穏やかな日常から非日常へ
中学生の茱麻里は、極道組織の組長の娘でありながら、父親の意向に従い裏社会とは無縁の穏やかな日常を送っていた。そんなある日、下校中に謎の怪物に襲われ、絶体絶命の危機に直面するが、事前に父親が契約していたアデプトのトウゴが彼女を救い出す。しかし、茱麻里の家はすでに何者かに命じられた怪物に襲撃されており、彼女が姉のように慕っていたミカも無惨に命を奪われてしまう。その後、トウゴと茱麻里は、敵対する極道組織に雇われた精霊使いとの戦いに挑むことになる。戦いの中で茱麻里の父親も犠牲となるが、彼女は神霊刀「クトネシリカ」の力を引き出し、辛くも勝利を収める。この戦いを経て、幻想の存在を知った茱麻里は、トウゴと共に幻想がもたらす非日常に立ち向かうことになる。
世界と密接にかかわる「幻想」
本作の世界では、常識では考えられない技術や異能力、さらには異質な生物がすべて「幻想」と呼ばれている。多くの幻想は、古くから語り継がれてきた神話や寓話をモチーフにしている。例えば、天空を舞う竜や、人々を深い森へと誘う美しい妖精、迷宮に潜む魔獣や幻獣などが挙げられ、これらは人知れず現代社会に影響を与えている。また、人間の身でありながら幻想の力を行使できる存在は「アデプト」と呼ばれる。主人公のトウゴも、「フランケンシュタインの怪物」に例えられる人造のアデプトとして知られている。
「幻想」の力と裏社会の争い
「幻想」の存在は一般にはほとんど知られていないが、国を代表するような大企業のほかに極道やマフィア、ギャングといった裏社会では広く認識されており、その存在が争いの火種となることも少なくない。茱麻里の実家である虎杖家と敵対する多軽家のあいだでは、神霊刀「クトネシリカ」の力を解放する方法を巡る争いが勃発している。また、トウゴの協力者であるヒューゴー・ハウリングリングは、複合アメリカ系企業「Xeno Order」のトップとして、日本の「鶫豪倶院」やフランスに本拠を置く「マビノギオン」と、幻想を用いた技術力を競い合っている。彼らの争いは日々激化しており、やがて一般社会にも大きな変革をもたらすほどの影響を及ぼすことになる。
登場人物・キャラクター
トウゴ
超人種「アデプト」の青年。茱麻里の護衛を務めている。自身の身体に電気のような刺激を与えることで、身体の一部を「ミスリル」と呼ばれる硬い鉱物に変化させる能力を持つ。アデプトで構成された便利屋「チーム」に所属しており、同じチームの陰陽師、賀茂直唯やエルフの忍者、ユリディータ・ハガクレと共に、人類に危害を加えようとする幻想や、それを悪用しようとする者たちと戦っている。彼はアデプトになる前の記憶をほとんど失っており、自らの名前すら思い出せない。10月5日にアデプトとなったことから、現在は「トウゴ」と名乗っている。しかし、かつて妹がいたことは覚えており、彼女の行方を追うことが記憶を取り戻す手がかりになるのではないかと考えている。トウゴがほかのアデプトと異なる点として、彼が使用できる幻想の力のルーツが不明であることが挙げられる。かつて自分に能力と任務を与えた存在からは、「人造の幻想」と呼ばれている。
虎杖 茱麻里 (いたどり しゅまり)
京都の中学校に通う2年生の女子。年齢は13歳。アンダーリムの眼鏡をかけている。アイヌ民族の血を引き、「カムイ」と呼ばれる幻想の力を使いこなす特別な能力を秘めている。極道組織「虎杖組」の組長の一人娘だが、父親の意向によりふつうの生活を送っている。しかし、虎杖組と幻想を巡って対立する多軽組が雇った精霊使いによって、父親や組員たちは命を奪われ、茱麻里自身も危険にさらされている。そんな中、父親に雇われていたトウゴに助けられ、戦いの中で神霊刀「クトネシリカ」の使い手となる。戦闘後は「チーム」の保護下に置かれ、彼らと共に生活を始める。
書誌情報
再世のファンタズマ 全4巻 スクウェア・エニックス〈ガンガンコミックス〉
第1巻
(2016-03-22発行、978-4757549098)
第2巻
(2016-09-21発行、978-4757550988)
第3巻
(2017-03-22発行、978-4757552739)
第4巻
(2017-09-22発行、978-4757554771)







