サマータイムレンダ

サマータイムレンダ

専門学校生の網代慎平は、幼なじみの小舟潮が亡くなったことで地元に戻るが、その日から「影」と呼ばれる化け物が引き起こす怪奇事件に巻き込まれていく。死亡する度に時間が巻き戻される自らの特殊能力を利用しながら、仲間たちと共に真相にせまる慎平の姿を描いたSFサスペンス。「少年ジャンプ+」で2017年10月から2021年2月にかけて配信された作品。2022年4月テレビアニメ化。

正式名称
サマータイムレンダ
ふりがな
さまーたいむれんだ
作者
ジャンル
タイムトラベル
 
サスペンス
レーベル
ジャンプコミックス(集英社)
巻数
全13巻完結
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あらすじ

漂着

専門学校生の網代慎平は、18歳の7月22日、地元の和歌山県和歌山市「日都ヶ島(ひとがしま)」に帰郷しようとしていた。それは幼なじみで、家族同然に育ってきた少女、小舟潮が亡くなったからだった。そして慎平は日都ヶ島に向かう船の中で、水着姿の潮に声をかけられ、プレゼントをもらうという不思議な夢を見る。そのせいで寝ぼけた慎平は、向かいの席に座っていた眼鏡を掛けた女性の身体に触れたことで、彼女にビンタされてしまう。こうしたハプニングがありながらも慎平は葬儀場に到着するが、そこで潮の妹、小舟澪や、友人の菱形窓から潮の死因を知らされる。潮は海で溺れた小早川しおりを助けようとした結果、海に流されて死亡したのだ。しおりはこの事故でショックを受けて失声症になってしまい、事故について聞き出そうにも難しい状態だった。潮の死は溺死と診断されていたが、窓はその検死に疑問を抱いていた。潮の首には「吉川線」と呼ばれる、首を絞められた痕があり、事故ではなく、他殺の可能性が大きかった。それでも地元の警察は、潮が殺される要因がないことから、事故と処理していたのである。翌朝、慎平は警察官の凸村哲から、小早川家の全員が突如姿を消したことを知らされる。

1周目の終わりと2周目の始まり

7月23日の朝。小早川家失踪の知らせを受けた網代慎平は、小舟澪から数日前に起きた不気味な事件について教えられる。しおりは小舟潮の事故の数日前からすでに様子がおかしかったらしく、しおりは「タカノス山」で自分そっくりな少女を見たと言って、怯(おび)えていたという。慎平がこの事実に興味を持っていると、そこに突如謎の老人、根津銀次郎が現れる。銀次郎曰(いわ)く、それは「影の病」という日都ヶ島(ひとがしま)に伝わる風土病であり、罹患(りかん)すると自分にそっくりな「影」を見るようになる上に、最後にはそのに殺されてしまうのだという。この話を聞いた二人は、単なる作り話だとは思えずに動揺する。特に澪は、しおり以外にも影を信じる理由があった。潮が亡くなる3日前、小舟姉妹は潮の影と思われる潮そっくりの女性を目撃しており、実際にその3日後、潮は亡くなったからだった。銀次郎から「日都(ひと)神社」の宮司(ぐうじ)が影に詳しく、お祓(はら)いもしていると聞いた二人は早速神社に向かうが、その途中でしおりらしき少女を見かける。すぐさま追いかける二人だったが、その先で慎平が22日、船で出会った眼鏡の女性が大ケガをしていた。慎平と澪が助けを呼びに行こうとすると、そこに突如澪の影、ミオが出現。慎平と澪はミオに射殺されてしまう。

2周目

7月23日の昼。網代慎平は突如現れたミオに殺されるはずだった。しかし慎平が目を覚ますと、そこは日都ヶ島(ひとがしま)に向かう途中の船で、目の前には眼鏡の女性がいた。信じられないことに、時刻は22日の11時18分に巻き戻っていた。ひとまず慎平は眼鏡の女性に声をかけるが、23日に起きることをうまく説明できずに別れてしまう。そこで慎平は、まず自分が本当に22日をやり直せるかを確かめるべく、当初の予定どおり小舟潮の葬儀に参加し、自分が1周目と違う行動をしない限り、1周目とまったく同じ光景が繰り返されるのを確認する。このままでは、自分たちはまたミオに殺されてしまうと思った慎平は、頭を冷やすために宿泊先である小舟家の外に出るが、そこでミオが凸村哲を殺害する現場を目撃する。すると哲の死体から新たなのテツが現れ、ミオに状況を説明されたのち、いっしょにその場を去ろうとする。慎平はこのままやり過ごせるかと安堵(あんど)するが、そこに菱形窓からの着信があり、ミオたちに居場所がばれてしまう。

3周目

2周目の7月22日の夜。網代慎平ミオとテツに見つかり、殺害される。しかし慎平が目を覚ますと、今度は日都ヶ島(ひとがしま)に到着したところだった。慎平は、前回の7月22日11時18分よりも、少し遅い地点に戻ってきたのである。そのため、今回は眼鏡の女性との再会は叶(かな)わなかったものの、ひとまず慎平は、22日を生き延びるための行動を開始する。警察にウソの通報をして凸村哲をその現場に向かわせて間接的に助け、これからミオが出現するだろう小舟家前には、スマートフォンの機能を利用した監視カメラを設置し、外出せずに22日を終える。翌朝、予想どおりミオはカメラに映っており、慎平はこれを澪に見せることで、「影の病」は実在することを説明。これによって、次は自らのを目撃している小早川しおりが危険だと察知した二人は、ひとまず慎平だけが小早川家の自宅兼店舗「コバマート」に向かうことにする。そこで「コバマート」に買い物に来ていた女性、汐見静に出会った慎平は、いっしょに店舗の2階にある小早川家を訪問。するとそこはもぬけの殻で、不審に思った慎平はさらに上の3階を調べ始めるが、そこにはしおりの影であるシオリがいた。

日都ヶ島(ひとがしま)夏祭り

3周目の7月23日の朝。網代慎平シオリになぜか見逃されたことで命拾いした慎平と汐見静は、警察に小早川家の失踪を報告する。昨日の慎平のウソの通報によって生き延びた凸村哲から、生前に小舟潮から預かったというスマートフォンを受け取る。その後、一人では抱えきれないと判断した慎平は、小舟澪と共に菱形窓を呼び出し、すべてを打ち明ける。窓は驚きつつもこの話を信じ、三人は24日の17時に集合して「日都(ひと)神社」の宮司、雁切真砂人に相談することにする。しかし、この日は日都ヶ島(ひとがしま)夏祭りの日で、真砂人は多忙が予想されたが、慎平は人が集まっている時の方がかえって安全だと判断していた。こうして24日の17時に慎平たちは、窓の妹である菱形朱鷺子も交えた四人でお祭りに向かう。そこで慎平は水着姿の潮を発見し、慌てて追いかける。これは潮のウシオであると知りつつも、追わずにはいられなかったのである。こうしてウシオと接触した慎平は、ウシオは自らが影である自覚がなく、本物の潮が亡くなったことも知らなければ、影として生まれた前後の記憶すら失っていることを知る。ひとまず慎平は、混乱を避けるためにウシオに姿を消してもらい、澪たちのもとに戻ろうとするが、その途中でミオに襲われてしまう。

3周目の終わりと4周目の始まり

3周目の7月24日の夜。網代慎平ミオに襲われたが、そこに現れた眼鏡の女性に助けられる。眼鏡の女性であれば「」への対抗策を知っていると理解した慎平は、彼女といっしょに小舟澪たちのもとへ戻るが、目の前で菱形朱鷺子菱形窓、澪が殺されて絶望する。自分勝手にお祭り会場に行っていたウシオもその場にいたが、慎平の影、シンペイに捕らわれ、身動きが取れずにいた。さらに眼鏡の女性も撃たれ、慎平はひときわ大きな4本の腕を持つ正体不明の影に捕らえられる。影たちの目的は、日都ヶ島(ひとがしま)夏祭りで大量殺人を行い、「母」と呼ばれる影にその遺体を「食餌(しょくじ)」として与え、力を復活させることだったのだ。このままでは、自分も食べられてしまうと考えた慎平は、まだかろうじて意識のあった眼鏡の女性に自分の特殊能力を伝え、自分を撃ち殺して欲しいと頼み込む。そして無事に慎平は4度目の7月22日に戻るが、今度は日都ヶ島(ひとがしま)に到着後の澪と合流した時刻にいた。このことで慎平は、自分の特殊能力には限界があり、死ぬ度に時間を戻すことはできるものの、その度にスタート地点が遅くなっていることに気づく。

4周目の7月22日、昼

4周目の7月22日の昼。眼鏡の女性、南方ひづるは、2周目と同様に網代慎平から話しかけられたあと、日都ヶ島(ひとがしま)に到着して小舟潮の葬儀に参加していた。ひづるは14年前まで日都ヶ島で暮らしており、当時は小舟家で経営している洋食店「洋食コフネ」の常連客だったため、小舟姉妹のこともよく知っていたのだ。そんな中、ひづるは学生時代の友人、小早川朝子と再会するが、彼女はすでに亡くなっており、のアサコに成り代わっていることに気づく。そこでひづるは、影に関する情報を共有している根津銀次郎に報告。その報告を受けて銀次郎は、潮が死亡した日、小早川しおりに成り代わったシオリが、帰宅後朝子とその夫を殺害したのではないかと推測する。ひづるはシオリに強い怒りを覚えるものの、銀次郎に協力を依頼。一方その頃、慎平は小舟澪や参列者たちから「影の病」や、ひづるについての情報を集めていた。慎平は3周目でひづるから「南雲竜之介」と名乗られるが、それは作家であるひづるのペンネームだったために本名がわからず、困っていたのである。そんな中、慎平は小舟アランから、ひづるから受け取ったという暗号を手渡される。これがひづるの連絡先らしいのだが、アランにはこの暗号が解けそうにもなかった。しかし慎平は、南雲竜之介の作品にこれに似た暗号が登場していたため、すぐにこの暗号の意味を理解する。すぐさま慎平はその番号に電話するが、その電話に出たのはなぜか銀次郎だった。

4周目の7月22日、夕方

4周目の7月22日の昼。網代慎平根津銀次郎に自分がではないことを証明し、南方ひづるに会わせてもらえることになる。そこで慎平は、3周目で約束したとおりに名乗り、ひづるに自身がタイムトラベラーであることを証明する。ひづると銀次郎の信頼を得た慎平は、14年前、ひづるが影によって家族を殺されたこと、ひづるも狙われたが助けてくれたのが銀次郎であること、ひづるはこの経験を一部脚色した上で「沼男」という小説を発表したことを知らされる。さらにひづるたちは、影への対抗策を一つ知っていた。同じ人間から影は1体しか生まれず、その影さえ殺してしまえば「免疫」がつき、二度と影を作られることはないのだという。現にひづるは先ほど小舟アランの影を殺し、アランの影が再発生しないようにしてきたばかりだったのだ。しかし銀次郎にはこの免疫があるものの、ひづるにはなかった。ひづるは自らの影が作られる危険を承知の上で、とある約束を果たすために都ヶ島(ひとがしま)に戻って来ていたのだ。そこで三人は、まず18時頃に小早川家を訪問。小早川朝子の友人、ひづるのみが家に入り、単身で小早川一家三人の影を倒す。一方その頃、家の外で待っていた慎平は、ある仮説を銀次郎に伝える。それは、ひづるが実は二重人格者であり、髪を結んでいる時にだけ現れる人格こそが「南雲竜之介」なのではないかというものだった。

4周目の7月22日、夜

4周目の7月22日の夕方。網代慎平は自らの仮説どおり、南方ひづるが二重人格者であり、もう一つの人格である「南雲竜之介」は、14年前によって殺害されたひづるの双子の弟であることを知る。その直後、ひづるから助けを求められた慎平と根津銀次郎は、三人でシオリを倒すことに成功する。しかし、シオリはほかの影よりも頑丈な性質を持っており、なかなか倒せなかったことや、倒しても全然手ごたえがなかったことを、三人は疑問に思うのだった。その後、慎平たちは一度別れ、ミオが小舟家前に現れる21時頃までは、慎平は小舟家で、ひづると銀次郎は小舟家の外で待機することになる。しかし慎平が小舟家で料理をしていると、そこに突如ウシオが現れる。3周目の時よりもウシオの早い登場に慎平は驚くが、ウシオもまた3周目の記憶を保持しており、慎平が死亡したのと同時にタイムトラベルしたことを知ってさらに驚く。それでもウシオを信頼できない慎平は、ひとまず自室にウシオを招き、スキをついて殺そうとする。しかし話を聞けば聞くほど、ウシオはほかの影とは違うことを理解し、最終的には彼女を信じることを決める。だがそこに、この時間帯には出現しないはずのミオが部屋に現れ、慎平をかばったウシオが大ケガをしてしまう。

4周目の7月23日、朝

4周目の7月22日の夜。網代慎平ウシオは、突入して来た南方ひづる根津銀次郎に助けられ、ミオを打ち倒す。ひづるはそのままウシオも殺そうとするが、慎平がなんとか説得したこともあり、思い留まる。そもそもひづるが日都ヶ島(ひとがしま)に戻って来ていたのは、小舟潮らしき人物からのSOSを受け取り、潮を助けるためだった。しかし記憶喪失のウシオはこのことを知らず、四人はほかにも、3周目とは違うルートでミオが出現したことを話し合う。その結果、たちもなんらかの方法で情報共有しており、シオリが倒されたことによって警戒したミオが、別ルートを選んだのではないかという結論に至る。しかし、その情報共有の方法はわからず、ウシオを警戒したひづると銀次郎は、慎平とウシオに今後は別行動しようと告げるのだった。こうして23日の朝、慎平は3周目と同じように凸村哲から潮のスマートフォンを受け取るが、菱形窓に対しては、澪とではなく、ウシオと三人で会うことにする。そこで慎平は影についてと、ウシオが3周目の24日に知った、菱形朱鷺子が影側とつながっているかもしれないという情報を伝える。窓は動揺しつつもこれを受け止め、朱鷺子は父親の菱形青銅の命令で動いているのではないかという仮説を立てる。そして三人は潮のスマートフォンを見ると、7月18日に潮とウシオが出会って協力関係になったこと、事件の真相を探るために菱形医院旧病棟に潜入したことを説明する動画が残されていた。

4周目の7月23日、昼

スマートフォンに残された動画を見たことで、ウシオは失われていた記憶を取り戻した。そこでウシオは自らの能力を使い、潮の死亡した7月21日の記憶を網代慎平菱形窓に見せる。その中で、当時海中に潜んでいたシオリ小早川しおりを溺れさせて成り代わろうとしたこと、潮とウシオはこれに気づいたが潮は殺され、しおりも死亡したことを知る。そしてウシオもまたシオリによって記憶を奪われて気を失い、その後に現れた小舟澪は、それがとは知らぬままにシオリを助けてしまったことを知るのだった。つまりウシオは21日の昼から意識を失ったまま海中を漂っており、3周目の24日に目を覚まして海から移動し、慎平に出会ったのだった。しかし、真相を共有した三人がウシオの記憶の世界から出ようとすると、そこにシオリが出現。シオリではない謎の少女に変身して三人を脅した挙句、慎平の腕に大きな手形を付けて去っていく。その後、ウシオの記憶の世界から出た三人は、いったん帰宅して装備を整えたあと、しおりがシオリを目撃した「タカノス山」に向かう。ここには菱形家の所有地があり、菱形医院旧病棟もあった。窓は子供の頃にここで菱形青銅を見かけたことがあり、当時は気にも留めなかったものの、今思うと非常に怪しかったことに気づく。

4周目の7月23日、夜

網代慎平ウシオ菱形窓は菱形医院旧病棟に潜入する。病棟内にある毒物や菱形家のアルバムを回収したり、院内にある隠し扉が地下壕につながっていることを突き止める。三人はこの先にの気配を感じつつも歩を進めていると、そこで頭の上部分が切り取られ、目と耳を失った不気味な赤ん坊の影に出くわす。その後も影は増える一方で、次第に三人は追い詰められていく。一方その頃、南方ひづる根津銀次郎もまたこの地下壕におり、自宅にいた小舟澪は、慎平や窓、菱形朱鷺子にも連絡が付かないことを不審に思っていた。そんな中、シオリを目撃した澪は、シオリから今指さしているマンホールの下に慎平がいると告げられた瞬間、シオリは消えてしまう。そこで澪は、偶然居合わせた凸村哲を伴って、マンホールの下に向かうのだった。同時刻に慎平たちは、影がなぜかウシオだけを狙うことや、攻撃され続けたウシオは身体を修復できずに消耗していることに気づく。影は、人間のふりをして暮らしている立体の方はダミーであり、本体は立体の影になっている平面部分であった。そのため、平面部分が破壊されない限り立体部分は再生できるのだが、平面部分を攻撃され続けたウシオは、深いダメージを負っていたのだ。さらにそこへ影を伴った朱鷺子が現れる。

4周目の7月23日、夜 その2

4周目の7月23日21時。南方ひづる根津銀次郎は、シオリを仕留めそこなったことで、地面の裂け目を利用して地下壕に逃げたことを理解する。そこで二人は、ほかのよりも手ごわいと感じていたシオリの正体が、ひづるのかつての友人・ハイネという驚愕(きょうがく)の事実を知る。二人は混乱しながらも応戦するが、ハイネとその仲間によって致命傷を負ってしまう。そんな中、網代慎平ウシオ菱形窓の三人は、菱形朱鷺子に案内されて影たちの母親であり、日都ヶ島(ひとがしま)の神様として祀(まつ)られているハイネの住処(すみか)、ヒルコ洞に案内されていた。ハイネは現在非常に弱っており、今では自力で歩行もできないため、代わりの身体としてシオリの精神を乗っ取り、使用していたのだ。そして菱形家は弱ったハイネを生かすため、日都ヶ島で亡くなった人間の遺体を回収してはすり替え「食餌(しょくじ)」として与えていたのである。家族で唯一このことを知らなかった窓は非道な行いに激怒するが、菱形青銅と朱鷺子には、ハイネに従わざるを得ない別の理由があった。それは窓と朱鷺子の母親、菱形千登勢は既に死亡しており、窓がずっと母親だと認識していたのは、千登勢の影、チトセだった。ハイネが死ねばチトセも消えてしまうため、朱鷺子は青銅やハイネに従っていたのである。

4周目の終わりと5周目の始まり

4周目の7月23日21時過ぎ。ハイネは新たな「食餌(しょくじ)」として、火葬されずに保管されていた小舟潮の遺体を食べようとしていた。これに激怒した網代慎平ウシオはハイネに立ち向かうが、そこに突如現れた目玉と腕が四つずつあるに阻止される。さらにこの影は、地下壕に来ていた小舟澪を捕らえて盾にしており、澪だけは巻き込まない約束で協力していた菱形朱鷺子は、話が違うと激怒する。4本腕の影はこれまでずっと菱形家を利用してきたが、24日夜の日都ヶ島(ひとがしま)夏祭りさえ終われば用済みであるため、まずは朱鷺子を裏切って殺しに来たのだ。さらにハイネは、慎平のタイムトラベルの力の源となっているらしい右目を奪い取り無力化しようとするが、失敗。夏祭りが終わるまで慎平を拘束し、タイムトラベルができないような作戦に切り替える。そこへ凸村哲によって運ばれてやって来た南方ひづるが到着し、慎平を射殺しようとするが外してしまう。そして4本腕から解放された慎平は、最後の手段として先ほど旧病棟で回収した毒物を飲み干した慎平は、同じくタイムトラベルした潮と共に、ひづると根津銀次郎に会いに行く。

5周目

網代慎平のタイムトラベル5周目は、7月22日の昼、南方ひづる根津銀次郎に出会うところから始まった。そこで慎平は、同じ地点にタイムトラベルしたウシオの力を使い、4周目の7月23日朝に行った時と同じ方法で、ウシオの記憶をひづるに見せる。これを見てひづるはウシオを信頼し、銀次郎もひづるに従う。そこで四人は4周目の敗因が、途中から自分たちが別行動したことにあると分析し、今後は四人で協力し合うことを決める。またこの時、慎平は、ひづるとハイネはかつて友人関係にあったが、ある日ハイネが南方竜之介を殺したことにより、今は敵対していることを知るのだった。その後四人は、まずは4周目同様、18時に小早川家を訪問して、シオリたち三人を倒すことにする。しかし前回同様にひづるが単身突入すると、そこにはなぜか4本腕のがいた。これによってひづると銀次郎は殺され、虚を突かれた慎平は捕らわれそうになる。最終的に、ウシオがとっさに慎平の首をはねたことで慎平は死亡し、6周目に向かうことになる。だがこれによって慎平は、4周目の7月23日朝シオリにつけられた手形を介して、シオリ、つまりハイネがタイムトラベル能力を得たことを理解する。

14年前の真実

6周目のタイムトラベルをするはずだった網代慎平ウシオは、なぜか14年前の世界にたどり着いていた。そこでは南方ひづるはまだ中学生で、南方竜之介や慎平の両親も存命であり、慎平とウシオは驚愕する。つまり二人は、ひづるの過去の記憶の世界に来ているらしいのだ。二人はひづるを観測する中で、ひづるが当時すでに廃墟だった菱形医院旧病棟に出入りしており、そこに暮らす不思議な少女、ハイネと親しくしていたことを知る。そんなひづるとハイネは年の離れた友人として良好な関係を築いていたが、次第にハイネは強い空腹を訴えるようになり、ひづるの持ってくるお菓子では足りなくなってしまう。そんな中、ひづると竜之介の誕生日が訪れるが、ハイネを優先したひづるは、先に旧病棟へ向かう。そのままパーティの準備をする頃になってもひづるは戻らず、心配した竜之介が探しに行くことになる。そこで竜之介は旧病棟のあるタカノス山へ向かうが、そこで空腹に耐えかねたハイネに遭遇。竜之介はハイネに食べられて死亡し、ひづるはその光景を目撃してしまうのだった。その後、ひづるは偶然近くにいた根津銀次郎によって助けられいっしょに逃げ出すが、この時に生まれた竜之介のは、ひづるの体内に入って生き続けることになる。これによってひづるは二重人格となり、同時に影特有の並外れた身体能力を獲得していた。つまりひづるは精神的ショックで竜之介の人格を生み出したのではなく、影であるリュウノスケと共存していたのだった。

6周目

網代慎平のタイムトラベル6周目は、7月22日の18時、ウシオ南方ひづる根津銀次郎の三人で、小早川家に突入する直前から始まった。そこで慎平はすぐさま襲撃中止を指示し、四人はひとまず日都ヶ島(ひとがしま)小学校に関係者を集める。慎平たちは、5周目でウシオがひづるに行ったように、ウシオの力でどんどん記憶を共有していけば、味方を集められると考えたのだ。これによって小舟澪菱形窓はもちろん、これまでは事態がよくわからぬまま死亡した凸村哲と、5周目までは敵だった菱形朱鷺子も仲間になる。こうして仲間は合計八人となり、これまでにないほど順調に思えたが、唯一校外で警備をしていた銀次郎がミオに見つかり、死亡。そのままミオと4本腕のの攻撃により、全員が死亡する。

7周目の7月22日、夕方

網代慎平のタイムトラベル7周目は、7月22日の18時40分、日都ヶ島(ひとがしま)小学校に向かう直前から始まった。6周目の出来事を聞いた小舟澪は、ハイネたちの目的は慎平を生け捕りにすることではなかったのかと指摘するが、慎平はすぐさま事態を理解する。ハイネたちにはすでにタイムトラベルの仕組みを見抜かれており、回数を追うごとにタイムトラベル開始時刻が遅れていくことがばれてしまう。つまりハイネたちは方針を変更し、今度は慎平がタイムトラベルするたびに殺し、最終的に7月24日以前には戻れないようにする作戦に切り替えたのだ。そこで慎平はこの7周目で決着を付けることにし、今回は八人揃った状態でハイネたちを迎え撃つ。そんな中、慎平たちには秘策があった。でありながら、なぜかハイネの支配下にないウシオは、ほかの影に触れれば、その影をハイネから解放することができる。ウシオはこの力を使って、まずは菱形朱鷺子が使役している2体の影を解放し、戦力を底上げしていたのである。これによって慎平たちはハイネと4本腕の影を撃退して撤退させ、ミオを捕獲する。そして、ミオをハイネから解放して味方に引き入れるのだった。

7周目の7月22日、夜

網代慎平たちはミオを味方にしたことで、に関する多くの情報を得ていた。そこで、次の目的を菱形青銅に定めた慎平たちは菱形医院に向かい、菱形朱鷺子も知らない青銅の真の目的を尋ねることにする。しかし菱形家はもぬけの殻で、慎平たちは院内の方に影の気配を感じるというウシオに従って、真っ暗な病院へ入って行く。そこでもなかなか青銅は見つからず、小舟潮の遺体はすでに病院から持ち出されたあとだった。そこで慎平たちは、菱形医院からヒルコ洞へ続く通路を探るが、そこでは青銅がチトセに襲われていた。これをハイネにあやつられていると見たウシオは自らの力でチトセを解放し、青銅は菱形窓の措置によって一命を取り留める。それでも青銅は抵抗するが、自分にはすでに免疫があり、影を生み出すことはできないと知った途端、態度が一変して話に応じるようになる。青銅はこれまで自身には免疫がないと思っており、最終的には家族全員が影になって、ハイネの作る影だけが暮らせる永遠の世界で生きることを目的としていた。それが免疫によって叶(かな)わないことがわかり、情報提供する気になったのだ。

7周目の7月23日、深夜

7周目の7月23日。網代慎平たちは菱形医院で夜を明かすことになった。この時菱形青銅は、菱形千登勢は5年前に死亡しており、この時にのチトセと入れ替わったこと、菱形家は300年以上影とかかわっているが後継者は一人と決まっており、青銅は窓よりも菱形朱鷺子に適性があるとして朱鷺子を選んだことを説明し、窓に謝罪するのだった。その後、慎平が寝静まった頃、ウシオは一人外に出ていく根津銀次郎に気づき、いっしょに根津家へ向かう。銀次郎には、2か月前に死亡して影になって戻って来た妻の根津薫がいた。銀次郎は影であるカオルをどうしても殺すことができず自宅に監禁していたが、ハイネが影たちをあやつり始めたことで、カオルもこのままでは敵になると理解していた。そこで、カオルを殺すことにしたのだ。ウシオは自分の力を使えばカオルを解放できると提案するが、銀次郎はこれを断り、けじめをつけるためにもカオルを射殺するのだった。

7周目の7月23日、朝

7周目の7月23日の朝。網代慎平たちは昨日の小舟潮の葬儀中、南方ひづるが発見したたちを手分けして駆除する方針で動き出した。そこで慎平とウシオは、二人の恩師である人渕かなえの影、カナエの駆除に向かう。人渕家はかなえを含む四人家族だが、すでに全員が影となってしまっていた。そこで慎平たちは、カナエがタカノス山に潜んでいるのではないかと考え、立ち入り禁止区域に入って行くと、まさにそこで知り合いの小学生たちがカナエに襲われていた。慎平たちはすぐさまカナエを倒すと、かなえの息子たち二人の影も倒すが、午前中に倒せたのはこの3体にとどまる。その後合流した慎平たち八人は、影となった人々は、周囲には旅行や出張に行くと、適当な理由をでっちあげて家から離れており、そのため特に騒ぎにはなっていないという情報を共有する。影たちは、穏便に日都ヶ島(ひとがしま)夏祭りを迎えようとしていたのだ。そこで慎平は、腕時計に変身したウシオに護衛されながら、日都神社の宮司である雁切真砂人に会いに行く。そこで慎平は真砂人に「沼男」と、日都神社で祀っている神様「ヒルコ様」に関する伝承、そして旧病棟で発見した菱形家のアルバムを見た上での推論を語る。それは、遥か昔、彗星として現れ、海中に落ちた地球外生命体こそがヒルコ様である。ヒルコ様は海中でさまざまな情報を得て、300年前、江戸時代のある日、クジラの姿で日都ヶ島に流れ着いた。この時、ヒルコ様はクジラを見に来ていた少女の雁切波稲を殺し、彼女の影、ハイネとなったのが「影の病」の始まりであるというものだった。真砂人はこれを単なる妄想だと一笑に付すが、菱形家のアルバムに残っていた70年前の写真を見せた途端、態度が一変する。

7周目の終わりと8周目の始まり

網代慎平は、雁切真砂人こそが4本腕のであり、またハイネの力を借りて300年間生き続けている菱形紙垂彦であることを暴く。慎平は昨夜、先ほどの3種類の資料に加え、菱形青銅が隠していた写真を見たことでこれを知る。紙垂彦は300年間、ハイネと交わって妊娠させては自分のクローンを出産させ、現在の身体に支障をきたすと、そのクローンに自分の人格と記憶を移植して成り代わる行為を繰り返してきた。そのため、現在は雁切真砂人と呼ばれている男性は、身体が新しくなっているだけで中身は紙垂彦そのものという、人間と影の交配種だったのだ。さらに紙垂彦は、自分はかつて飢饉(ききん)から日都ヶ島(ひとがしま)を救った救世主であり、慎平の両親を殺したのも、ハイネの住処に気づいた二人がこれを公表しようとしていたからだと告白する。慎平はこれに怒りつつもなんとか落ち着きを取り戻そうとするが、ウシオは激怒。紙垂彦を殺すが、その直後、もう1体、紙垂彦が現れてウシオを殺害。そのまま慎平も殺されるが、慎平はウシオを失った状態で7月23日の朝に戻されてしまう。

8周目

ウシオは、網代慎平がタイムトラベルを開始する前に死亡したことで、8周目の世界についていくことができなくなってしまう。これによって、八周目の世界にも異変が生じる。慎平は今回、7月23日の9時50分、ウシオと共にカナエと戦っている地点に戻って来た。しかし8周目が始まった瞬間ウシオは、今消滅したものとして処理されたため、苦戦を強いられる。だが、戦いの最中に突如カナエとその仲間は去り、慎平と小学生たちは助かる。そして慎平は、ウシオに以前プレゼントした貝殻だけは無事で、手元に残っていることに気づくのだった。一方その頃、ハイネ菱形紙垂彦は、シンペイと慎平のスマートフォンのコピーデータを利用して、小舟澪たちにウソの情報を伝えたり、南方ひづるたちと離れ小島の「虎島」で待ち合わせたりしていた。ハイネは3周目の世界で慎平のデータを手に入れ、シンペイとそのスマートフォンを作り出した。その後、この2点を持ったままタイムトラベル能力を得たが、4周目から7周目まではあえてこれを温存しており、8周目になってから使用し始めたのである。それでもひづるは相手がシンペイであることに気づき、体内にいるリュウノスケと協力して戦い始める。

9周目の7月23日、朝

網代慎平は、8周目で絶望的な状況に置かれたのを鑑みて、拳銃自殺して9周目に向かった。目論見(もくろみ)どおり7月23日の10時10分頃にタイムトラベルした慎平は、大急ぎで移動して小舟澪たちと合流して安全を確かめ、虎島で戦っている南方ひづるたちのもとへ向かう。しかし、到着した際にはひづるはすでに殺されており、代わりに菱形朱鷺子菱形紙垂彦と戦っていた。その場は多勢に無勢と判断したハイネが退却を指示したことで慎平たちは生き延びるが、ひづるの死にショックを受けた慎平は、衝動的に自殺して10周目を始めようとする。しかし、これはひづるとミオによって止められ、慎平はウシオもひづるもいない中で戦い続けることを誓うのだった。だが、ここで慎平の身体に変化が訪れる。これまでずっとひづるの体内にいたリュウノスケが、ひづるの死を機に慎平の身体に移動していた。これによって慎平はリュウノスケと心の中で会話したり、力を借りて戦ったりすることができるようになっていたのだ。また、そんな慎平にミオは、まだウシオの気配を感じることを報告する。ミオ曰(いわ)く現在慎平が所持しているウシオの貝殻には、まだウシオのデータが残されているのだという。これによって慎平と潮は、まだ海中を漂っているはずのタイムトラベル未経験の方のウシオと、24日の日都ヶ島(ひとがしま)夏祭り中に再会できれば、この貝殻のデータを介して、これまでの記憶を届けられる。これによって、ウシオが再び戦闘可能になることに気づく。

9周目の終わりと10周目の始まり

9周目の7月24日。網代慎平根津銀次郎ミオの三人は、菱形朱鷺子が使役する、ギルデンスターンの体内に入って、菱形医院とヒルコ洞をつなぐ道を経由して海に入り、漂っていたウシオを保護した。慎平はすぐさま貝殻を使ってこれまでのウシオの記憶を送り、これによってウシオは完全復活。また慎平は、ギルデンスターンの身体の中にいれば、ハイネに付けられた手形は機能せず、ハイネに居場所が伝わらないことに気づいていた。そこで慎平は、案の定このタイミングで襲って来た菱形紙垂彦の目の前で、今度はリュウノスケの2秒先の世界を見られる力を使って紙垂彦の攻撃をかわしたのちに拳銃自殺。ギルデンスターンの体内にすでに入っていた地点に、今度はウシオを伴ってタイムトラベルする。これによって、慎平たちは紙垂彦とハイネに居場所を悟られないまま、ウシオをヒルコ洞のすぐ近くまで移動させることに成功する。

10周目の7月24日、夕方

網代慎平のタイムトラベル10周目は、7月24日の18時50分、ヒルコ洞付近からスタートした。慎平のチームは慎平、ウシオミオ菱形窓菱形朱鷺子根津銀次郎の六人だったが、朱鷺子と銀次郎がの足止めを担当したことで四人となる。そして、すぐさまハイネ菱形紙垂彦との戦いになるが、慎平がリュウノスケの力を使ってウシオをサポートしたことで紙垂彦を倒し、ハイネにもとどめを刺そうとする。しかしこの時、ウシオはハイネのつらい記憶を読み取ってしまった上、以前潮が人渕かなえから、潮の手は暴力を振るうのではなく、誰かに手を差し伸べるために使って欲しいと言われた時の記憶を思い出してしまう。これによってウシオはハイネを倒しきれず、ハイネは紙垂彦に回収される。その上紙垂彦は、ハイネに用済みだと言い放つ。これまで紙垂彦の真の目的は不明なままだったが、それはどうやらウシオの持つタイムトラベル能力の源「観測者の右目」によって叶うらしい。そこで紙垂彦は、弱ったハイネを抱えて、影の世界で決着を付けようと慎平とウシオを誘う。人間は影の世界に立ち入ると、二度と戻ることも死ぬこともできなくなってしまう。しかし慎平はそれを承知の上で、ウシオと共に影の世界へ向かう。

最後の戦い

網代慎平ウシオと共にの世界に到着したが、はぐれてしまった。そこで慎平は、リュウノスケの力を借りながらウシオを探し、その過程でウシオの「観測者の右目」部分であり、ウシオの身体を作り出している存在でもある波稲に出会う。波稲はハイネ同様、雁切波稲から生まれた影だが、14年前、ハイネが南方竜之介を殺してしまった精神的ショックにより自我が分裂した。そのため現在のハイネとは違い、南方ひづると親しくしていた頃の友好的な人格を有していたのだ。そんな波稲を仲間に加え、慎平たちは現れた菱形紙垂彦と戦うが、本体は現世におり、影の世界にいるのは偽物だった。本体は偽物を操作しながら、慎平たちを倒そうとしていたのである。そんな紙垂彦にウシオは苦戦し、波稲も立ち上がれなくなるほどのダメージを受ける。しかしここでウシオは、偽物をハッキングしてのっとる作戦を思いつく。だが、それを実行するには、準備完了までの2分間を慎平とリュウノスケが稼ぐ必要があった。

モデルになった町

本作『サマータイムレンダ』の舞台である「日都ヶ島(ひとがしま)」は、作者の田中靖規の出身地、和歌山県和歌山市にある「友ヶ島(ともがしま)」「加太(かだ)」「男木島(おぎじま)」の3か所がモデルになっている。田中靖規は、無人島の友ヶ島に人が住んでいたらどんな様子だろうかということをイメージしながら、実際に赴いて取材をしたうえで本作を執筆した。しかし、友ヶ島には民家も学校もないため、民家のイメージについては加太の家々を参考にしている。さらに、男木島の雰囲気もまた本作のイメージに近いことから、男木島に住む友人に写真提供を受けて執筆した。特に男木島小学校のプールは、作中でまったく同じデザインのプールが登場する。

単行本の装丁

本作『サマータイムレンダ』のおまけページとコミックスのカバー下本体表紙・裏表紙には、本作の謎を解く上での重要資料「記録」が掲載されている。たとえばコミックス第1巻のカバー下には「記録#001」として小早川しおりの日記があり、第2巻のカバー下には「記録#002」として南方ひづる(南雲竜之介)の著書である「沼男」のあらすじや、読者からのレビューが掲載されている。

テレビアニメ

2022年テレビアニメ化。4月14日からTOKYO MXほかにて連続2クールで放送開始。制作はオー・エル・エム、監督は渡辺歩。キャストは、主人公の網代慎平を花江夏樹、小舟潮を永瀬アンナ、小舟澪を白砂沙帆が演じる。

登場人物・キャラクター

網代 慎平 (あじろ しんぺい)

調理師専門学校に通う男子。年齢は18歳。黒髪を肩につくほど長く伸ばしてハーフアップにした髪形をしている。身長171センチで、体重58キロ。クールで中性的な雰囲気を漂わせている。生まれも育ちも和歌山県和歌山市にある離島、日都ヶ島(ひとがしま)であるため和歌山弁で話すが、東京で暮らすようになってからは少し方言が薄まっている。面倒見のよい性格で、冷静でつねに落ち着いている。2000年5月に日都ヶ島で生まれ、父親の網代透と母親の網代暁見のもとで育つ。しかし8歳のある日、事故によって両親を亡くし、両親の友人だった小舟アランに面倒を見てもらうことになる。中学校を卒業するまでの8年間は小舟家で暮らしており、アランの娘、小舟潮、小舟澪とは家族同然に仲がよかった。また、アランの影響で料理に興味があり、中学校卒業後は上京して、高卒の資格も取れる調理師専門学校に進学した。上京後は日都ヶ島に戻っていなかったが、18歳の7月22日に潮が亡くなったという報せを聞き帰郷する。その翌日、突如現れたミオによって殺害されるが、この時タイムトラベル能力に目覚め、死んでは時間を巻き戻してもう一度同じ日を繰り返しながら、潮の死の真相や島で起きている影に関する事件を解決するために奔走する。年相応の少年らしい豊かな感情を持っているが、網代慎平自身は、つねに客観的な判断ができる人間であろうとする意識が強い。そのため、自分や周囲を俯瞰(ふかん)して見る癖がついており、「フカンする」「フカンしろ」という言葉が口癖。このことから友人の菱形窓にはノリが悪い、斜に構えていると受け取られている。しかし、この癖によって緊張せずに行動できたり、冷静な判断ができたりと、非常に頼りがいがある。透の影響もあって幼い頃から読書家。特にSFやミステリーが大好きで、好きな作家は南雲竜之介。誕生日は5月8日で、血液型はO型。好きな食べ物は鳥の手羽先、ピーマン、グリーンソフト。苦手なものは水で、カナヅチ。ずっと潮に思いを寄せていたが、気持ちを伝えられずに彼女が亡くなったことを非常に後悔している。

小舟 潮 (こふね うしお)

網代慎平の幼なじみの女子。慎平の思い人でもある。故人。和歌山県和歌山市にある離島、日都ヶ島(ひとがしま)の県立高校に通う3年生で、亡くなった時の年齢は17歳。和歌山弁で話す。父親はフランス人の小舟アランで、母親は日本人の小舟琴子。アラン似で、金髪碧眼(へきがん)の、非常に目立つ美しい容姿をしている。身長162センチで、体重53キロ。すらっとした体型で、お尻まで伸ばしたストレートロングヘアにしている。元気いっぱいの明るい性格で、負けん気の強い一面がある。その場のノリや衝動で行動することもあるが、その温かい人柄から周囲に慕われている。しかし小学生の頃は、周囲とは異なる容姿からいじめられており、これに対抗するために少し暴力的なところがあった。この時、小学校教師の人渕かなえから、その手は暴力を振るうためではなく、誰かに手を差し伸べるために使って欲しいと言われたことを、大切に思っていた。生まれてからずっと日都ヶ島で暮らしており、島のイベントにも積極的に参加していた。特に、毎年7月に開催される夏祭りを非常に楽しみにしていた。しかしその直前の2000年7月21日、海で溺れた小早川しおりを助けるために海に入り、しおりは助かったものの、小舟潮自身は海に流された翌日に死亡した。この死は当初は事故として処理されるが、菱形窓が違和感を抱いたことから、慎平や妹の小舟澪たちによって死の真相を解き明かされることとなる。実家は洋食店「洋食コフネ」で、澪といっしょに店の手伝いをしていた。ずっと慎平に思いを寄せており、気持ちを伝えられぬままに慎平は上京し、再会出来ないまま亡くなってしまう。誕生日は7月25日で、血液型はA型。好きな食べ物は慎平の作ったカレー、たこ焼き、桃。

ウシオ

小舟潮から生まれた影。潮とまったく同じ容姿・記憶・人格を有する存在。ほかの影とは違い、2004年の夏、ハイネが南方竜之介を殺害した際にその身体の一部が分裂したことで生まれた。そのため、タイムトラベル能力の源である赤い目「観測者の目」を有しており、最初の片方を2018年7月23日に網代慎平に与えたことで、彼もタイムトラベル能力を手に入れた。しかし、慎平はこれを夢の中の出来事だと思い、ウシオも慎平と再会した際には記憶喪失になっていたため、覚えていなかった。また慎平とは違い、同じ身体でタイムトラベルを繰り返すため、各周にウシオは二人存在することになる。2018年7月18日、ゴミ拾い大会のため海に来ていた潮のデータをコピーして潮の影となるが、この時にそれまでのデータを上書きしてしまったため、自らがハイネの一部であることは忘れてしまう。そのため、ウシオ自身は影である自覚すらなくす。その後、自宅で待ち構える形で潮と対面し、自分こそが「小舟潮」であると主張し潮を困惑させる。しかし話し合いの結果、影が実在するということだけは間違いないことから、小早川しおりが危険であるという結論に至り、潮といっしょに影に関する調査を行い、同時に対抗策を練るようになった。しかし7月22日、海で潮がシオリによって殺害され、自らもデータも破壊されて記憶喪失となる。そのまま意識を失って海中を漂っていたが、3周目の7月24日、海から上がって慎平と出会う。慎平と出会った当初は状況がつかめず混乱していたが、影特有の高い戦闘能力を生かして事件解決のため、潮に変わって慎平とタイムトラベルを繰り返しながら共に戦うようになる。

小舟 澪 (こふね みお)

網代慎平の幼なじみの女子。和歌山県和歌山市にある離島、日都ヶ島(ひとがしま)の県立高校に通う1年生で、年齢は15歳。和歌山弁で話す。父親はフランス人の小舟アランで、母親は日本人の小舟琴子。琴子ゆずりの黒髪を顎の高さまでのボブヘアにしている。アランゆずりの青い瞳で、色黒のかわいらしい顔立ちをしている。しかし、姉の小舟潮とは対照的な容姿であるため、小舟澪自身は自分の容姿を非常に嫌っている。身長157センチで、51キロ。スポーツ万能で引き締まった体型をしており、特に水泳が得意で高校でも水泳部に所属している。友人の菱形朱鷺子からは、運動する姿が非常にしなやかで、いつまでも見ていたいほど美しいと評されている。しかし、澪自身は自分に自信が持てず、潮のようにはなれないことに強いコンプレックスを抱いている。2002年に生まれるが、琴子が産後の肥立ちが悪く、死亡したために琴子の記憶はない。慎平とは、慎平が両親を亡くして小舟家に来る前から親しく、ずっと思いを寄せていた。だが慎平と潮の関係を知っていたため、積極的になれずにいた。菱形窓に思いを寄せられており、これまでに2度の告白を受けたが、断っている。2018年、15歳の7月22日に潮を亡くすが、検死の際に他殺の可能性もあったことを知り、犯人を強く憎んでいる。そんな中、根津銀次郎から影に関する話を聞き、情報を求めて慎平と共にタカノス山へ向かうが、澪自身の影であるミオに殺害される。以降、慎平がタイムトラベルするたびに味方となり、慎平をサポートしている。実家は洋食店「洋食コフネ」で、店の手伝いをしている。誕生日は10月20日で、血液型はA型。好きな食べ物はお好み焼き、りんご飴、乳酸菌飲料。

ミオ

小舟澪から生まれた影。澪とまったく同じ容姿・記憶を有する存在。澪が制服を着ている時に誕生したため、主にこの時のセーラー服姿で行動している。しかし、ウシオとは違ってオリジナルとは異なる性格で、オリジナルよりもクールな性格をしている。何事にも動じず落ち着いており、残虐な行為も黙々とこなすため、オリジナルよりも不気味な印象を与える。網代慎平がタイムトラベル能力に目覚める前の、最初の7月23日、タカノス山を調査していた慎平と澪を襲い射殺する。以後、ハイネの忠実な駒として慎平たちの敵として立ちふさがるが、7周目の7月22日、ウシオによってハイネから解放される。これ以降は味方となり、慎平たちと行動を共にするようになる。誕生した瞬間までの澪の記憶を有しているため、澪が自分自身を嫌っており、自分に自信を持てずにいることを知っている。そのため、味方になってからは澪に少し意地悪に接しつつも、素直になれと背中を押すようになる。

菱形 窓 (ひしがた そう)

網代慎平の幼なじみの男子。菱形朱鷺子の兄。和歌山県和歌山市にある離島、日都ヶ島(ひとがしま)の県立高校に通う3年生で、年齢は17歳。和歌山弁で話す。日都ヶ島唯一の病院である「菱形医院」の息子で、高校卒業後は医大への進学を目指している。癖のある茶色のショートヘア全体をツンツンに立てた髪形で、父親の菱形青銅に似た顔立ちをしている。身長178センチで、体重65キロ。まじめで正義感が強く、情に厚い性格の持ち主。その人柄から、人付き合いが苦手な慎平にも信頼されており、お互いにいい関係を築いている。2018年7月21日、幼なじみの小舟潮が亡くなり、その遺体には首を絞められた跡の「吉川線」があったことから、事故ではなく他殺なのではないかと疑っていた。そこで翌日、慎平が帰郷してすぐにこの事情を伝えるが、慎平と澪が翌日死亡したため、この情報を伝えるにとどまる。しかし、2周目の23日に慎平と小舟澪から影の件について知らされてからは、冷静に受け入れて事件解決に向けて協力するようになる。以後、慎平がタイムトラベルを繰り返すたびに味方として力を貸している。心優しく人命の価値を重く見ており、潮が死亡した際も、その場で蘇生できなかったことに責任を感じて深く落ち込んでいた。この人柄から青銅には影にかかわる業務は難しいと判断され、菱形家がずっとハイネに「食餌(しょくじ)」を用意してきたことも、母親の菱形千登勢が既に死亡しており、家族として暮らしているのは彼女の影であるチトセであることも知らされずに生きてきた。しかし、7周目にこれを知ってからは現実を受け入れ、苦手意識を持っていた青銅との関係も改善されていく。誕生日は11月20日で、血液型はO型。好きな食べ物はとんかつ、ラーメン、コーラ。

菱形 朱鷺子 (ひしがた ときこ)

小舟澪の友人の女子。菱形窓の妹。和歌山県和歌山市にある離島、日都ヶ島(ひとがしま)の県立高校に通う1年生で、年齢は16歳。和歌山弁で話す。日都ヶ島唯一の病院である「菱形医院」の娘でもある。胸の高さまで伸ばしたピンク色のロングヘアをまとめ、知的で落ち着いた雰囲気を漂わせた大和撫子(やまとなでしこ)。糸目なため、目を閉じているように見えることがある。一見澪とは対照的な、物静かで冷静な性格ながら、非常に仲がよく、現在も同じ学校に通うクラスメイトである。頭脳明晰で学年トップクラスの成績を有するが身体が弱くスポーツ全般が不得意で、特にマラソンが苦手。このことから、スポーツする澪を眺めるのが非常に好き。優しすぎる兄の窓よりも「菱形医院」の後継者にふさわしいと判断され、窓に隠れて長年にわたりハイネに「食餌(しょくじ)」を与える仕事に携わってきた。また、菱形千登勢が既に影のチトセになっていることも知っていた。仕事をするために「ローゼンクランツ」と「ギルデンスターン」という名前の、頭部の上部分を大きく削られた赤ん坊の姿をしている2体の影を与えられており、非常時はこの2体を使役して戦う。そのため、5周目までは網代慎平たちと敵対していたが、6周目に入った際にウシオの記憶を介して、自分はハイネたちの真の目的を知らぬままに利用されていたことを知る。これを機に離反し、以後は慎平たちの仲間となる。誕生日は6月25日で、血液型はO型。好きな食べ物はプラリネ、菫(すみれ)の砂糖漬け、ブータンノワール。

南方 ひづる (みなかた ひづる)

小説家の若い女性。年齢は20代後半。胸まで伸ばした黒のストレートロングヘアにしている。身長172センチで、体重60キロ。長身に加えて巨乳の持ち主で、抜群のスタイルを誇る。極度の近視で眼鏡をかけ、唇の左下にほくろが一つある。和歌山県和歌山市にある離島、日都ヶ島(ひとがしま)の出身で、中学2年生の夏までは日都ヶ島で暮らしていた。しかし、双子の弟、南方竜之介の死亡事件を機に島を出て、現在は東京都で執筆活動をしている。小説家としてのペンネームは、弟の名前からとった「南方竜之介」。現在は和歌山弁は使わず、男性的な口調で話す。クールな性格で表情に乏しく、つねに落ち着いている。しかし他人に関心がない訳ではなく、興味のあることや緊急事態の時は、協力を惜しまない面倒見のよさがある。2004年の夏、タカノス山にある菱形医院旧病棟に住んでいる謎の少女、ハイネと親しくなる。だが、次第に空腹を訴えるようになったハイネが、ある日、竜之介を襲って殺害してしまう。この一件により、島に伝わる「影」に関する伝承が真実であったことを知り、当時現場に居合わせた根津銀次郎と秘密を共有しつつ、島を去った。その後はこの体験をモチーフにした小説「沼男」を発表しつつも島とは距離を取っていたが、2018年の7月21日、突如電話で謎のメッセージを受け取り、日都ヶ島に危機がせまっていることを知る。そこで帰郷し、当初は銀次郎と二人で調査を行っていたが、4周目で慎平と合流してからは共に戦うようになる。竜之介の死亡事件時、影となったリュウノスケが体内に入り、彼の人格も有する二重人格者となった。しかし、リュウノスケと心の中でコミュニケーションを取ることはできず、髪の毛を一つに結ぶことでリュウノスケの人格に切り替わる。リュウノスケになっている時は、影並みの身体能力となり影とも渡り合えるが、肉体は南方ひづるのままであるため、無茶な運動をするとその分肉体がダメージを受ける。好きな食べ物はビール、コーヒー、青カビのチーズ。基本的には思ったことを正直に口にするタイプだが、なぜか自らのファンに対しては素直になれず、作品の話となると慎平にもそっけない態度を取ってしまう。だが、ファンのことは大切に思っており、内心では喜んでいる。

南方 竜之介 (みなかた りゅうのすけ)

南方ひづるの双子の弟で、故人。和歌山県和歌山市にある離島、日都ヶ島(ひとがしま)の出身で、中学2年生で亡くなった。癖のある黒髪をショートヘアで、穏やかで中性的な雰囲気を漂わせている。和歌山弁で話す。2004年、中学2年生の夏、ひづると共に14歳の誕生日を迎えるが、誕生日パーティの準備中にひづるがいなくなったことに気づく。そこで小早川朝子(旧姓・磯兼朝子)と相談した結果、単身タカノス山に向かう。この時に空腹に苦しんでいたハイネに見つかり、襲われて亡くなる。

リュウノスケ

南方竜之介から生まれた影。竜之介とまったく同じ容姿・記憶を有する存在。竜之介が死亡した時のTシャツにズボンを身につけているが、表に出てくることはなく、南方ひづるの体内で生きている。竜之介の死亡時に影として誕生するが、ハイネの支配下に置かれることなくひづるの体内に移動する。その後、ずっとひづるの体内で暮らし、ひづるのもう一つの人格となった。しかし、8周目まではひづるとコミュニケーションを取ることはできず、ひづるが髪を一つに束ねることで、リュウノスケの人格に移行していた。影であるため非常に高い身体能力を持ち、2秒先の世界を見ることができる、ほかの影にはない特殊能力がある。これを使って敵の行動をあらかじめ予測することで高い戦闘力を得ており、ひづるが人間離れした動きができるのも、リュウノスケの人格に切り替えて、彼に操作を任せているからである。9周目でひづるが亡くなってからは網代慎平の身体に移動し、今度は慎平に協力するようになるが、慎平とは最初から脳内でコミュニケーションを取ることができ、髪形を変えて人格を切り替えるといった儀式も不要。生まれたのは慎平よりもずいぶん早いが、肉体的には年下であるため、親しくなるまでは慎平に敬語を使っていた。

根津 銀次郎 (ねづ ぎんじろう)

和歌山県和歌山市にある離島、日都ヶ島(ひとがしま)で、猟師を生業とする老齢な男性。和歌山弁で話す。老体ながらがっしりとした筋肉質の体型で、口ひげとあごひげを長く伸ばしている。左目には眼帯を付けた強面(こわもて)で、ぶっきらぼうな態度で口が悪いために誤解されやすい。しかし実際は情に厚く、面倒見のいい性格をしている。14年前の2004年の夏にタカノス山でマムシの駆除作業中、南方竜之介がハイネに殺害され、その現場にいた南方ひづるも襲われている場面に出くわす。猟銃でひづるを救出しようとした際、自らの影であるギンジロウに攻撃されて左目を失った。最終的にはギンジロウを自力で倒したため、影に対する免疫がある。この一件から影が実在することを知り、ひづると秘密を共有する関係になる。それ以降は影に警戒しながらもふつうに暮らしていたが、2018年7月22日にひづるの帰郷と共に影に関する事件が起きていることを知り、ひづると協力して影の駆除に乗り出す。網代慎平とは事件まで面識がなかったが、慎平がタイムトラベルする前の最初の7月23日の時点で、影に関する情報を与えていた。その後、4周目で慎平がひづるの連絡先を手に入れたことで合流した。4周目の時点ではウシオを信頼できずに途中から別行動をしたが、5周目でこれが間違った判断だとわかってからは、仲間に加わった。妻の根津薫と二人暮らしだが、2か月前に薫が影に襲われて死亡し、影であるカオルが成り代わって帰宅している。それ以降は、自宅にカオルを監禁しつつも手を下せずにいたが、7周目の7月23日、このままではいけないと判断して射殺した。

凸村 哲 (とつむら てつ)

和歌山県和歌山市にある離島、日都ヶ島(ひとがしま)で、唯一の警察署に勤める警察官の若い男性。癖のあるウルフカットヘアに無精ひげを生やし、サングラスをかけている。制服をラフに着こなしているため、やや軽薄でだらしない印象を与える。小舟家とは親戚でもあり、和歌山弁で話す。女性全般が大好きで、ヒマさえあればアダルトサイトを見ている。本質的には善良で常識的な性格ながら、仕事よりもお気に入りの女性がいるお店に行くことの方が重要だと言い放つなど、ふまじめな態度を取ることが多い。影に関する知識はいっさいなく、2018年7月22日の小舟潮の死亡後も、訳もわからぬままにミオに殺されて影に成り代わられたり、4周目では小舟澪と共にマンホールからヒルコ洞に潜入するも、事件の全容を知らぬまま亡くなる。しかし、6周目でウシオを介して5周目までの情報を得てからは、網代慎平たちの仲間としていっしょに行動するようになる。また、ここからは事件解決のために、違法とわかっていながら慎平に拳銃を提供した。「洋食コフネ」の常連客で、毎日朝食を食べに来ている。

菱形 青銅 (ひしがた せいどう)

和歌山県和歌山市にある離島、日都ヶ島(ひとがしま)唯一の病院「菱形医院」の院長を務める中年男性。菱形窓、菱形朱鷺子の父親でもある。和歌山弁で話す。癖のあるショートヘアで、目がギョロギョロとしており、やせた体型で頰はこけている。この容姿と厳格で冷酷な性格から、近寄りがたい雰囲気を漂わせている。300年前から菱形一族が行っている、ハイネに「食餌(しょくじ)」を与える業務を朱鷺子と共に担当していた。島で死者が出ると、その遺体をすり替えて院内のヒルコ洞へと続く道から輸送してハイネに与えてきた。また、この仕事は代々一族のうち一人を後継者に選んで行うため、窓よりも朱鷺子が適任であるとして手伝わせるようになった。5年前の2013年に妻の菱形千登勢を病気で亡くすが、この事実を受け入れられず彼女の影であるチトセを、千登勢に成り代わらせていっしょに暮らしている。これによってハイネが死亡すればチトセも消えてしまうため、ますますハイネに従わざるを得なくなっている。ハイネと菱形紙垂彦からは、海の彼方にある「影の国」の存在を知らされており、ハイネの復活後は家族全員が影になってそちらへ移住する計画を立てていた。しかし、菱形青銅自身にはすでに免疫があり、影を作り出すことはできないのを知らずにいた。この件について7周目の7月22日に知ったことで計画が頓挫したこと、ハイネたちには利用されていただけだということを理解し、網代慎平たちに自らの知る情報をすべて与えた。これを機に、芳しくなかった窓との関係も少し改善された。

小早川 しおり (こばやかわ しおり)

和歌山県和歌山市にある離島、日都ヶ島(ひとがしま)の小学校に通う3年生の女子。和歌山弁で話す。日都ヶ島にある日用品店「コバマート」の一人娘で、幼いながらに店番を担当することもある。ロングヘアのツインテールの髪型をしている。かわいらしい顔立ちで、明るく気の強い性格をしている。2018年7月中旬頃から、自分とそっくりな少女を見かけることが増え、不審に思っていた。そして7月17日、コバマートに訪れていた小舟潮と小舟澪に相談する。この時はそっくりな女の子がいただけだと二人に思われていたが、翌日7月18日には潮と澪も潮そっくりな少女を見かけたことから、二人の信用を得る。しかし2018年7月22日、潮、澪、菱形窓、菱形朱鷺子たちと海で泳いでいた際に、海中に潜伏していた小早川しおり自身の影、シオリに襲われ、潮とウシオに助けられるも溺死。しおり自身の遺体ではなく、しおりのふりをしているシオリを、澪が救助してしまう。以降シオリに成り代わられ、シオリによって両親も殺害されてしまう。

シオリ

小早川しおりから生まれた影。しおりとまったく同じ容姿・記憶を有する存在。しかし性格は、ミオ同様オリジナルとは異なっており、しおりよりも残虐非道である。2018年7月中旬頃に誕生し、オリジナルを殺すためにしおりの周辺を徘徊(はいかい)する。そして7月22日、海で泳いでいるしおりを襲って殺害。その後、しおりのふりをして小舟澪に助けられ、帰宅後にしおりの両親も殺害し、小早川家全員を影にした。影の中では戦闘能力は低く、元気な子供として歩き回れる程度である。しかし、ハイネにはスペアの身体として気に入られており、のちに精神を乗っ取られて自由に動けないハイネの代わりに、ハイネにあやつられて行動するようになる。この時はハイネの一部となっているため、ほかの影よりも頑丈で簡単には倒されない身体になる。

雁切 波稲 (かりきり はいね)

300年前の日都ヶ島(ひとがしま)に住んでいた少女。黒の癖のあるぼさぼさのロングヘアを一つに束(たば)ね、着物を着用したかわいらしい顔立ちをしている。ある日、島に流れ着いたクジラの姿をしたヒルコ神に目を付けられ、影を作られた人類最初の存在となった。その直後、雁切波稲自身の影であるハイネに殺害された。

ハイネ

雁切波稲から生まれた影。すべての影の母親。波稲とまったく同じ容姿・記憶を有する存在だが、ハイネとして生きた期間があまりにも長いため、若くして亡くなった波稲とは性格がすでに大きく異なっている。和歌山弁に加え、語尾に「じゃ」を付けるなど、非常に古めかしい口調で話す。はるか昔、彗星として現れ、海中に落ちた地球外生命体「ヒルコ様」そのものであり、近くに存在するものをコピーして変身しては、コピーした情報を栄養にする力を持つ。地球に来てからは海中でさまざまな情報を得て、300年前に江戸時代のある日、クジラの姿で日都ヶ島に流れ着いた。この時、クジラを見に来ていた波稲を殺し、波稲の情報をコピーした。これ以降は、彼女の影、ハイネとして生きるようになった。それからは神として島民に祀られるようになるが、菱形紙垂彦と交わり、紙垂彦との子を授かる。その子供は成長するにつれて紙垂彦と瓜二つになり、やがてクローンであることが判明する。このことにより、ハイネの情報をコピーして移植する力があれば、永遠に生きられると考えた紙垂彦によって、何度も紙垂彦のクローンを出産させられるようになる。14年前の2004年、菱形医院旧病棟にいた際に南方ひづるに見つかり、友人関係となる。この頃は人を食べずにひづるの持ってくるお菓子でしのいでいたが、やがて耐え切れなくなり、南方竜之介を襲って殺害する。これによってひづるとは敵対関係になってしまう。現在は非常に弱っており、自力では住処であるヒルコ洞から出ることもできない。そのため、シオリやシンペイの身体を乗っ取って行動する。

菱形 紙垂彦 (ひしがた しでひこ)

和歌山県和歌山市にある離島、日都ヶ島(ひとがしま)唯一の病院「菱形医院」の創始者で、初代医院長の男性。菱形家はもともと島の祭祀(さいし)を司っていたが、江戸時代中頃に菱形紙垂彦の父親が医者のまねごとを始め、これが菱形医院の原型となっている。肩まで伸ばしたストレートロングヘアを一つに結んでまとめ、丸眼鏡をかけている。いつも笑顔で穏やかな性格ながら、どこか不気味で何を考えているのかわからないところがある。300年前、江戸時代のある日、クジラの姿で日都ヶ島に流れ着いたヒルコ神が、波稲を殺して波稲の情報をコピーする姿を目撃する。これ以降、彼女の影、ハイネとして生きるようになったヒルコ神を祀るが、ある日、彼女と交わって子を授かる。その子供は成長するにつれて紙垂彦と瓜二つになり、やがてクローンであることが判明する。このことにより、ハイネの情報をコピーして移植する力があれば、永遠に生きられると考え、何度もハイネ自身のクローンを出産させては、現在の身体に限界が来るたびに新しい身体に乗り換える行為を繰り返して生き続けてきた。現在では「雁切真砂人」と名乗っており、その前の身体を使っている時は「雁切巌」と名乗っていた。また、かつて誰かの影だったものを泥状にして全身にまとい、正体を隠して行動している。この姿が、巨大な4本腕の男性の姿をしていることから、この時は「4本腕の影」「シデ」と呼ばれる。ゲーム全般が大好きで、現実の出来事や人間に対しても、どこかゲーム感覚で接している。そのため、自分の存在をゲームにおける悪役「魔王」にたとえて話すことが多い。

小舟 アラン (こふね あらん)

和歌山県和歌山市にある離島、日都ヶ島(ひとがしま)で、シェフを務めるフランス人の中年男性。洋食店「洋食コフネ」の料理人兼経営者である。年齢は50代後半。小舟潮と小舟澪の父親で、網代慎平の里親でもある。フランス人だが日本語が堪能で、和歌山弁で話す。恰幅(かっぷく)のいい大柄な体型で、金色のストレートショートヘアにあごひげを伸ばしている。穏やかで親しみやすい性格の持ち主。1991年、32歳の時にフランスに留学していた小舟琴子と出会い、1994年に結婚して琴子の故郷である日都ヶ島に移住し、「洋食コフネ」をオープンした。しかし2002年、澪の誕生と共に琴子が亡くなってからは、娘二人と三人暮らしをしていた。その後、2008年に慎平の両親が亡くなってからは、慎平の母親である網代暁見と親しかったこともあり、慎平の里親となった。

その他キーワード

(かげ)

300年ほど前、和歌山県和歌山市にある離島、日都ヶ島(ひとがしま)に流れ着いた地球外生命体「ヒルコ神(ハイネ)」を母親とする化け物の総称。ハイネと同じ、近くに存在するものをデータとしてとらえ、そのデータをコピーして変身しては、コピーした情報を栄養にする力を持つ。主に人間をコピーすることが多く、その際に対象の容姿・記憶・人格を完全にコピーする。しかし、データはコピーした瞬間のものとなるため、例えば1月1日にコピーした人間の翌日1月2日の記憶を持つことはできない。「影」という名のとおり、人間のふりをして暮らしている立体の方はダミーであり、本体は立体の影になっている平面部分である。そのため、平面部分が破壊されない限り立体部分は再生できる。しかし本体が傷つくとデータが損傷するため、これを治癒するには、再度オリジナルと遭遇し、再度データをスキャンする必要がある。また、本体に致死的なダメージを受けると、死亡する。この時オリジナルが生きていれば、その人間には「免疫」がつき、二度とコピーされることはなく、2体目の影は出現しない。すべての影はハイネから生まれており、ハイネから生まれた影を「コドモ」と呼ぶ。この「コドモ」は一度だけ影を生むことができ、こちらは「マゴ」と呼ばれる。ハイネが「母親」とされるのはこのためである。人間以外の物もコピーし、そのデータを体内に保存しておくことができるが、自分のストレージにデータを保存できる量に限られる。ウシオが網代慎平の腕時計に変身して姿を隠したり、シンペイが慎平のスマートフォンを所持していたのも、ウシオとシンペイがこれらのデータを有していたため。

書誌情報

サマータイムレンダ 全13巻 集英社〈ジャンプコミックス〉

第1巻

(2018-02-02発行、 978-4088813394)

第13巻

(2021-04-02発行、 978-4088826127)

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