予測不能な18世紀のフランス
本作の舞台は18世紀のフランスで、「甦り病」と呼ばれる奇病が蔓延し、不死者(モルビバン)が跋扈している。また、マリー・アントワネットが殺害され、その双子の弟・アルベールが身代わりとしてフランス王室に迎え入れられるという、実際の歴史とは異なるストーリーが描かれている。この独自の歴史設定により、歴史に詳しい読者でも予測不可能なスリルと高揚感を味わうことができる。
秘められた宝石の真実
不死者はさまざまな場所に現れるが、興味深いことに貴族の屋敷が襲われる際には、必ずその貴族が所有していた宝石が消失している。実は、この宝石はマリー・アントワネットの夫であるオーギュストをはじめ、ナポレオン・ボナパルトやカリオストロといった人物たちが、不死者の襲来を利用して盗み出し、それぞれの思惑のために収集していたのだ。特にオーギュストとナポレオンは、この宝石に「ジャンヌ・ダルクの魂が封じられている」と信じており、その力を使ってベルサイユ宮殿の地下に眠るジャンヌ・ダルクの遺体を復活させ、不死者が跋扈するフランスを救おうと画策している。
フランスを混乱させる天使の存在
宝石の中に封じられていたのはジャンヌ・ダルクの魂ではなく、彼女に憑依したまま命を奪われた天使ミカエルであることが明らかになると、物語はまったく異なる展開を見せる。中途半端に復活したミカエルを天界へ導くため、複数の天使がフランスに潜入し、アルベールの命を狙い始める。一方で、彼に憑依していた悪魔が追い出され、別の悪魔たちがアルベールに取り憑いていたことで、フランスの財政はますます厳しくなっていく。ミカエルを救おうとする天使たちと、人間を享楽へと誘う悪魔たちが水面下でフランス革命を牽引していく様子が、物語の後半の大きな見どころとなっている。
登場人物・キャラクター
アルベール
マリー・アントワネットの双子の弟で、言葉を失っている。姉と瓜二つの容姿を持ち、日常的に彼女の身代わりを務めることが多いため、所作も非常によく似ている。国境近くで不死者(モルビバン)に襲われた際、アントワネットは命を落とし、アルベール自身も致命傷を負ってしまう。しかし、何者かに取り憑かれたことで一命を取り留め、馬車を駆って一人でベルサイユ宮殿へと逃げのびた。この出来事をきっかけに、アルベールは声が出せるようになった。フランスとオーストリアの国交を維持するため、ルイ15世をはじめとする衛兵や世話役など限られた者たちの公認のもと、アルベールは「マリー・アントワネット」としてベルサイユ宮殿で生活している。不死者に対して強い殺意を抱き、圧倒的な強さを誇る。一方で、デュ・バリー夫人に仕えるアンジェロたちは、アルベールに取り憑いている者を悪魔と断定し、アルベール本人のことも「悪魔」と呼んで敵視している。
バスティアン
ベルサイユ宮殿の近衛兵で、マリー・アントワネットの警護を務める男性。前髪が短いおかっぱ頭で、つねに眉間に皺を寄せている。アルベールがマリー・アントワネットを殺害したのではないかという疑念を抱き、アルベールとの無理心中を企てるが、逆に刺殺されてしまう。しかしその後、アルベールに取り憑いた悪魔の力によって、自我を持ったゴーレムとして復活を遂げる。復活後は、彼を復活させた悪魔とアルベールを憎み、何度も二人を殺そうと試みるもののすべて失敗。大天使ミカエルを救うために近衛兵として潜入していた天使・アステリオに、自分を殺してもらうことを願っている。
書誌情報
ベルサイユオブザデッド 5巻 小学館〈ビッグ コミックス〉
第1巻
(2017-01-12発行、978-4091876669)
第2巻
(2018-01-12発行、978-4091898296)
第3巻
(2019-12-12発行、978-4098605231)
第4巻
(2020-04-17発行、978-4098606559)
第5巻
(2020-12-11発行、978-4098608324)







