あらすじ
流転の石
相沢亮哉は14歳の10月に、母親の実家がある四六時町へと引っ越してきた。亮哉はそこで同じ日に引っ越してきたドジっ子の桜沢遙と出会う。転校生同士ということでなかよくなった二人は、新たに茜、拓真、麻子という三人の友達もでき、五人はまるで昔からの幼なじみのように親しくなる。学校が終わると公園に集合し、他愛のない話をして過ごす五人の関係は、高校へ進学してからも変わることなく続き、亮哉は飾らない遙にひそかな思いを抱くようになる。そんな五人が高校2年生になった夏、遙が東京の大学への進学を考えているらしいという噂を聞いた亮哉は、遙といっしょにいられなくなることへの焦燥感から告白を決意し、四六神社に遙を呼び出すメッセージを送る。しかし、遙は神社に現れることはなかった。亮哉は傷心のうちに帰宅するが、亮哉のもとに遙が事故に遭い、亡くなったという信じられない報せが届く。葬儀の日、ショックのあまり居ても立っても居られなくなった亮哉は会場を飛び出し、無意識のうちに雨の中神社へと向かう。自分が遙を呼び出したために遙は死んでしまったと、後悔の念に駆られていた亮哉は神社に到着すると、祠の裏で足を滑らせて崖の下に転落してしまう。その後、目を覚ました亮哉は、自分の落ちた場所にずっと探していた流転の石があるのを発見する。周囲に違和感を感じながらも、その場から離れた亮哉は、道路がすっかり乾き、あんなに激しく降っていたはずの雨の痕跡もなくなっていることに気づく。自分だけが雨でずぶ濡れの状態であることに疑問を持った次の瞬間、そこにはいるはずのない遙の姿があった。亮哉は、四六時町に伝わるやり直しができるという流転の石の力で、遙が事故に遭う直前へと戻っていたのである。
奏多の事故死
桜沢遙の葬儀中、相沢亮哉や茜、拓真、麻子の四人は、父親・桜沢紀夫や親戚から遙の家族の過去にまつわる話を聞く。遙には5年前に事故で亡くなった弟・桜沢奏多がいたが、亮哉は、その加害者である水沢秋良という人物の名前に聞き覚えがあった。そして亮哉は、その男が遙の死に大きくかかわっているのではないかと疑念を抱く。葬儀のあと、拓真の家のコンビニエンスストアに集合した四人は、遙に対する思いを吐露する中で、それぞれが流転の石のある場所を知っており、過去にやり直しを願ったことがあることを明かす。しかし亮哉以外は、実際に過去に跳ぶことに成功した者はいなかった。奏多の事故死がなければ、遙が引っ越すこともなく、四六時町で事故に遭うこともなくなるのではと考えた四人は、奏多の事故を防ぐために流転の石の力を使おうと提案。四人は四六神社へと足を運び、流転の石に願掛けを始める。亮哉は三人のただ拝むだけの方法が間違いであると知っていたが、それを指摘することはできなかった。しかし、みんなが一生懸命になっている姿を見て、これまでの経緯を打ち明ける決意をした亮哉は、茜、拓真、麻子に過去に戻るための方法を教え、絶対に遙を助けようと四人で誓い合う。そして、いっしょに石に向かって飛び降りるが、その方法で過去に跳ぶことに成功したのは亮哉だけで、亮哉が跳んだ先は遙が事故に遭う直前だった。奏多を助けるためには、さらに遠い過去に跳ぶ必要があると考えた四人は、試行錯誤しながら遠い過去に跳ぶ方法を模索する。
水沢秋良
とうとう5年前に跳ぶことに成功した相沢亮哉は、茜、拓真、麻子の協力で得た現金を手に一路東京へと向かう。そこで、12歳の桜沢遙と水沢夏生に会い、夏生の親戚という体で桜沢家の家族とつながりを持つことに成功する。見知らぬ親戚の存在に、当初は警戒心を抱いていた夏生も、持ち前の面倒見のよさと優しさを発揮する亮哉に次第に心を開いていく。そんな中、亮哉は桜沢奏多の事故死を防ぐため、水沢秋良の車を廃棄。これでひとまず安心と亮哉は胸をなでおろすが、そこに奏多が泣きながら助けを求めてくる。亮哉は向かった先で、遙と夏生が秋良に怒鳴られているところを目撃。その様子を窺う中で亮哉は、奏多をはじめとした三人の子供たちが秋良に恐怖支配されており、ある種の洗脳状態にあることに気づく。さらに奏多から、過去に何度となく車で追いかけられたことがあると聞かされ、事の重大さを桜沢紀夫と桜沢沙織に報告し、大人の手によって対応してもらうことにする。話を聞いた沙織は、秋良の妻・水沢真希が離婚を望んでいたこと、そして真希の死が交通事故であったことを亮哉に伝えるのだった。秋良の周囲に交通事故死が頻繁すること、さらにはその事故に不審な点があることに気づいた亮哉は、すべての元凶が秋良にあるのではないかと疑い、ここからさらに過去へと跳ぶことを決める。
さらに過去へ
桜沢遙の死にまつわるすべての発端が、水沢秋良と、その妻・水沢真希の死にあることに気づいた相沢亮哉は、そこからさらに2年前、真希が事故死した当時に戻ってやり直すことを決め、桜沢家をあとにする。そんな中、東京から四六神社へと向かう新幹線で、遙がついて来てしまったことを知った亮哉は、なんとかしてごまかそうとするものの、遙は亮哉がウソをついていることを見破っていた。これ以上ごまかすことは困難だと判断した亮哉は、これまでの経緯をすべて遙に打ち明ける。話を聞いた遙は、亮哉の荒唐無稽とも思える話を受け止め、自分も協力したいと申し出る。悩んだ末、二人で2年前からのやり直しを決めた亮哉は、当時まだ12歳の茜、拓真、麻子の力を借り、二人で2年前の2008年へと跳ぶことに成功する。さっそく東京へと戻り、秋良が住むアパートへと急ぐ。亮哉と遙は、そこで生前の真希に信じてもらえないことを覚悟のうえで、自分たちが未来から来たことを明かし、秋良の策略によって真希が事故死すること、真希の死後に水沢夏生や遙、桜沢奏多にも危害が加えられることなど、これから起こることを説明する。当初は突然現れた二人にいぶかしげな態度を取る真希だったが、目の前にいる今よりも少し大きくなった遙の姿を見て彼女の言うことを信じ、これまで自らの中で抱いていた疑念が確信へと変わる。そして真希は、夏生を連れて秋良のもとから離れることを決意。亮哉は自分たちのことを信じてくれ、大きな決断をしてくれた真希に感謝しつつ、今後も危険が及ぶことがないように、秋良が確実に逮捕される計画を練るのだった。そして一件落着したあとで、12歳の遙が生きていることを確認。亮哉はすべてがうまくいったことに安堵するが、これから自分たちがどうやって元の時間に戻ればいいのかわからないことに気づく。
登場人物・キャラクター
相沢 亮哉 (あいざわ りょうや)
14歳の10月に、母親の実家がある四六時町に引っ越してきた男子。引っ越しそばの出前を頼んだことが発端で、同じ日に近所に引っ越してきた桜沢遙と知り合い、親しくなる。多少ヤンチャそうに見えるが、世話焼きな性格をしている。何かとやらかす遙の面倒を見ているうちに、思いを寄せるようになる。転入した中学でなかよくなった茜や拓真、麻子とは、遙を含めて放課後に公園に集合し、他愛のない話をしたりして五人で過ごすようになり、それは高校に進学してからも続いた。高校2年の夏に、遙が東京の大学を目指しているという噂を聞き、いっしょにいられなくなることへの焦燥感から、告白を決意。四六神社に遙を呼び出すが、結局彼女は姿を現さず、フラれたことに肩を落とした。しかし直後に、遙が車に轢かれて亡くなったことを知る。彼女が命を落としたのは自分が神社に呼び出したからだと考え、後悔の念に苛まれる。葬儀ではいたたまれなくなって会場を飛び出し、四六神社へと向かうが、つまずいた拍子に神社の祠の裏から崖下に落ち、遙たちと共にずっと探していた流転の石を発見。偶然にもその石の上でやり直しを願ったことで、石の力によって遙が事故に遭う直前に戻れるようになるが、何度やり直しても遙の死を防ぐことができず、苦しむことになる。それでもあきらめることなく、遙の死を防ぐために奔走するが、戻った時間には自分が存在するため、つねにその時間の自分の行動を意識し、身を隠しながらの行動を余儀なくされる。また、その時間の自分と遭遇すると、やり直しがすべてリセットされて元の時間に戻されてしまう。その後、茜や拓真、麻子が自分と同様に遙を助けたいという強い気持ちを持っていることを知り、流転の石の不思議な力を打ち明け、みんなで5年前からのやり直しを試みる。1998年6月26日生まれ。
桜沢 遙 (さくらざわ はるか)
14歳の10月に、東京から四六時町に引っ越してきた女子。自宅で頼んだ蕎麦屋の出前と、相沢亮哉の家へと向かう蕎麦屋の出前をカンちがいして呼び止め、受け取ったことがきっかけで亮哉と知り合い、親しくなる。靴下が左右ちがっていたり、学校から上履きのまま帰宅するなど、天然で思い込みが激しいところがあり、とぼけた性格をしている。誰に対しても敬語で話す癖がある。同じ学校でなかよくなった茜や拓真、麻子とは、亮哉も含めて放課後に公園に集合し、他愛のない話をしたりして五人で過ごすようになるが、それは高校に進学してからも続いた。高校2年の夏、車に轢かれて病院に運び込まれるが、その後に死亡が確認された。引っ越してきて以来、四六時町で伝説となっている、四六神社のどこかにある流転の石に強い興味を持っており、亮哉たちと共にずっと探し続けていた。なお、桜沢遙の死後、亮哉が流転の石の力を使い、何度も事故に遭う前にタイムトラベルするが、死を防ごうと行動しても、変わるのは死に至る経緯だけで、結局遙は毎回死ぬことになる。仲のいい弟・桜沢奏多がいたが、彼を5年前の事故で亡くして以来、自分の感情を押し殺し、笑顔しか見せなくなってしまった経緯がある。その加害者である水沢秋良とその息子・水沢夏生とは、父親・桜沢紀夫の仕事の関係で知り合ったが、周囲からは家族ぐるみで親しい関係を築いているものと思われていた。そのため、仲のいい夏生の気持ちを第一に考え、弟を失った悲しみを封印したと考えられていた。しかし実際は、秋良からの恐怖支配を受けており、それまで幾度となく与えられた恐怖も、すべて教育であるかのように「お前らのため」と繰り返してきた秋良によって一種の洗脳状態にあった。奏多は秋良に殺されたという事実を知りながら、本当のことを言えば次は自分が狙われるという恐怖に支配され、すべてをひた隠しにしていた。しかし、5年前の時点で、未来から来た亮哉の存在がすべてを変化させ、遙の洗脳状態も解けていくこととなった。その後、秋良がすべての元凶であるとにらんだ亮哉が、ここからさらに2年前に戻ろうとした際、両親に内緒で亮哉に勝手について行き、これまでのいきさつについての話をすべて聞くことになる。そのうえで、自分も亮哉に協力したいと願い出て、水沢真希の事故を防ぐために亮哉と共に2年前の過去へと跳ぶ。
茜 (あかね)
四六時町に住む女子。中学生の時に自分のクラスに転入してきた桜沢遙と積極的にかかわりを持ち、自分が遙にとっての一番最初の友達になろうとした。しかし、すでに引っ越し当日に相沢亮哉と友達になっていたことを知り、くやしさをあらわにした。何に関しても負けず嫌いなところがあり、遙の初めての友達というポジションはあきらめざるを得なかったが、一番のなかよしというポジションに就くことで納得した。四六時町の情報に関しては特に自信を持っていて、一番おいしいスイーツ店や一番かわいいメガネ屋の店員などのほか、オカルト系のことにも詳しい。拓真とは幼なじみで、新しい友達ができると必ず拓真の実家であるコンビニエンスストアに連れて行くことにしている。亮哉や遙、拓真、麻子と放課後に公園に集合し、他愛のない話をしたりして五人で過ごすようになるが、それは高校に進学して以降も続いた。しかし、仲がよくてもいつまでも敬語を使って話す遙に対しては、つねに友人として距離を縮めたいというちょっとしたジレンマを抱いていた。だが、遙の死後、彼女が東京の大学へ進学しようとしていたことなどから、自分たちと意図的に距離を取ろうとしていたのではないかと考え、一方的に腹を立てるが、突然の別れになったことで、きちんと遙に自分の気持ちをぶつけなかったことを後悔する。あらためて、大切な友達を失った悲しみを感じ、押しつぶされそうになってしまう。幼い頃、流転の石に何度もやり直しを願ったことがあり、その在処も知っている。結局何も起こることはなかったが、遙が流転の石を探していることを知り、あえてその在処を内緒にしたうえで彼女の探索に付き合っていた。その後、亮哉からやり直しをするための正しい方法を聞き、同じ思いを抱く拓真や麻子たちと共に遙を生き返らせるため、遙の死の原因となり得る5年前からのやり直しを試みることになる。実は5年前に、未来から来た亮哉と会って事情を聞いており、彼がそこからさらに2年前の過去に跳ぶことに協力した。
拓真 (たくま)
四六時町に住む男子。中学生の時、幼なじみの茜を介して、相沢亮哉や桜沢遙となかよくなった。実家はコンビニエンスストアを営んでおり、よく友達が訪ねてくる。イートインだけを使用し、買い物しないなら店内をうろうろしない、万引きは絶対ダメなど、基本的にルールを守ればたまり場になることを容認している。亮哉や遙、茜、麻子と放課後に公園に集合し、他愛のない話をしたりして五人で過ごすようになるが、それは高校に進学してからも続いた。かつて親が脱サラし、コンビニエンスストアを開業した頃、いつも誰かが店に出ていたため、家族が揃わないことに不満を感じ、流転の石にやり直しを願ったことがあった。結局何も起こらなかったが、遙が流転の石を探していることを知り、あえてその在処を内緒にしたうえで彼女の探索に付き合っていた。その後、亮哉からやり直しをするための正しい方法を聞き、同じ思いを抱く茜や麻子たちと共に遙を生き返らせるため、5年前からのやり直しを試みることになる。実は5年前、未来から来た亮哉と会って事情を聞いており、彼がそこからさらに2年前の過去に跳ぶことに協力した。
麻子 (あさこ)
四六時町に住む女子。中学生の時、自分のクラスに転入してきた桜沢遙と友達になった。鋭い観察眼の持ち主で、遙を大都会東京から来た一見しっかりしているかわいい子という印象を持つ。遙を知るにつけ、天然気味でとぼけた性格の彼女に、見た目とのギャップを感じて驚いている。拓真や茜、相沢亮哉、遙とは放課後に公園に集合し、他愛のない話をしたりして五人で過ごすようになるが、それは高校に進学してからも続いた。ほかの四人とは家の方向が違うため、公園にはいつも遅れて来ていた。そのため、話に入っていけないとあったが、この四人と同じグループでなかよくいられたことに喜びを感じている。実は中学に進学した時、小学校で仲がよかったグループのメンバーから外され、孤立していた時期があった。その際に友達との関係のやり直しを、流転の石に願ったことがあった。結局何も起こらなかったが、遙が流転の石を探していることを知り、あえてその在処を内緒にしたうえで彼女の探索に付き合っていた。遙の死後、亮哉からやり直しをするための正しい方法を聞き、同じ思いを抱く茜や拓真たちと共に遙を生き返らせるため、5年前からのやり直しを試みることになる。実は5年前、未来から来た亮哉と会って事情を聞いており、彼がそこからさらに2年前の過去に跳ぶことに協力した。
桜沢 沙織 (さくらざわ さおり)
桜沢遙の母親。夫・桜沢紀夫の後ろにそっと寄り添うような物静かで控えめな性格をしている。遙の事故以来、ずっと眠れない日を過ごしており、葬儀の途中で倒れてしまう。その後病院へ運ばれ、睡眠導入剤を処方してもらって楽になる。実は、過去に遙の弟にあたる実の息子・桜沢奏多を亡くしている。5年前、紀夫の仕事の都合上、付き合いのあった水沢秋良の息子・水沢夏生のことを気にかけ、日常的に家に呼んでは食事を振る舞っていた。未来から相沢亮哉が訪ねてきた時には、夏生の親戚と名乗る亮哉を疑うことなく自宅に招き入れ、食事をごちそうした。
桜沢 奏多 (さくらざわ かなた)
桜沢遙の弟。遙が事故で亡くなる5年前、交通事故でこの世を去った。当時、父親の桜沢紀夫が仕事で支援していた水沢秋良の運転する車に轢かれたことで亡くなる。遙と共に秋良の息子・水沢夏生とは仲がいいと思われていたが、三人とも秋良から恐怖によって支配されており、一種の洗脳状態にあった。怒鳴られたり、秋良が運転する車に何度となく追いかけ回されたりしたこともあった。だが、いつも「お前らのため」という秋良の言葉に言いくるめられ、自分たちが悪かったと思い込まされていた。事故に遭う少し前、未来から相沢亮哉が来たことで秋良の恐怖支配から逃れ、状況が一変。桜沢奏多自身の死亡につながる事故を未然に防ぐことに成功し、命を落とさずに済んだ。
桜沢 紀夫 (さくらざわ のりお)
桜沢遙と桜沢奏多の父親。遙をなんでも一人でできるしっかり者と認識している。東京では、地域のトラブルなどを抱えた人を支援する、更生支援コーディネーターを務めていた。5年前、妻・水沢真希を亡くしてからアルコール中毒になった水沢秋良を支援していた。秋良は昼間から酔って騒ぐため、近所では悪い意味での有名人で、遙と同じ年齢の息子・水沢夏生もいたが、育児放棄の状態だった。そのため、夏生を自宅に呼んでご飯を食べさせたり、歳の近い遙や奏多といっしょに遊ばせたりするなど家族ぐるみで親身になって世話をしていた。長い時間かけて説得にあたり、秋良が治療施設に入所することを承諾。いよいよ更生に向けての第一歩を踏み出すと思った矢先、秋良が運転する車に奏多が轢かれ、亡くなる。怒りの気持ちをすべて飲み込んで、日常を送っていたが、地域全体の重い空気と、弟の死後にすべてを押し殺して笑顔しか作れなくなってしまった遙を心配し、家族を連れての引っ越しを決意。妻の実家がある四六時町へと移り住んだ。5年前は、子供たちが秋良から洗脳されていることは知らなかったが、未来から相沢亮哉が訪れたことで、秋良の実態を知るに至り、亮哉が秋良の凶行を止めてくれたおかげで、真希と夏生を救うことにつながったと感謝した。
水沢 秋良 (みずさわ あきら)
水沢夏生の父親で、水沢真希の夫。妻の真希を亡くして以来、アルコール中毒となった。東京で夏生と暮らしていたが、昼間から酔って騒ぎ、ゴミだらけの家にろくな食料もない状態で夏生を一人放置し、完全な育児放棄の状態だった。そのため、近所では悪い意味で超有名人だった。更生支援コーディネーターの桜沢紀夫、夏生と親子そろってに支援されていた。その後、治療施設に入所してやり直すことを承諾し、いよいよ更生に向けての第一歩を踏み出したかと思った矢先、水沢秋良自身が運転する車で、桜沢奏多を轢いて死亡させる。それをきっかけに、ますます地域から孤立し、再びアルコールに手を出すようになってしまう。夏生も桜沢家と疎遠になっているという話だったが、実際は秋良が夏生を洗脳して、紀夫や彼の家族に対して信頼どころか歪んだ感情を抱かせていた。紀夫の仕事はお節介を焼くことであり、自分たちの世話を焼くことでお金をもらっているのだから、桜沢沙織たち家族も自分たちを世話する義務があるという偏向した考えを持っており、日頃から夏生にも言い聞かせていた。さらに、気に入らないことがあれば桜沢遙や奏多を怒鳴りつけ、時には夏生に暴力を振るわせていたが、自分の行動を、すべて「お前らのため」という言葉で正当化し、ごまかそうとしている。奏多には何度も車で追いかけ回す危険行為を繰り返し、結果として奏多を車で轢いて殺害してしまう。また、真希が死亡した事故も、保険金目的による秋良の策略であり、車検を担当する男性を脅迫して車に細工をさせたことが原因だった。もともと、真希の実家から結婚を反対された経緯があり、真希の父親から秋良自身の仕事を恥ずかしいと言われて辞めてしまう。それ以来、気に入っていた仕事を辞めさせられたと逆恨みし、結婚後もまともに働こうとせず、自分が落ちぶれたのは真希と両親のせいだと責任転嫁している。真希には自分を養う義務があると言いくるめていた。しかし、未来から来た相沢亮哉と遙の活躍により、それまでの言動と直接脅迫を受けた人々からの被害届によって、逮捕されることとなった。
水沢 夏生 (みずさわ なつき)
水沢秋良の息子。母親の水沢真希が亡くなってから、秋良がアルコール中毒になったことで、ゴミだらけの家で食べ物もほとんど与えられず、育児放棄状態になっていた。そんな父親の更生を支援するため、更生支援コーディネーターの桜沢紀夫にサポートされ、桜沢家で食事をごちそうになったり、同じ年頃の桜沢遙や桜沢奏多といっしょに遊んだりすることもあった。しかし実際は、紀夫の仕事はお節介を焼くことであり、自分たちの世話を焼くことでお金を得ているのだから、桜沢沙織たち家族は自分たちを世話する義務があると、秋良から言い聞かされていた。その言いつけもあり、桜沢家に対して素直になれず、内心冷めた感情を抱いており、桜沢家に行くこと自体を嫌がっていた。だが、すべては育児放棄が原因で、寂しさのあまり心が荒んでしまったことに問題があり、未来から来た相沢亮哉が家族のように暖かく優しく接してくれたのをきっかけに、負の感情は変化し、子供らしい感情を取り戻していく。実は、秋良から日常的に恐怖による支配を受けており、遙や奏多と共に怒鳴られることもあった。また、遙に暴力を振るうように秋良から命令されると従うしかなく、一種の洗脳状態にあった。しかし、亮哉と遙がさらに2年前の過去に戻り、秋良による凶行を阻止。秋良が逮捕され、真希の事故死を防いだことで、母親と死に別れることなく、母子二人で平和に暮らす未来へと変化した。
水沢 真希 (みずさわ まき)
水沢秋良の妻で、水沢夏生の母親。両親からの強い反対を受けていたが、妊娠をきっかけに家を飛び出す形で結婚した。そのため、実家には帰りにくい状況だったが、その後離婚を望むようになり、実家に相談に行くことを決意。一人で実家に向かう途中、車がエンストして停車したところにトラックが突っ込み、帰らぬ人となった。燃料ポンプ内部の故障による事故として処理されたが、実際は車検を担当する男性を脅迫して車に細工をさせた、保険金を目的とした秋良の策略だった。だが、未来から来た相沢亮哉と12歳の桜沢遙によって、その事故は未然に防がれることとなり、秋良は逮捕される。水沢真希自身は夏生と二人で秋良の手の届かない場所で暮らしていくことになる。
その他キーワード
流転の石 (るてんのいし)
四六時町にある四六神社に祀られている石。流転の石に強く願うとやり直しができるという言い伝えがある。83年前に流転の石に願って商売を立て直したという成功談や、54年前には町の人を災害から守ったなど、この石にまつわるさまざまな言い伝えが、四六時町の郷土研究本にも記されている。神社のどこに流転の石があるのか、またその願掛けの詳細などは記されていない。実は、神社の祠の裏手にある崖の下に存在しており、神社の祠の裏から、流転の石に向かって強く願いながら飛ぶことでやり直しができる。飛び降りる勢いが強いほど時間的に遠い過去に跳べると考えられている。なお、実際に流転の石の力で過去に跳べるのは相沢亮哉と桜沢遙の二人のみで、麻子や拓真、茜は、亮哉といっしょに飛び降りても過去に跳ぶことはできなかった。