概要・あらすじ
「講談設計」の飲み会で、川奈つぐみは、高校時代に密かに想いを寄せていた鮎川樹と再会するものの、鮎川は車椅子生活を送る障がい者となっていた。鮎川に惹かれながらも、どこか戸惑いを隠せないつぐみだったが、懸命に仕事に向き合う鮎川の生き様に強く心を打たれ、自分の気持ちを抑えられなくなってしまう。恋愛はしないと決めていた鮎川は、つぐみの想いを受け止められずに目を背け続けるが、いつしか彼女に惹かれている自分に気付く。
つぐみは鮎川を少しでも支えようと必死になるが、想像を遥かに超えた鮎川の現実は、試練となってつぐみに襲いかかる。そんな折、鮎川の身の回りの世話をしているという長沢が出現。つぐみは看護師の資格を持った長沢に圧倒され、やがて心身ともに疲れ果ててしまう。
そんなつぐみを見た鮎川は、自分ではつぐみを幸せにできないと思い悩む。愛し合ってていながらも、一緒にいることで苦しむつぐみのために鮎川が出した結論は、つぐみをさらに追い込んでいく。
実写映画
登場人物・キャラクター
川奈 つぐみ (かわな つぐみ)
インテリアデザインを手がける会社「クランベリーズ」に勤務する26歳の女性。実家を離れて都会で一人暮らしをしている。高校時代、図書委員をしていたことがきっかけとなり、クラスは別だったが、図書室によく建築関係の本を借りに来ていた鮎川樹と親しくなった。その後は、鮎川のことを密かに気にしていたが、鮎川に彼女ができたことを知り、何の進展もないままに卒業し、現在に至っている。 仕事関係の飲み会で再開した鮎川が、車椅子生活を送っていることに衝撃を受けるが、激しい葛藤の末、鮎川への想いが再び溢れ出すことになる。しかし、自分が鮎川にとって役に立てる存在になれるかどうかを悩み続け、鮎川と関わることを両親にも大反対されてしまい、ついには心身ともに疲れ果ててしまう。 のちに西村楓と高木圭吾の2人に出会って家の建築に関わっていくうちに、鮎川との向き合い方だけでなく、生き方や考え方も大きく変わっていく。
鮎川 樹 (あゆかわ いつき)
一級建築士として「講談設計」に勤務する26歳の男性。大学生の時に交通事故で脊髄を損傷して歩けなくなり、それ以来、車椅子での生活を送っている。高校時代、クラスは別だったが図書委員だった川奈つぐみに、何かとちょっかいをかけていた。しかし友達以上の仲になることはなく、雪村美姫に告白されて付き合い始めたことも一因となって、その後つぐみとは疎遠になってしまう。 車椅子生活を送るうえで、周囲の人間にはできる限り負担をかけたくないと強く思っており、一生、恋愛はしないと心に決めていた。ところが、再会したつぐみに、少しずつ心を揺さぶられていく。しかし、自分とつぐみとの距離が縮まれば縮まるほど、彼女を苦しめているのではないか、という思いに囚われてしまう。 のちに是枝洋貴の想いを知り、つぐみのそばにいるのは、自分よりも是枝の方が相応しいのではないか、と思い悩む。
是枝 洋貴 (これえだ ひろたか)
川奈つぐみ、鮎川樹とクラスは違ったが、同学年で同じ高校に通っていた男性。鮎川樹の存在は知っていたが、話したことはなかった。現在は東京でシステムエンジニアの仕事をしている。高校時代、密かにつぐみに想いを寄せていたが、告白することはできなかった。つぐみと再会し、心の奥底に封印していた想いが再燃する。 つぐみの心が鮎川に向いていると知りながらも、全力でつぐみの迷いや不安を受け止め、支えようとしながら、少しずつアプローチをかけていく。鮎川よりも自分の方がつぐみを幸せにできると思っているが、心のどこかで、つぐみが鮎川を忘れることはないのではないか、という不安をずっと抱えている。
長沢 (ながさわ)
鮎川樹の身の回りの世話をしているヘルパーの女性。美人で気が強く、若いながらも介護への理解も深い。知識も豊富で、生活においては鮎川も全面的な信頼を寄せており、何かあれば相談を持ちかけている。かつて結婚していたが、夫とはうまくいかずに離婚する道を選んだ。看護師の資格を持ち、もともと鮎川が車椅子生活を送るきっかけとなった事故に遭った際、入院先の看護師として、治療のみならず精神面までもサポートしていた。 鮎川があきらめかけていた建築士の道を、もう一度目指すようにアドバイスした人物でもある。鮎川と頻繁に接するうち、少しずつ彼に惹かれ、やがて愛するようになる。
西村 楓 (にしむら かえで)
川奈つぐみの父親と同じ病院に入院している女性。進行性の重い病気を患っており、余命いくばくもない状態。しかし常に明るく振る舞い、車椅子生活を送りながらも気丈に闘病を続けている。病気になる前はエステティシャンをしており、たまたま食べに行ったジビエの店で出会った料理人の高木圭吾と恋に落ちる。自分のために何もかも犠牲にしてしまった高木に対し、何もできないことをもどかしく思っている。 高木と結婚して一軒家に住むことを夢見ているが、自分の余命を考えて、今後の人生をともに歩むことに対して二の足を踏んでいる。入院している病院で、川奈つぐみの父親を通して川奈つぐみと仲良くなる。いつか圭吾と一緒に住む家を建てるという夢を、つぐみに語り、つぐみに多大な影響を与える。
高木 圭吾 (たかぎ けいご)
狩猟を得意とし、それを活かしてジビエの店で料理人として働いている男性。もともとは客だった西村楓とは将来を誓い合った仲。楓のためなら自分のすべてを犠牲にしても構わないと思っており、それがかえって楓を苦しめている。強面でかなり無愛想だが、根はとても心優しく、いつも楓のことを最優先に考えている。自分の店を持つのが夢だったが、楓のためにすべてを諦めて彼女との結婚生活を望み、2人で暮らす家を建てることを考えている。 楓と川奈つぐみが仲良くなったため、少しずつつぐみと話をするようになる。
雪村 美姫 (ゆきむら みき)
川奈つぐみ、鮎川樹らとクラスは違ったが、同じ学年で同じ高校に通っていた女性。ずっと片想いをしていた鮎川に告白し、鮎川が事故に遭って脊髄を損傷するまで付き合っていた。車椅子生活を送ることになった鮎川の現実を受け入れることが難しくなり、別れる選択をする。その後もずっと鮎川のことを気にかけていたが、同窓会で鮎川に再会して気持ちの整理をする。 のちに別の男性と結婚して、鮎川とは別の道を歩む。
ナベ
鮎川樹が務めている「講談設計」に勤務する坊主頭の男性。鮎川とは気心が知れた仲であり、幾度も共同プロジェクトを手がけて強い信頼関係を築いている。公私ともに頼れる存在で、川奈つぐみのことも何かと心配して気遣ったりと、面倒見のいい性格である。鮎川が車椅子生活を送っている事情にも精通し、脊髄損傷に対する理解もある。
晴人 (はると)
バスケットボールで有名な帝南(ていなん)高校に通う男子。バスケットボール部に所属。鮎川樹が仕事で、バリアフリー改装を担当することになった家に住んでいる。子供の頃から仲が良かった舞花と、高校生になってから付き合い始める。しかし、鮎川と同様に脊椎を損傷し、車椅子生活を余儀なくされてからは、ずっと舞花を遠ざけていた。 自分が障がい者になったことを受け入れられず、長い間苦しんだ。鮎川との出会いによって少しずつ現実を受け入れていき、車椅子バスケットボールと出会う。
舞花 (まいか)
晴人の彼女で高校生の女子。子供の頃からずっと晴人を想っていたが、なかなか振り向いてもらえなかった。高校生になって、やっと晴人に想いが通じ、念願の恋人同士となる。晴人が車椅子生活になっても、今までと変わらずそばにいよう、と決めている芯の強い女の子である。高校生だがとてもしっかりしており、その深く考えすぎないポジティブな性格は、鮎川樹との関係に悩む川奈つぐみの強い心の支えとなる。
鮎川樹の母親 (あゆかわいつきのははおや)
鮎川樹の母親。息子の樹が小学生の時に夫を亡くしたが、のちに別の男性と再婚した。気さくで明るく、人懐っこい性格で、川奈つぐみともすぐに打ち解けた。樹の将来のことを考えると不安になり、樹が自分には何も話してくれないこともあって、常にもどかしい気持ちを持つ。仮に誰かに苦労を背負わせることになったとしても、樹にだけは幸せになってもらいたいと強く願っている。
川奈つぐみの母親 (かわなつぐみのははおや)
川奈つぐみの母親。一人暮らしをしているつぐみのことを、いつも気にかけている優しい性格の女性。仕事や恋愛を応援してあげたいとは思っているが、つぐみの幸せを一番に考え、鮎川樹との交際に反対する。つぐみには、鮎川よりも是枝洋貴と付き合って、幸せな家庭を築いてほしい、と密かに思っている。
川奈つぐみの父親 (かわなつぐみのちちおや)
川奈つぐみの父親。口数が少なく、決して多くは語らない性格だが、つぐみのことをいつも心配している。つぐみと鮎川樹の付き合いに難色を示し、つぐみには苦労をかけたくないばかりに、あえて厳しい意見を言う。実は命に関わる病気を患っており、自分の余命はそう長くないと悟っている。
書誌情報
パーフェクトワールド 12巻 講談社〈KC KISS〉
第1巻
(2015-02-13発行、 978-4063409482)
第2巻
(2015-08-12発行、 978-4063409628)
第3巻
(2016-03-11発行、 978-4063409802)
第4巻
(2016-09-13発行、 978-4063409956)
第5巻
(2017-03-13発行、 978-4063980141)
第6巻
(2017-09-13発行、 978-4063980325)
第7巻
(2018-04-13発行、 978-4065111369)
第8巻
(2018-09-13発行、 978-4065131848)
第9巻
(2019-03-13発行、 978-4065148976)
第10巻
(2019-11-13発行、 978-4065176863)
第11巻
(2020-08-12発行、 978-4065205426)
第12巻
(2021-03-12発行、 978-4065227855)