謎の生命体「ドリィ」に追い込まれた人類
人間を溶かす「虫」によって激減した人類に追い討ちを掛けるように現れた謎の生命体が「ドリィ」である。体長8メートル前後の調査型ドリィ「腹ボテ」、体長4から5メートルの攻撃型ドリィ「二頭身」、目撃情報の少ない「ヌイグルミ」の3種が確認されている。腹ボテの一部と二頭身は武器型の生物を宿し、その多くは銃器型、あるいは爆弾型である。また、腹ボテと二頭身の左手には目玉型の生物が宿っている。この生物には殺意を感知してバリアを展開する能力が備わっており、砲撃や毒ガスも遮断されてしまうが、拘束を目的とした攻撃であれば通用することが判明している。ドリィの拠点は「人形の住みか(ドールハウス)」と呼ばれ、その多くは都市部に点在する。これらの拠点にもバリアが搭載され、宇宙兵器による攻撃も通用しない。なお、虫とドリィの出現に先んじて、世界中の核関連施設が消滅する不可解な事象が発生していた。電気に関してはSSPS(宇宙太陽光発電システム)によって賄われ、現在でも生存者の生活を支えている。また、通信衛星や海底ケーブルの類は残存しており、不安定ながらインターネットも機能している。
「ドリィ」の解明に挑む武装集団「T&E(トライアルアンドエラー)」
人間を溶かす「虫」や謎の生命体「ドリィ」によって、わずか半年のあいだに世界人口は従来の100分の1にまで低下。日本も政府が倒れ、一般人が武器を手に食糧を奪い合う無法地帯に変貌していた。生き残った人々はいつしか独自のコミュニティを形成。元財務省主計局のキャリア官僚である燕子花万里(かきつばたばんり)を中心に臨時政府も発足し、国家の再建に向けて歩み始めていた。主人公の斑鳩射馬が所属することになる「T&E(トライアルアンドエラー)」は、主に自衛隊や警察の出身者で構成されたコミュニティで、治安回復の担い手として期待されていた。しかし、T&Eの中心人物である田中大福は独断で立ち上げた分遣隊にリソースを割き、ドリィの捕獲と生体調査に勤(いそ)しんでいる。特にドリィのバリアを突破する方法の模索に熱心で、刃物、銃器、火炎放射器、テーザーガン、毒ガス、熱ゲル化ポリマー溶液など、試行錯誤を繰り返している。
「幻気功(ファンタスマ)」に目覚めた人類の救世主たち
人間を溶かす「虫」と謎の生命体「ドリィ」が出現した「世界終末の日」を境に、気功と似た不思議なチカラを駆使する者が現れ始めていた。「幻気功(ファンタスマ)」と名付けられたそのチカラはドリィにも通用するほど強力で、その使い手を「幻気功使い」と呼ぶ。素手でバリアを打ち砕く行方救仁(なめかたきゅうじん)、物体にチカラを定着させて強化する十健人(つなしけんと)、生物にチカラを流し込んであやつる村上球璃(むらかみたまり)など、独自の戦法でドリィに抗(あら)う幻気功使いたちは人類の救世主にも等しい存在であり、のちに熊野蓮も前述の三人に「先生」と慕われる女性から手解(てほど)きを受けて、幻気功使いとして覚醒する。なお、人類に仇(あだ)なす幻気功使いも存在しており、彼らとの戦いにも紙幅が割かれている。
登場人物・キャラクター
斑鳩 射馬 (いかるが いるま)
とある高校に通う1年生の男子。小柄な体型で、野球部ではショートを守っていた。どんなに絶望的な状況でも最後まであきらめない有言実行を信条にしており、チームのムードメーカー的存在。しかし、友人が傷つけられると感情がコントロールできなくなり、小学校時代に親友の松本を蹴り飛ばした上級生をバットで殴り、殺す寸前まで追い込んだことがある。「世界終末の日」に人間を溶かす「虫」から逃れるも、次いで出現した謎の生命体「ドリィ」に襲われた松本と、野球部のマネージャーで思い人の熊野を助けることができず、絶望を抱えたまま半年に渡って孤独なサバイバルを強いられていた。そんな中、街を徘徊(はいかい)する熊野を見かけて気力を取り戻し、他者の心に潜る能力を持つ少女、馬韮悠(ばにらゆう)の導きで武装集団「T&E(トライアルアンドエラー)」と合流。松本の仇(かたき)である「二頭身」のドリィに捨て身の攻撃を敢行し、自らにドリィのバリアを透過する特性が備わっていることに気づく。その後、「ヌイグルミ」と呼ばれる強力なドリィとの戦いを経て「黒い衝動」が覚醒。怒りや憎しみを感じた時、生命の危機に陥った時などに正気と引き換えに身体能力が向上し、欠損した四肢が生えてくるほどの超再生力が発現することが判明した。のちにドリィが宿す武器型の生物を使用できることも明らかになる。
熊野 蓮 (くまの れん)
射馬と同じ高校に通う先輩の女子。野球部のマネージャーを務めていた。明るい性格で、射馬にもらった花の意匠のヘアピンを身につけている。「世界終末の日」にドリィに襲われ、射馬と生き別れになってしまう。半年後、謎の生命体「ドリィ」が引き連れている動物の群れに混じって街中を歩いている際に発見され、生存が確認された。射馬と別れてからは、夢現の状態に陥っていたので憶えていないと振り返っている。「人形の住みか(ドールハウス)」に連行されて囚われていたが、「幻気功(ファンタスマ)」という不思議な力を持つ青年、行方に救出され、彼が「先生」と呼ぶ女性に師事することになった。「幻気功使い」としての潜在能力は一門でも随一で、修行によって物質にチカラを流し込んで作ったゴーレムを操作する「傀儡創造(ゴーレムメーカー)」を修得した。市街地でドリィと交戦した際には、ビルを丸ごとゴーレム化してドリィを一掃している。射馬の生存は彼と共闘した行方から聞かされており、いずれ射馬といっしょに戦って未来を変えたいと望んでいる。また、一門のあいだでは行方が考案した「レンレン」という愛称で呼ばれている。
クレジット
- 原作
書誌情報
ドリィ キルキル 11巻 講談社〈講談社コミックス〉
第1巻
(2015-01-09発行、 978-4063952995)
第2巻
(2015-05-08発行、 978-4063953879)
第3巻
(2015-08-07発行、 978-4063954531)
第4巻
(2015-11-09発行、 978-4063955279)
第5巻
(2016-03-09発行、 978-4063956122)
第6巻
(2016-06-09発行、 978-4063956849)
第7巻
(2016-09-09発行、 978-4063957532)
第8巻
(2017-01-06発行、 978-4063958188)
第9巻
(2017-04-07発行、 978-4063959123)
第10巻
(2017-07-07発行、 978-4065100417)
第11巻
(2017-11-09発行、 978-4065102077)