あらすじ
第1巻
希代の死霊使いと恐れられた屍神殿は、復讐の果てに英雄のシャグルア・エディス・ルグリッドに打ち倒される。死に瀕した屍神殿は平穏を求め、転生の秘術を発動。新たな生は平穏に暮らすことを誓う。しかし、屍神殿が目覚めたのは見覚えのない異世界だった。そこで殺された四乃山ポルカに乗り移った屍神殿は、右も左もわからない状況の中、崎宮ミサキに襲われる。ミサキを撃退し、彼女の上役である仲介人の倉木リサと交渉した屍神殿は、この地で平穏に暮らすために彼女と取り引きを交わす。そして屍神殿はリサから借りた拷問ビルを拠点に、ミサキや繰屋匠、真ポルカを仲間として、ポルカとして現代日本での生活を始める。しかし、屍神殿改めポルカは平穏を求めつつも、子供を助けるために酌沢ビルの火災事件に首を突っ込んだり、性質の悪いヤクザを半殺しにした「固結び事件」を引き起こしたりと、次々と騒動を巻き起こす。そしてその行動は、次第に警察の目の留まるところとなる。そしてポルカは、事件を捜査する第三資料編纂係とニアミス。第三資料編纂係に所属する岩野目ツバキに目を付けられそうになるが、その瞬間、彼らのもとに都市伝説で謳われる怪異、レミングスが現れるのだった。
第2巻
レミングスに襲われた四乃山ポルカたちは、その圧倒的な力に翻弄される。ポルカは崎宮ミサキの助けもあり、なんとか危機を脱し、騒動のドサクサにまぎれて第三資料編纂係の面々の目からも逃げることに成功する。レミングスに再び襲われた際に備え、ポルカは魔力の補充のために魔溜石を求めるが、異世界では気軽に手に入った魔溜石が日本では高級品となっており挫折。平穏な暮らしのためにも金策が必要と実感する。そしてポルカは、拷問ビルで死んだ細呂木雅の霊と契約。細呂木の発案で自分と仲間たちの特技を生かし、占い屋を開業する。このアイデアは功を奏し、ポルカたちは一気に人気占い師となる。しかしある日、占い屋に新たな客としてやって来たのは、真ポルカの家族、四乃山華月と四乃山紫月だった。ポルカは最初は他人のフリをしてなんとかやり過ごそうとするが、彼女たちに取り憑いている四乃山涼火の霊にお願いされ、家に戻ることを約束する。そして真ポルカ、ミサキと共に家に戻ったポルカは、華月と紫月の暗殺をもくろむ殺し屋がいると知る。ポルカは殺し屋に殺された霊の力を借り、火吹き蟲(偽)の正体を暴き、暗殺計画を阻止することに成功する。
第3巻
暗殺計画を阻止した四乃山ポルカだったが、その言動から四乃山呂算に偽者だとバレてしまう。真ポルカも交えて事情を説明したポルカは呂算と和解。四乃山華月と四乃山紫月を守れたことに満足し、ポルカたちは拷問ビルに戻る。しかしそこに呂算の計らいで、新たな仲間である四乃山小夜と雷小幽が合流し、ポルカの身の回りはますますにぎやかとなるのだった。一方、捕まった火吹き蟲(偽)は護送中に本物の火吹き蟲(真)に焼き殺されてしまう。それらの事件の捜査をしていた岩野目ツバキは情報を集めるため、拘置所にとらわれている希代の愉快犯、雪車村天鵶の聴取を行う。しかし事件に興味を持った雪車村は聴取の最中に脱獄し、姿をくらます。派手好きの雪車村は、電波ジャックして自ら脱獄したことを喧伝し、1週間後、新たな騒動を巻き起こすことを予告する。そして新たな事件を抱えつつも、地道に捜査を続けていたツバキたちは、集めた情報からポルカが固結び事件にかかわっていると考え、彼らが営む占い屋を訪れる。そこで実はツバキのかつてのパートナーであった細呂木雅は、ポルカを通じてツバキに情報を渡す。ポルカ、細呂木、ツバキ、雪車村、バラバラの思惑を持つ面々だったが、雪車村が予告した日、彼が飛ばした飛行船に描かれた紋章は、彼らの思惑に共通するものだった。
第4巻
雪車村天鵶は火吹き蟲(真)と手を組み、彼の言葉に従ってヤクザの事務所に忍び込む。そこで雪車村が手に入れたのは謎の紋様だった。雑貨殿からそれこそが自らの求める物と教えられた雪車村は、飛行船に紋様を描き、新宿の空に飛ばす。紋章を派手に宣伝し、紋様に関係のある者を挑発した雪車村は、ワナを用い、紋様に関係のある者は警察内部にまで根を張る秘密組織であることを衆目の前で証明する。そして紋様は雪車村だけではなく、岩野目ツバキと細呂木雅が追う物でもあった。またその紋様を見た四乃山ポルカは、それがかつて自分が所属していた帝国の物だと確信。大切な思い出の詰まった国章を好き勝手する者たちの正体をつき止めることを誓う。ポルカは四乃山小夜に事情を話し、彼女の理解を得つつ、繰屋匠のハッキングによって紋様の情報を集める。しかし、匠のハッキングは雪車村に察知されてしまう。ポルカの占い屋に組織の手がかりがあると踏んだ雪車村は深夜に拷問ビルに忍び込む。しかし雪車村は雷小幽とレミングスに出くわし、彼らに襲われてしまう。さらに漁夫の利を狙った火吹き蟲(真)まで加わり、場は混沌。騒動に気づいたポルカは新たな死霊術「見えざる手の群」を使うが、雪車村が逃げるために使った煙幕のせいで、その異形の魔術は多くの人の目に止まることとなる。
登場人物・キャラクター
四乃山 ポルカ (しのやま ぽるか)
「屍神殿」と呼ばれる希代の死霊使い(ネクロマンサー)の男性。元は亜眼持ちの人間で、今はなき帝国の宮廷魔術師第四席。珍しい亜眼持ちの子供ということで親に金で売られ、イーズリーズ・ソルドフレイルのもとで帝国の死霊使いとして育てられる。その後、国が滅びるまで働き続けていたが、いつしか四乃山ポルカ自身も死霊と化し、国が滅びたあとは平穏を求めてさすらうようになった。さすらううちに知り合った子供たちと平穏に暮らしていたが、ゲルドウッド教団によって子供たちを殺され、復讐に走る。その後は憎悪にとらわれすぎて、いつしか自死すらできない巨大な骸骨の怪物となる。炭鉱跡地に引きこもり、自身を殺せる存在であるシャグルア・エディス・ルグリッドをおびき寄せ、自身をあえて打ち倒させた。その後、あらかじめ準備していた転生の秘術でポルカの死体に取り憑く。ポルカとしての姿は16歳の真っ白な髪をした少年で、屍神殿が取り憑いて以降は白い髪に黒のメッシュが一房入っている。異世界に転生したのは完全に想定外で、勝手がわからず死霊術が使えることが倉木リサに露見してしまう。その後、リサと取り引きを交わし、拷問ビルを借り受け、崎宮ミサキと繰屋匠を仲間として、日本で平穏な暮らしを求めて奔走することとなる。本名は日本語では聞き取りづらい名前であるため、専ら「屍神殿」もしくは「ポルカ」の名前で呼ばれる。
真ポルカ (しんぽるか)
本来の四乃山ポルカの魂。ポルカと区別するため、周囲からは「真ポルカ」「ポルカ(真)」と呼ばれる。崎宮ミサキに殺されたあと、屍神殿に体を乗っ取られ、真ポルカは近くにあった繰屋匠のドローンに移された。屍神殿に体を預けるのは真ポルカも納得済みで、ミサキに殺されたことも恨みに思っていない。その後、環境が落ち着くのを見計らって映画「地獄のサメボーグ」に登場するサメボーグのぬいぐるみに魂を移された。サメボーグの体をかっこいいとかなり気に入っているが、しゃべることができないのは不満に思っている。サメボーグとなってからはポルカの肩あたりに乗り、行動をよく共にしている。もともとは四乃山グループの当主、四乃山呂算の息子。呂算が還暦を過ぎ、後妻とのあいだに生まれた次男坊であるため、前妻とのあいだに生まれた年の離れた兄がいる。複雑な家庭環境だが父親とは仲がよく、のちに秘密を打ち明け、事情を理解してもらっている。実家では大きな白いワニを飼っており、「シロ」と名づけてかわいがっている。
崎宮 ミサキ (さきみや みさき)
暗殺者の少女。長く伸ばした茶色の髪を三つ編みにし、眼鏡をかけた女子高校生で、底抜けに明るい性格をしている。「キヒヒッ!」と特徴的な笑い方をする。幼い頃は裕福な家の娘として幸せに暮らしていたが、快楽殺人者に母親を殺されるのを目の当たりにしてしまう。その後、倉木リサに拾われ、彼女のもとで暗殺者として育てられた。そして殺し屋を専門に殺す暗殺者となり、「殺し屋殺しのザキ」として同業者からも恐れられる存在となる。幼い頃からの経験から、頭のネジがはずれたようなハイテンションな言動をし、殺しの際には楽しそうな笑顔となる。崎宮ミサキ自身が生きていてはいけない異常者であることを自覚しており、母親を殺した殺人鬼を殺して仇を討ったあとは、それまで堅気の人間には手を出さなかった方針を転換し、四乃山ポルカの暗殺を受ける。悪人でもない人間をなんの葛藤もなく殺せたことで、自分が生きていてはいけない存在と確信。自殺しようとするが、ポルカが生きていたことを知らされ、その確認に赴く。ポルカを再び殺そうとするが、力加減を誤ったポルカの反撃で即死した。その後、ポルカにゾンビとして蘇生させられ、リサの命令でポルカに力を貸すこととなる。自分を初めて殺してくれた存在としてポルカのことを気に入っている。またポルカと交流していくうちに心境にも変化が訪れ、殺してしまった真ポルカに対しても、のちに謝罪して許しを得ている。
繰屋 匠 (くるや たくみ)
ハッカーを生業とする金髪の青年。引きこもりでほとんど外に出ないためにラフな格好をし、ヘッドマウントディスプレー用のバイザーをつねに身につけている。崎宮ミサキからは「クルぽん」と呼ばれる。住居の中にいることが多いが、ドローンとハッキングした監視カメラで新宿中に目をはぐらし、企業や警察のコンピュータから情報を抜き取っているため、新宿でも有数の情報通。倉木リサから死体の回収など非合法な仕事の斡旋を受けて生計を立てていたが、死んだはずの四乃山ポルカが動き出す様を発見。リサに報告し、紆余曲折の末、ポルカが日本になじむために手助けすることとなる。ポルカを当初は危険視していたが、彼の人となりを知るうちに理解者となる。一行の中では常識人であるため、ツッコミ役に回ることが多い。かつては愚連隊に所属していたが、我が身かわいさに仲間を荒瀬耿三郎に売った過去を持つ。
細呂木 雅 (ほそろぎ みやび)
四乃山ポルカと契約した男性の死霊。拷問ビルで5年ほど前に死亡したが、強い心残りがあったため、現世にとどまっていた。死霊が強い未練を残しつつも長期間、正気を保っているのは難しく、5年間正気を失わずにいた細呂木雅は尋常ではない精神力を持つとされる。ポルカが細呂木自身の心残りを晴らすことを手伝うのを条件に、彼に使役される契約を交わす。そして、崎宮ミサキの持っていた蜘蛛のアクセサリーの付いたシャープペンシルに憑依させられる。シャーペンであるため、周囲との意思疎通は筆談で行う。金儲けが大好きな性格で、ヤクザめいた言動も相まって繰屋匠からは「インテリジェンスウェポン」ならぬ「インテリヤクザウェポン」といわれている。ポルカたちにできる金儲けとして、占い屋を主導した。多芸且つ博識で、シャーペンのみで緻密な絵を描いたり、ポルカに話術を叩き込んだりしている。また屍神殿のいた異世界の話にも興味があり、ポルカから話を聞いて考察をしている。実は生前は警視庁の監察官で、倉木リサと岩野目ツバキの知人。ただヤクザ染みた言動は元からで、当時から「汚物を暴く汚物」「不良監査官」と呼ばれていた。生前はサバラモンドの落とし子の存在を追っているうちに命を落とし、真相が明らかにできなかったことが心残り。ツバキのことを気にかけており、彼に真実を明らかにしてほしいと思っている。
四乃山 小夜 (しのやま さよ)
四乃山グループの御令嬢。年齢は20歳で、真ポルカの年上の姪にあたる。四乃山華月と四乃山紫月の実姉。前髪を目が隠れるまで伸ばした女性で、マイペースな性格をしている。職業は無職だが、それを指摘すると自宅警備員と言い張る。また実家が裕福なため、お金には不自由していない。サメとサメ映画を愛し、サメ映画を人生の教科書と崇拝している生粋のサメ映画オタク。つねに物静かだが、サメが絡むと饒舌になり、ふだんは見せない行動力を発揮する。火吹き蟲(偽)の引き起こした火事でサメコレクションを燃やされ、四乃山呂算の計らいで雷小幽と共に四乃山ポルカのいる拷問ビルに預けられる。ビルではコレクションがすべて消失したために無気力で、ほとんどサメの着ぐるみを着たまま寝て過ごしている。ポルカがサバラモンドの落とし子の紋章を見た際にたまたま居合わせたため、彼が真ポルカではないことに気づく。その後、ポルカから事情を聞き、彼に協力するようになる。サメにしか興味ないが、ポルカが正体を明かす前に薄々本物でないことに気づいていたり、崎宮ミサキの内面を見抜いたりと、随所随所で鋭い観察力を見せる。
雷 小幽 (れい しゃおゆう)
四乃山呂算の直属の護衛を務める男性。四乃山小夜の付き添いで、執事見習いと身分を偽って拷問ビルに居座る。10代前半の中性的な少年のような見た目をしているが、年齢は19歳。暗殺を家業とする「雷家」の一族の中でも特別な「黒雷(ヘイレイ)」の家の出身。幼い頃、初仕事ですご腕の暗殺者とかち合い、四肢を失う大ケガをする。四肢を失い、暗殺者として使い物にならなくなったため、家族にそのまま毒を生み出す器「庭壺(ティンフー)」として死ぬまで使い潰されそうになるが、その寸前に呂算に助けられた。この経緯から呂算を父親のように慕うようになる。呂算から四乃山ポルカが偽者であることを教えられるのと同時にその護衛を頼まれるが、本物の息子である真ポルカに強い嫉妬心と対抗心を抱いており、スキあらばポルカもろとも、真ポルカもまとめて始末しようと考えている。拷問ビルではふだんは無害な少年を演じ、愛嬌を振りまいているが、本性は辛らつで口が悪い。ただ根は律儀なため、護衛と執事の仕事はきちんとこなしている。失った体の機能を四乃山グループの最先端技術で補っており、体内にはさまざまな機能を内蔵。そのうちの一つに集音機能が備わっており、ポルカたちの身の回りの世話をしながら、彼らの情報を集めている。
倉木 リサ (くらき りさ)
新宿で「仲介人」を営む妙齢の女性。スタイルがよく、妖艶な雰囲気を放つ美女で、新宿の裏界隈ではかなりの有名人。周囲からは本名をもじった「クラリッサ」の名で呼ばれる。ふだんはバーの店主を務めているが、裏では非合法な仕事の斡旋を行っている。崎宮ミサキ、繰屋匠の上役ともいうべき存在で、真ポルカの暗殺も彼女が斡旋した。暗殺失敗の連絡を受け、四乃山ポルカと交渉。彼と新宿を仲介し、暗殺の依頼人のことを聞かない代わり、彼に拷問ビルとミサキ、匠を貸す契約を交わす。また真ポルカの暗殺に関しては失敗を理由に依頼人と縁を切った。レズビアンで、店で働く女性たちとは肉体関係がある。自然と人を集める奇妙なカリスマ性を持ち、仲介人という仕事を天職とする。細呂木雅とは深いかかわり合いがあり、かつては大事な先輩として慕っていた。
岩野目 ツバキ (いわのめ つばき)
新宿署に勤める男性警官。髪を金色に染め、至る所にピアスを付けた青年で、第三資料編纂係の係長を務める。ホストのような身なりは新宿という場所柄で目立たずに捜査するための偽装で、新人時代は黒髪できちんとしたスーツ姿をしていた。オカルト染みた事件の指揮を担当し、場合によっては自ら捜査にも乗り出す。厄ネタの命名を担当しているが、周囲からネーミングセンスがないと思われているのをひそかに気にしている。荒瀬耿三郎とコンビを組んで捜査することが多く、暴力と脅し担当の荒瀬に対してひょうひょうとした態度で相手に取り入り、情報を集めるのをコンビネーションとする。新宿の仲介屋の倉木リサとは古い顔なじみ。火吹き蟲(偽)の引き起こした酌沢ビルの火災事件の捜査を皮切りに、固結び事件、雪車村天鵶の脱走と立て続けに事件に出くわし、その果てに四乃山ポルカの存在に行き着き、彼から因縁深いサバラモンドの落とし子の紋章を渡される。実は5年前まで細呂木雅とコンビを組んで、サバラモンドの落とし子を追っていた。捜査中に細呂木が行方不明になり、細呂木はすでに死んでいると思っていたが、ポルカから紋章を受け取ったことで細呂木が生きているとカンちがいしてしまう。
荒瀬 耿三郎 (あらせ こうざぶろう)
新宿署に勤める男性警官。第三資料編纂係に所属する。色黒の肌に平凡な顔立ちをした青年だが、凶暴な性格をしている。「マル暴」にいた経験もある武闘派警官で、高い身体能力と技術を持つ。暴力の世界にどっぷりとつかっているために実戦の経験が豊富で、人畜無害そうな自分の見た目に油断したチンピラを殴り倒したり、凶器を使った攻撃をためらわず行ったり、警察官とは思えない攻撃も必要とあれば躊躇しない。このため、同じ警察官でも彼の人となりを知る者たちからは敬遠されている。岩野目ツバキとよくコンビを組んで捜査しており、捜査では暴力と脅しを担当する。背中には虎と桜の刺青を彫っている。実は意外と繊細な部分があり、占いで悪い結果が出ると気にする性質。そのため、四乃山ポルカの店を捜査のために訪れた際も占いを断っている。
戸沢 弾正 (とざわ だんじょう)
新宿署の第三資料編纂係に所属する男性警官。やさしげな顔立ちで、第三資料編纂係の係長補佐を務める。上品な物腰に反して意外と過激な人物で、岩野目ツバキに絡んだ警察官に、八津蘭丸と共に手痛いお仕置きを行ったりしている。八津とコンビを組んで捜査にあたることが多い。
八津 蘭丸 (やつ らんまる)
新宿署の第三資料編纂係に所属する男性警官。派手な星柄のネクタイを付け、つねにサングラスをかけている青年で、うさんくさい雰囲気を漂わせている。新宿署個人戦第1位の腕前を持ち、持ち歩いている杖を使った戦闘を得意とする。戸沢弾正とコンビを組んで捜査にあたることが多い。
合川 (あいかわ)
新宿署の検視官を務める女性。黒い髪を三つ編みにしたクールビューティで、抜群のスタイルを誇る。ミステリアスで無表情な見た目に反して、使う言葉は「マジ」や「ウケる」などギャル言葉が多い。また仲のいい人物は「○○ッチ」とあだ名を付けて呼ぶ。検視官としては非常に優秀で、ゲソコン(下足痕)を一目で区別したり、現場のわずかな手がかりを発見したり、事件解決に大きく寄与している。第三資料編纂係の扱う事件にも検視官として協力しており、岩野目ツバキや荒瀬耿三郎と組んでよく仕事をする。
雪車村 天鵶 (そりむら てんあ)
協会に無所属の自称奇術師の男性。口ひげを生やし、黒い髪をオールバックにした中年の紳士で、上品なスーツを着こなしている。瞬間移動で総理大臣を誘拐したり、一晩で都庁の外壁を塗装してトリックアートに仕立て上げたり、日本中に大騒動をもたらした愉快犯。物理法則を完全に無視した奇術を行うが、本人曰く、種も仕掛けもあるトリックであるとのこと。自分が騒動を巻き起こすことで、本物の魔法使いや超能力者が現れてくれることを期待していたが、まったく無反応だったため、最終的に意気消沈して自分から警察に出頭した。東京拘置所にとらわれていたが、火吹き蟲(偽)が新宿の酌沢ビルで起こした火災事件に本物の幻想を感じ取って脱獄した。落ち着きのない中年で、「かっこいい」というだけの理由でトランプを武器にして戦う。岩野目ツバキが付けた厄ネタ名は本名をもじった「怪人ソリティア」で、これがそのまま一般人にまで通称として広がったため、雪車村天鵶本人も愛用している。雑貨殿からサバラモンドの落とし子こそ自分の求める物と教えられ、その情報を求めて大きな騒ぎを起こす。「ばあや」と呼ぶすご腕のハッカーが仲間にいる。
雑貨殿 (ざっかでん)
東京拘置所にとらわれている男性。ストライプ模様の入ったフード付きの羽織を着用し、つねにマスクをつけている。「雑貨殿」は岩野目ツバキが名付けた厄ネタの名で、本名は不詳。警視庁の資料では100年以上前より続く謎の「商家」の出身で、現雑貨殿はその商家の「五代目」と目されている。盗品、失せ物、聖遺物といった形ある物から情報や権利といった形なきものまで、あらゆるものを取り扱う商人で、取り扱えないものは唯一「彼ら自身の心」だけといわれている。現在は拘置所にとらわれているが、国家と商談し、独自の権利を獲得。彼の独房だけ商品が陳列され、雑貨屋のような様相となり、訪れた者と取り引きを行っている。価格はお客の懐具合を見て決めており、同じ商品でも買う人によって値段を変えるが、払えない法外な値段設定はしない。また商談には誠実でお客が払いすぎだと判断したら、差額は返金も行うと宣言している。雪車村天鵶はお得意様で、拘置所にたびたび忍び込んできた彼と商談を行う。サバラモンドの落とし子についても知っており、雪車村に助言と忠告を送っている。
レミングス
都市伝説に語られる謎の犯罪者。パーカーを羽織り、露出している肌の部分には包帯を巻いたミイラ男のような出で立ちをしている。性別から正体まですべてが不明で、気がつけばどこにでも現れるため「ネズミの集団」を意味する「レミングス」の名で呼ばれるようになった。高い身体能力に加え、サブマシンガンで撃たれていても平然としていたり、衆人環視の中に潜り込んでも誰にも気づかれなかったりと人間離れした能力を持っている。レミングスを亜眼で見た四乃山ポルカは、シャグルア・エディス・ルグリッドと同質の人でありながら人の理からはずれた者で、かかわってはいけない類の存在だと評した。必要であれば殺人も辞さず、素手で暴力団を丸ごと潰し、機動隊30人に囲まれても逃げおおせている。四乃山尊に雇われており、彼からは「根津」の名前で呼ばれている。尊の命令に従って行動しており、ポルカたちの前にたびたび姿を現す。
四乃山 呂算 (しのやま ろざん)
四乃山グループ現当主の老爺。真ポルカの実父で、年齢は79歳。やせ衰えた高齢の男性だが、目つきは鋭く、精悍な雰囲気を漂わせている。ポルカは後妻の子だが、本妻の子や孫と分け隔てなく愛しており、四乃山ポルカが本物ではないと一目で見抜いた。火吹き蟲(偽)の事件でポルカと崎宮ミサキが四乃山紫月と四乃山華月を助けたのもあり、事情を聞いてからは裏から手を回して彼らのサポートをしている。
四乃山 尊 (しのやま たける)
四乃山警備の社長を務める男性。年齢は26歳。四乃山呂算の孫で、真ポルカの年上の甥にあたる。既婚者で妻は四乃山希吏。眼鏡をかけた怜悧(れいり)な雰囲気を持つ青年で、四乃山警備を通じて四乃山グループの暗部を一手ににぎっている。四乃山警備は警察の主要天下り先の一つであるのと同時に、警備会社を隠れ蓑にした私的な兵力をそろえた組織でもあり、レミングスもその一員。その裏の組織は事情を知る者から「龍宮機関(りゅうぐうきかん)」と呼ばれ、恐れられている。龍宮機関は四乃山尊が独自に運営しており、その詳細は呂算も知らない。四乃山ポルカの正体を疑っており、その身の回りを独自に調査している。
四乃山 希吏 (しのやま きり)
四乃山尊の妻。年齢は24歳。黒い髪をボブカットにした女性で、朗らかでやさしい性格をしている。四乃山グループと同じ規模の資産家の次女で、箱入りのお嬢様として育てられた。真ポルカにもやさしく接しており、彼からも懐かれている。
四乃山 涼火 (しのやま すずか)
四乃山呂算の孫娘。真ポルカの姪にあたり、四乃山華月と四乃山紫月の実姉。2年前、火事に遭って死亡した。その死はボイラーが爆発した事故として処理されたが、実は火吹き蟲(偽)の正体を偶然知ってしまったため、口封じに殺された。華月と紫月が火吹き蟲(偽)に命を狙われていることを知っているため、死んでしまったあとも成仏せずに彼らを守ろうとしていた。華月と紫月が拷問ビルに訪れた際には、半ば正気を失い、悪霊化しかけつつも彼らを守っており、四乃山ポルカに彼らを守ることをお願いする。悪霊化しかけていた時は、髪を伸ばし放題にした焼け焦げた死体のような姿をしていたが、火吹き蟲(偽)の事件解決後は正気を取り戻し、生前の柔和な美女の姿となった。
四乃山 華月 (しのやま かづき)
真ポルカの姪。四乃山呂算の孫で、四乃山紫月とは双子の関係。紫月とは瓜二つの容姿をした美少女で、利発そうな雰囲気を漂わせている。家を出た真ポルカの行き先を知り、四乃山ポルカのやっていた占いの店に紫月といっしょに訪れる。ポルカが他人と思って対応したのをからかっているのとカンちがいし、激昂した。ポルカの反応がいつもと違うため、ひそかにその正体を疑っている。四乃山涼火にかわいがられており、彼女に懐いていた。しかし2年前、涼火が自分の落し物のポシェットを捜しに行って死んだため、深い自責の念にとらわれている。涼火に恨まれていると誤解していたが、火吹き蟲(偽)の事件でポルカに助けられた際に涼火の思いを伝えられ、救われた。
四乃山 紫月 (しのやま しづき)
真ポルカの甥。四乃山呂算の孫で、四乃山華月とは双子の関係。華月とは瓜二つの容姿をした中性的な美少年で、小生意気そうな雰囲気を漂わせている。家を出た真ポルカの行き先を知り、四乃山ポルカのやっていた占いの店に華月といっしょに訪れる。ポルカの名乗った「屍神殿」という名をかっこいいと思っている。四乃山涼火にかわいがられており、彼女に懐いていた。しかし2年前、涼火が華月の落し物のポシェットを捜しに行って死んだため、深い自責の念にとらわれている。涼火に恨まれていると誤解していたが、火吹き蟲(偽)の事件でポルカに助けられた際に涼火の思いを伝えられ、救われた。
メイドさん
四乃山家で働いていた家政婦の女性。火吹き蟲(偽)に殺され、顔と身分を奪われ、成り代わられてしまう。火吹き蟲(偽)への恨みから、同じく顔と身分を奪われた護衛の男性と共に現世にとどまっており、火吹き蟲(偽)を捕まえるために四乃山ポルカに協力した。その後、護衛の男性は火吹き蟲(偽)が捕まったあとに成仏したが、メイドさんは火吹き蟲(偽)から顔を取り戻したあと、ポルカと契約して現世にとどまっている。当初は顔を奪われていたため、顔のない死霊だったが、火吹き蟲(偽)の事件解決後は本来の素顔を取り戻している。ポルカの命に従って火吹き蟲(真)を尾行したり、要所要所で活躍する。
鷹巣 次郎太郎 (たかのす じろたろう)
警視総監を務める男性。スキンヘッドに強面の容姿をしており、高齢ながら威圧感がある。組織に必要ないものはためらわず捨て去る厳格な性格をしており、岩野目ツバキにも面と向かってそれを警告した。名前は「じろたろう」で、「じろうたろう」と呼びまちがえられるとすぐさま訂正する。雪車村天鵶が脱走後に引き起こした事件を受け、捜査本部を再編成。その所轄サイドの指揮をツバキに任せた。
親戚の人 (しんせきのひと)
四乃山ポルカの親戚の男性。ポルカは名前を覚えていないため、「親戚の人」と呼んでいた。四乃山呂算の姪の夫で、年齢は52歳。恰幅のいい体型をしており、人当たりのよさそうな顔をして四乃山の人間に近づくが、本心では当主の呂算を見下し、四乃山本家の子供たちを事故に見せかけて殺そうとしていた。火吹き蟲(偽)を手引きし、彼を使って火事を引き起こすが、逃亡中に捕まる。
火吹き蟲(偽) (ひふきむし)
連続放火犯の男性。その手口はターゲットの生活圏に関係者を装って潜り込み、ターゲットの暮らす住居に発火装置や火薬を仕込み、最悪なタイミングでそれらを起爆して対象を焼き殺すというもの。火のエキスパート且つ人を焼き殺すことに快楽を感じる快楽殺人鬼で、特に女子供を焼き殺すことを好む。また変装術の達人で、殺した人間の皮を剥ぎ、その皮をかぶることで男にも女にも成りすますことが可能。その手口から警察ですら、身元はおろか男か女かも判明していない。親戚の人に依頼され、四乃山本家の子供たちを事故に見せかけて殺すため、四乃山本家の使用人に成りすまして潜入するが、潜入した際に四乃山涼火に正体がバレかけたため、事故に見せかけて殺している。その後、2年の時間をかけて四乃山本家に火災を巻き起こす仕掛けを施す。満を持して四乃山紫月と四乃山華月を殺そうとするが、 崎宮ミサキに邪魔されて失敗。メイドさんに成りすまして逃げようとするが、四乃山ポルカに正体を見破られ、レミングスに叩きのめされて捕まった。素顔は眉も髪もない骸骨のような顔をした男性であり、実は火吹き蟲(真)の模倣犯で、彼に成りすまして事件を引き起こしていた。新宿の酌沢ビルの火災も彼の手によるもの。最期は警察に連行される中、本物の火吹き蟲(真)に体を焼かれて死亡した。
シャグルア・エディス・ルグリッド
ゲルドウッド教団に所属する亜眼持ちの青年。「災厄潰し」とも呼ばれる歴戦の兵士で、その強さは人でありながら人の理をはずれた者とも評されている若き英雄。過去百年で最大の厄災と評された屍神殿と激闘を繰り広げ、これを打ち倒した。コミックスに収録されている成田良悟の書き下ろし小説「デッドマウント・デスプレイ 幕間劇」では主人公を務める。屍神殿と同じ亜眼の力を持っていたため、屍神殿が打ち倒されたあと、彼の書庫にあった亜眼持ちにしか読めない屍神殿の日記を読み、教会の不正と屍神殿の真意に気づく。その後、教会の不正の裏付けを行い、それが真実だと確信。仲間を教会の不正にかかわらせないため、レクリア・ローフィラルドに自身が屍神殿に乗っ取られた流言を流すように頼み、教会を離反する。教会からは新たな屍神殿として指名手配されている。その後は屍神殿への贖罪のため、かつて帝国の存在したバャディ半島に向かい、屍神殿の師であるイーズリーズ・ソルドフレイルに出会う。
レクリア・ローフィラルド
ゲルドウッド教団に所属する女性。シャグルア・エディス・ルグリッドの補佐と神官長を務める。屍神殿との決戦でも彼の補佐を務め、彼を決戦に送り出した。実直な性格をしており、誰もが英雄扱いしているシャグルアをただ一人の人間として扱い、その重荷を軽減しようと動く。そのため、シャグルアから実はひそかに好意を寄せられている。コミックスに収録されている成田良悟の書き下ろし小説「デッドマウント・デスプレイ 幕間劇」では、屍神殿討伐後、教団の不正を知ったシャグルアにより、レクリア・ローフィラルドを含むかつての仲間たちが教会の陰謀に巻き込まれぬようにシャグルアが屍神殿に乗っ取られたと、ウソを上層部に流すように頼まれる。シャグルアが去ったあと、シャグルアの意を汲んだ行動をしていたが、それが「シャグルアの後継」と上層部に見咎められ、仲間たちと共に切り捨てられる。偽りの任務で大陸北東部にある廃村におびき寄せられたあと、教会の暗部の襲撃を受けて負傷するが、シュラ・ゾーゾルッゾ・クランプランプ・ランプトンに助けられ、九死に一生を得る。
イーズリーズ・ソルドフレイル
死霊使いの女性。帝国の宮廷魔術師第二席で、屍神殿の師匠。獣の頭蓋骨を仮面にしてかぶり、踊り子のような扇情的な衣装を身にまとっている。人を物扱いするが、同時に「人よりも物を大事にする主義」であるため、一度自分の物と決めた人間には情深い面を持つ。屍神殿を超える死霊術の腕前に、武術の面でもトップクラスの腕前を持つ万能の天才。長命の人物で、帝国創設前から存在し、その存在は「半島の魔人」として御伽噺に語られている。また歴史の転換期に忽然と姿を現すため、「放浪桟敷」とも呼ばれる。才に恵まれつつも、自分勝手で奔放で派手好きな性格をしており、屍神殿は雪車村天鵶と似た人物と評している。 シュラ・ゾーゾルッゾ・クランプランプ・ランプトンは仇敵で、かつて地形が変わるほどの殺し合いをしたが、その後、皇帝に仲介されてお互いに矛をおさめた。コミックスに収録されている成田良悟の書き下ろし小説「デッドマウント・デスプレイ 幕間劇」では、弟子の仇討ちのために半島を訪れたシャグルア・エディス・ルグリッドの前に姿を現す。
シュラ・ゾーゾルッゾ・クランプランプ・ランプトン
顔に刺青を入れた中性的な風貌の美青年。帝国の宮廷魔術師第三席で、「虚銃座」の異名を持つ。帝国の崩壊についてあらかじめ察していたらしく、イーズリーズ・ソルドフレイルに忠告していた。帝国が滅び去ったあとは、各地で騒動を巻き起こす錬金学士であるパニの盟友として行動している。コミックスに収録されている成田良悟の書き下ろし小説「デッドマウント・デスプレイ 幕間劇」に登場。ゲルドウッド教団に追われる身となったレクリア・ローフィラルドの前に姿を現し、彼女を助けた。イーズリーズと仲が悪く、彼女とかつて行った戦いでは複数の島が消え去り、その戦いの様が御伽噺の題材にもなっているほど激しい戦いを繰り広げた。ただし彼女の弟子の屍神殿のことは気に入っており、弟分としてかわいがっている。「収納」と呼ばれる、文字どおり物品の収納に特化した魔法を使いこなす。戦闘では収納で敵対者の体の一部を切り取って収納し、それを対象に高速でぶつける戦い方をする。
ロメルカ・リメルカ
樹木をあやつる樹操術士(ウッズメイズ)の女性。帝国の宮廷魔術師第七席で、師匠から受け継いで宮廷魔術師の地位に就いた。大樹の幹から人間の女性の上半身が生えた姿をしている。性格はかなりのおしゃべりで、長い文をまくしたてるような話し方をする。長命で100年以上生きているが、話し癖は治らず、よけいなことまでしゃべりすぎるために周囲から注意されることもしばしばある。コミックスに収録されている成田良悟の書き下ろし小説「デッドマウント・デスプレイ 幕間劇」に登場。イーズリーズ・ソルドフレイルと共に帝国がかつて存在したバャディ半島におり、帝都跡地を守っていた。半島を訪れたシャグルア・エディス・ルグリッドをゲルドウッド教団の手先とカンちがいし、追い返そうと襲い掛かる。戦闘では森そのものを武器として戦う。森の植物を自由自在にあやつることができ、本体を森の中に隠すことで守りも鉄壁。だがシャグルアには通用せず、本体も亜眼で早々に見破られた。治療効果のある植物を生み出すことで、回復も行える。
ピラウィッゾ
ヌャンイルド王国を襲ったドラゴン。自動車程度の大きさしかないが、自分の数十倍体が大きな竜帝蟲を殺すほどの獰猛(どうもう)な力を持っている。王国で暴れ回り、「先帝殺し」「廃毒竜」の異名で呼ばれるようになったが、シャグルア・エディス・ルグリッドに撃退された。人語を理解し、人と意思疎通をすることが可能。コミックスに収録されている成田良悟の書き下ろし小説「デッドマウント・デスプレイ 幕間劇」に登場。バャディ半島に訪れたシャグルアの気配を感じ、彼の前に姿を現す。
集団・組織
火吹き蟲(真) (ひふきむし)
神出鬼没の連続放火犯。その正体は不明で、男か女かもわかっていない。犯行現場に「This world is a buggy problem.(この世はまっとうにあらず)」から続く英文の焼き文字を犯行声明として残すのが特徴。英文は2行目以降も存在するが、2行目以降は犯行現場によって残している内容が違う。警察は1行目しか公表していないため、火吹き蟲(偽)は一行目しか犯行現場に残していなかった。本物の火吹き蟲(真)は童謡をアレンジして歌いながら火を放つ。手口は不明で、なんの火の手のない場所に突然、犯行声明の文が焼き浮かび、対象を燃やし尽くす。第三資料編纂係が扱う厄ネタの中では珍しく、岩野目ツバキが名前を命名しておらず、マスコミの流した情報から「火吹き蟲」と名前が付けられて定着した。実は複数の人間が行っており、女子高校生と会社員の格好をした男性が一員。女子高校生は背中に「火の用心」と書かれた雨合羽を雨でもないのに着用しており、男性の方も同じく「火の用心」と書かれた傘をつねに持ち歩いて愛用している。
サバラモンドの落とし子 (さばらもんどのおとしご)
謎の組織。現代日本で暗躍する組織とされるが、なぜか異世界の帝国の国章を簡略化したものを組織のシンボルとしている。警察組織にまで深く根を伸ばしており、組織のマークを知っただけでも、その人物を殺害対象とする秘密組織。細呂木雅も5年前、組織に近づきすぎたため、組織に雇われた暗殺者に殺された。また「サバラモンド」の名から「不知火天楼(しらぬいてんろう)」の異名を持つ帝国筆頭宮廷魔術師、アリウス・サバラモンドにかかわり合いがあるとされる。
第三資料編纂係 (だいさんしりょうへんさんがかり)
新宿署生活安全課に存在する係。「三纂」の通称で呼ばれる。表沙汰にはしがたい、公表しても信じてはもらえないようなオカルト染みた事件を専門に扱っている。部署内部では事件の犯人を「厄ネタ」と呼び、係長の岩野目ツバキが厄ネタの通称を考え、名付けている。
場所
拷問ビル (ごうもんびる)
四乃山ポルカが新宿で拠点としているビル。元はヤクザが拷問や処刑、死体の処理に使っていたいわくつきの物件で、新宿の裏界隈では処刑場であるのと同時に、幽霊が出る心霊スポットとしても有名で、真昼でも一般人も裏家業の人間も近づきたがらない場所となっている。ポルカが崎宮ミサキに襲われて入り込んだ。その謂れのとおり、大量の幽霊がはびこる場所となっており、ポルカはこの地に漂っていた霊から魔力を回収し、大きく力をつけた。その後、オーナーの倉木リサから正式に借り受け、ポルカたちの拠点となる。現在はポルカたちが占い屋を開業し、若人たちのあいだで人気のスポットとなりつつある。ポルカの仲間内では専ら通称の「拷問ビル」か、ただ単に「ビル」と呼ばれる。
帝国 (ていこく)
異世界のバャディ半島にかつて存在していた国家。国土面積こそ大陸3番手に甘んじていたが、人口、技術力、軍事力がすべて群を抜いて発展していた帝政国家で、100年前まで繁栄を謳歌していた。しかし、突如として国の機能が停止して崩壊。原因はいっさい不明で、帝国の領土が魔獣や死霊の闊歩する死の大地と化したのもあり、100年経った現在でもなぜ国が滅び去ったのかは解明されていない。国の名前は「バャディ○○リグ帝国」だが、日本人には聞き取りもしづらい発音なため、専ら「帝国」と呼ばれる。国章は現皇帝が新たに考えた物で、杖と王冠を中心に剣と銃剣を交差させた紋章となっている。異世界の国家であるが、なぜか日本で暗躍する謎の組織「サバラモンドの落とし子」が国章を簡略化した紋章をシンボルとしている。
その他キーワード
亜眼 (あがん)
霊魂を見る特殊な目を指す言葉。死んだ人間だけではなく、動物や魔物、果ては小さな羽虫の霊まで見えるため、亜眼持ちは死霊に囲まれて心休まらない日々を過ごすこととなる。そのため、亜眼持ちは死霊にかかわるのを恐れて教会に入るか、逆に死霊をあやつる快感を覚えて死霊使いになるかのどちらかの道を選ぶといわれている。一方で亜眼持ちは死霊術に高い適正を持ち、帝国では数の少ない死霊使いになれば栄達は思いのままだとされる。また亜眼は生きている人間の魂の色を見ることもできるため、変装の看破や索敵にも大きな力を発揮する。このように亜眼持ちは特異な力から数奇な運命をたどることが多く、そのため地域によっては「祝福」とも「呪い」ともいわれ、扱われ方は大きく異なる。中には亜眼持ちの臓腑は不老不死の妙薬となる噂もあるため、地域によっては亜眼持ちは人買いにも狙われることもある。亜眼は魂に宿る力とされ、たとえ目を失っても、その力が消え去ることはない。屍神殿も四乃山ポルカの体に転生したあとも、亜眼の力を持ち続けており、地球でもその力は発揮されている。ただし魔力がほとんどない地球では人間の死霊以外は見えなくなるなど、亜眼の力にも変化が訪れている。
死霊術 (しりょうじゅつ)
魂を扱う術。死んだ人間の魂は未練や憎悪からエネルギーを生み出し、それを使って現世にとどまる。霊が現世にとどまるにも相応のエネルギーが必要で、死霊術で除霊することで、霊を祓うのと同時にそのエネルギーを魔力に変換して手にすることができる。死霊は未練を持ち続けて現世にとどまり続けると、次第に正気を失って悪霊化する。四乃山ポルカは主に話の通じない悪霊などを祓い、力を得ている。また理性が残っている霊ならば契約することで使役することも可能で、契約した魂ならば別の器に移し替えることができる。性質上、亜眼持ちが高い適正を発揮する魔術で、亜眼持ちが希少なのもあり、術を扱える者は少ない。高い適正を持つ者なら霊と魂を同調させて、遠くの景色を見たり感じたりできる「死霊同調」も行えるが、高い適正は己の魂を死霊に侵食される諸刃の剣で、一般的には危険視されている。しかし、イーズリーズ・ソルドフレイルは屍神殿の高い適正をあえて伸ばし、死霊同調に特化した死霊使いへと育てた。異世界では大気中に存在する魔素に阻害されるために死霊同調は制約が多かったが、地球では魔素がほとんど存在しないため、ポルカはその環境を逆手に取り、死霊同調と異界溢流を利用した新たな死霊術「見えざる手の群」を編み出している。
魔溜石 (まりゅうせき)
魔力を溜めた石。魔術士が魔力を補給するために使う石で、異世界では子供でも簡単に手に入れることができるほどありふれて存在し、街のインフラにも利用されている。地球にも存在するが、ほとんどが宝石扱いされていて非常に高価。また魔力を吸い取ったら石は粉々に砕けてしまうため、宝石として再利用することもできないとされる。
異界溢流 (いかいいつりゅう)
空間を魔力で整える術。閉ざされた空間に「彼岸」の空気を混ぜ込むことで、場を魔術の使いやすい空間にしたり、その空間にいる者の感覚を狂わせたりすることができる。ただし広い空間に強い効果をもたらすには、儀式を行って相応に手間をかけなければならず、片手間に行った程度ではせいぜい、カンの鋭い人間に「嫌な感じ」と思わせる程度しかできない。四乃山ポルカに取り憑いた屍神殿は、異界溢流によって自身が魔力をあやつりやすい場「神殿」を構築するのが上手で、拷問ビルを丸々包み込むほどの神殿を構築した。
見えざる手の群 (みえざるてのむれ)
四乃山ポルカが地球で新たに生み出した死霊術。異世界では大気中に豊富に存在する魔素に感覚を妨害され、実用が難しかった「死霊同調」を、魔素が薄い地球の環境に合わせて実用化したもの。死霊同調によって触覚を共有した「死霊の手」に、物理干渉を可能とする「死霊の糸」を編みこんでおり、見えない手を遠隔操作することができる。有効範囲は異界溢流で包み込んだ拷問ビル内で、複数同時に捜査も可能なため、名のとおりの「見えざる手の群」となっている。雪車村天鵶、レミングス、雷小幽が三つ巴の戦いをしている際、ポルカが小幽を援護するために使った。本来ならば視認不可能だが、雪車村がふざけて作ったタピオカミルクティー味の煙幕にまみれ、煙幕に含まれていた粉末が付着したことで視認可能となる。そしてその様は雪車村たちだけではなく、不特定多数の人間が目撃する事態となり、見えざる手の群は新宿の怪として注目を浴びることとなった。
クレジット
- 原作
書誌情報
デッドマウント・デスプレイ 13巻 スクウェア・エニックス〈ヤングガンガンコミックス〉
第1巻
(2018-04-25発行、 978-4757557000)
第2巻
(2018-11-24発行、 978-4757559226)
第3巻
(2019-04-25発行、 978-4757561038)
第4巻
(2019-11-25発行、 978-4757564015)
第5巻
(2020-04-25発行、 978-4757566231)
第6巻
(2020-11-25発行、 978-4757569607)
第7巻
(2021-04-24発行、 978-4757572140)
第8巻
(2021-11-25発行、 978-4757575950)
第9巻
(2022-04-25発行、 978-4757578913)
第10巻
(2022-11-25発行、 978-4757582699)
第11巻
(2023-04-25発行、 978-4757584969)
第12巻
(2023-11-25発行、 978-4757588806)
第13巻
(2024-04-25発行、 978-4757591585)