ピアノのムシ

ピアノのムシ

荒川三喜夫の代表作。前後編による1話完結形式が基本。舞台は現代の日本で、性格に難はあるが、腕だけは超一流のピアノ調律師、蛭田敦士が主人公。依頼品のピアノに隠された事情を暴き、調律を通じて問題を解決するヒューマンストーリー。芳文社「週刊漫画TIMES」2012年8月31日号、9月7日号掲載の読み切り版『オトノムシ』を経て、同誌2013年3月15日号から2018年6月8日号まで連載。

正式名称
ピアノのムシ
ふりがな
ぴあののむし
作者
ジャンル
ピアノ
 
ヒューマンドラマ
レーベル
芳文社コミックス(芳文社)
巻数
全13巻完結
関連商品
Amazon 楽天

ピアノ調律師の仕事をリアルに描く

本作で描かれるのは、ピアノの調律。こじんまりとした調律所の社員、蛭田が、修理不可能と思える古いピアノや原因不明の不調を抱えたピアノなど、どんなピアノでも天才的な手腕で蘇らせる様子をリアルに描く。音の高さを調節する「調律」、弾き心地を調整する「整調」、音量や音色を整える「整音」という、ピアノ調律の三位一体といわれる三つの作業を丁寧に描いている点が特徴である。また、ピアノの基本的な構造はもちろん、製造番号からわかる製造年月日と型番ランク、鍵盤の高さを調節する紙パンチング、ハンマーに刻まれる弦溝など、専門的な知識も詳細に説明されている。

ピアノをめぐる人間ドラマが魅力

ある老女が所有する、プランスの名器プレイエルの修理に向かった際、蛭田は音を聞いただけで、ピアノハンマーの一つが交換されていることを看破する。素人の息子が取り寄せた高価なハンマーがまがい品だったため、ピアノの音が台無しになっていたのだ。蛭田が修理したピアノを弾いた老女は、購入当時と同じく軽快で雄大な響きとともに、亡き夫との大切な思い出を蘇らせる。本作の魅力の一つは、ピアノによって明らかになる真実と、そのピアノをめぐって繰り広げられる人間ドラマである。

悪質な調律師を打ち負かす

蛭田は「調律師と詐欺師は紙一重」だという。口は悪いが、ピアノの状態を正確に把握して修復を行うのが蛭田である。しかし中には、利益のためにわざとピアノを故障させる者がいる。また、大手ピアノメーカーのアマギのある若手社員は、調律はするが修理はできない。ピアノが古いことを不調の理由にして、新しいピアノを買わせようとする。蛭田は、皮肉と嫌味、時にはブラフやトラップを使って、そういった相手を打ち負かしていく。

登場人物・キャラクター

蛭田 敦士 (ひるた あつし)

巽ピアノ調律所に勤務する天才ピアノ調律師の男性。ボサボサ頭と無精髭が特徴。趣味はプロレス観戦。口が悪い捻くれ者で、接客態度が悪いため、顧客とのトラブルも多い。ただし、腕だけは確かで、どんなピアノも蘇らせる知識と技量を持つ。アマギピアノエキスパートスクールを第1位で卒業したが、問題を起こしたため調律師の資格はない。

星野 小眞 (ほしの こま)

巽ピアノ調律所の新入社員の若い女性。ショートカットが特徴で、ピアノ調律専門学校を卒業したばかり。ピアノはもちろん、その向こう側にいる人の心を大切に考える、真面目で心優しい性格をしている。傍若無人で強引な蛭田に辟易しつつも、その腕前には敬意を抱いている。蛭田とコンビを組むことで、次第に知識と経験を積み重ねていく。

書誌情報

ピアノのムシ 全13巻 芳文社〈芳文社コミックス〉

第1巻

(2013-10-16発行、978-4832233775)

第13巻

(2018-08-09発行、978-4832236226)

SHARE
EC
Amazon
logo