あらすじ
つぐみと志貴の契約
成瀬つぐみは悪魔の一種であるインキュバスの父親と人間の母親のあいだに生まれた一人娘で、人間の精気(生命を活動させる素になる力)を吸いたくなる本能を、リヒトが調合した抑制剤でコントロールしながら生活をしていた。そんなある日、つぐみのクラスに悪魔祓い(エクソシスト)の染谷志貴が転入してくる。志貴はつぐみを自分と同じ悪魔祓いだとカンちがいし、友情を育もうとしていたが、優れた悪魔祓いの能力を持つ志貴は悪魔たちから恨みを抱かれており、奇襲攻撃を受けてしまう。つぐみはインキュバスの特殊能力を解放して志貴の窮地を救ったものの、特殊能力を使い過ぎて体力を激しく消耗し、さらに志貴を助けたことで悪魔の恨みを買ってしまう。こうしてつぐみは悪魔にあやつられた人間たちに襲われるが、そんなつぐみを今度は志貴が助け、彼女に自分と契約をしようと持ち掛ける。志貴は自らの精気を定期的に吸わせる代わりに、自分が死ぬまで護衛するようにつぐみに命ずる。つぐみはなぜか志貴の一方的な要求に抗えず、そのまま契約してしまう。
志貴の秘密を知っていくつぐみ
成瀬つぐみは悪魔祓い(エクソシスト)の染谷志貴と契約したことで、一つ屋根の下で暮らすことになった。その中でつぐみは、二重人格の嫌な奴だと思っていた志貴が、悪魔に襲われる落ち着かない日々の連続で、孤独な生活を送っていることを知る。しかし、つぐみは志貴を護衛する気になれず、契約を破棄したい気持ちから、別の人間の精気(生命を活動させる素になる力)を吸おうと画策する。だがそれは失敗に終わり、つぐみは当面のあいだは、志貴と契約を続けていくことにする。つぐみは志貴の仕事に同行していくうちに、不器用ながらも人を思いやる優しい心の持ち主なのだと気づく。一方の志貴もつぐみに心を開き始め、なぜ自分がつぐみと契約を結んだのか、その理由を明らかにする。
惹かれ合う二人とリヒトの企み
成瀬つぐみと悪魔祓い(エクソシスト)の染谷志貴は、リヒトの魔界のアイテムを発動させてしまうミスや、志貴の仕事を通して絆を深めていく。最初はあくまでつぐみが精気(生命を活動させる素になる力)を吸うために行うキスだったが、二人はその行為のたびに、お互いを意識するようになっていく。そんな中、つぐみはリヒトから契約破棄についての情報を得たからと言われ、保健室へと向かう。しかし、そこでリヒトから契約を破棄する方法はなかったと告げられる。しばらくこの状況のままなのかと落ち込むつぐみに対して、リヒトは冷たい言葉で突き放す。リヒトは人間として生きたい気持ちの強いつぐみに協調するフリをしながら、実は立派な悪魔のインキュバスとして覚醒してほしいと願っていたのだ。これまで信頼していたリヒトから裏切られたつぐみは、大いに落ち込む。そんなつぐみを心配した志貴は、彼女を温泉旅行に連れ出すが、その旅館では、不可解な出来事が相次ぐのだった。
悪夢を運ぶ夢魔「ナイトメア」と対峙する志貴
染谷志貴は、ずっと追っていた悪夢を運ぶ夢魔「ナイトメア」の情報をつかむ。しかし、成瀬つぐみを巻き込みたくない気持ちから、志貴は一人でナイトメアに立ち向かうことにする。こうして志貴が自宅を離れたスキに、リヒトはつぐみに接近を図る。リヒトは養護教諭のフリをするのは辞めて、悪魔として生きていくことを決意し、つぐみに結婚してほしいと告げる。リヒトになんらかの企みがあることに気づいたつぐみは、彼の申し出を拒否する。そんな中、つぐみのスマートフォンに、志貴からナイトメアとの取り引きに失敗したとの電話が入り、そのまま志貴は行方不明になってしまう。
美月の志貴への復讐
成瀬つぐみの通う高校に転校してきたミステリアスな美少女の久瀬美月は、つぐみと友好的なフリをしつつ、彼女を傷つける言動を繰り返していた。そしてつぐみを精神的に追い込んだ美月は、自分こそが染谷志貴が追っている、悪夢を運ぶ夢魔「ナイトメア」なのだと告げる。美月はつぐみの命を狙うが、それは双子の兄である志貴への復讐でもあった。悪魔祓い(エクソシスト)の家系に生まれながらも、志貴のせいで悪魔と契約するほどの闇を抱えてしまった美月は、彼の大切なものを奪おうと、つぐみに襲い掛かる。
登場人物・キャラクター
成瀬 つぐみ (なるせ つぐみ)
とある高校に通っている女子で、年齢は16歳。悪魔の一種であるインキュバスの父親と、人間の母親のあいだに生まれた。人間として生きたい気持ちが強く、インキュバスとして成長するにあたって必要な精気(生命を活動させる素になる力)を人間から吸わなくてもいいように、リヒトから処方された薬を服用して生活していた。転校生で悪魔祓い(エクソシスト)の染谷志貴と出会い、彼の罠にはめられるかたちで「志貴の精気を吸わせてもらう代わりに、志貴が死ぬまで護衛する」という契約を一方的に結ばされてしまう。最初は志貴に対して敵対心をあらわにしていたが、同居生活やキスをするたびに、次第に異性として意識するようになっていく。小学生の時に精気を吸いたい衝動が制御できなくなり、近くにいた同級生を襲ってしまった過去がトラウマになっており、人と深く付き合うことを苦手としている。両親からは「つーちゃん」と呼ばれ、溺愛されている。
染谷 志貴 (そめたに しき)
成瀬つぐみが通う高校に転入してきた男子。悪魔祓い(エクソシスト)の家系に生まれ、悪魔祓いとしてつぐみたちが住む地域を担当することになり、近くに引っ越しをしてきたことで知り合いになる。つぐみも自分と同じ悪魔祓いだとカンちがいしているフリをしていたが、実際にはインキュバスであることを見抜いており、染谷志貴自身の護衛役として契約することを目的に接近していた。つぐみと「自らの精気(生命を活動させる素になる力)を吸わせる代わりに、自分が死ぬまで護衛してもらう」という契約を結び、同居生活を開始する。表向きは愛想のいい好青年だが、冷酷な合理主義者という裏の顔を持つ二重人格者。ただし、不器用ながらも人を思う優しい一面もある。最初はあくまで自分の下僕としてつぐみを利用しようとしたが、同居生活やキスをするたびに、次第に異性として意識するようになっていく。悪魔祓いとして高い能力を持っていることから、これまで退治した多くの悪魔から強い恨みを抱かれている。悪夢を運ぶ夢魔「ナイトメア」を探しているが、その理由は行方不明の双子の妹である久瀬美月が、ナイトメアと契約している可能性が高いため。
リヒト
成瀬つぐみが通う高校で、養護教諭を務めている青年。つぐみが悪魔の一種であるインキュバスの父親と、人間の母親のあいだに生まれた子供である秘密を知っている。また、できるだけ生きている人間の精気(生命を活動させる素になる力)を吸いたくないつぐみに対して、人間を襲いたくなる本能を抑制する薬を調合するなど、医学的な知識に長けている。非常に整ったルックスの持ち主で、見た目は人間とまったく変わらないが、その正体は悪魔。同じ悪魔であるつぐみをかわいがっており、彼女にとって初恋の相手でもある。しかし、つぐみに寄り添っていたのはインキュバスとして覚醒してほしいだけで、つぐみが染谷志貴と親しくなって自分から離れていく姿を見て、次第に敵対するようになっていく。
久瀬 美月 (くぜ みつき)
街中で魔物に襲われていたところを、成瀬つぐみに助けられた少女。その後、つぐみが通う高校に転入し、同じクラスに在籍する。転校して早々、つぐみをクラスで孤立させようと画策したり、染谷志貴を奪おうとしたりと嫌がらせを行うようになる。外見は誰もが認める美少女で、男子生徒からの人気が高い。実は志貴の双子の妹で、悪魔祓い(エクソシスト)の家系に生まれた。もとは悪魔祓いとして志貴とタッグを組んでいたが、心の闇につけ込まれ、悪夢を運ぶ夢魔「ナイトメア」と契約を結んだという過去がある。志貴に強い恨みを抱いており、彼にショックを与えるために、つぐみの命を狙う。
和泉 沙和 (いずみ さわ)
成瀬つぐみと同じ高校に通う女子。つぐみとはクラスメートで親しく、学校内では行動を共にしている。つぐみが悪魔の一種であるインキュバスの血を引いていることは知らず、ごくふつうに友達として友情を育んでいる。つぐみと染谷志貴は親戚同士だと誤解しており、二人が親しくしていても気に留めていない。いつも笑顔を絶やさないマイペースな人物で、やや天然気味な一面を持つ。
その他キーワード
インキュバス
生きている人間の精気(生命を活動させる素になる力)を吸う悪魔の一種。体が成長するにつれて、多くの精気を欲するようになる。ふつうの食べ物からでも精気を補うことはできるが、人間を襲いたくなる本能を持つ。また、生命力の強い人物の精気をおいしいと感じるなど、独自の味覚を持っている。自らの精気を放出することで、一時的に周囲の者が抱く欲望をコントロール不能にする技や、特定の相手を自らの虜にする「魅了(チャーム)」が使えるなど、特殊能力も使える。作中では成瀬つぐみの父親がインキュバスで、母親は人間の女性である。つぐみにもインキュバス特有の「人間を襲いたくなる本能」が受け継がれており、特殊能力も使うことができる。