昴

双子の弟にまつわる過酷な過去を持つ少女・宮本すばるの、世界にも通用する常識外れなバレエの才能と、その天才性ゆえの苦難を描くバレエ漫画。「第一部」と「第二部:職業舞踏手(プロダンサー)編」で構成され、第二部の内部に「“ボレロ”編」が含まれている。また、続編に『MOON~昴ソリチュードスタンディング~』がある。

正式名称
ふりがな
すばる
作者
ジャンル
バレエ
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概要・あらすじ

病床に伏す双子の弟の前で、日々の出来事を踊り続ける小学3年生の少女、宮本すばる。過酷な日々と大きな哀しみがダンサーとしての才能を育み、やがてバレエへの道に進ませる。元バレリーナであるキャバレー店の社長、日比野五十鈴の指導を受け続けて6年後、日本現代舞踊協会の芸術フェスティバルで「白鳥の湖」の群舞として初舞台を踏み、プロのバレエダンサーになることを決意。

世界への登竜門である「ローザンヌ国際バレエコンクール」を目指す。コンクール後、イギリスのロイヤル・バレエ・スクールからの招きを断って、ニューヨークのシステロン・バレエ・カンパニーという小さなバレエ団に入団したすばるは、刑務所での慰問公演や、ニューヨークバレエ界の女王であるプリシラ・ロバーツとの同日同演目勝負など、数々の伝説を作り上げていく。

そしてプリシラとの対決を終えたすばるは、FBI捜査官のアレクサンダー・シン(アレックス)と運命的な出会いを果たす。

登場人物・キャラクター

宮本 すばる (みやもと すばる)

5月1日生まれの日本人女性。物語開始時は小学3年生で、作中では16歳まで成長する。「天才の名をほしいままにする、最強のバレエダンサー」。小学校の友達である呉羽真奈の影響でクラシック・バレエと出会ったのち、伝説的バレリーナ・日比野五十鈴の弟子となる。バレエを始める以前から、体のバネやバランス感覚、そして天性のカンに優れ、子どもとは思えない深みのある表現力を発揮する。 人を惹きつける魅力も高く、中学校では教師や男子生徒が目を奪われて見惚れていたほど。なお、五十鈴が経営するキャバレー、パレ・ガルニエではアメリカ人の客がよく来ていたため、中学3年になる頃には英会話が問題なくできるようになっている。

宮本 和馬 (みやもと かずま)

双子の姉である宮本すばると同じく、5月1日生まれの弟。小学校へ入学後、脳の腫瘍が影響した記憶障害を発症し、聖ポウル病院に入院。徐々に意識が薄くなっていく病気のため、言葉や絵を用いたコミュニケーションも和馬には伝わらず、すばるが懸命に踊って見せるボディランゲージによってのみ反応を示す状態となっていた。 すばるがお見舞いを毎日続けながら、日々の出来事を必死に伝えようとしていたことが、日々の出来事を必死に伝えようとしていたことが、予期もせず彼女のバレエの才能を培うこととなる。すばるのダンスの最初の観客だと言える。入院前は、小学校の女子の人気者だった。

日比野 五十鈴 (ひびの いすず)

キャバレー店、パレ・ガルニエの女社長。かつては伝説的なバレリーナであり、日本人でありながらパリ・オペラ座バレエ団のエトワールとして踊りたいという夢を抱いていた。東洋人で初めて入団試験を許可されるところまで行き着いたが、遺伝的に肥満になりやすいというだけの理由で身体適性検査から外れ、失格となる。 その後、人知れずキャバレーを経営していたが、ある日に迷い込んできた小学3年生の宮本すばると出会い、彼女のバレエの指導者となる。理不尽な淘汰が行われるバレエ界において、国籍も人種も体質も「才能」がきっと凌駕するという信念を持つ。一人称は「アタシ」。すばるからは「おばちゃん」と呼ばれ慕われている。

サダ

逞しい体格のオカマで、日比野五十鈴が経営するキャバレー、パレ・ガルニエに所属するダンサー。バレリーナ姿で「ジゼル」などを踊る。パレ・ガルニエに小学生の頃から通うようになった宮本すばるを自分の妹か娘のように思いやり、よき相談役となっている。涙もろく、情の深い性格。 五十鈴を「社長(シャチョー)」と呼び、親身に付き合っている。一人称は「アタシ」。

呉羽 真奈 (くれは まな)

宮本すばるの小学校時代、同級生だった日本人女性。母親の呉羽真子が呉羽真子バレエスタジオというバレエの教室を開いており、幼い頃からバレエを続けている。すばるがバレエを始める以前から、その本当の実力を知っている者として、ライバル心や劣等感、嫉妬を抱いている。その一方で、すばる本人からは優しい友達だと思われてもいるすばるの理解者。 すばるにクラシック・バレエの振り付けを最初に教えた人物でもある。

プリシラ・ロバーツ

オハイオ州出身の白人女性。バレエ界のあらゆる栄誉を手にしてきた天才バレリーナであり、(ニューヨーク・シティ・バレエ団(NYCB)の創設者として実在する)ジョージ・バランシンをモデルとした同名の人物にとって「人生最後のミューズ(最高のプリマドンナ)」とされたほど。 アメリカ合衆国に訪れた宮本すばると出会う頃には、NYCBのプリンシパルに君臨して15年になっている。天才であると同時に、変人じみた言動も多い人物。米国でのすばるの活動に興味を抱いたプリシラは、すばるとニューヨークで伝説的な対決をすることとなる。漢字をプリントしたオリジナルのTシャツを着たり、精神統一に座禅を組んだりなど、東洋趣味がある。

イワン・ゴーリキー

ロシア人の男性バレエダンサー。通称「ワーニャ」。日比野五十鈴の紹介で、ローザンヌ国際バレエコンクールへの出場を目指す宮本すばるのコーチとなる。元ボリショイ・バレエの英雄と呼ばれる実力者であるが、すばるを自分の弟子(カティア・フォン・ロールというすばると同世代の少女)に対する「最高のアテ馬」として捉え、厳しいトレーニングを課す。

ザック・ジャスパー

システロン・バレエ・カンパニーという、ニューヨークの小さなバレエ団の芸術監督をしている、ヒスパニック系男性。スイスのローザンヌ国際バレエコンクールで出会った宮本すばるの才能を欲し、彼女をシステロンにスカウトする。

熊沢 (くまざわ)

宮本すばるが初めて群舞を踊ることとなる、「白鳥の湖」の振り付けを担当した男性演出家。すばるの師である日比野五十鈴とは、若い頃に共演をした経験がある。その当時は、日本人でありながらパリ・オペラ座バレエ団のエトワールとして踊りたいと言った五十鈴に対し、「現実を直視しろ」と反論していた。 すばるがその五十鈴の弟子だと知ってからは、すばるを「怪物(モンスター)が育てた怪物」と呼ぶようになる。

春原 多香子 (すのはら たかこ)

ニューヨーク帰りの日本人バレリーナ。父の仕事の関係で住んでいたニューヨークで、5歳からバレエを始め、若くしてアメリカン・バレエ・シアターへの入団をも薦められるほどの実力者。宮本すばるが「白鳥の湖」の群舞で見せた才能を認め、若手バレエダンサーの登竜門であり、スイスのローザンヌ地方で行われる世界的なコンクール、「ローザンヌ国際バレエコンクール」に自分と共に出場するように薦める。

集団・組織

システロン・バレエ・カンパニー

『昴』に登場する団体。中学校を出た宮本すばるが入団した、ニューヨークの小さなバレエ団。芸術監督のザック・ジャスパーが、バレエ界のメインストリームに対する「反抗勢力(レジスタンス)」になるという名目を掲げて結成した。マイノリティの人種が多く、ライセンスを失っていたり、組合に入っていなかったりするダンサーの集まりであるため、スポンサーもつかず、二年間も公演をしていない開店休業中にある。 ダンサーとしてマリ=クロードやロビー、ウェンディなどが所属している。

場所

パレ・ガルニエ

『昴』に登場する店。日比野五十鈴が社長を務めるキャバレー店。宮本すばるが小学3年生の頃から、頻繁に出入りするようになる。店舗は神奈川県にあり、建物の看板には「YOKOSUKA」(横須賀)の字が見える。米海軍横須賀基地のある土地柄の関係か、アメリカ人客が多い。ストリップや女装バレエを出し物にしており、社長の五十鈴も元バレリーナである。 店名には、パリ・オペラ座に入団してガルニエ宮(パレ・ガルニエ)で踊りたかったという、五十鈴の過去の夢が込められている。

聖ポウル病院

『昴』登場する病院。宮本すばるの双子の弟、宮本和馬が入院している。宮本すばるの師となる日比野五十鈴も同時期に入院しており、弟の見舞いに来るすばるの姿を目撃し、病室で踊っているという噂も聞きつけていた。数年後、体調を悪化させた五十鈴が再び入院することになるのも、この病院となる。

その他キーワード

ZONE (ぞーん)

『昴』の用語。現実にも存在する言葉であるが、『昴』の作中では、真のトップアスリートのみが入れる次元であり、スポーツ医学の分野において解明されつつある現象だと説明されている。「ピーク・エクスペリエンス」とも。宮本すばるとプリシラ・ロバーツが体験している。極度に集中力が高まり、周囲の音、そして「色」が消えて感じられ、時間をスローモーションのように認識するなどの特徴がある。 「ZONE」の世界に入った人間は、特殊な感覚を得るだけでなく、通常では不可能なことが可能になると言われており、すばるとプリシラは、それぞれ「ZONE」の世界を利用したバレエの舞台を同日に踊ることになる。

続編

MOON~昴ソリチュードスタンディング~ (むーん すばるそりちゅーどすたんでぃんぐ)

『昴』の続編。アメリカから国外退去処分を受け、ベルリン・ワルデハイムバレエに移籍した後の宮本すばるの奮闘を描いたバレエ漫画。本シリーズで完結。 関連ページ:MOON~昴ソリチュードスタンディング~

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