あらすじ
第1巻
日系ハーフの少女の芹沢ミコは、祖父から受け継いだ「霊視」の力を使い、「ニンゲンの探偵」になるべくロンドンのエアロン探偵事務所を訪れた。探偵事務所のヴィル・エアロンに事情を話したミコは、そこで依頼をするために訪れた妖精のリリと出会う。リリの依頼は、ブリッジ通りの殺人事件の犯人と疑われている妹、ルルの無実を証明してほしいというものだった。ミコはヴィルの制止を振り切って捜査を開始するが、やる気が空回りして失敗し、打ちひしがれてしまう。しかし、ヴィルから探偵の在り方を聞いたミコは心機一転、身の丈に合わない行動を止めて、人に寄り添う存在になろうと決意する。そして、そんなミコの姿勢を見たミラベルと男爵はその決意を認め、事件の手がかりの眠る場所へとミコを導く。
登場人物・キャラクター
芹沢 ミコ (せりざわ みこ)
祖父である芹沢平八から「ニンゲンの探偵」の名を受け継いだ、日系ハーフの少女。年齢は14歳。とび色の髪をショートカットにして、大きなリボンを身につけている。祖父の武勇伝を聞いて育ったため、ニンゲンの探偵になるべく、ロンドンにやって来た。祖父と同じく人外を見通す能力「霊視(ファントム・ヴィジョン)」を持つ。何に対しても好奇心旺盛な性格で、行動力がある。当初は探偵になろうと意気込んでいたが、性格が仇となって他人のプライベートを侵害していると、周囲から叱責されることとなった。その後は自分の配慮の足りない行動を反省し、人に寄り添う存在になろうと努力するようになる。
ヴィル・エアロン
エアロン探偵事務所の所長を務める男性。髪をオールバックにし、メガネをかけている。かつては芹沢ミコの祖父の芹沢平八といっしょに仕事をしており、平八から孫娘のミコを雇うように頼まれた。ヴィル・エアロン自身は人外を見通す能力「霊視(ファントム・ヴィジョン)」を持たないため、平八がいなくなってからは人外の依頼を受けていなかったが、ミコが来たことで再び人外の依頼にかかわっていく。ひねくれ者だが、ミコが落ち込んでいた際には探偵としてのヴィル自身の矜持を説き、彼女の指針となった。日本製のインスタントラーメンが好物で、時々平八に頼んで取り寄せてもらっている。
ワトキン
エアロン探偵事務所に勤める青年。ゴーグルを付け、白衣をまとっている。化学分析が得意で、ヴィル・エアロンの助手として、現場に残った遺留品を分析して調査を手助けしている。人外が見えないため、人外関係の捜査では蚊帳の外にいることが多かったが、芹沢平八からもらった「ファントムゴーグル」を使うことで人外の痕跡を発見することができるようになった。ファントムゴーグルを使うためには「霊視(ファントム・ヴィジョン)」を使える人間の協力が必要なため、平八がいなくなってからは使うことができずにいたが、芹沢ミコが来てからは、彼女の力を借りることで再びファントムゴーグルを使えるようになった。
フェナー・クロイツ
ロンドン警察(ニュースコットランドヤード)の警視監を務める男性。黒い髪を長く伸ばした上品で美しい容姿の青年だが、周囲には「笑顔のまま人を殺していそう」と評されるほど、非常にうさんくさい雰囲気を漂わせている。
男爵 (ばろん)
ブリッジ通りに住み着いている、尻尾が二本生えた黒猫。人語を理解し、流暢にしゃべる。芹沢ミコの祖父である芹沢平八のことを知っており、「人外の審判者」としての立場からミコを見極めようとする。
ミラベル
ブリッジ通りの占い師で、ミステリアスな雰囲気を漂わせた美人。ブリッジ通りの殺人事件の目撃者の一人であり、調査に来た芹沢ミコに目撃情報を伝えた。男爵とは知り合いで、「人外の裁定者」の役割を担っている。
ルル
青い羽を生やした妖精の子供で、リリの妹。人間に警戒心を持つ妖精の子供たちの中では珍しく、人間に強い興味を示す変わり者で、人間の町をたびたび訪れていた。ブリッジ通りの殺人事件のあと、血まみれの姿で帰ってきたのを仲間の妖精に目撃され、人を殺したと疑われている。そのため、長老によって檻に閉じ込められることとなった。
リリ
黄色の羽を生やした妖精の子供で、ルルの姉。ウエーブのかかったライトイエローの髪を長く伸ばし、髪と同じ色の衣装をまとっている。妖精であるため、体は大人の手のひらに乗る程度の大きさしかない。殺人事件の犯人と疑われたルルを助けるために奔走し、「ニンゲンの探偵」を名乗った芹沢ミコに協力をお願いする。妖精の大人たちから人間は怖いものと教わっているため、人間に対しては警戒心が強く、ふだんは妖精しか入れない森の奥で穏やかに生活している。趣味は株取引。
ヒルダ・ホワイトフィールド
マンチェスター郊外出身の女性で、年齢は25歳。ブリッジ通りの殺人事件で元交際相手のハンクに襲撃され、もみ合いの末にハンクを殺害。その後、逮捕されて事情聴取されることとなった。警察の事情聴取には協力的で、周囲の目撃情報から正当防衛と目されているが、事件の不可解な点に関しては黙秘している。また人外が見えている素振りを見せている。
ハンク
ブリッジ通りの殺人事件で殺された男性。ヒルダ・ホワイトフィールドと極短期間だけ付き合っていたが、ふられた腹いせにヒルダに対してストーカー行為を行っていた。ストーカー行為がエスカレートして散歩中のヒルダを襲撃するが、もみ合いとなった末に凶器で腹部を刺されて失血死した。だが、これはヒルダの正当防衛だと目されている。銃の腕前はお世辞にも褒められたものではなく、ヒルダに対しても二発発砲したが、かすっただけにとどまっている。また、ヒルダの弱みをにぎって無理やり付き合おうとしたり、問題行為の多さから家族からもその存在を疎まれていたりと、性格にかなり難がある人物だった。
芹沢 平八 (せりざわ へいはち)
ロンドンで「ニンゲンの探偵」として活躍していた男性。老齢に差し掛かっており、現在は「霊視」の力を受け継いだ孫娘の芹沢ミコを、後継者としてロンドンに送り出した。現役時代はヴィル・エアロンと共に仕事をしていた。
その他キーワード
ブリッジ通りの殺人事件 (ぶりっじどおりのさつじんじけん)
ブリッジ通りで起きた殺人事件。時刻は早朝、散歩をしていたヒルダ・ホワイトフィールドをヒルダの元交際相手のハンクが襲撃。ハンクは拳銃を二発発砲するがヒルダにかすっただけにとどまり、二発目を撃った直後に拳銃は不具合を起こして使用不可能になった。その後、ハンクはナイフに持ち替えてヒルダに襲い掛かったが、もみ合いの末に逆に腹部にナイフを刺されて死亡した。死因は刺し傷からの失血死。ヒルダは現場で逮捕されたが、複数の目撃証言から正当防衛だと判断されている。ただし、ハンクの撃った銃弾が一つ行方不明になって見つからず、ハンクを殺したとされる凶器も現場から消え失せるなど、不可解な点が存在する。ヒルダは自身がハンクを殺したと自供しているが、多くを語らず、事件の全貌は不明となっている。また事件直後、妖精のルルが血まみれで発見されている。
人外 (あなざー)
人ならざる者たち。妖精やワイバーンなどさまざまな種族が存在するが、ふつうの人間には見ることができない。ロンドンには人知れず多くの人外たちが暮らしている。
クレジット
- 原作
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佐雪 さゆな