あらすじ
第1巻
北ヨーロッパの小国にあるダスメア市の日本人街で商売を営む優しい両親のもと、何ひとつ不自由のない暮らしを送っていたエリカ市原。しかし、そんな幸せな生活は、エリカの留学中に両親が惨殺された事によってもろくも崩れ去る。犯人として捕らえられた、青と黒が入り混じった瞳、通称、ドラゴン・アイを持つ青年のケイ・ジオン・羅濠は、裁判で終身刑を言い渡され、孤島の牢獄、サン・シオン牢獄に送られる事になった。2年後、遠く離れた日本で暮らしていたエリカは、現地の友人からもたらされた、ケイが仮釈放されるという噂に衝撃を受ける。ケイに対する復讐心を抑えらなくなったエリカは、ダスメア市に舞い戻り、慰安のためにサン・シオン牢獄へと送り込まれる娼婦に扮して、ケイを暗殺する事を計画。元メイドのサラ・コリアードと、娼婦の元締めであるアンクロードの老婆の協力を得て、首尾よくサン・シオン牢獄へと入り込んだエリカは、そこで囚人のリーダーとなっていたケイに再会するのだった。しかし、ケイはエリカに対し、彼女の両親を殺害した犯人は自分ではなく、もう一人のドラゴン・アイの男であると断言。ケイの言葉に疑いを抱きつつも、事件の真相を探るため、エリカは脱獄したケイに無理やり同行する。日本へと逃れたものの、2年前の殺人事件がケイとエリカが仕組んだものであると確信する刑事の蛇沼から、執拗な追跡を受ける二人。逃走中にケイとはぐれしまったエリカは、親切な男性に助けられるが、男性の正体は「シクラ貿易」という会社の一員である支倉我毛だった。我毛によって東京湾に浮かぶ人工島、「幽獄島」へと連行されてしまったエリカを探し、幽獄島へ乗り込んだケイもまた、シクラ貿易の女社長である支倉珠姫に捕らえられてしまう。
第2巻
死闘の末、支倉珠姫達とその手下を退け、ケイ・ジオン・羅濠はエリカ市原を救い出した。二人は幽獄島に乗り込んで来た警察の追っ手から間一髪で逃れ、ケイの父親の実家がある金沢へと向かう。しかし、電車の中で警官に発見された二人はそのまま連行され、厳しい取り調べを受ける事になってしまう。取り調べの中で、ケイが渋谷で発生した大量殺人の容疑者になっている事を知り、彼を信じた自分の判断が誤っていたかもしれないと思い悩むエリカ。本格的な取り調べを受けるため、警視庁に護送される途中で、護送車から脱出を果たした二人は、スキー場に現れた支倉我毛の襲撃を退ける。しかし、疲れ果てて眠っていたところを狙われ、何者かにさらわれてしまうエリカ。エリカをさらったのは、ケイの実兄で、ケイと同じドラゴン・アイの持ち主であるカイル・ラツ・羅濠だった。カイルは、仕事の障害となったエリカの両親を殺害したのが自分であり、さらにケイとエリカが幼い頃からの知り合いだったという、エリカ本人が忘れていた衝撃の事実を明らかにする。エリカを救うためカイルと対峙したケイは、かろうじて勝利を収めたものの、カイルは何処かへと行方をくらまし、二人は再び警察に追われる身となってしまう。死の商人として武装組織や小国にプルトニウムを売りさばく、闇の組織のボスであり、数々の凄惨な事件に関与していたカイルと決着をつけるため、再びダスメア市へと舞い戻ったケイとエリカ。サン・シオン牢獄へと乗り込んだ二人は、そこで待ち受けていたカイルに対し、最後の勝負を挑むのだった。
登場人物・キャラクター
エリカ 市原 (えりか いちはら)
北欧の小国に住んでいる美少女。商売を営む日本人の父親と白人の母親のあいだに生まれ、ダスメア市で何ひとつ不自由のない暮らしをしていた。しかし、日本への留学中に両親を殺害されるという悲劇に見舞われ、犯人とされるケイ・ジオン・羅濠が死刑ではなく、終身刑となった事に苦悩しつつ、日本で暮らす事になった。2年後、友人からケイが仮出所をするという噂を聞きつけた事で、必死で抑えつけていた復讐心が爆発。 ケイが投獄されたサン・シオン牢獄に娼婦に扮して乗り込み、ケイを暗殺しようとする。しかし、監獄で再会したケイから両親の殺害を否定され、脱獄を果たしたケイと行動を共にするうちに、徐々に心を惹かれていくようになる。お嬢様育ちでおっとりとした性格をしているが、芯は非常に強く、一度決めた目標はどのような障害があっても達成しようとするタイプ。 幼少の頃にケイと出会っているが、エリカ市原本人はその事実を忘れている。日本に帰国する際に、追っ手の目を欺くために「川島優子」という偽名を名乗っていた。
ケイ・ジオン・羅濠 (けいじおんらごう)
背が高い長髪の青年。北欧の小国にあるダスメア市に住んでいた。日本人と白人のハーフで、青と黒が入り混じった特別な瞳である、通称、ドラゴン・アイの持ち主。もともとは日本人街で果実商を営んでいたが、ドラゴン・アイを気味悪がられ、家族ともども追い出されてしまった過去を持つ。エリカ市原の両親を含む、日本人街の住人を惨殺した罪をなすりつけられて終身刑となり、孤島の監獄、サン・シオン牢獄に投獄されてしまう。 2年後に刑務所の囚人のリーダーとなり、娼婦に扮して自分を暗殺しにきたエリカと再会。無実を証明するために脱獄したあとは、エリカといっしょに日本へ行き、自分を殺人犯として陥れた兄のカイル・ラツ・羅濠に立ち向かい、決着をつけようとする。 必要な事以外はほとんど話さないクールな性格で、何を考えているのかわからないところがあるが、本当は優しく包容力があり、正義感も強い。身体能力と格闘の技術が高く、複数人の暴漢を相手にしてもものともしない。日本に赴く際に、追っ手の目を欺くために「黒崎達也」という偽名を名乗っていた。
カイル・ラツ・羅濠 (かいるらつらごう)
日本人と白人のハーフで長髪の美青年。ソ連の崩壊にともなって流出したプルトニウムを、小国や武装組織に売りさばいている闇の組織のボス。ケイ・ジオン・羅濠の実兄で、ケイと同じドラゴン・アイの持ち主でもある。ドラゴン・アイの力を発現させており、瞳を見た人間の動きを封じる事ができる。唯一の肉親であるケイを愛しているが、独占欲と嗜虐心が強い性格であるため、幼い頃から自分に従わないケイに対し、度々敗北を味わわせ、兄弟の揺るがぬ立場を明確にさせていた。 組織の障害となった日本人街の住人を殺害し、その罪をケイになりすりつけた張本人。金沢でケイと相まみえた時は、巧みな刀さばきでケイを圧倒する。
蛇沼 (へびぬま)
日本人の男性刑事。サン・シオン牢獄から脱獄して日本へやって来たケイ・ジオン・羅濠とエリカ市原が、エリカの両親を殺害した真犯人であるとみなしており、彼女達のゆく先々に現れては、執拗に追跡する。その過程で、カイル・ラツ・羅濠の組織が、日本を含む世界の裏社会で暗躍している事実を突き止める。
アンクロードの老婆 (あんくろーどのろうば)
娼婦の元締めをしている占い師の老婆。ダスメア市に住んでいる。ケイ・ジオン・羅濠の暗殺を狙うエリカ市原に協力し、彼女の左肩に娼婦の証である真紅のバラのタトゥーを彫り込んだ。ケイの脱獄事件のあとに、周囲の人間に対する影響力の大きさを恐れられ、両目をつぶされてしまう。
サラ・コリアード (さらこりあーど)
ダスメア市に住んでいる娼婦の女性。もともとはエリカ市原の家に仕えていたメイドだったが、エリカの両親が殺害されたあとに娼婦となる。ケイ・ジオン・羅濠の暗殺を狙うためにダスメア市に舞い戻ったエリカの身を案じ、日本へ帰国させようとするが、エリカの強い決心に押され、アンクロードの老婆を紹介する。サン・シオン牢獄に収監されているブルド・コリアードが夫である。
ブルド・コリアード (ぶるどこりあーど)
サン・シオン牢獄に収監されている囚人。頭頂部が禿げ上がり、ひげ面をした屈強な体格の男性で、無類の女好き。娼婦として刑務所に潜り込んだエリカ市原を抱こうとして、ケイ・ジオン・羅濠に叩きのめされる。妻はサラ・コリアード。
支倉 珠姫 (しくら たまき)
「シクラ貿易」という会社の代表取締役を務めている女性。正体はカイル・ラツ・羅濠の組織で、非合法にプルトニウムを売りさばいている日本支部のリーダー。エリカ市原を探しに「幽獄島」にやって来たケイ・ジオン・羅濠を捕らえ、拷問にかけて楽しもうとするが、舌を嚙みちぎられ、ナイフで刺殺される。
支倉 我毛 (しくら がもう)
「シクラ貿易」という会社の一員。支倉珠姫の夫。ガマガエルのような風貌をした下衆な性格の男性。ケイ・ジオン・羅濠とはぐれたエリカ市原を捕らえて「幽獄島」へと連行し、手籠めにしようとした。のちに逃走中のケイとエリカの前に姿を現し、二人を殺害しようとする。
場所
ダスメア市 (だすめあしてぃ)
北ヨーロッパの小国にある港湾都市。日本人街が存在しており、他国との果実貿易で大いににぎわっていたが、2年前にエリカ市原の両親を含む日本人商店主の大量殺人事件が発生。それ以来、町はすさみ、港に集まる船員の質も悪化の一途をたどっている。
サン・シオン牢獄 (さんしおんろうごく)
北ヨーロッパの小国のとある湖上の小島に建てられた牢獄。美しい古城を思わせる外観をしているが、収監されている囚人は度々暴動を起こす荒くれものばかり。サン・シオン牢獄には半年に一度、10人の娼婦が送り込まれている。
その他キーワード
ドラゴン・アイ (どらごんあい)
青と黒が入り混じった、「ヘテロクロミア(金銀妖瞳)」と呼ばれる美しい瞳を指す言葉。ケイ・ジオン・羅濠とカイル・ラツ・羅濠は、生まれつきこの瞳を持っている。ドラゴン・アイに見つめられた者は、その心を奪われ、身動きができなくなったり、瞳の持ち主の意のままになってしまう。