突然出現した謎の塔「バベル」
本作の舞台となるバベルは、2021年の1月9日に東京湾の処分場に突然出現した正体不明の建造物。発生した原因は不明で、その高さが5キロメートルに及ぶ威容な姿に魅入られた人々から、いつしか「バベル」と呼ばれるようになった。搭の内部には人を襲う「天使」と呼ばれる生命体が徘徊(はいかい)しており、非常に危険な場所となっている。また、バベルの内部で文字を書くと、その文字が具現化するという特性がある。物質であれば有機物、無機物問わず具現化が可能で、水や食料品を具現化させることができるためバベルで飢える心配はない。現出させる際は、その対象を強く想像しながら文字を書く必要があり、ピストルや手榴弾(しゅりゅうだん)などの武器を出す際には、その構造をきちんと把握していないと殺傷能力のないおもちゃが出現する。「炎」や「岩」などの単純な物質は誰でも呼び出せるが、その物質に日頃からかかわりのある人が呼び出した場合は、通常より高い威力を発揮する。さらに、訓練次第で文字から物体を具現化させるタイミングを調節したり、具現化させたものを消去することも可能になる。
仲間と共に「バベル」の頂上を目指す
西原大牙は「目立たないのが一番」が信条のふつうの高校生。自衛隊員だった姉の真白が「バベル」の調査に向かったものの消息を絶ち、現在は一人で暮らしている。そんなある日、家で寝ていたはずの大牙が目を覚ますと、幼なじみの安達優愛と共にバベルの内部に転移していた。大牙はバベルの異様な雰囲気におびえる優愛を励まそうとするも、襲ってきた天使に彼女は殺害されてしまう。天使は大牙にも襲いかかってくるも、バベルに記されていた「ここで書いた言葉は実体化する」のヒントをもとに文字を具現化させ、天使に対抗する。さらに、螺旋(らせん)階段の上部から現れた東堂リュウに助けられて事なきを得る。リュウから優愛を蘇(よみがえ)らせる可能性があることを知った大牙は、真白との再会や優愛の蘇生(そせい)を目的に、自分たちより前に閉じ込められた数人の男女と共にバベルの頂上を目指すことになる。
少年少女たちに襲いかかる存在
「バベル」の内部を徘徊している天使は、2足歩行型の生物を模した自律型の生物兵器。白くて羽が生えていることから「天使」と呼ばれている。人間を見つけると殺害するために追跡を始め、翼で飛行も可能ながら動いていない個体には反応しないなど、行動にはいくつかの制約が見られる。知能も低いようで、文字の具現化による攻撃に対応できないことが多い。また、バベルで脅威となるのは天使だけではなく、「解放」と称して無差別殺人を繰り返す自衛隊員の鳳信楽をはじめとする、悪しき心を持った人間たちも立ちはだかる。大牙たちはそんな彼らの攻撃に翻弄されるが、仲間たちと連携しながら文字を具現化する能力を巧みに使いこなし、せまりくる困難を乗り越えていく。
登場人物・キャラクター
西原 大牙 (さいばら たいが)
東京の高校に通う3年生の男子。年齢は17歳。幼い頃に両親が火事で亡くなり、西原大牙自身もこの火災に巻き込まれるが、姉の真白の決死の行動で一命を取り留める。幼少期から真白を慕っており、将来は彼女と同じ自衛隊員になることを夢見ている。真白は2021年に発生したバベルの調査に赴いたまま、現在も安否不明となっている。ふだんは冷静沈着で、頭脳明晰(めいせき)なことから仲間たちに信頼されている。一方で、興味があることに執着する癖があり、バベルオタクぶりを発揮することもある。小学生の時、死んだ鳥を埋葬するため素手で死骸を持ち上げたことで、「バイキン」と呼ばれて1年間いじめを受けていた。この体験が現在もトラウマとなり、目立たないことが一番、人任せが一番を信条としている。かつて大牙が鳥を埋葬する姿を偶然見ていた東堂リュウからは、敬意を向けられている。
東堂 リュウ (とうどう りゅう)
西原大牙と別の高校に通う2年生の男子。年齢は16歳で身長は186センチ。クライミングの達人で、かつて世界大会で2位の成績を収めた。大牙の幼なじみの安達優愛からも、羨望の眼差しで見られている。その長身とクールな雰囲気から、周囲に威圧感を与えることが多い。その一方で、大牙が具現化した穴で天使を倒した姿を見て感心したり、仲間を守るために敵に立ち向かうなど、年相応の素直さや勇敢さを併せ持つ。また、人が嫌がることを率先してやる人物には尊敬の念を抱くロマンチストでもある。大牙よりも先にバベル内部に取り込まれているが、クライミングで培った身体能力とクライミングでかかわった岩を文字の具現化に利用することで、生き延びてきた。大牙と出会ってからは、仲間と共にバベルの本格的な攻略を始める。
クレジット
- 原作
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花林 ソラ
書誌情報
トーキョーバベル 3巻 講談社〈講談社コミックス〉
第1巻
(2020-07-17発行、 978-4065201855)
第2巻
(2020-10-16発行、 978-4065210123)
第3巻
(2021-01-15発行、 978-4065216408)