概要・あらすじ
医大生の羽根木栞は、同じく医者の卵である恋人の辻堂一也と幸せな毎日を送っていた。しかし羽根木栞の父親が病に倒れ、借金の保証人になっていたことから、実家の羽根木医院は破産。一也の実家も、破産した栞との結婚に難色を示したため、栞は大学を辞め、1人で傷心旅行に出かける。一也の実家が神奈川県の三浦半島にあったことから、行先は「別の三浦半島」がある愛媛県宇和島市に決定。
そこで栞は真珠の養殖業を営む白藤巽と出会う。真珠に魅せられた栞は、真珠に関わる仕事をしようと心に決めるのだった。
登場人物・キャラクター
羽根木 栞 (はねき しおり)
医大の2年生でふんわりとしたロングヘアの美女。実家は長野県松本市で三代続いた医者で、地元では名士の家柄。恋人の辻堂一也と大学卒業と同時に結婚する予定だったが、羽根木栞の父親が突然倒れたことで運命が急転。すべてを失ってしまう。そんな折に訪れた傷心旅行先の宇和島で出会った真珠の美しさと、白藤巽に魅せられて、真珠に関わって生きていくことを決める。
辻堂 一也 (つじどう かずや)
医者の次男坊。医者の卵。眼鏡をかけた知的でスマートな若い男性。羽根木栞の恋人で、栞との結婚を考えている。しかし栞の実家が破産し、栞が無一文になった。そのため、家族は結婚に難色を示すようになり、大学教授の娘である真理と見合いをさせられる。
羽根木栞の父親 (はねきしおりのちちおや)
長野県松本市の羽根木医院の院長。羽根木栞の父親。苦労知らずのお坊ちゃん育ちで、栞には何でも買い与えている。ある日突如倒れ、しかも借金の連帯保証人になっていたことで、すべての財産を失ってしまう。
白藤 巽 (しらふじ たつみ)
愛媛県宇和島市の三浦半島で真珠の養殖をしている男性。背が高く端麗な顔立ちをしているが、愛想がなく冷たい性格。いい大学を卒業し、将来有望な建築家だったが、父親の急死により真珠の仕事を継いでいる。東京の建築事務所に務めている時には、鷹取千冬と恋人同士だった。羽根木栞が真珠に興味を示したため、栞となら新しい生活を送ることができるのでは、と考えている。
美由紀 (みゆき)
ポニーテールの若く純朴な女性。愛媛県宇和島市の三浦半島に住んでいる。白藤巽の真珠の仕事を手伝っており、宇和島に旅行にやって来た羽根木栞の面倒を見る。真珠の買い付けのため、よく白藤のもとを訪れる的場龍之介に、淡い恋心を抱いている。
的場 龍之介 (まとば りゅうのすけ)
有名宝石店「若月真珠」の営業マン。将来の後継者候補でもある。愛媛県宇和島市の三浦半島には、真珠の買い付けによく訪れており、白藤巽や美由紀とも親しい。都会的なハンサムで気さくな性格なため、美由紀に好かれている。しかし、的場龍之介は羽根木栞に一目惚れしている。
真理 (まり)
辻堂一也の見合い相手。大学教授の娘で、和服の似合うしとやかな美人。破産した羽根木栞より相応しい、と一也の両親が紹介した。栞に対して可哀想と同情を示し、その言動が栞を不愉快にさせた。だが栞は、意図せずに、上から目線で他人を憐れむ真理の姿勢が、少し前の自分にそっくりであることを悟る。
水巻 青磁 (みずまき せいじ)
有名宝石店「若月真珠」の専務取締役。的場龍之介のお目付け役も務める男性。若くて冷たい美貌のイケメン。誰もが美人だと認めている羽根木栞に対しても、特に美人とは意識しておらず、龍之介が彼女に入れ込んでいるのも、気に入らないでいる。郷原武史とは同じ大学の出身。たまたま「若月真珠」を訪れていた栞を彼に紹介し、2人が知り合うきっかけを作る。
白藤 要 (しらふじ かなめ)
白藤巽と羽根木栞の娘。容貌が巽に似ている。仕事で留守がちにする栞より、いつも家にいる巽の方に懐いている。母親の栞のことも好きだが、どう接していいか解らなくなっている。
鷹取 総一郎 (たかとり そういちろう)
一流建築家の壮年男性。白藤巽が以前に勤めていた設計事務所の所長を務める。巽を東京のパーティーに招待したことで、羽根木栞が東京で真珠の仕事をするきっかけを作った。一方で、これにより鷹取千冬と巽が再会することにもなってしまう。
鷹取 千冬 (たかとり ちふゆ)
鷹取総一郎の妻。モデルのように美人でスタイルが良く、知的で都会的な女性。以前は白藤巽と付き合っていた。お金が目的で鷹取と結婚したものの、今でも一番のお気に入りは巽。巽と寄りを戻したいと考えている。かつてパーティーの女王として君臨していた頃は、取り巻きに「千冬女王」と呼ばれており、未だに陰でそう呼ばれている。
鷹取 竜太 (たかとり りゅうた)
鷹取総一郎と鷹取千冬の息子。千冬は総一郎と白藤巽と、同時期に関係持っていた時期があったため、鷹取竜太は巽との子供だと公言している。実際に竜太は巽によく似ているが、真相は不明。仕事で鷹取家を訪れた羽根木栞が竜太を見て、巽とあまりにも似ているので驚く一幕もある。
郷原 武史 (ごうはら たけふみ)
神戸で真珠の輸出をしている男性。関西屈指の財閥の息子で、男らしいイケメン。宝石店「若月真珠」で宝石を見ていた羽根木栞に一目惚れし、栞が自分の会社を起こして事業を展開するための手助けをする。彼女に資金を貸す担保として身体を要求するが、できれば栞と結婚したいと本気で考えている。水巻青磁とは同じ大学の出身で親しい。
梅田 勝一 (うめだ しょういち)
神戸では五本の指に入ると言われる真珠加工会社「梅田真珠」の社長。好色で太った男性。郷原武史には「三代目バカ社長」と呼ばれている。「梅田真珠」は梅田勝一の代になると、他の事業に手を出したり、会社の金を株に流用したりして大損している。
立花 (たちばな)
梅田勝一の妻だが、離婚を考えている。羽根木栞の学生時代の知り合いの女性の叔母という関係から、偶然栞と接触を持つ。真珠加工会社「梅田真珠」の内情が火の車であることを、栞に告げる。
長谷川 (はせがわ)
真珠加工会社「梅田真珠」の専務を務める初老の男性。白髪痩身で禿げており、眼鏡をかけた神経質そうな外見。「梅田真珠」が羽根木栞に買収され、「羽根木真珠」になってからは副社長に任命。事実上の社長として経営に腕を振るう。当初は栞をただの若い女だと、見くびるところもあったが、徐々に彼女の才覚を認めていくようになる。
佐々木 (ささき)
真珠加工会社「梅田真珠」のデザイナーを務める若い男性。やや太った冴えない風貌だが、実直な性格。「梅田真珠」が羽根木栞に買収され、「羽根木真珠」になってからは、栞の要望を受け、若い女性向けのカジュアルなピアスやネックレス、ティアラなどのデザインを手掛けるようになる。
ジャン・クロケ (じゃんくろけ)
女性服の有名デザイナー。金髪の若い男性。美女好きで、羽根木栞から食事に誘われ、快諾する。この時、バロックを使った真珠アクセサリーシリーズ「パール・パーティ」を、ジャン・クロケのコレクションで使ってほしい、と話を持ちかけられる。しかし、これには難色を示し、代わりに別のジュエリーデザイナーを紹介する。最終的には「パールパーティ」を自身のコレクションで採用し、世界的なムーブメントを起こすきっかけとなった。
結城 (ゆうき)
「結城グループ」の二代目社長で初老の男性。ややふっくらした体形で、ロマンチストの真面目な紳士。羽根木栞とは、好きな芸能人が同じという縁で知り合った。六本木に新しく建てるホテルのオーナーでもあり、そこに「羽根木真珠」を出店させる約束をする。
草薙 (くさなぎ)
「郷原財閥」の本宅の使用人の息子。痩身でぎょろりとした大きな目の若い男性。非常に頭が切れる。郷原武史と同じ年齢で、同じ大学出身の武史を意識している。現在は無職だが、国税局に勤めていた経験があり、違法ギリギリの汚れ仕事を得意としている。
四ノ宮 文緒 (しのみや ふみお)
郷原武史とかつて相思相愛だった女性で故人。はかなげでしとやかな美人。草薙によれば、羽根木栞とは何もかもが正反対らしい。栞は彼女の話題を嫌がり、郷原も話さないようにしている。
郷原 武士 (ごうはら たけし)
羽根木栞と郷原武史の息子。武史の長兄は「郷原財閥」の当主だが子供がなく、次兄は出家して世捨て人になってしまったため、「郷原財閥」の唯一の跡取りとなる。
集団・組織
若月真珠 (わかつきしんじゅ)
業界トップの有名宝石店。全国の有名施設や結婚式場と強い結びつきを持ち、他の店が入りこむ隙がない。的場龍之介は後継者候補であり、水巻青磁がそのお目付け役を務めている。「結城グループ」が六本木に建設するホテルのアーケードでは、「羽根木真珠」と店舗を並べることとなる。
羽根木真珠 (はねきしんじゅ)
羽根木栞が経営する真珠加工会社。真珠加工会社「梅田真珠」を買収したもの。それまでの真珠のイメージを変えて、若い女性がカジュアルに身に付けられるデザインや、バロックを使ったシリーズ「パール・パーティ」を立ち上げるなど、革新的な事業を展開する。
場所
羽根木医院 (はねきいいん)
長野県松本市で三代続いた医院。羽根木栞の生まれ育った家。先祖が金に飽かして作った洋館で、今でも観光客が写真を撮っていくほど豪奢。羽根木栞の父親が全財産を失った際に、この洋館も人手に渡ることになる。栞はこの洋館が気に入っており、のちに出会った郷原武史が住む神戸の洋館に似た部分を見出し、懐かしさを感じる。
その他キーワード
パール・パーティ (ぱーるぱーてぃ)
真珠のブランドおよびシリーズ商品名。羽根木栞が、真珠加工会社「羽根木真珠」で新しく立ち上げた。決まりきったフォーマルなデザインが多い真珠を、バロックを使ってカジュアルにした商品が主体となる。紆余曲折の末にジャン・クロケのコレクションで使われ、セレブの間でブームになる。
バロック
形が崩れたり、2つつながったりしたクズ真珠のこと。宝石とは見なされず、価値が低い。しかし正真正銘の真珠で、中には丸い真珠より巻きが美しいものもある。羽根木栞は、このバロックに価値を持たせるため、「パール・パーティ」を立ち上げる。