼い頃から、いびつな環境のもと、歪んだ愛情によって祖母に叩き込まれた、壮絶なバレエ教育だった。流鶯の壮絶な過去を知った潤平は、彼を救えるのは都しかいないと判断。流鶯から都を奪うわけにはいかないと、一度は心を通わせた都との関係を断ち切る事を決意する。そして認知症を患う祖母の前で踊り続ける流鶯に都を託すと、自分は静かにヴァリエーション発表の場へと急ぐ。

第6巻

村尾潤平は、生川はるかバレエ学校ボーイズサマークラスでたった一人のスカラシップを受け、SSクラスの奨学生となった。それから1年が経ち、中学3年生になった潤平は、ただただひたすらに、バレエ漬けの日々を送っていた。生川はるかバレエ団で団長を務める岩井に付いて過ごす毎日は、潤平にとって学ぶ事が多い反面、自身のバレエ経験の浅さを思い知らされ、悔しい思いをする事も多かった。そんな中、本公演「GEISYA」で芸術監督を務める銀矢の目に留まった潤平は、その東京公演に出演する機会を得る。プロの舞台に立つという思わぬチャンスに、潤平は浮足立っていた。だが、中学3年生という成長期真っ只中の潤平の体は急激な変化を見せ、それは潤平が思う以上にバレエに影響を与えていた。ジャンプのたびに体中に痛みを感じるものの、バレエ歴の長いライバル達に置いて行かれる事を恐れ、焦りばかりが先行していた潤平は、体を休める事もせず、ただただ突っ走り続けていた。そんなある日、舞台の稽古中に銀矢からダメ出しをされた潤平は、いいところをみせようと自分本位のジャンプを見せつけようとする。それが逆効果となり、銀矢から出演白紙を言い渡された潤平は、なんとか舞台にしがみつこうともがき苦しむが、生川綾子からも焦りを指摘され、改めて舞台の降板を言い渡されてしまう。

第7巻

貫井一馬は、相良兵太をはじめとするグループからいじめを受け続けており、不登校になっていた。一方で兵太は、実はそんな貫井をつねに気にかけており、家を訪問し続けていた。そして兵太は、インターネット上で姉の写真を使い、女の子になりすまして貫井とコンタクトを取り始める。こうして二人は親しくなっていき、ネット上でのみ本気で語れる関係となる。だがある日、貫井は偶然から相手が兵太である事を知ってしまう。すべては自分を陥れるため、兵太が仕組んだ策略だったのだと勘違いした貫井は、逆上してナイフを用意。いつものように家を訪れた兵太を刺してしまう。

その頃、「GEISYA」の海外公演に出演するため、ロシアに向かう途中だった村尾潤平のもとに、兵太が刺されたという連絡が入った。潤平は飛行機には乗らず、兵太のもとへと駆けつける。幸い、兵太は命に別状はなかったものの、潤平はこの事により舞台を放棄したと判断され、せっかくのチャンスを棒に振る事になった。さらに、生川綾子からは来年度の奨学金を再検討すると言い渡されてしまう。そして、「生川はるかバレエ団 子どもバレエ公演」に参加するよう命じられる。そこで行われるアンケートで、「もう一度見たい」の評価を120%獲得するという条件を達成できれば、来年度も奨学生として引き続き生川に在籍する事を認めるというのだ。だが、これはとうてい達成できるものではなく、事実上のクビ宣言であった。

第8巻

「生川はるかバレエ団 子どもバレエ公演」も後半に差しかかった頃、崖っぷちの状態にある村尾潤平のもとに、夏姫がやって来る。夏姫は母親・生川綾子に、将来「生川はるかバレエ団」を背負って立つ事を勝手に決めつけられたのに腹を立て、家出をして来たという。夏姫は「生川はるかバレエ団 子どもバレエ公演」の手伝いをしながらしばらくのあいだ同行する事になるが、彼女には家出とは別に、潤平をYAGPに参加させるという目的もあった。そして夏姫は、日本予選の締め切りが近いからと、母親に内緒にしたまま、潤平にYAGPの申し込みをさせようとせかす。だが、潤平は一瞬胸を躍らせながらも、冷静に自分が今しなければならない事と向き合い、申し込みを断念。そんな潤平に対し、夏姫はいくじなしと怒るのだった。それでも彼といっしょに踊る事に貪欲な夏姫は、潤平とお気に入りの「ドン・キホーテ」を演じていた際、ふとした事から女性が男性の肩に飛び乗るリフトを試みる。これが成功しかけた瞬間、二人は同時に、自分達が世界の舞台で踊る未来の姿のイメージを遠くにつかみかける。その感覚にすっかり興奮した夏姫は、同様に興奮しきっている潤平に、YAGPでいっしょに踊ろうと再度持ちかけるのだった。

第9巻

「生川はるかバレエ団 子どもバレエ公演」最終日、「もう一度見たい」という評価を見事に120%獲得した村尾潤平は、その成果をたたえられ、スカラシップ継続という結果をつかみ取る。同時に、覚悟を決めた潤平は、生川綾子にYAGPへの出場を願い出る。ところが、綾子はこれをあっさりと了承。そして、ゆくゆくは「生川はるかバレエ団」へ入団する事を条件に、YAGPにかかる多額の費用のすべてを負担する事を潤平に約束する。森流鶯も当然YAGPに参加すると考えていた潤平は、ようやく彼と勝負できる日が来ると胸を躍らせる。しかし、バレエ経験の浅い潤平がYAGPで勝ち上がるには、まだまだ多くの課題があり、毎日深夜まで、中村によるつきっきりの指導が行われる事となった。そして迎えたYAGP日本予選当日。時間ギリギリで会場入りした潤平は、参加したワークショップで周囲の視線を釘づけにする。しかし、いざ発表が始まった時、潤平は参加者の中に流鶯の名がない事に気づく。

第10巻

村尾潤平は、森流鶯がYAGPではなく、同時期にロシアで開催されているコンクール「ワガノワ・プリ」に出場している事を知る。流鶯と勝負する事だけをモチベーションとして来た潤平は目標を見失い愕然とするが、そこに、流鶯がワガノワ・プリの男子部門で1位を受賞したという知らせが届く。流鶯に対抗したければ、お前はYAGPで1位を獲れという中村の言葉に奮起した潤平は、「ドン・キホーテ」の「バジル」のヴァリエーションを、無難な構成ながら正確に披露する。そんな潤平のバレエに対し、客席から「ヘタクソ」とこき下ろす者が一人いた。それは、ロシアにいるはずの流鶯だった。彼は、潤平が出場しているYAGPに自分も出場したい一心で緊急帰国し、YAGPの会場までやって来たのだ。男性部門の発表終了後、休憩中に突然舞台に上がった流鶯は、自らがワガノワ・プリで賞を獲得した「ジゼル」の「アルブレヒト」のヴァリエーションを披露し、会場中を感動の渦に巻き込む。そして改めて潤平のバレエが期待したものでなかったと罵倒したうえで、自分は5年後にはボリショイかマリインスキーのプリンシパルになると宣言し、その場を立ち去るのだった。

登場人物・キャラクター

村尾 潤平 (むらお じゅんぺい)

岩倉中学校に通う2年生の男子。サッカー部に所属している。幼い頃、両親に姉のバレエ発表会へ連れられて行った。そこでプロのバレエダンサーが踊る姿を見て以来、バレエに興味を持ち始めた。もともと女の子と間違われたり、からかわれることが多い少年だったため、父親からはバレエを習うことを反対されていた。しかし、あまりの熱心さに、バレエ教室への入会を許してもらった矢先、父親が亡くなってしまう。 父親の死をきっかけに、男らしくしなければと自らを律し、バレエの道を諦めて格闘技「ジークンドー」を習い始めることを決める。その後、中学生へと成長した彼は、転校生の五代都との出会いをきっかけに、バレエへの情熱を再燃させることになる。「男らしくないこと=カッコワルイこと」という考えの持ち主であり、男性がバレエを踊ることに対する偏見や羞恥心を持っている。 そのため、なかなか素直になることができないが、都の母親にジークンドーで培った身体能力を見込まれ、8年越しの夢が叶って、バレエのレッスンに参加するようになる。

五代 都 (ごだい みやこ)

岩倉中学校に転校して来た2年生の女子。自宅の1階には母親の五代千鶴が経営するバレエ教室「五代バレエスタジオ」があり、彼女自身もバレエを習っている。村尾潤平とはクラスメイトで、彼が教室で披露した格闘技「ジークンドー」の跳び蹴りを見て、バレエのジャンプとの共通点を見出し、潤平の自宅まで押しかけて彼をバレエに誘った。 バレエのためにと、スマートフォンは持たずにキッズ携帯を持ち、部活は時間をとられない科学部に入部している。バレエは好きだが、母親から、「技術も素質もあるが華がないため、バレエを続けてもプリマにはなれない」と宣言された。どうしてもバレエに携わりたければ、「生川はるかバレエ団」に入るよう勧められたため、現在はSSクラスでバレエを学んでいる。

村尾 ななこ (むらお ななこ)

村尾潤平の姉。小さい頃からバレエ教室に通い、バレエを習っていたが、成長に伴い、ミニバスケットボールに熱中するようになり、バレエは止めてしまった。潤平が中学生になっても、自宅で密かにバレエの練習をしていることを知っているが、見て見ぬふりをしている。

五代 千鶴 (ごだい ちづる)

五代都の母親。生川綾子主宰のバレエ団「生川はるかバレエ団」に入団。その後、海外のバレエ団に所属するためロシアに渡っていたが、帰国した後は再び「生川はるかバレエ団」に戻り、一番高い位であるプリンシパルとして活躍していた。何かとトラブルが絶えなかったこともあり、2年前に独立。自宅の1階にバレエ教室「五代バレエスタジオ」を開いた。 男っぽくさっぱりとした性格で、彼女を慕う生徒は多い。都が自宅に連れてきた村尾潤平が、目の前で踊って見せたバレエを酷評しながらも、内心では彼の秘められた実力に魅入られ、指導者として胸を躍らせている。

三丘 (みおか)

村尾一平太の友人の男性。目黒で格闘技「ジークンドー」を教える道場を開いている。一平太とは、アクション映画「ブルースリーに誘われて」をともに作った仲間。一平太が亡くなった時、まだ幼かった村尾潤平に「男として強くなり、家族を守れ」と声をかけた。これがきっかけとなって、潤平が自分のもとにジークンドーを学びに来ることになる。

村尾 一平太 (むらお いっぺいた)

村尾潤平の父親。映画のアクション監督を務めている。格闘技「ジークンドー」を指南している三丘とは、仲の良い友人。ともにアクション映画「ブルースリーに誘われて」を作った。息子である潤平が、よく友達にからかわれたり、女の子と間違われたりすることを心配し、三丘のところで格闘技を学ぶことを勧めていた。しかし、潤平が本気でバレエをやりたがっていると知り、バレエを習うことを許した翌日、心筋梗塞で帰らぬ人となった。

相良 兵太 (さがら ひょうた)

岩倉中学校に通う2年生の男子。村尾潤平の幼なじみで、サッカー部に所属している。潤平とは仲の良いグループの1人として、よく行動をともにしている。しかし、小学生時代に潤平から受けていたさまざまな仕打ちを「いじめ」と認識している。現在では笑い話にしてはいるものの、なにかとやり玉にあげており、根に持っているふしがある。小学4年生の頃に隣町に引っ越したため、当時の同級生とは中学で再会。 その時には泣き虫だった印象が一変しており、悪ふざけや友人いじりなど、逆に周囲を引かせるほど、やりすぎるタイプになっていた。仲間内からは「兵」と呼ばれている。

森 流鶯 (もり るおう)

岩倉中学校に通う2年生の男子で、五代都のいとこ。ロシア人の血の入ったクォーターのため、目の色が薄く、日本人離れした顔立ちをしている。人と接するのが苦手で、特に同世代の集団には恐怖感を覚えるほど。幼い頃から祖母にバレエを厳しく教わってきたため、かなりの実力の持ち主で、ことバレエに関しては極端な負けず嫌い。現在は訳あって都の家で生活をともにしているが、不登校のうえ、引きこもっている。 そのため、真夜中にひっそりと1階のスタジオでバレエを踊っていたが、村尾潤平の存在が引き金となって、登校し始めるようになる。しかし、他人を受け入れない頑なな態度を面白がった相良兵太に目を付けられ、いじめに遭ってしまう。

黒島 (くろしま)

岩倉中学校に通う2年生の女子。村尾潤平や兵たちと仲が良く、いつも行動をともにしている。胸が大きいため、クラスメイトの男子からは何かと性的な目で見られ、標的にされてしまいがち。しかし、当の本人も自分の色気を武器にしているところがあり、潤平の元気がない時には、元気づけるために、自らスカートをめくって下着を見せてしまうようなお色気タイプ。 潤平に好意を抱いており、彼が出演するバレエの「洋舞祭り」にも足を運んだ。

森 真鶴 (もり まづる)

森流鶯の母親。ロシア人と日本人のハーフで、バレエでは舞踊コンクールのジュニア部門で優勝を果たした実績を持つ。その後はアイドルへ転身し、個性派女優として芸能界で名を馳せた。だが19歳の時に、プライベート写真の流出により、男性俳優との不倫交際が発覚して、大スキャンダルとなった。その後、暴力団との黒い交際が明るみになって、交際していた男性が逮捕。 その余波が森真鶴本人にも及び、イメージダウンに抗えず、アメリカ留学を理由に芸能界から突然姿を消した。留学して数年後、アメリカで女優として復帰するが、妊娠が判明して結婚。しかし、夫の子供ではないことがわかり、1年を待たずに離婚に至った。それ以降、母親である小鶴に息子を預け、家を出たままとなっている。 息子である流鶯の名前が、真鶴のブログに記載されているため、流鶯が真鶴の息子であることは世間一般に知られるところとなった。

生川 綾子 (おいかわ あやこ)

日本5大バレエ団の1つである「生川はるかバレエ団」の創始者の娘。日本バレエ界の重鎮。さまざまなバレエ教室が参加する「洋舞祭り」に、特別審査員として参加した。その際、村尾潤平と森流鶯らが所属する「五代バレエスタジオ」の舞台を酷評。特に潤平に対してはバレエを辞めるべきと痛烈に批判したが、それは彼の持つ隠れた才能を見抜いてのことであった。 その後、「五代バレエスタジオ」の汚名を返上するために生川はるかバレエ学校ボーイズサマークラスに姿を現した潤平を、必ず自分のものにすることを決意。「五代バレエスタジオ」と縁を切り、自分のもとへ来るように仕向ける。

ユリアちゃんママ

「五代バレエスタジオ」で幼い娘にバレエを習わせている母親。自分自身もバレエの経験があるためバレエに詳しく、一緒にバレエを習っている子供のお母さんたちの間ではボス的存在。「洋舞祭り」で村尾潤平が自分勝手に踊って、「五代バレエスタジオ」自体が生川綾子から酷評を受けたことに腹を立て、一緒に習っていた他の子供たちとその母親を引き連れて、教室を辞めてしまった。 もともと、五代千鶴が「生川バレエ団」とのつながりを持つことに期待しての入会だったため、生川から目を付けられてはその先はないと、早々に見切った形となった。

姫乃小路 寿 (ひめのこうじ ことぶき)

生川はるかバレエ学校ボーイズサマークラスに参加した少年。旧家の資産家の子息であり、バレエに熱心な両親に育てられた。そのため、両親は「生川はるかバレエ団」の賛助会員であり、彼自身は、横浜にある生川家直属のバレエ学校に通っている。背が低く、体型がバレエ向きでないため、バレエの技術やセンス、資質には欠ける、と生川綾子からは判断されている。 しかし、両親が協力的であることを理由に、サマークラスへの参加が認められている状態にある。

田倉 大和 (たくら やまと)

生川はるかバレエ学校ボーイズサマークラスに参加した少年。「全日本バレエコンクール」で2位を獲得した経験を持ち、中学3年生にしてすでに身長が180cmと体格にも恵まれている。技術も高いものを持っているが、最近までやっていたバスケットボールの影響で、バレエには不似合いな筋肉が脚についてしまっている。それを生川綾子からは危惧されている。

安田 海咲 (やすだ みさき)

生川はるかバレエ学校ボーイズサマークラスに参加した少年。昨年も同じ講座に参加している。その時と比べて身長が10cm伸びており、バレエの資質は申し分ないものを持っている。普段は京都でバレエレッスンを受けており、並行してスペシャルスチューデントクラスの受講を希望しているが、京都のスクールの先生からは新たな受講を反対されている。 また、両親もプロになることに反対しているため、今回スペシャルスチューデントクラスに入れなければ、バレエを止めなければならないという状況にある。将来を誓い合った彼女がいることから、村尾潤平から「ヤリチン先輩」と呼ばれている。

妻村 (つまむら)

生川はるかバレエ学校ボーイズサマークラスで、レッスンのためのピアノの生演奏を担当した老婆。優しく可愛らしい笑顔の持ち主で、ピアノで村尾潤平が言うところの「光っている音の粒」を出すことができる。レッスン中の潤平を見て、彼のバレエに対する意識の低さを指摘。SSクラスのレッスンを見せて、バレエに対して無知で傲慢な思い上がりを自覚させた。

夏姫 (なつき)

生川綾子の娘。「生川はるかバレエ団」の学校で、SSクラスに在籍している小学6年生。その存在感は圧倒的で、生川で唯一の飛び級をした存在として、スクール内では知らない者はいない。誰よりも上手でないと気が済まず、常に人一倍の努力を重ねる努力家。生川はるかバレエ学校ボーイズサマークラスに参加した村尾潤平とペアを組んで踊ることになり、互いの相性の良さを体感することになる。

小鶴 (こづる)

森流鶯の祖母で、五代千鶴の母親。トッププリマを目指してソ連時代のロシアに渡ったが、怪我をして挫折。帰国して25歳年上の男性と結婚し、千鶴をもうけた。しかし、生後数か月の千鶴を残し、家を出て単身ロシアに戻った。そこでロシア人ダンサーとの間に森真鶴をもうけた。現在は認知症が悪化して施設に入所しており、流鶯と真鶴の区別もつかない状態。 ロシア至上主義で、日本のバレエを全否定している。その理念のもと、幼い頃から流鶯を閉じ込め、異常な環境でバレエを教え込んできた。

岩井 (いわい)

「生川はるかバレエ団」で団長を務める老人。これまでの15年間は、芸術監督を務めていた。目が悪いため、いつもサングラスをかけている。新たにSSクラスに入った村尾潤平がお供につくことになり、基本的には使い走りとして使っている。バレエを中心にさまざまな舞台を見に行くなど、何かと潤平を気にかけて行動をともにしている。

銀矢 (ぎんや)

「生川はるかバレエ団」が行う公演「GEISYA」で芸術監督を務める男性。ロイヤルバレエ団のプリンシパルを務めていたが、生川綾子のスカウトを受け、「生川はるかバレエ団」に入団した。「GEISYA」の稽古中、忍者役の学生に物足りなさを感じ、岩井に付いて現場に来ていた村尾潤平を、急遽追加で起用することを決める。

貫井 一馬 (ぬくい かずま)

岩倉中学校に通う2年生の男子。相良兵太からいじめを受けて以降、不登校になった。アニメやゲームのキャラクターが好きなオタクで、周囲の生徒たちからは、からかいまじりに「ヌっくん」と呼ばれている。のちにインターネット上で彼女ができたことがきっかけで強気になり、再び登校するようになる。

佐藤 幹太 (さとう かんた)

YAGPの日本予選の参加者の男性。バレエ歴の長い関西の少年で、ここ1~2年のあいだにさまざまなコンクールで上位を獲得している注目株。自信家で、バレエ歴が浅い村尾潤平の事を見下している。身長は低いが、技術力は高く、優れた身体能力を活かしたアクロバティックな動きが得意。YAGPでの演目は潤平と同じ「ドン・キホーテ」の「バジル」のヴァリエーション。ジャンプが高く、23回転という超絶テクニックで観客を魅了する。

中村 (なかむら)

「生川はるかバレエ学校」で講師を務める男性。いつも頭にバンダナを巻いているため、生徒達からは「バンダ中村先生」と呼ばれている。バレエ経験が浅い村尾潤平に秘めた可能性を感じ取り、すべてにおいて粗削りな彼を細かく指導している。YAGPを目指すにあたっては、日本予選で決戦に残る程度の、恥ずかしくないレベルまでに実力を引き上げると宣言し、潤平をつきっきりで導く。

田村 あい (たむら あい)

「生川はるかバレエ団」でファーストアーティストを務める女性。年齢は21歳。「生川はるかバレエ団 子どもバレエ公演」への参加は今年が初めて。田舎育ちで、祖父が地域の権力者なため、幼稚舎から女子校育ちで恋愛経験がなく、弟といっしょに野山を駆け回る幼少期を送っていた。強いキャラクターを演じる事を得意としているが、生川綾子からは、主役を張れる器と魅力があるものの、華奢さと甘さが足りないと指摘を受けている。子どもバレエでは、16公演すべてで王子と本気で愛し合い、オデット役を深める努力を求められている。

間野 薫 (まの かおる)

「生川はるかバレエ団」でアーティストを務める女性。年齢は19歳。「生川はるかバレエ団 子どもバレエ公演」への参加は今年が初めて。桜島天とは仲がよく、移動中のバンの中ではよくいちゃいちゃしている。幼い頃から舞台に立つのが大好きで、かつては勝つ事を楽しむためコンクールを渡り歩いていた。身長が低いのが欠点だが、身体能力も感性も素直さも余りある逸材。しかし、生川綾子からの「舞台でどうありたいのか」という問いに答えられず、思い悩んでいる。

桜島 天 (さくらじま てん)

「生川はるかバレエ団」でソリストを務める男性。年齢は20歳。男前でナルシストなチャラ男。ローザンヌ国際バレエコンクールで入賞した経験を持つ。その後、留学してバレエ教育修了証書(ディプロマ)を取得し、生川綾子からの熱烈なオファーを受けた。帰国し、生川はるかバレエ団に入団したものの、現在はバレエへの情熱を失っている。華のなくなった彼に業を煮やした綾子から、「生川はるかバレエ団 子どもバレエ公演」への参加を言い渡された。

鷲尾 (わしお)

「生川はるかバレエ団」でソリストを務める男性。年齢は35歳。筋肉ムキムキで、メイクしてもしなくてもあまり変わらないほどの濃い顔を持つ。「舞台がダンサーを育てる」が信条の熱血漢。過去5回すべての「生川はるかバレエ団 子どもバレエ公演」に参加している。好悪さまざまな意見があるこの公演に対しては、若い世代の子供達が、期待されるがゆえに参加させられているものと信じている。

加賀 紅乃 (かが くれの)

「生川はるかバレエ団」でファーストソリストを務めていた女性。年齢は31歳。「生川はるかバレエ団 子どもバレエ公演」には去年も参加しており、今回で2回目になる。はっきりした性格で、みんなの姐さん的な存在。昨年結婚したが、そのすぐあとの面談の際に、生川綾子から「もっと努力をするつもりがあるか」と聞かれ、即答できなかった。それ以降、夏の本公演のメンバーから外され、子どもバレエの仕事に回されるようになった。

イベント・出来事

生川はるかバレエ学校ボーイズサマークラス (おいかわはるかばれえがっこうぼーいずさまーくらす)

生川綾子が主宰するバレエ団「生川はるかバレエ団」によるバレエレッスン。夏休みの間に男子のために1週間だけ特別開講する。プロのダンサーが指導にあたり、その最終日には、練習したバリエーションを綾子本人が講評するため、人気の講座となっている。この講座で、バーレッスンの際に一番鏡側に配置された生徒は、期待をかけられている証となる。 そこに一番長い時間立っていられることが、SSクラスに奨学生としてスカウトされる条件となっている。

YAGP (わいえーじーぴー)

ロシアのボリショイバレエ出身の、ラリッサ・サヴェリエフとゲナディ・サヴェリエフが設立した、バレエのコンクール。若いバレエダンサー達が、より充実した教育を受け、プロとして活躍するための機会を与える事を目的としている。若い世代は特に、留学するためのスカラシップ獲得を目的としている者が多いといわれている。その予選は世界中で行われ、日本でも開催されている。

生川はるかバレエ団 子どもバレエ公演 (おいかわはるかばれえだん こどもばれえこうえん)

「生川はるかバレエ団」が毎年夏休みに行っている、バレエを身近に感じてもらうためのイベント。プロが実際に踊って見せるもので、バレエ鑑賞人口増加のための、いわば草の根運動。関東近県の小学校を2週間で16校程度回るボランティア公演で、訪問する学校は、公募の中からクジで決めている。生川はるかバレエ団 子どもバレエ公演に参加する者は、同時期に行われる本公演から外されたメンバーで構成されており、期待されていないメンバーであるといわれている。また昨年、司会として参加した「ハマダ」は、今年2回目の参加となるはずだったが、逃げだしたという噂があるほど運営が大変な事で知られている。

その他キーワード

ダンスール・ノーブル (だんすーるのーぶる)

王子役を踊る資格のあるバレエダンサーだけに与えられる称号。王子は1つの頂点であり、王子役を踊るには、容姿、技術、演技力、華、音楽性、品格、サポート力など、すべての資質においてふさわしい実力を持つと認められる必要がある。先天的なものも大きく影響するため、努力だけでは届かない領域のものである。また、王子を演じるだけでなく、キャラクター性の強い役柄もこなすことができれば、どんな役でも踊ることができる万能のプロダンサーと見なされる。 バレエ大国ロシアの最高峰カンパニーで、王子を踊った日本人はいまだかつていない。

SSクラス (すぺしゃるすちゅーでんとくらす)

生川綾子が主宰するバレエ団「生川はるかバレエ団」の学校で、特にプロを目指す資格のある生徒だけを集めた特別クラス。無駄なく美しくそろった動きを定着させるため、細かく厳しく何度でも指導を行っている。また、このクラスの生徒は、自団の公演に出演することができるという特権があり、このクラスを目指し、生川はるかバレエ学校ボーイズサマークラスへの参加を希望する者も少なくない。

書誌情報

ダンス・ダンス・ダンスール 29巻 小学館〈ビッグ コミックス〉

第1巻

(2016-02-12発行、 978-4091874498)

第2巻

(2016-05-12発行、 978-4091876072)

第3巻

(2016-09-12発行、 978-4091877758)

第4巻

(2016-12-12発行、 978-4091893314)

第5巻

(2017-04-12発行、 978-4091894359)

第6巻

(2017-07-12発行、 978-4091896322)

第7巻

(2017-10-12発行、 978-4091896582)

第8巻

(2018-01-12発行、 978-4091897770)

第9巻

(2018-04-12発行、 978-4091898555)

第10巻

(2018-08-09発行、 978-4098600021)

第11巻

(2018-11-12発行、 978-4098601820)

第12巻

(2019-02-12発行、 978-4098602162)

第13巻

(2019-05-10発行、 978-4098602810)

第14巻

(2019-08-09発行、 978-4098603770)

第15巻

(2019-12-12発行、 978-4098604586)

第16巻

(2020-03-12発行、 978-4098605613)

第17巻

(2020-06-11発行、 978-4098606313)

第18巻

(2020-10-12発行、 978-4098607488)

第19巻

(2021-01-12発行、 978-4098608058)

第20巻

(2021-04-12発行、 978-4098610761)

第21巻

(2021-09-10発行、 978-4098611218)

第22巻

(2021-12-28発行、 978-4098612079)

第23巻

(2022-03-30発行、 978-4098612611)

第24巻

(2022-08-30発行、 978-4098613953)

第25巻

(2023-04-12発行、 978-4098615001)

第26巻

(2023-08-09発行、 978-4098625390)

第27巻

(2023-12-12発行、 978-4098626151)

第28巻

(2024-04-11発行、 978-4098626885)

第29巻

(2024-11-12発行、 978-4098630288)

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