勇者隊の討伐作戦と魔道士隊の召喚作戦
本作の舞台「魔勢界」は、世界各地にいる47体の魔王と、その上に君臨する大魔王に支配されている。滅亡寸前の人類は47人の「勇者」を育て上げて反撃を開始。勇者たちは、人類最後の希望として47の魔王城を目指した。本作の主人公、第11勇者ハロゥもその一人である。しかし半年後、各地から次々と勇者敗退の知らせが入る。ハロゥは覚悟を決めて第11魔王ジャチの城に乗り込むが、力の差は歴然だった。城から吹き飛ばされたハロゥは、一命をとりとめるも右腕を失う。川辺で意識を取り戻したハロゥは、魔道士である兄のゼイビィと遭遇。じつは、ゼイビィたち魔道士隊は、勇者隊の戦いの裏でもう一つの計画を進めていた。それは星全体を覆うほどの巨大な召喚魔法陣で、別の世界を丸ごと召喚し、その世界の人々に助けてもらうというものだった。ゼイビィたちは別世界を召喚することに成功するが、その世界の人類もまた「天敵」ともいえる存在により滅亡の危機にあり、「魔勢界」の人類に助けを求めていた。
13個の融合した世界と13種の天敵
ハロゥとゼイビィが出会った別世界の人類は「機律界」の人々だった。「機律界」では機械生命体が暴走の末に増殖し、人類の根絶を図っているという。しかし、「魔勢界」と繋がったのは「機律界」だけではなかった。各世界の人類は、偶然にも別世界に助けを求める行動をしていたのだ。その結果、謎の寄生生物により滅亡の危機にある「寄生界」、巨人たちに蹂躙(じゅうりん)されている「巨人界」、宇宙人の侵略を受けている「天鬼界」など、12の世界の難民たちが、それぞれの天敵と一緒に「魔勢界」になだれ込んできたのだ。どの世界の天敵たちも圧倒的に強かった。例えば、「機律界」のロボットは、「魔勢界」の魔法攻撃に初めは戸惑っていたが、すぐに対策を立てるため、まったく通用しなくなるのだ。13世界の人類たちは団結するため会議を持つが、とても勝ち目があるとは思えなかった。
天敵同士の潰し合いを画策する人類
13世界の人類が絶望する中、ハロゥはある提案をする。それは「天敵同士を互いに争わせる」というアイデアだった。「機律界」を召喚した際、ハロゥの行動がきっかけとなり、偶然にも魔族とロボットの戦いが起きたという事実があった。「機律界」の軍事指揮官、ガラスプ少将は、「強大な敵の動きをコントロールするには、多大な犠牲を覚悟する必要がある」としながらも、ハロゥの案の可能性を認めた。そして後日、人類の作戦本部に向かってくる巨人族の群れに「ハロゥ作戦」が実行される。作戦の志願者たちは、巨人族の前に出て降伏の意志を伝え、「新虐界」の天敵、新人類の居住区への誘導を試みた。巨人たちは、面白半分に人間を殺しながらも、新人類の居住区に移動し、彼らと衝突。とりあえず、天敵同士の争いを起こすことに成功する。こうして無力な人類は、多大な犠牲を払いながら、生き残りの道を模索していくことになる。
登場人物・キャラクター
ハロゥ
魔族により支配されている魔勢界の男性。短髪でがっしりした体格で力も強い。背中に「勇気の剣」を携える。魔道士の兄、ゼイビィがいる。血の滲むような鍛錬の末に、47の勇者のうち第11勇者となる。真面目で融通が利かないところがあるが、誰にも負けない芯の強さがある。無謀な性格も欠点。第11魔王ジャチと戦うがまったく通用せず、吹き飛ばされるが命は奪われなかった。戦闘の際、右腕を失い「勇気の剣」も折れてしまう。13の世界が融合し、13の天敵が出現してからは、敵の同士討ちを狙う作戦を提案する。
ゼイビィ
魔族により支配されている魔勢界の男性。ハロゥの兄。水色の長髪が特徴で、杖を携帯している。魔道士隊に所属し、世界各地をめぐり、別世界をまるごと召喚する巨大な魔法陣を描いていた。機転が利きリーダーシップも持ち合わせている。無謀な行動をする弟をたしなめることもしばしばある。
パネパネ
ハロゥの補助妖精。2~3等身で子犬ほどの大きさで、羽根があり空を飛ぶ。尖(とが)った耳、2本の触覚、豚鼻、デベソが特徴。肌はピンク色で、身につけているものは白いブリーフだけ。愚痴っぽくて怖がりだが、嗅覚に優れており、魔族の群れの接近にいち早く気づいたことがある。語尾に「~パネ」をつけるのが口癖。
クレジット
- 原作
- 構成
-
bose
書誌情報
バーサス 3巻 講談社〈シリウスKC〉
第1巻
(2023-04-07発行、 978-4065305782)
第2巻
(2023-11-09発行、 978-4065335222)
第3巻
(2024-05-09発行、 978-4065354483)