概要・あらすじ
母親の葬式のため3年ぶりに都会から田舎へ戻ってきたハルは、しばらく実家である母親の家で生活することになった。夏休みの生活を実家で送っていたハルは、無断で庭に入って遊んでいた中学生の少年たちと知り合い親しくなっていく。ある日ハルは、母親の葬式の後まもなく亡くなってしまった飼い猫のクロを埋葬をするために、中学生のタロと深夜に墓地へと向かう。
そこで2人は、偶然にも殺人の現場を目撃してしまうこととなる。
登場人物・キャラクター
ハル
母親の葬式のため、3年ぶりに都会から田舎町に帰省してきた女性。長い髪で、左右の耳にピアスを付けている。幼少の頃は母親の仕事の都合などでいろいろな街を転々として過ごし、小学生の頃、心ない噂でいじめられては、母親によく泣きついていた。転々と引越しを繰り返した後にこの田舎町に落ち着いたが、高校卒業後は、田舎から逃げるようにして都会の美術大学へ奨学金制度を利用して入学する。 都会ではアルバイトをして生計を立てており、ひと夏の間だけ母親の住んでいた実家で過ごすことになる。喫煙者で、ラッキーストライクを吸っている。
タロ
中学2年生の少年。短髪で髪と瞳の色は茶色。普段は都会で生活をしており、夏の間だけ妹の妙と共に親戚のタロのおばさんの家に預けられ、一時的に田舎町の学校に通っている。地元の少年たちと違って肌が白いが、標準語では喋らず、この田舎町の住民以上に方言がキツイ。腕白のイタズラ好きで、ハルの実家に頻繁に通ってはハルにちょっかいを出している。 ハルが田舎町に来る以前はゲンゾーじじいやハルの母とも仲が良かった。以前はナマコが苦手で食べられなかったが、今では大好物である。
ハナ
田舎町に住む中学2年生の少女。長い茶髪を2つに分けておさげにし、前髪を右に流してピンで止めている。タロが一時的に通っている田舎町の学校の同級生で、昨年の夏にタロに告白されて恋人同士の関係になり、今年の夏には婚約を申し込まれた。しかし、結婚を約束したが、小学生の頃にタロが他の同級生の女子と付き合っていたことを今でも根に持ち、ジェラシーを感じている。
ジョー
田舎町に住む中学2年生の少年。黒髪で、細長い目が特徴。タロが一時的に通っている田舎町の学校の同級生で、いつもタロと拓也と共に行動している。3人のなかではツッコミ役に回ることが多く、時には行き過ぎて相手を傷つけるような発言をしてしまう。離れ小島の無人島で古い屋敷を見つけた際、先頭に立って探索をする好奇心旺盛な一面も見られる。 家には自分の部屋がないので、いつか自分だけの部屋が欲しいと思っている。
拓也 (たくや)
田舎町に住む中学2年生の少年。肥満体型で、のろまで臆病な性格をしている。タロが一時的に通っている田舎町の学校の同級生で、いつもタロとジョーと共に行動している。何かにつけて食べ物の話ばかりしているので、ジョーからは「肉哉」とからかわれることもある。怖がりで、無人島の古い屋敷に侵入する際には、ジョーとタロに探索を中止しようと何度も訴えていた。
メガネ
田舎町に住む中学2年生の少年。茶髪であだ名の通りメガネをかけている。タロが一時的に通っている田舎町の学校の同級生。まじめで優しい性格で、タロが朝帰りをした話を聞いた時には誰よりも先に忠告した。教室でタロとジョーが暴れた時にも、クラスの中で唯一冷静に仲裁をしようとしたりと、事件や問題が起こると、友人のために率先して解決のために乗り出す。
妙 (たえ)
タロの妹。長い茶髪を左右に分けてツインテールにしている。未就学児で、タロと共に夏の間だけ一時的に田舎町の親戚のタロのおばさんの家に預けられている。イタズラ好きで怒られてばかりのタロとは対照的に、ぶりっ子で要領が良い。タロがハルたちと共に行方不明になった夜には、兄のことを心配し、「お兄ちゃんがもーちょっとイイ子だったらね」とぼやいていた。
ゲンゾーじじい
田舎町に住む高齢の男性。髪は白くて長く、顎鬚を生やしている。身なりが汚く、地元の大人たちからの評判は悪い。しかし、釣りが得意で子供たちには好かれており、「一、腕。二、竿。三、仕掛け」や「山の近く見える日は大釣りなし」といった教訓を覚えさせながら釣りを教えていた。変わり者呼ばわりされていたハルの母とも生前は親しくしていて、小さな頃のハルの子守をしたこともあった。 昔は大きな店を経営していたが詐欺に遭い、その影響で精神的に病んでアルコール中毒になったという過去がある。現在は海岸近くにある掘っ立て小屋に住んでいる。
タロのおばさん
田舎町に住む女性。長い茶髪を後頭部でまとめてお団子にしており、着物を普段着としている。健康オタクで、通販や雑誌、昼の情報番組の宣伝でさまざまな健康食品を購入するのが趣味。毎年夏の間だけ、タロと妙を預かっており、躾に厳しい。腕白なタロのことは時に厳しく叱るが、本当は心の優しい子だと理解しており、タロが離島へ行って行方不明になった時は、実の親のように心配した。
ハルの母 (はるのはは)
女手ひとつでハルを育てた女性。放浪癖があり、若い頃はハルを連れてさまざまな街を転々としていたが、晩年は田舎町に落ち着いた。タロをはじめとする田舎町の少年たちと親交があり、庭でさまざまな野草を栽培していたことから、彼らには「魔女」と呼ばれていた。信心深い田舎町の他の住民とは対照的に教会のミサにも参加せず、一方で住民たちに煙たがられていたゲンゾーじじいと親しく交流をするなど、独自の生活スタイルを貫き通していた。 ハルがこの田舎町を出た3年後に亡くなった。
おとなりさん
ハルが帰省してくる前に、ハルの母のお通夜などの準備をしてくれた高齢の女性。肩までの長さの白髪で、長い前髪を右に流している。ハルの母の家の隣に住んでおり、ハルの母が飼っていた黒猫のクロの元の飼い主でもある。面倒見が良く、かつてハルが40度の熱を出して床に伏していた時に看病してくれたりと、親子そろって色々とお世話になっている相手。
みつ子 (みつこ)
おとなりさんの家で女中として働いている女性。長い茶髪を後頭部でまとめている。背が低く、ふくよかな体型をしている。あわてんぼうで、些細なことで騒いではおとなりさんに叱られているが、頼まれた仕事はしっかりとこなす。不審者を見つけてくれと依頼された際には、地元の青年たちの力を借りて不審者の捜索に尽力した。
オダギリ
田舎町に住む男性。メガネをかけ、半袖のシャツを着用している。町の有名人で、骨董屋で裕福な客相手にアンティーク商品を取引して生計を立てており、地元の大人連中の評判は良いが、子供たちには胡散臭い奴だと噂されている。ハルとタロに殺人現場を目撃されてしまうものの、ゲンゾーじじいに殺人の罪を着せ、容疑から逃れることに成功した。
クロ
田舎町のハルの母の家に住んでいる黒猫。以前はおとなりさんの家で「フランシーヌ」という名前で飼われていたが、のちにハルの母に引き取られ、晩年まで過ごしていた。ハルの母の死後、後を追うようにして亡くなり、ハルとタロの手で墓地の土中に埋められた。その際、2人はオダギリが殺人に手を染める場面を見てしまうこととなる。
場所
田舎町 (いなかまち)
海に隣接した港町で、街から離れ小島が幾つも見渡せる。方言が強く、他の地域から来た人間をよそ者扱いする閉鎖的な住民が少なからず存在するが、よそ者のハルに採れたての農作物をくれたり体調を心配してくれたりと、基本的には情に厚い人々が暮らしている。坂道が多い町で、町の高台には「八ツ墓村」と呼ばれている大きな墓地がある。立ち入り禁止の区域も多く、少年たちの冒険心を掻き立てるようなスポットが数多く存在する。
その他キーワード
ゲンゾーじじいの聖書 (げんぞーじじいのせいしょ)
ゲンゾーじじいが冤罪で留置所に収容された後、面会に来てくれたお礼に良い物をあげると言われ、タロが在り処を教えてもらった聖書。聖書の中には、森の奥にひっそりと佇んでいる古い屋敷への行き方を示した地図が入っている。